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'''輪栽式農業'''(りんさいしきのうぎょう)とは、[[18世紀]]から[[19世紀]]にかけて[[西ヨーロッパ]]で普及した耕作方式であり、それまでの三圃式農業で見られた休閑が廃止され、従来の穀物生産に加えて飼料作物として栽培牧草や、根菜類に代表される中耕作物の栽培を特徴とする。大規模な資本投下により穀物と畜産物の供給量を増大させ、産業革命を下支えした。近世以降ベルギーやイギリスにおける実践の中で構築され、19世紀ドイツで体系化された。
{{出典の明記|date=2017年3月26日 (日) 11:12 (UTC)}}
 
'''輪栽式農業'''(りんさいしきのうぎょう)とは、[[18世紀]]から[[19世紀]]にかけて[[西ヨーロッパ]]で導入された耕作方式の一つ。[[イギリス]]では[[ノーフォーク農法]]の名で知られる。
== 特徴 ==
ドイツの農学者[[アルブレヒト・ダニエル・テーア|テーア]]は著作『合理的農業の原理』の中で、輪栽式農法の特徴について以下のように定義した<ref>飯沼二郎『農業革命の研究』(農山漁村文化協会,1985年)498-500頁</ref>。
 
# 利用されない休閑は一般に廃止される。その代わりに、毎年、一定の循環にしたがって、作物を一部は飼料用として、一部は販売用として栽培する。
# この中耕作物のあとには一般に夏作をおこなう。
# 二つの禾本科作物を決してつづけて作ってはならない。そのあいだに禾本科以外の中間作物を挿入することが、主要な原則である。
# クローバーは、完全に清潔な(雑草の繁茂していない)、充分に耕起され、また施肥された土地にまかれる必要があるから、それはたいてい、第三年目に、中耕作物のあとにつくられる作物のそのあとに播種される。
# より長い輪作、すなわち飼料と肥料をきわめて豊富にえて、耕地をひじょうに肥沃になしうるようなばあいに、完全に結実するまでまたずに青いうちに刈り取れる作物<ref>特にヤハズエンドウとソバ</ref>を間に入れることはひじょうに有利である。
# これらの作物のばあい、一年に二回の収穫が充分可能である。しかし、われわれの気候および多くの労働力を必要とする経営において、この一年に二回の収穫は、多くの人々が主張するほど、一般的ではない。
# もしも、より長い輪作のあいだに二回施肥されるならば、第二回目の施肥は穀物にではなしに、他の青刈りにされるのが一番よいような作物にされるべきである。
# 耕地の半分に飼料をつくるということは、決して本質的な条件ではないとともに、また、耕地の半分にしか穀物をつくってはならないということも、本質的な条件ではない。
 
==成立の条件==
テーアは輪栽式農法が実施するために、以下の条件を挙げた<ref>前掲書500頁</ref>。
 
# 耕地の完全な所有と自由な利用、その上に他人がもついっさいの使用権の排除、あるいは合理的にそれを囲い込む権利。
# 耕地の良い、そして家からあまり離れていない、あまり遠くない位置。
# あまり痩せてない土地、あるいは肥効に富んだ肥料を入手するための特別な手段。
# 多くの労働力。
# ひじょうに注意深い、勤勉な、思慮深い、そして決断力のある管理人。
# すべての生産物に充分な販路があり、したがって土地が労働にたいして正当な価値をもっているところでのみ、それは適合する。
# 最後に、大きな経営資本と充分な設備とを必要とする。
 
==脚注==
<references/>
 
== 特徴 ==
圃場を一つにして、[[小麦]]・[[ライ麦]]などの「冬穀」→[[カブ]]・[[てんさい]]・[[ジャガイモ]]などの「根葉類」→[[大麦]]・[[燕麦]]・[[豆]]などの「夏穀」→[[シャジクソウ属|クローバー]]・[[ウマゴヤシ]]などの根粒菌と共生し、地力を回復する性質を持つ牧草、と、ローテーションを組んで耕作するのが特徴。それ以前の[[三圃式農業]]に比べ、穀類の作付は減少するが、根葉類や[[マメ科]]植物の作付が増加する。特にカブなどの栽培を導入したことにより、飼料不足が解決され、冬季の家畜飼育が可能となった。その結果、家畜の堆肥と牧草による地力回復により、休耕地を廃することが可能となった。輪栽式農業導入により食料生産が増加し、西ヨーロッパでは[[人口革命]]と呼ばれる、人口の急速な増加が始まる。
 
== 関連項目 ==