「リン酸」の版間の差分

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一般的には 85% (d = 1.685 g/cm<sup>3</sup>)、[[モル濃度]]は 14.6 mol/dm<sup>3</sup>、[[規定度]]は 43.8 N の水溶液として用いられることが多い。高濃度では[[腐食性]]を持つが、希薄溶液にすると腐食性は下がる。高濃度の溶液では温度によりオルトリン酸とポリリン酸の間で[[化学平衡|平衡]]が存在するが、表記の簡略化のため市販の濃リン酸は成分の全てがオルトリン酸であると表記されている。
: <chem>2\ H3PO4 </chem><math> \rightrightarrows </math> <chem>H4P2O7 {}+ H2O</chem>
: <math>\rm 2 H_3PO_4 \quad \overrightarrow\longleftarrow \quad H_4P_2O_7 + H_2O</math>
 
===水溶液中の電離平衡===
3 価の酸であるため、水と反応すると電離して 3 つの[[水素イオン]] H<sup>+</sup> を放出する。
 
:{{<chem|H|3|PO|4}}>H3PO4</chem> {{eqm}} H<supchem>H^+</sup> {}+\ H<sub>2H2PO4^-</sub>PO<sub>4</sub><sup>−</supchem>
<math> K_{a1}=\frac{[\mbox{H}^+][\mbox{H}_2\mbox{PO}_4^-]}{[\mbox{H}_3\mbox{PO}_4]}\simeq 7.5\times10^{-3}</math> (pK<sub>a1</sub> 2.12)
 
:H <subchem>2H2PO4^-</sub>PO<sub>4</sub><sup>−</supchem> {{eqm}} H<supchem>H^+</sup> {}+\ HPO<sub>4</sub><sup>2−HPO4^2-</supchem>
<math>K_{a2}=\frac{[\mbox{H}^+][\mbox{HPO}_4^{2-}]}{[\mbox{H}_2\mbox{PO}_4^-]}\simeq 6.2\times10^{-8}</math> (pK<sub>a2</sub> 7.21)
 
:HPO <subchem>4HPO4^2-</sub><sup>2−</supchem> {{eqm}} H<supchem>H^+</sup>\ {}+\ PO<sub>4</sub><sup>3−PO4^3-</supchem>
<math> K_{a3}=\frac{[\mbox{H}^+][\mbox{PO}_4^{3-}]}{[\mbox{HPO}_4^{2-}]}\simeq 2.14\times10^{-13}</math> (pK<sub>a3</sub> 12.67)
 
1 段階目の[[電離]]により発生するアニオンは {{chem|H<sub>|2</sub>|PO<sub>|4</sub><sup>–</sup>|-}} である。以下同様に 2 段階目の電離により HPO<sub>4</sub><sup>2–</sup> が、3 段階目の電離により PO<sub>4</sub><sup>3–</sup> が発生する。25 ℃ における[[平衡反応式]]と[[酸解離定数]] ''K'' <sub>a1</sub>, ''K'' <sub>a2</sub>, ''K'' <sub>a3</sub> の値は上に示す通りであり、pKa の値もそれぞれp''K'' <sub>a1</sub> = 2.12, p''K'' <sub>a2</sub> = 7.21, p''K'' <sub>a3</sub> = 12.67(各 25 ℃)となる。1 段目はやや強く解離し 0.1 [[濃度#物質量/体積(モル濃度)|mol/dm<sup>3</sup>]] の水溶液では[[電離度]]は約 0.27 であり、3 段目の解離はきわめて弱く、[[中和滴定曲線]]でも第三当量点は現れない。
 
p''K'' <sub>a</sub> の値からも分かるように、オルトリン酸の[[共役塩基]]は幅広い pH に渡って存在することができる。この性質を利用し、[[リン酸塩]]としたものが緩衝溶液に用いられている。リン酸塩類は生物学の分野においても多々登場しており、特に [[デオキシリボ核酸|DNA]] や [[リボ核酸|RNA]]、[[アデノシン三リン酸]]などのリン酸化された糖がよく知られている。詳細については記事[[リン酸塩]]を参照のこと。
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===縮合リン酸===
オルトリン酸を加熱すると[[脱水反応]]が起こる。150 ℃ で[[無水物]]となり、200 ℃ で 2 つのオルトリン酸が反応し徐々に[[ピロリン酸]](二リン酸)H<sub>){{chem|H|4</sub>|P<sub>|2</sub>|O<sub>|7</sub>}} が生成する。さらに高次の縮合リン酸 {{chem|H<sub>|n+2</sub>|P<sub>|n</sub>|O<sub>|3n+1</sub>}} も生成し、300 ℃ 以上では 1 つのリン酸ユニットにつき 1 つの水分子が脱離してメタリン酸(ポリリン酸)(HPO<sub>3</sub>)<sub>n</sub> が生成する<ref>[http://www.bartleby.com/65/ph/phsphracid.html phosphoric acid. The Columbia Encyclopedia, Sixth Edition. 2001-05]</ref>。メタリン酸はオルトリン酸が脱水縮合した化合物とみなすことが可能である。
 
<div style="float:right">[[Image:Tripolyphosphoric-acid-3D-vdW.png|140px]]</div><div style="float:right">[[Image:Trimetaphosphoric-acid-3D-vdW.png|100px]]</div>