「太政官布告・太政官達」の版間の差分

削除された内容 追加された内容
Poohpooh817 (会話 | 投稿記録)
Poohpooh817 (会話 | 投稿記録)
編集の要約なし
19行目:
[[1946年]]([[昭和]]21年)に公布された[[日本国憲法]]には同憲法施行前の法令の効力に関する明文の規定はない。この点、第98条1項が「その条規に反する法律、命令……の全部又は一部は、その効力を有しない。」としており、その解釈につき、明治憲法下の法令については、法令の内容が違憲である場合にのみ無効とする見解(内容説)、内容が合憲であっても法令の形式が違憲であれば効力はなく、効力存続のためには別途特別の措置が必要とする見解(形式説)とに見解が分かれる。
 
現実の扱いとしては、明治憲法下で法律として制定されたもの(法律としての効力を有する太政官布告・達も含む。)は、内容が違憲でない限り効力が存続するものとして扱われる。一方、明治憲法下で[[命令 (法規)|命令]]として制定されたもの(命令としての効力を有する太政官布告・達も含む。)は、当該命令の対象が日本国憲法下でも命令事項である場合は引き続き命令としての効力を有するが、法律事項である場合は原則として[[1947年]](昭和22年)[[12月31日]]限りでその効力が打ち切られ、必要なもののみ国会による照合を経て再度制定された([[日本国憲法施行の際現に効力を有する命令の規定の効力等に関する法律]]1条)。
 
ただ、前述した明治初期における国家意思形成の不統一性の問題や、規制対象を同じくする法令が何度も公布されたこともあり、布告・達が後の法令で明示的に廃止されなかった場合は、後に、内容が矛盾する法令が制定されたとの解釈により効力を失ったのか否か疑義が生じたものもある。
26行目:
[[2014年]]([[平成]]26年)現在、現行法令としての効力を有すると解される太政官布告・太政官達は、<span class="plainlinks">[http://law.e-gov.go.jp/cgi-bin/idxsearch.cgi 法令データ提供システム]</span>には11件、[http://hourei.ndl.go.jp/SearchSys/index.jsp 日本法令索引]には10件が掲載されている。ただ、効力が存続しているか否か解釈が分かれるものもあるため、掲載されている布告・達には若干違いがある<ref>不用物品等払下ノトキ其管庁所属ノ官吏入札禁止ノ件(明治8年太政官達第152号)は、法令データ提供システムでは現行法令に挙げられているものの、日本法令索引では廃止法令に挙げられている。また、外国勲章佩用願規則(明治18年太政官布告第35号)は、法令データ提供システムでは挙げられておらず、日本法令索引でも昭和22年法律72号1条により昭和22年12月31日限りで失効とされているものの、日本法令索引〔明治前期編〕では平成18年現在においても効力を有するとされている。</ref>。
 
{| class="wikitable"
; 改暦の布告(明治5年太政官布告第337号)
|+ 現行法令としての効力があると解されている太政官布告・太政官達
: [[太陽太陰暦]](旧暦、[[天保暦]])から[[太陽暦]](新暦)への改暦を布告。[[グレゴリオ暦]]の導入を目的としたが、グレゴリオ暦の重要な要素である「西暦の年が、100で割り切れて、かつ400で割り切れない年は閏年としない。」というルールが脱落していたことが後に判明した。このため、閏年ニ関スル件(明治31年勅令第90号)により不備が補われた。
! 題名/件名 !! 法令番号 !! 内容 !! 現行の効力の形式 !! 法令データ提供システム(法務省)への掲載 !! 日本法令索引(国会)における取扱い!!判例における取扱い
; [[絞罪器械図式]](明治6年太政官布告第65号)
|-
: [[死刑]]の執行に使用する器械の形状を定めた布告。明治憲法下で法律としての効力を有しており、日本国憲法下でも法律としての効力を有するとした最高裁判例がある(最大判昭和36年7月19日<ref>刑集15巻7号1106頁。[http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=50555 判例検索システム]、2014年9月7日閲覧。</ref>)。
! 改暦の布告
