「モニック多項式」の版間の差分

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[[代数学]]における'''モニック多項式'''(モニックたこうしき、{{lang-en-short|''monic polynomial''}}; モノ多項式、'''単多項式'''<ref>{{google books |title=リフレッシュ数学―高校数学から大学数学へ―|author=大石, 彰| id=EyzX9W93DdcC | pg=PA131 |text=単多項式}} p. 131</ref>)は{{ill2|最高次係数|en|leading coefficient}}が {{math|1}} の[[一変数多項式]]を言う。変数 {{mvar|x}} に関する次数 {{mvar|n}} の多項式は、その一般形を <math display="block">c_nx^n+c_{n-1}x^{n-1}+\dotsb+c_2x^2+c_1x+c_0</math> の形に書くことができる。ただし {{math| ''c{{sub|n}}'' ≠ 0, ''c''{{sub|''n''&minus;1}}, …, ''c''{{sub|2}}, ''c''{{sub|1}}, ''c''{{sub|0}}}} はこの多項式の係数と呼ばれる定数で、特に係数 {{mvar|c{{sub|n}}}} は最高次係数と言う。したがって {{mvar|n}}-次多項式がモニックとは <math display="block">x^n+c_{n-1}x^{n-1}+\dotsb+c_2x^2+c_1x+c_0</math> の形に書けることである。
 
モニック多項式に付随する[[多項式方程式]]の性質は、係数環 {{mvar|A}} に極めて依存する。
* {{mvar|A}} が[[可換体|体]]ならば、任意の非零多項式 {{mvar|p}} はちょうど一つの[[同伴元|同伴]]モニック多項式 {{mvar|q}} を持つ(明らかに {{mvar|q}} は {{mvar|p}} を主係数で割ったものである)。したがって、このとき任意の非自明な多項式方程式 {{math|1=''p''(''x'') = 0}} はそれと同値なモニック方程式 {{math|1=''q''(''x'') = 0}} に置き換えることができる。例えば、実二次方程式の一般形 {{math|1=''ax''{{exp|2}} + ''bx'' + c = 0 (''a'' ≠ 0)}} は <math display="block">x^2+px+q = 0\quad (p := b/a, q := c/a)</math> とすることができる。これにより、二次方程式の一般解を <math display="inline">x = \frac{1}{2}( -p \pm \sqrt{p^2 - 4q})</math> とやや簡素な形に書くことができる。
* 他方、係数環が体でない場合には大きな違いが生じる。[[整域]]上のモニック方程式(整方程式)は[[代数的整数論]]において重要である。
 
== 定義 ==
[[不定元]](変数)を一つしか持たない[[多項式]]({{ill2|一変数多項式|label=一元多項式|en|univariate polynomial}})の場合、高次から低次へ(「降冪」("descending powers"))の順か、低次から高次へ(「昇冪」("ascending powers"))の順に項を書き並べるのが普通である。したがって、不定元 {{mvar|x}} に関する次数 {{mvar|n}} の一元多項式は、その一般形を <math display="block">c_nx^n+c_{n-1}x^{n-1}+\dotsb+c_2x^2+c_1x+c_0</math> の形に書くことができる。ただし {{math| ''c{{sub|n}}'' ≠ 0, ''c''{{sub|''n''&minus;1}}, …, ''c''{{sub|2}}, ''c''{{sub|1}}, ''c''{{sub|0}}}} はこの多項式の係数と呼ばれる定数である。ここに、項 {{math|''c{{sub|n}}''&sdot;''x{{exp|n}}''}} は最高次項または'''主項''' (''leading term'') と呼び、その係数 {{mvar|c{{sub|n}}}} は最高次係数または'''主係数''' (''leading coefficient'') と言う。
; 定義: {{nowrap|主係数 {{math|1}}}} の一変数多項式は'''モニック''' (''monic''; 単型) であると言う。
すなわち多項式がモニックならば <math display="block">x^n+c_{n-1}x^{n-1}+\dotsb+c_2x^2+c_1x+c_0\quad (\exists n\in\mathbb{N};\;x:\text{ variable, }c_i:\text{ constants})</math> の形に書ける。
 
== 性質 ==
=== 積閉性 ===
適当な[[単位的環]] {{mvar|A}} および変数 {{mvar|x}} を所与として、モニック多項式全体の成す集合は多項式の乗法に関して閉じている(これは、二つの多項式の積の主項が各多項式の主項の積に等しいことから明らか)。したがって、モニック多項式の全体は、[[多項式環]] {{math|''A''{{bracket|''x''}}}} の乗法[[半群|部分半群]]を成す。特に、{{math|''A''{{bracket|''x''}}}} の[[乗法単位元]]である{{nowrap|[[定数多項式]] {{math|1}}}} はモニックであるから、この半群は[[モノイド]]を成す。
 
=== 半順序 ===
多項式の{{ill2|整除性|en|divisibility (ring theory)|label=整除関係}}をモニック多項式全体の成す集合に制限したものは、この集合上の[[半順序関係]]となる。実際、二つのモニック多項式 {{mvar|p, q}} に対し、{{math|''p''(''x'')}} が {{math|''q''(''x'')}} を整除し、かつ {{math|''q''(''x'')}} が {{math|''p''(''x'')}} を整除するならば、{{mvar|p, q}} は互いに一致しなければならない。このことは、モニックでない一般の多項式に対しては必ずしも成り立たない(例えば、係数環が {{math|1}} 以外の[[単元]]を持つときは成り立たない)から、モニックに制限しない場合の整除関係は半順序とは限らない。
 
