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[[File:Young baby for Wikipedia infant section.png|thumb|280px|天真爛漫な小児]]
'''小児科学'''(しょうにかがく、{{lang-en|pediatrics}})は、[[新生児]]から[[思春期]](だいたい15歳、中学校三年生頃まで)を対象として診療研究pを行う臨床[[医学]]の一分野。
 
== 対象年齢の区分 ==
出生後から時期により以下のように分けている。
{| class="wikitable" style="margin-left:1em"
! nowrap="nowrap" |名称!! nowrap="nowrap" |時期
|-
|新生児||出生後28日未満
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これらの反射の消失の合目的性は反射が消失することで手や足が器用になり運動の発達が促されると考えられている。手の反射としては以下のものが知られている。
{| class="wikitable" style="margin-left:1em"
! nowrap="nowrap" |反射名!! nowrap="nowrap" |出現時期!! nowrap="nowrap" |内容
|-
|手掌把握反射||新生児〜4か月||手掌を圧迫すると指が屈曲する。(物を握る頃消失)
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これらは出現することで寝返りやハイハイができるようになると考えられている。
{| class="wikitable" style="margin-left:1em"
! nowrap="nowrap" |反射名!! nowrap="nowrap" |出現時期!! nowrap="nowrap" |内容
|-
|緊張頸反射||1か月〜6か月||首を横向きにすると同側の上下肢が進展し、反対側が屈曲する。(寝返りができる頃消失)
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デンバーII発達判定表が有名である。
{| class="wikitable" style="margin-left:1em"
! nowrap="nowrap" | !! nowrap="nowrap" |粗大運動(体幹)!! nowrap="nowrap" |微細運動(四肢)!! nowrap="nowrap" |言語!! nowrap="nowrap" |社会性
|-
|1か月||顔を左右に向ける|| || ||
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小児の場合は平熱が高めのことが多いため一般的には38度以上の体温で発熱と考える。37.5度以下ではほぼ平熱である。発疹の有無によって鑑別疾患が大きく異なる。[[川崎病]]、[[リウマチ熱]]、若年性[[関節リウマチ]]といった発疹を伴った発熱のある小児特有疾患も存在する。発熱パターンは日内変動をしながら徐々に増加していれば重症化、徐々に解熱すれば治癒傾向と考えられる。日内変動にて短絡的に重症化、治癒傾向と判断しないように注意する。家庭にて行える発熱時の対処法の一例を示す。
{| class="wikitable" style="margin-left:1em"
! nowrap="nowrap" |年齢!! nowrap="nowrap" |対応
|-
|生後0〜1ヶ月||一見元気で食欲があると思っても受診させる。
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3か月以後の乳児から3歳頃の発熱は救急外来では非常に多い主訴である。注意深く身体所見をとったとしても30%程度は熱源不明となってしまう。その場合は潜在性菌血症、尿路感染症、潜在性肺炎、悪性腫瘍や膠原病が考えられる。特に前二者は抗菌薬による治療にて早期介入可能なことから注意深い診察が必要となる。潜在性菌血症は全身状態良好な良好であるのにもかかわらず血液培養にて細菌が検出されることである。3か月から3歳くらいで頻度が高いと言われている。肺炎球菌であればそのまま自然経過で改善するが、インフルエンザ桿菌の場合は90%以上の確率で敗血症や髄膜炎にいたるといわれている。