; 勲章制定の件(明治8年太政官布告第54号) ※ 勲章従軍記章制定の件等の一部を改正する政令(平成14年政令第277号)による改正( [[2003年]][[5月1日]]施行)までは「勲章従軍記章制定の件」との件名。
:| 明治5年太政官布告第337号 || [[太陽太陰暦]](旧暦、[[天保暦]])から[[太陽暦]](新暦)への改暦を布告。[[グレゴリオ暦]]の導入を目的としたが、グレゴリオ暦の重要な要素である「西暦の年が、100で割り切れて、かつ400で割り切れない年は閏年としない。」というルールが脱落していたことが後に判明した。このため、閏年スルする件(明治31年勅令第90号)により不備が補われた。||政令<ref>旧憲法下では命令としての効力を有するものとして勅令により改正されており、かつ、現行憲法下において法律としての効力を付す特段の措置がとられていないことから。</ref> || あり ||あり|| 確認できない
: [[栄典]]の一種である[[勲章 (日本)|勲章]]について定めた布告。行政解釈では[[政令]]としての効力を有するとされているため、改正は政令により行われる([[2002年]](平成14年)[[8月12日]]公布の政令第277号による改正)。もっとも、憲法学者の間では、栄典の授与は日本国憲法の下では法律事項であるとして、違憲ではないかとする見解も有力である<ref>この見解によれば、[[日本国憲法施行の際現に効力を有する命令の規定の効力等に関する法律]]1条に基づき、[[1947年]](昭和22年)[[12月31日]]限り失効したと解される。</ref>。
|-
; 不用物品等払下のとき其管庁所属の官吏入札禁止の件(明治8年太政官達第152号)
! [[絞罪器械図式]]
: 国有財産の払い下げにおいて、その所管官庁に所属する[[公務員]]による入札を禁じた達。法令データ提供システムでは現行法として掲げられているが、[[国立国会図書館]]が運営する<span class="plainlinks">[http://hourei.ndl.go.jp/SearchSys/ 日本法令索引]</span>では、実効性喪失とされている。[[国有財産法]]16条に類似の規定がある。
:| 明治6年太政官布告第65号 || [[死刑]]の執行に使用する器械の形状を定めた布告もの明治憲法下で || 法律としての効力を有してお ||あ、日本国憲法下でも法律としての効力を有するとした最高裁判例が||る(り||最大判昭和36年7月19日<ref>刑集15巻7号1106頁<ref>[http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=50555 判例検索システム]、2014201793712日閲覧。</ref>が、現行の法律としての効力を肯定
<!--出典がなく、かつ、正確性に強い疑義のある記述のためコメントアウト: 官地官林は国有財産法で失効し他も物品管理法の適用があるものに関しては失効しているがそれ以外のスクラップとかには今も適用があるのである。-->
|-
;! 勲章制定の件(明治8年太政官布告第54号) ※ <ref>勲章従軍記章制定の件等の一部を改正する政令(平成14年政令第277号)による改正( [[2003年]][[5月1日]]施行)までは「勲章従軍記章制定の件」との件名。</ref>
:| 明治8年太政官布告第54号 ||[[栄典]]の一種である[[勲章 (日本)|勲章]]について定めた布告もの || 政令<ref>この行政解釈では[[政令]]としての効力を有するとされてに従るため勲章従軍記章制定の件等の一部を改正する政令により行われる([[2002年]](平成14年)[[8月12日]]公布の政令第277号)1条によって改正されている。もっとも、憲法学者の間では、栄典の授与は日本国憲法の下では法律事項であるとして、違憲ではないかとする見解も有力である<ref>り、この見解によれば、[[日本国憲法施行の際現に効力を有する命令の規定の効力等に関する法律]]1条に基づき、[[1947年]](昭和22年)[[12月31日]]限り失効したと解される。</ref> ||あり||あり||確認できない
|-
;! 不用物品等払下のとき其管庁所属の官吏入札禁止の件(明治8年太政官達第152号)
| 明治8年太政官達第152号 ||国有財産の払い下げにおいて、その所管官庁に所属する[[公務員]]による入札を禁じたもの。[[国有財産法]]16条に類似の規定がある。
