「還元主義」の版間の差分

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しかし[[生物学の哲学|生物学の形而上学]]における還元主義は常に議論の的であった。議論のルーツは、19世紀末から20世紀初頭の[[生気論]]対[[機械論]]論争にまで遡ることができる。生物学と物理学、[[生化学]]はどのように関連するか。生物学はそれ自身の理論を持っているか。物理学や化学の一分野となるべきか<ref name=redsup />。還元主義は戦略か、教育や説明のための便利な道具に過ぎないか([[エルンスト・マイア]]は貧弱な戦略と見なし、多くの分子生物学者は優れた戦略と見なした)<ref name=hull />。さらに、生態系は個体群の集合に過ぎないか、種は個体の集合に過ぎないか、個体が細胞の集合に過ぎないか、自然環境における動植物の複雑な関係([[生態学]])、個体における全体と部分の関係([[解剖学]]と[[生理学]])、[[胚]]の初期段階の均一性と成体のパーツの異質性の関係([[発生学]])はどのようになっているのか<ref name=redsup />。
 
還元主義に関するもっとも激しい議論は1950年代に[[メンデル遺伝学]]と[[分子生物学]]の間で行われた。この議論で、"遺伝学は完全に分子生物学化される"とする強い還元主義と、"遺伝学は分子生物学から何も学ぶことはない"とする強い反還元主義の対立が起きた<ref name=SEP />。例えば[[多面発現効果]]や[[ポリジーン]][[形質]]は形質と遺伝子の関係を一対一と捉えては理解できない。また遺伝子はその発現に[[環境]]の影響を強く受ける。[[デイヴィッド・ハル|ハル]]によれば、メンデル遺伝学の分子遺伝学化は直接の還元ではない<ref name=hull>[http://philosci40.unibe.ch/lehre/sommer08/ReduktionAntireduktion/Hull1972.pdf Reduction in Genetics-Biology or Philosophy?]</ref>。分子生物学者の還元主義的アプローチは遺伝学の理解を深めた。分子遺伝学は、メンデル遺伝学の特定の面を説明する助けとはなる。
 
1970年代以降、「還元主義」の語は社会生物学論争で多用された。[[社会生物学]]の批判者は、"社会生物学は遺伝子だけによって人間の社会行動を説明できると主張している還元主義者である"と批判した。社会生物学者の支持者は次のように反論した。「[なぜ]完璧な信念-複雑な全体は、その部分を元にして説明すべきである-を、馬鹿げた茶番-複雑な全体の性質は部分の中にあるそれと同じ性質の総和である-に還元してしまうのか?」<ref>[http://dba.fc.ul.pt/evo/textos/dawkins_review_not_in_our_genes.pdf Reviewed by Richard Dawkins ,''Not in Our Genes: Biology, Ideology and Human Nature''] New