== 整性 ==
[[整数]]係数モニック方程式は整数解以外の[[有理数]]解を持たない。つまり、モニックでない方程式 {{math|1=2''x''{{exp|2}} + 3''x'' + 1 = 0}} は整数でない有理数解を持ち得る(これはたまたま有理数解、なかんずく {{math|&minus;1/2}} を根に持つ)が、{{math|1=''x''{{exp|2}} + 5''x'' + 6 = 0}} や {{math|1=''x''{{exp|2}} + 7''x'' + 8 = 0}} は整数解かさもなくば[[無理数]]{{efn|ここでは有理数でない複素数の意味で言う}}解しか持ち得ないということである。整数係数モニック多項式の根は[[代数的整数]]と呼ばれる。
 
[[代数的整数論]]において、[[整域]]上のモニック多項式方程式の解は[[整拡大]]および[[整閉整域]]の理論を考えるうえで重要である。一般に、{{mvar|A}} は整域で、別の整域 {{mvar|B}} の部分環と仮定するとき、部分集合 {{mvar|''C'' ⊂ ''B''}} を {{mvar|A}} 上のモニック方程式を満足する {{mvar|B}} の元全体の成す集合 <math display="block">
C := \{b \in B \mid p(b) = 0\quad (\exists p\in A[x],\; p\colon\text{ monic})\}
</math> とすれば、{{mvar|C}} は {{mvar|A}} を含む(実際、任意の {{math|''a'' ∈ ''A''}} はモニック方程式 {{math|1=''x'' − ''a'' = 0}} を満足する)。さらに言えば、{{mvar|C}} が加法および乗法について閉じていることが示せるから、{{mvar|C}} は {{mvar|B}} の部分環である。この環 {{mvar|C}} を {{mvar|A}} の {{mvar|B}} における'''整閉包'''と呼ぶ({{mvar|B}} が {{mvar|A}} の[[商体]]であるときは、単に {{mvar|A}} の整閉包と呼ぶ)。また {{mvar|C}} の元は {{mvar|A}} 上[[整元|整]]であると言う。
 
{{mvar|A}} が[[有理整数環]] {{mathbf|Z}} で {{mvar|B}} が[[複素数]]体 {{mathbf|C}} であるとき、{{mvar|C}} は'''代数的整数環'''{{efn|[[代数体]]の[[整数環]]と混同してはならない}}と呼ばれる。
 
== 多変数の場合 ==
通常は、多変数多項式に対して「最高次の項」は一意ではないから「モニック」の概念も意味を為さない。ただし多変数多項式を、係数が「主変数以外の変数に関する多項式」となっているような、変数が主変数のみの「一変数多項式」と見なすことはできる。これには、どの変数を主変数と見なすかによって選択肢は複数ある。例えば実多項式 <math display="inline">p(x,y) := 2xy^2+x^2-y^2+3x+5y-8 </math> を考えるとき、これを {{mvar|y}} に関する一変数多項式を係数とする {{mvar|x}} に関する一変数多項式 <math display="block">p(x,y) = 1\cdot x^2 + (2y^2+3) \cdot x + (-y^2+5y-8) \in \mathbb{R}[y][x]</math> と見ればモニックである。しかし、<math display="block">p(x,y) = (2x-1)\cdot y^2+5\cdot y+(x^2+3x-8)\in \mathbb{R}[x][y]</math> と見れば、最高次係数({{math|''y''{{exp|2}}}} の係数){{math|2''x'' &minus; 1}} は {{math|1}} でないから {{mvar|y}} に関してモニックではない。
 
別な規約を設けることもできて、それは特に[[グレブナ基底]]の文脈では有効である。すなわち、多項式がモニックであるとは、「多変数多項式の意味での」'''主係数'''が {{math|1}} に等しいこととする。より精確に、{{mvar|n}}-変数の非零多項式 {{math|1=''p'' = ''p''(''x''{{sub|1}}, …, ''x{{sub|n}}'')}} を考えるとき、同じ変数に関する「モニック」単項式{{efn|{{nowrap|係数 {{math|1}}}} の単項式、すなわち変数の冪積}}全体の成す集合上の[[単項式順序]]&mdash;{{math|''x''{{ind|1}}, …, ''x{{sub|n}}''}} の生成する自由可換モノイド上の全順序で、単位元を最小元に持ち、多項式の乗法と両立するもの&mdash;が与えられているものとする。このとき多項式 {{mvar|p}} の'''主項'''とは {{mvar|p}} の係数が消えていない(与えられた単項式順序に関して)最大の項を言い、その係数が {{math|1}} であるとき {{mvar|p}} は'''モニック'''であると言う。
 
「多変数モニック多項式」を適当な定義のもと考える場合は、通常の(一変数の)モニック多項式の持つ性質と共通していることが望ましい。特に上に挙げた二つの定義では、モニック多項式の積がふたたびモニックになる。
 
== 注 ==
=== 注釈 ===
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=== 出典 ===
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== 参考文献 ==
* {{cite book |last=Pinter |first=Charles C. |title=A Book of Abstract Algebra |year=2010 |origyear=Unabridged republication of the 1990 second edition of the work originally published in 1982 by the McGraw–Hill Publishing Company |publisher=Dover |isbn=978-0486474175}}
 
== 外部リンク ==
* {{MathWorld|urlname=MonicPolynomial|title=Monic Polynomial}}
* {{nlab|urlname=monic+polynomial|title=monic polynomial}}
* {{PlanetMath|urlname=monic1|title=monic}}
* {{ProofWiki|urlname=Definition:Monic_Polynomial|title=Definition:Monic Polynomial}}
* {{ProofWiki|urlname=Content_of_Monic_Polynomial|title=Content of Monic Polynomial}}
 
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{{DEFAULTSORT:もにつくたこうしき}}
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[[Category:数学に関する記事]]
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