体温39度以上で白血球数15,000/μl以上であると潜在性菌血症の可能性が高くなる。尿路感染症も1歳以下の男児や2歳以下の女児では見つけにくい疾患となる。尿検体をカテーテルや膀胱穿刺で無菌的に摂取するとしんだんできる。体温が体温39度以上で白血球数20,000/μl以上のときは聴診上ラ音を認めず、痰もないのにもかかわらず[[胸部X線]]では浸潤影を認める潜在性肺炎という病態も知られている。いずれにせよ重篤な病態は肺炎球菌による場合が多く、予防接種による予防が望まれる。発熱が敗血症のサインかどうかを見分けるにはバイタルサインを用いるという方法も知られている。これらは患者が安静にしている場合の指標であるため泣き出してしまうと心拍数、呼吸数とも上昇してしまうので判定が難しくなる。正常範囲より+2SD以上の心拍数の変化や呼吸数の変化は発熱だけが原因とは考えられず敗血症の可能性も考える。
{| class="wikitable" style="margin-left:1em"
! nowrap="nowrap" |年齢!! nowrap="nowrap" |呼吸数±2SD!! nowrap="nowrap" |呼吸数±1SD!! nowrap="nowrap" |呼吸数正常範囲!! nowrap="nowrap" |心拍数±2SD!! nowrap="nowrap" |心拍数±1SD!! nowrap="nowrap" |心拍数正常範囲
|-
|出生〜3か月||10〜80||20〜70||30〜60||40〜230||65〜205||90〜180  
238行目:
発疹は発熱、全身状態によって鑑別疾患が異なってくる。また[[ワクチン]]の接種歴によっても大分変わってくる。皮疹学的には以下のような分類が便利である。ルーペを用いて観察すると分かりやすい。まれに、出血斑(あざ)を発疹と間違えることがある。リンク[[発熱と発疹を起こす病気の一覧]]も参考となる。全身状態が良好であり発熱が軽度であったり認められないものとしては雑多なウイルス性感染症やあせも、薬疹、接触性皮膚炎などが知られ、全身状態が悪いものとしては麻疹、伝染性単核球症、川崎病などが知られている。
{| class="wikitable" style="margin-left:1em"
! nowrap="nowrap" |発疹のパターン!! nowrap="nowrap" |疾患
|-
|[[紅斑]]||[[突発性発疹]]、[[伝染性紅斑]]、[[川崎病]]、SSSS(ブドウ球菌性熱傷皮膚症候群)  
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[[クループ]]は急性喉頭炎、急性声帯下喉頭炎ともいい、小児救急疾患の一つである。かつては[[ジフテリア]]によるものが非常に多かったがワクチンの普及によってジフテリアによるクループは激減している。急性[[気道感染]]症に伴いケンケンとした犬吠様咳嗽、嗄声、呼吸困難を呈する症候群であり殆どはウイルス性である。インフルエンザ菌による場合は重篤化しやすい傾向がある。生後6か月から6歳頃に非常に多い。[[聴診]]上のストライダー(吸気性喘鳴)は上気道狭窄を疑う重要な所見である。逆にウィージング(喘鳴)であれば下気道の閉塞である。ウィージングは吸気時も呼気時もヒューヒューと聞こえ、最強点が胸部になるのに対して、ストライダーは吸気のみにヒューヒューと聞こえ、最強点が頸部に存在する点が異なる。また開口し頻呼吸させるとストライダーは聴取しやすい。激しく泣かせる、興奮させるといったことを行うとさらに気道狭窄が進み、重篤化することがあるので注意が必要である。[[舌圧子]]を用いた咽頭診察や[[X線]]撮影などで呼吸停止に陥った例も報告されている。重症度は臨床症状から決定されることが多い。
{| class="wikitable" style="margin-left:1em"
! nowrap="nowrap" |重症度!! nowrap="nowrap" |犬吠様咳嗽!! nowrap="nowrap" |安静時吸気性喘鳴!! nowrap="nowrap" |安静時の陥没呼吸!! nowrap="nowrap" |その他
|-
|軽症||ときどき||なし〜わずか||なし〜わずか|| 
296行目:
小児科領域では年齢によって[[肺炎]]の好発起炎菌が推定することができる。米国ではインフルエンザ桿菌b型[[ワクチン]]や肺炎球菌ワクチンの導入によって小児肺炎の予防に成功をおさめている。
{| class="wikitable" style="margin-left:1em"
