「多項式」の版間の差分

 
本項では主として一元多項式を扱い、多元の場合にも多少触れるが、詳細は[[多元多項式]]の項へ譲る。
 
== 注意 ==
; 変数と不定元
: 多項式に現れる {{mvar|x}} は一般的に「変数」あるいは「不定元」と呼ばれるが、[[数式]](記号表現)としての多項式そのものを対象とするときには {{mvar|x}} は一つの定まった記号であってそれ自身は値を持たない(あるいは「不定元である」という値をもつ){{efn|つまり、不定元に定義域は無いし、不定元に値を代入するということもない。また例えば、二つの不定元 {{mvar|x, y}} は如何なる函数従属関係 {{math|1=''F''(''x'', ''y'') = 0}} も満足することはない}}。そういった場合には、変数ではなく「不定元」と呼ぶのがより正確である{{citation needed|date=January 2016}}。一方、多項式の定める函数を考えているときには、{{mvar|x}} は函数の[[引数]]となるべき[[定義域|何らかの集合]]の元を代表するものとして生じるのであって、それは「変数」と呼ばれるべきである。ただし、多くの文献においてこれら二つの語は暗黙的に同義に扱われ、互いに入れ替えて用いても大抵は差し支えない。よく用いられる規約として、不定元であることを強調する意味では大文字(例えば {{mvar|X}})を用い、対応する小文字(いまは {{mvar|x}} は付随する多項式函数の変数として用いるというものがある{{citation needed|date=January 2016}}。
 
多少紛らわしい表記上の慣習として、不定元 {{mvar|x}} に関する多項式を単文字で表すのに、例えば {{mvar|P}} や {{math|''P''(''x'')}} のように {{mvar|x}} を書いたり書かなかったりする<ref>{{cite book|和書|title=リフレッシュ数学 ―高校数学から大学数学へ―|last=大石|first=彰|publisher=オーム社|year= 2012|isbn=9784274211652|ref=harv}} {{google books quote|id=EyzX9W93DdcC|pg=PA131|text=多項式|p. 131}}</ref>。普通は、{{mvar|P}} はその多項式の名前を指し示しているもので、{{math|''P''(''x'')}} はその不定元を明示する目的で付けてあるだけと考えられる{{efn|これはいわゆる函数記法全般でよく用いられる慣習である}}。ただし慣習的な規約として、例えば {{mvar|a}} を数(や変数や別の多項式やより一般の任意の式)であるとき {{mvar|P}} において {{mvar|x}} に {{mvar|a}} を代用(単なる記号の書き換えあるいは、値の代入)した結果を {{math|''P''(''a'')}} と書くものとすれば、「多項式 {{mvar|P}} によって函数 {{math|''a'' {{mapsto}} ''P''(''a'')}} が定まる」と考えることができる(これは多項式 {{mvar|P}} に付随する多項式函数と呼ばれる)。このような多項式函数を扱うとき、{{mvar|a}} は何らかの数であることが多いが、任意の[[環 (数学)|環]]など加法と乗法の定義された任意の定義域上で考えることが可能である。特に {{mvar|a}} が不定元 {{mvar|x}} であるときのこの多項式函数による {{mvar|x}} の像 {{math|''P''(''x'')}} は多項式 {{mvar|P}} そのものに他ならない。そのような意味で {{math|1=''P''(''x'') = ''P''}} は等価な別表記と理解することができる。つまりは「{{mvar|P}} を不定元 {{mvar|x}} に関する多項式とする」というような文の簡略形として意味を損なわずに「{{math|''P''(''x'')}} を多項式とする」と書くことが許されるということである。もちろん、文脈上明らかで不定元を明示・強調する必要が特にないという状況下では、式が簡素になり読みやすくなることも少なくないので各多項式の不定元を書かないことも多い。
 