<!--出典がなく、かつ、正確性に強い疑義のある記述のためコメントアウト: 官地官林は国有財産法で失効し他も物品管理法の適用があるものに関しては失効しているがそれ以外のスクラップとかには今も適用があるのである。--> || 不明 ||あり||実効性喪失||確認できない
|-
! [[裁判事務心得]]
;| [[裁判事務心得]](明治8年太政官布告第103号): ||裁判の際の[[法源]]の適用原則などを明らかにした布告。法令データ提供システムでは、3条・4条・5条に限って挙げられているもの。刑事に関する事項が失効していることは争いはないが、民事に関する事項について現在でも効力が残っているか、残っているとしてその範囲等については争いがある。効力が || 法律 ||3条、4条および5条||ると解される場合り(ただし、〔明治前期編〕で、[[裁判所構成法]](明治23年法律第6号)および民事訴訟法(明治23年法律第29号)により消滅してする)||東京地判平成14年8月27日(平成9(ワ)16684)では、条理は補充的に効力があみ法源となることについて、「裁判事務心得3条参照」とされている。
|-
;! 大勲位菊花大綬章及副章製式の件(明治10年太政官達第97号)
| 明治10年太政官達第97号 || [[大勲位菊花大綬章]]および副章の製式を規定したもの。 || 政令<ref>この行政解釈に従い、勲章従軍記章制定の件等の一部を改正する政令(平成14年政令第277号)2条によって改正されている。もっとも、憲法学者の間では、栄典の授与は日本国憲法の下では法律事項であるとして、違憲ではないかとする見解も有力であり、この見解によれば、[[日本国憲法施行の際現に効力を有する命令の規定の効力等に関する法律]]1条に基づき、[[1947年]](昭和22年)[[12月31日]]限り失効したと解される。</ref> ||あり||あり||確認できない
|-
! 刑法
| 明治13年太政官布告第36号 || [[刑法 (日本)|現行刑法]](明治40年法律45号)の制定に伴い廃止された、いわゆる旧刑法。[[刑法施行法]](明治41年法律第29号)により、公選の投票を偽造する罪に関する規定(旧刑法233条から236条まで)が当分の間は効力を有するものとされているほか(刑法施行法25条)、附加刑としての剥奪公権・停止公権の内容に関する規定(旧刑法31条、33条)はこれらの規定があるために人の資格に関し別段の規定を設けていない場合については人の資格に関し刑法施行前と同一の効力を有するとされている(旧刑法廃止後も科すことを認めた規定ではない)。公選の投票を偽造する罪に関する規定については[[公職選挙法]]の適用を受けない公選の選挙に適用される。 || 法律 ||あり||あり||最判昭和53年7月7日集刑211号637頁が、旧刑法235条(加重的投票偽造)、236条(公選投票詐偽報告)の現行の法律としての効力を肯定し、農業共済組合総代選挙の投票について適用。
|-
! 褒章条例
| 明治14年太政官布告第63号 || 栄典の一種である[[褒章]]について定めたもの。 || 政令<ref>この行政解釈に従い、褒章条例の一部を改正する政令(昭和30年政令第7号)および褒章条例の一部を改正する政令(平成14年政令第278号)によって改正されている。もっとも、憲法学者の間では、栄典の授与は日本国憲法の下では法律事項であるとして、違憲ではないかとする見解も有力であり、この見解によれば、[[日本国憲法施行の際現に効力を有する命令の規定の効力等に関する法律]]1条に基づき、[[1947年]](昭和22年)[[12月31日]]限り失効したと解される。野中俊彦ほか『憲法II 〔第4版〕』(有斐閣)202頁〔高橋和之〕、宮沢俊義著・芦部信喜補訂『全訂 日本国憲法』(日本評論社)137頁参照。</ref> ||あり||あり||確認できない
|-
! 官報の発行
| 明治16年太政官達第27号 || [[官報]]を明治16年7月1日より発行するとしたもの。 || 不明 ||あり||あり||確認できない
|-
! 爆発物取締罰則
:| 明治17年太政官布告第32号 || 治安を妨げまたは人の身体財産を害する目的による爆発物の使用等を処罰する布告もの || 法律としての効力を有する( ||あり||あり||最二判昭和34年7月3日<ref>刑集13巻7号1075号<ref>[http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=51575 判例検索システム]、2014201793712日閲覧。</ref>が、現行の法律としての効力を肯定