! nowrap="nowrap" |名称!! nowrap="nowrap" |時期!! nowrap="nowrap" |肺炎好発起炎菌
|-
|新生児||出生後28日未満||B群溶血性連鎖球菌、[[大腸菌]]、ブドウ球菌  
316行目:
2歳過ぎより起こるとされている。急性の便秘では激しい腹痛をきたす場合が多い。大泣きをしたり、顔面蒼白となることもある。重大な疾患を疑うほど苦しみを強く訴えるが、水の摂取などは保たれている場合が多い。子供の場合は腹壁が薄いため成人よりも腹部診察で便秘の診断はつけやすい。左下腹部に[[腫瘤]]様に便塊を触れることが多い。レントゲンにて便塊を見つければ診断もできるが、診断的治療として[[浣腸]]を行うことも多い。50%グリセリン浣腸の使用量の目安としては1〜2ml/kgであるため、
{| class="wikitable" style="margin-left:1em"
! nowrap="nowrap" |年齢!! nowrap="nowrap" |GE使用量
|-
|5kg程度の乳児||5〜10ml
341行目:
成人では消化器の領域の感染症や潰瘍などによって起こる嘔吐が最も多いのだが、小児ではその他の疾患も鑑別に上がってくる。先天性長閉鎖は腸回転異常でも起こるし、輪状膵でも起こりえる。治療には原因精査が必要である。これらの疾患ではその他の奇形の精査も重要となることがある。
{| class="wikitable" style="margin-left:1em"
! nowrap="nowrap" |発症時期!! nowrap="nowrap" |疾患!! nowrap="nowrap" |吐物!! nowrap="nowrap" |画像所見
|-
|出生直後||[[先天性食道閉鎖症]]||泡沫様||coil up sign
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新生児から乳児の正常な便について述べる。正常は柔らかく形がないことが多い。母乳栄養の場合は月齢が低いほど便は柔らかめとなり、やや酸味を帯びた臭いがある。おむつにしみ込むような便となるのが特徴的である。ミルク栄養の場合は硬さは様々となり、通常は母乳便よりも色が濃くなる。病的な便ではおむつにしみ込むような便であるが、血液が混じるなどいつもの便とは明らかに異なることが多い。一日7〜8回の排便、即ち2〜3時間毎の排便が認められたら病的である。典型的な異常便は真っ白か真っ赤である。白色便は冬場から春先に多いロタウイルスによる感染症や先天性胆道閉鎖症で考えられる。赤色便としては腸重積のイチゴゼリー状の便や細菌性腸炎のスポット状の出血などが有名である。しかし、頻度してはトマトやスイカの残渣が最も多い。固形の便が確立された後は成人と同様の対処で十分である。下痢は[[急性胃腸炎]]によるものが多い。下痢がいつから始まったのか、回数、状態、においといった下痢の性状はどのようなものか。食事(焼き肉、中華といった油もので起りやすい)、飲み物(イオン飲料水でも起りやすい)など下痢をする心あたりがあるのか、発熱、吐き気、嘔吐、意識障害、体重減少といった下痢以外の症状があるのか、周りに同様の症状があるのかといったことが重要になってくる。体重の減少は脱水の程度として非常に重要となる。2〜3%の体重減少ならば外来で治療可能であるが6%以上であれば入院が必要となる。7%以上ならば高度脱水であり重篤な状態である。外来で治療可能な軽度脱水に関しては輸液で対処することが多い。より詳細な内容は[[輸液]]を参照のこと。
{| class="wikitable" style="margin-left:1em"
! nowrap="nowrap" |体重!! nowrap="nowrap" |輸液速度
|-
|10kg||100ml/hr  
370行目:
外来では2時間投与して利尿が得られなければ、入院を検討する。近年はORSにて治療を行うことも多い。ソリタT3顆粒などは電解質のバランスは非常に良いが味が悪く扱いにくい。アクアライトやアクアバランスはORSの中では比較的味が良いとされている。ボカリスエット小児用も治療に用いることができる。大人用のポカリスエットならば水で薄めて用いる。但しポカリスエットで治療する場合は電解質の補充は少量になることに留意する。食事は食物繊維が多いものは避ける方がよいとされている。具体的にはうどん、トースト、じゃがいも、里芋、豆腐、煮込んだ野菜(特ににんじん、かぼちゃが栄養、消化の面でバランスがよい)、少量ずつならばリンゴ、バナナ、白桃などが好ましいとされている。嘔気がある場合は嘔気が治まった時点で少量(目安として50ml)ずつ頻回に水分を与える。感染症が原因と考えられる下痢の場合は原則として、下痢止めは用いない、特に下痢止めは6ヵ月未満では禁忌、2歳未満でも原則禁忌である。ロペミンを用いる場合は0.04〜0.08/kg/day 分3で日数は少なめで行う。[[ビオフェルミン]]や[[ラックビー]]といった整腸剤を用いることが多い。食中毒のエピソードなど細菌性の下痢が強く疑われる場合は抗菌薬の使用を検討する。[[証 (東洋医学)|証]]があえば漢方薬の使用も効果的である。[[五苓散]](ごれいさん)などがよく用いられる。
{| class="wikitable" style="margin-left:1em"
! nowrap="nowrap" |年齢!! nowrap="nowrap" |五苓散使用量
|-
|1歳未満||成人量の1/4 
403行目:
[[先天性胆道拡張症]]は新生児肝炎に類似する病態であるが予後はきわめて不良であり生体肝移植の適応になる疾患である。どちらも新生児期に遷延性黄疸の発症機序をとる。
{| class="wikitable" style="margin-left:1em"
! nowrap="nowrap" | !! nowrap="nowrap" |先天性胆道閉鎖症!! nowrap="nowrap" |新生児肝炎
|-
|概念||先天性の肝外胆管閉塞による閉塞性黄疸||新生児、乳幼児で発症、原因不明
434行目:
{| border="1" cellpadding="3" cellspacing="0" style="margin:auto; text-align:left;"
|- style="text-align:left; background-color:#CCCCCC;"
! nowrap="nowrap" |時期\病態!! nowrap="nowrap" |間接(非抱合)型ビリルビン!! nowrap="nowrap" |直接(抱合)型ビリルビン
|-
|早発||[[母児間血液型不適合]]||[[敗血症]]
453行目:
非抱合型ビリルビンは肝細胞に取り込まれ、肝細胞内でグルクロン酸抱合を受け、肝内胆管に排泄される。その過程に必要な酵素の機能が低下していたり酵素そのものが欠損した病気を[[体質性黄疸]]と言う。
{| class="wikitable" style="margin-left:1em"
! nowrap="nowrap" |障害工程!! nowrap="nowrap" |病気
|-
|取込||[[ジルベール症候群]]
587行目:
小児期は年齢特有の病気も非常に多いためいたずらに鑑別を増やすのは望ましくはないが、簡単のため腹部腫瘤の原因疾患を纏める。神経芽細胞腫、肝芽腫、腎芽細胞腫が含まれるため非常に重要な分野である。
{| class="wikitable" style="margin-left:1em"
! nowrap="nowrap" |部位!! nowrap="nowrap" |臓器!! nowrap="nowrap" |疾患
|-
|上腹部||胃||肥厚性幽門狭窄症、胃軸捻症、空気嚥下
623行目:
特に有名な、肝芽腫、腎芽細胞腫、神経芽細胞腫に関して纏める。
{| class="wikitable" style="margin-left:1em"
! nowrap="nowrap" | !! nowrap="nowrap" |肝芽細胞腫!! nowrap="nowrap" |神経芽細胞腫!! nowrap="nowrap" |腎芽細胞腫
|-
|発生部位||肝細胞||副腎髄質、交感神経節など||腎尿細管
637行目:
[[神経芽細胞腫]]はMYCNコピー数が最大の予後不良因子となる。10倍以上増幅例では予後不良である。その他DNA ploidyで2倍体、もしくは低4倍体。1q,14q,17qの欠損例は予後不良である。また発見時年齢も1歳未満ならば予後良好となるが1歳以上は予後不良である。
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! nowrap="nowrap" |国際病期分類!! nowrap="nowrap" |内容
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|1||限局腫瘍で肉眼的完全切除。リンパ節転移なし。