「ホタテガイ」の版間の差分

削除された内容 追加された内容
144行目:
;稚貝:養殖の初期段階で殻が割れるなどして商品価値の低い物が味噌汁用として市場に流通する。所謂殻付きのベビーホタテといったところである。
 
=== 食卓等における貝殻の利用 ===
貝殻は日本などの料理店等で野趣を演出する[[鍋]]代わりに使用されることも多い。日本の[[青森県|青森]]では[[居酒屋]]で[[貝焼き味噌]](ホタテガイの貝柱やヒモ、刻み[[ネギ]]、[[削り節]]を味噌で煮て玉子で綴じる)と言えば一般的な料理である。貝焼き味噌用に大型の貝殻も販売されており、刺身の盛りつけや、なかには[[灰皿]]などにされることもある。また、[[カキ (貝)|カキ]]の垂下式養殖にも使われている。
 
秋田県の内陸の鉱山地域で生まれ育った作家、[[松田解子]](1905-2004)は、ホタテの貝殻で馬肉を煮て食べるのは当時(19世紀末から20世紀はじめにかけて)下賎なものとして扱われていたと、小説『おりん口伝』ほかで書き残している。
 
また、[[カキ (貝)|カキ]]の垂下式養殖にも一般的に使われている。カキの幼生が浮遊している時期に多数のホタテ貝殻を連ねたロープを[[いかだ|イカダ]]から海中に吊るすと幼生が付着するため、これを海中で肥育させる。[[カキ (貝)#養殖]] 参照。
=== 真珠 ===
 
スキャロップ・パール(scallop pearl)と呼ばれる天然の真珠を産することがある。[[アコヤガイ]]などのような[[真珠層]]ではなく[[カルサイト]]による葉状構造が特徴。主に[[カリフォルニア]]沖などで採取されているが、養殖されているものではない天然の真珠のため非常に珍しく貴重でありほとんど市場に出回らず、市場に出回っている物も小さい物や形のいびつな物がほとんどである。しかし普通の食用のホタテの中に産するため、おやつや酒肴のホタテの中に入っている場合がある。
==== 貝殻利用研究 ====
上記の用途で利用される量を上回る貝殻が排出され、多くは埋め立てなどの方法で廃棄されることから、コストや環境への負荷が発生する。このため活用についての研究開発が行われている。
 
=== 廃棄物利用 ===
ホタテガイの加工により発生する[[産業廃棄物]]の処理は、生産地域の課題として重くのしかかる。
==== 貝殻 ====
ホタテガイの殻は、[[カルシウム]]に富むことから、[[学校]]で使う[[チョーク]]やトラックラインを引く粉に加工されるが、高価なことがネックとなり需要の拡大には至っていない。また、粉砕して、主成分の[[炭酸カルシウム]]を精製し、酢酸を加えた酢酸カルシウムは環境に全く影響を与えない[[融雪剤]]として注目されてはいるが、コストが数倍になるため主要道路や国道などの一部道路に利用されるに留まっている。しかし近年、[[青森県]]の[[八戸工業大学]]の研究<ref>{{Cite web |date= |url=http://ms-laboratory.jp/scallop/scallop.htm |title=ホタテ貝殻の機能性 |work=エムエス・ラボ(八戸工業大学公式ウェブサイト)|publisher=八戸工業大学 |accessdate=2010年4月8日}}</ref>により、貝殻を粉末にして特殊な熱処理を施すと殺菌、消臭、除菌等の様々な機能があることがわかってきており、幅広い応用が期待されている。
 
工業利用は、ホタテセラミックや、ホタテタイルなど粉砕したものを特殊な処理にて固めて歩道のタイルなどに利用する。このタイルは水を通すので歩道が水浸しにならない優れた素材である。粉砕した粉は石灰の代わりの[[土壌改良剤]]としても利用できる。しかし、コストの面からまだまだ一般的な利用には至っておらず、多くは産業廃棄物として埋め立てどの方法により処理されて
 
過去に、海に向かって練習ができる[[ゴルフ]]ボールを貝殻の粉末から作製した企業もあったが、[[廃棄物処理法]]に抵触する恐れがあるとして製造を差し止められている。近年では殻を[[土壌改良剤]]や[[セラミック]]や[[セメント]]等の工業原料として使用する技術が開発されつつある<ref>{{Cite journal|和書|author=笹木圭子 |author2=本郷大 |author3=恒川昌美 |title=廃ホタテ貝殻焼成物を原料とするaragonite型軽質炭酸カルシウムの合成(第2報) -種結晶としてaragonite型炭酸塩を用いる方法- |date=1998-09-25 |publisher=社団法人 資源・素材学会 |journal=資源と素材 : 資源・素材学会誌 |volume=114 |number=10 |naid=10002468096 |doi=10.2473/shigentosozai.114.709 |pages=709-713 |ref=harv}}</ref><ref>[http://www.h7.dion.ne.jp/~zeolite/suncal/index.htm 有機石灰(ホタテ貝殻カルシウム)の概略]</ref><ref>{{Cite journal|和書|author=笹木圭子 |author2=小林弘幸 |author3=恒川昌美 |title=ホタテ貝殻および石灰石を原料としたaragoniteの合成 -遂次反応による形態制御- |date=2001-09-25 |publisher=社団法人 資源・素材学会 |journal=資源と素材 : 資源・素材学会誌 |volume=117 |number=9 |naid=10007496156 |doi=10.2473/shigentosozai.117.747 |pages=747-752 |ref=harv}}</ref>。
 
==== 中腸腺(ウロ)真珠 ====
スキャロップ・パール(scallop pearl)と呼ばれる天然の真珠を産することがある。[[アコヤガイ]]などのような[[真珠層]]ではなく[[カルサイト]]による葉状構造が特徴。主に[[カリフォルニア]]沖などで採取されているが、養殖されているものではない天然の真珠のため非常に珍しく貴重でありほとんど市場に出回らず、市場に出回っている物も小さい物や形のいびつな物がほとんどである。しかし普通の食用のホタテの中に産するため、おやつや酒肴のホタテの中に入っている場合がある。
 
=== 中腸腺(ウロ) ===
[[堆肥]]などに加工されていたが、最近、[[最終処分場]]に持ち込めないほどの[[重金属]](主に[[カドミウム]])や[[砒素]]を含有する例が発見され<ref>[http://www.tokyo-eiken.go.jp/issue/journal/2002/abs01-4.html#49 貝類中の微量元素濃度]東京都健康安全研究センター 研究年報 2002 年 和文要旨</ref>、堆肥としても使えず、産業廃棄物としても処分が難しい状況になっている。焼却法による回収では重金属類が気化し外部に排出される<ref>{{Cite journal|和書|author=古崎睦 |title=ホタテ貝中腸腺の焼却処理における含有重金属の物質収支 |date=1999-09-05 |publisher=社団法人日本分析化学会 |journal=分析化学 |volume=48 |number=9 |naid=110002905768 |doi=10.2116/bunsekikagaku.48.829 |pages=829-834 |ref=harv}}</ref>為、近年では[[電気分解]]や化学処理によって重金属を回収する方法が開発されつつある<ref>{{Cite journal|和書|author=作田庸一 |author2=嶋影和宜 |title=湿式製錬プロセスによる水産系廃棄物(ホタテウロ)のリサイクル技術の開発 |date=2004-02-25 |publisher=社団法人 資源・素材学会 |journal=資源と素材 : 資源・素材学会誌 |volume=120 |number=2 |naid=10012099473 |doi=10.2473/shigentosozai.120.71 |pages=71-77 |ref=harv}}</ref>。