|-
;! 海底電信線保護万国連合条約(明治18年太政官布告第17号)
| 明治18年太政官布告第17号 || 海底電信線保護万国連合条約への加入を公布したもの。|| 条約 ||あり||なし|| 確認できない
|-
! 外国勲章佩用願規則
#:| 明治18年太政官布告第35号 || 外国勲章を受けた者の佩用願に関する手続を定めた布告もの|| 不明 ||なし<ref>法務大臣官房司法法制調査部編集による『現行日本法規』では、[[日本国憲法施行の際現に効力を有する命令の規定の効力等に関する法律]]により失効した法令として扱われている。</ref>||〔明治前期編〕のみ|| 確認できない
|}
 
; [[裁判事務心得]](明治8年太政官布告第103号): 裁判の際の[[法源]]の適用原則などを明らかにした布告。法令データ提供システムでは、3条・4条・5条に限って挙げられている。刑事に関する事項が失効していることは争いはないが、民事に関する事項について現在でも効力が残っているか、残っているとしてその範囲等については争いがある。効力があると解される場合は法律としての効力があることになる。
; 大勲位菊花大綬章及副章製式の件(明治10年太政官達第97号)
: [[大勲位菊花大綬章]](および副章)の製式を規定した達。政令としての効力を有すると解されている。
; 刑法(明治13年太政官布告第36号)
: 日本の[[刑法 (日本)|現行刑法]](明治40年法律45号)の制定に伴い廃止された旧刑法のことである。刑法施行法(明治41年法律第29号)25条、37条により、附加刑としての剥奪公権・停止公権の内容に関する規定の一部、公選の投票を偽造する罪に関する規定が効力を有するものとされている。ただし、剥奪公権等・停止公権の存続は、旧刑法下で科された場合に旧刑法廃止後であっても旧刑法の剝奪公権・停止公権の規定を理由に欠格事由を定めていない場合にやはり適用するためのものであり、旧刑法廃止後も科すことを認めた規定ではない(各種の法律で欠格事由等として同旨のことが個別的に定められていることはあるが、刑罰としての扱いではない)。公選の投票については[[公職選挙法]]の適用を受けない選挙(公法人の役員選挙など)に適用される。
; 褒章条例(明治14年太政官布告第63号)
: 栄典の一種である[[褒章]]について定めた布告。旧憲法下では[[勅令]]により数次の改正が行われており(旧憲法下では栄典の授与は天皇大権事項)、日本国憲法下の行政解釈でも[[政令]]としての効力を有するとの解釈のもと、政令で改正されたことがある(昭和30年政令第7号、平成14年政令第278号など)。しかし、[[法律]]の存在を前提とせず政令で憲法を直接実施することは認められないとの解釈が通説であり<ref>野中俊彦ほか『憲法II 〔第4版〕』(有斐閣)202頁、高橋和之執筆部分</ref>、褒章条例を政令によって改正したのは失当とする見解が呈示されている<ref>宮沢俊義著・芦部信喜補訂『全訂 日本国憲法』(日本評論社)137頁</ref>。
; 官報の発行(明治16年太政官達第27号)
: [[官報]]を発行するとした達。
; [[爆発物取締罰則]](明治17年太政官布告第32号)
: 治安を妨げまたは人の身体財産を害する目的による爆発物の使用等を処罰する布告。法律としての効力を有する(最二判昭和34年7月3日<ref>刑集13巻7号1075号。[http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=51575 判例検索システム]、2014年9月7日閲覧。</ref>)。
; 海底電信線保護万国連合条約(明治18年太政官布告第17号)
: 海底電信線保護万国連合条約に加入したことを示す布告。<!--#'''外国勲章佩用願規則'''(明治18年太政官布告第35号)
#:外国勲章を受けた者の佩用願に関する手続を定めた布告。法務大臣官房司法法制調査部編集による『現行日本法規』では、[[日本国憲法施行の際現に効力を有する命令の規定の効力等に関する法律]]により失効した法令として扱われている。
--><!-- 2009年5月5日の時点では、日本法令索引でも廃止法令として扱っていることを確認。 -->
 
== 脚注 ==