== 一変数多項式 ==
[[不定元]] {{mvar|X}} に関する(一変数の)'''多項式'''は、{{mvar|n}} を適当な非負整数として、<math display="block">a_n X^n + a_{n-1} X^{n-1} + \dotsb + a_1 X + a_0</math> の形に表すことができる。{{math|''a''{{ind|0}} &ne; 0, ''a''{{ind|1}}, …, ''a''{{ind|''n''}}}} はこの多項式の'''[[係数]]'''と呼ばれる[[定数]]('''[[スカラー (数学)|スカラー]]''')で、例えば[[実数]]や[[有理数]]などであることが多い。各 {{mvar|a{{ind|i}}&sdot;x{{exp|i}}}} をこの多項式に属する'''項'''あるいは単項式と呼び、冪指数 {{mvar|i}} をその'''[[単項式の次数|項の次数]]'''と呼ぶ。したがって、{{mvar|a{{sub|i}}X{{exp|i}}}} を {{mvar|i}}-次の項、{{mvar|a{{sub|i}}}} を {{mvar|i}}-次の係数という{{sfn|大石|2012|p=131}}。多項式 {{math|1= ''f'' = ''f''(''X'')}} の'''[[多項式の次数|次数]] {{math|deg ''f''}}''' とは、その非零係数項の最大次数(いま最大値場合 {{mvar|n}})を言う。特に {{math|deg(''f'')}}-次の項 {{mvar|a{{sub|n}}X{{exp|n}}}} の多項式の'''最高次項'''、その係数を'''最高次係数'''あるいは'''頭項係数''' ({{en|''leading coefficient''}}) と呼ぶ{{nowrapsfn|最高次係数 大石|2012|p=131}}。{{math|1=''a{{sub|n}}'' = 1}} のとき、多項式は、'''単多項式'''('''[[モニック多項式|モニック]]'''({{nowrap|最高次係数 {{math|1}}}})である、または'''単多項式'''と言う{{sfn|大石|2012|p=131}}。また、{{math|0}} 次の項を'''{{ill2|定数項|en|constant term}}'''と呼ぶ。任意のスカラーを[[定数多項式|定数項しかない多項式]]と見なすことができる。非零定数多項式の次数は定義により {{math|0}} であるが、[[零多項式|定数 {{math|0}} を多項式と見なす]]とき、その次数は定義されないか、または便宜的に {{math|&minus;∞}} と定義されることが多い。
* 多項式の項の間の加法は可換であるから、項の排列順は必ずしも一意でない。大抵の場合、上に挙げたような左から右へ行を追うごとに次数が常に減少する「降冪の順」か常に増大する「昇冪の順」で排列するのが便利である。
* {{mvar|n}}-次多項式 {{mvar|f}} は {{math|1=''f''(''X'') = ''a{{sub|n}}X{{exp|n}}'' + ⋯ + ''a''{{sub|0}} (''a{{sub|n}}'' ≠ 0)}} と書ける。さらに、{{math|''a''{{sub|0}}}} から {{mvar|a{{sub|n}}}} の全ての係数が非零であるとき、完備であるという。完備な {{mvar|n}}-次多項式は {{math|''n'' + 1}} 個の項を持つ。{{sfn|長澤|1907|p= {{google books quote|id=0K5IgjUt7DcC|pg=PA17|17}}}}
 
多項式は[[総和]]を表す記号 {{sum}} を使って <math display="inline">\sum_{k=0}^n a_k X^k</math> とも記される{{sfn|大石|2012|p=131}}。ここで {{math|1=''k'' = 0}} のときの [[空積|{{math|''X''{{exp|0}}}}]] とは[[定数多項式]] {{math|1}} の別表記である{{efn|見かけ上 {{mvar|X}} があっても、実際には定数多項式は {{mvar|X}} を含まないので、多項式函数を考える場合でも「{{math|1=''x'' = 0}} を {{math|''x''{{exp|0}}}} に代入すると [[0^0|{{math|0{{exp|0}}}}]] を生じる」というようなことは実際には起きない。}}。
 
係数の属する集合が {{mvar|K}} であるような {{mvar|X}} を不定元とする多項式の全体を {{math|''K''[''X'']}} で表す{{sfn|大石|2012|p=131}}。たとえば実数係数の多項式の全体は {{math|'''R'''[''X'']}}、複素数係数の多項式の全体は {{math|'''C'''[''X'']}} などと表す。係数の集合 {{mvar|K}} は四則演算の定義されるような[[代数系]]であるのが通常で、多くはとくに[[可換体|体]]と呼ばれる四則演算が自由に行えるものを想定することになる。もうすこし一般の(必ずしも可換でない、単位元を持つとは限らない)[[環 (数学)|環]] {{mvar|R}} についても、それを係数にもつ多項式が定義される。
{{seealso|[[多項式環|形式多項式]]}}
 
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