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== 重粒子線がん治療のメリットと可能性 ==
[[2007年]]当時、実際に治療を行っている[[重粒子線がん治療]]施設は、世界に3ヵ所(放射線医学総合研究所内の重粒子医科学センター病院、[[兵庫県立粒子線医療センター]]、[[ドイツ]]のダルムシュタットの[[重イオン研究所]])しかなく、今{{いつ|date=2010年11月}}世界では、[[スイス]]、[[フランス]]、[[イタリア]]、[[アメリカ]]、[[中国]]、[[韓国]]でも計画が進行している。2007年当時で、3,200人以上が治療を受けていた放医研センター病院は、世界的にも最も進んだ重粒子線医療施設で、今年までに累計5,400人を超える治療が行われている。また、世界で4番目、日本国内で3ヵ所目の施設として、群馬大学重粒子線医学研究センターが治療を開始した。ここでは巨大な加速器を小さくすることに成功しており、今後の重粒子線がん治療の可能性を、大きく広げるものとして注目を集めている。放医研センター病院では、約65m×120mだった加速器を、約45m×65mと小さくすることに成功。その中に、重粒子を最高で[[光]]の70%程度の速度まで加速する、直経約20mのシンクロトロン加速器と、3つの治療室を持つ。放医研が主体となって研究開発を進めて来た、「普及小型重粒子線照射装置の技術機第1号」と位置づけられ、[[群馬大学]]では[[群馬県]]との共同事業として、[[2010年]][[3月]]の治療開始に至る。
 
また、世界で4番目、日本国内で3ヵ所目の施設として、群馬大学重粒子線医学研究センターが治療を開始した。ここでは、巨大な加速器を小さくすることに成功しており、今後の重粒子線がん治療の可能性を、大きく広げるものとして注目を集めている。
重粒子線がん治療は、正常な組織への放射線障害を最小限に止め、[[がん]]の部位のみを狙い撃ちができ、通常の放射線治療では治癒することが困難な、「放射線抵抗性のがん」にも威力を発揮するとされている。また、「切らずにがんを治す」治療法で、[[臓器]]の機能や形態が温存できることから、治療成績の向上のみでなく、患者の治療後の社会復帰や、生活の質(QOL)の向上も期待できる治療法である。放医研での重粒子線治療の治療成績は、5年生存率で見ると、前立腺がん=約95%、手術不能Ⅰ期肺がん=約70%、頭頸部悪性黒色腫=約50%、体幹部・進行骨肉腫=約50%、再発進行肝がん=約50%、Ⅲ-Ⅳ期進行子宮頸がん=約45%などの報告がなされている。最も治療の難しい[[骨肉腫]]では、腫瘍が消失した後に正常骨組織が再生するなど、がんが制御されるばかりか、機能や形態まで温存される、劇的な治療効果も得られていると言う。また、重粒子線治療は、通常では1〜4回の照射で済み、入院期間も比較的に短く、苦痛も大幅に軽減されることからも、優れたがん治療法であると言われている。治療コストは、幾らか[[生命保険]]が対応するようになったが、先進医療指定の為に健康保険の適用にならい、かなり高額な治療費314万円が負担となることは、2007年当時と変わらない。
 
放医研センター病院では、約65m×120mだった加速器を、約45m×65mと小さくすることに成功。その中に、重粒子を最高で[[光速]]の70%程度の速度まで加速する、直経約20mのシンクロトロン加速器と、3つの治療室を持つ。放医研が主体となって研究開発を進めて来た「普及小型重粒子線照射装置の技術機第1号」と位置づけられ、[[群馬大学]]では[[群馬県]]との共同事業として、[[2010年]][[3月]]の治療開始に至る。
 
重粒子線がん治療は、正常な組織への放射線障害を最小限に止め、[[がん]]の部位のみを狙い撃ちができ、通常の放射線治療では治癒することが困難な「放射線抵抗性のがん」にも威力を発揮するとされている。また「切らずにがんを治す」治療法で、[[臓器]]の機能や形態が温存できることから、治療成績の向上のみでなく、患者の治療後の社会復帰や、生活の質(QOL)の向上も期待できる治療法である。
 
放医研での重粒子線治療の治療成績は、5年生存率で見ると、前立腺がん=約95%、手術不能Ⅰ期肺がん=約70%、頭頸部悪性黒色腫=約50%、体幹部・進行骨肉腫=約50%、再発進行肝がん=約50%、Ⅲ-Ⅳ期進行子宮頸がん=約45%などの報告がなされている。最も治療の難しい[[骨肉腫]]では、腫瘍が消失した後に正常骨組織が再生するなど、がんが制御されるばかりか、機能や形態まで温存される、劇的な治療効果も得られていると言う。
 
また、重粒子線治療は、通常では1〜4回の照射で済み、入院期間も比較的短く、苦痛も大幅に軽減されることからも、優れたがん治療法であると言われている。治療費用は、幾つかの[[生命保険]]が対応するようになったが、[[先進医療]]指定の為に、[[診療報酬]]の適用にならい、かなり高額な治療費314万円が患者の自己負担となることは、2007年当時と変わらない。
 
== 脚注 ==