「中学受験」の版間の差分

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}}</ref>。
:学習塾へ通う場合には小学校の授業に引き続いて授業が行われ、膨大な学習量をこなさなければならず、朝食・夕食の時間の確保すらままならないこともある。夏季休暇などの長期休暇中は連日朝から晩まで学習塾で学習漬けという者も多い。また、模試やテストが実施され、児童や保護者の心身に大きな負担となる(詳しくは[[#試験対策|試験対策]]で後述)。
:受験において必要なものは[[国語 (教科)|国語]]、[[算数]]、[[社会科|社会]]、[[理科]]の学力がほとんどである。そのため、児童に他に得意なことや良いところ、芸術面や趣味での秀でた才能などがあっても、それらは受験に不要だとして認められず、模試の成績が下がった際には人格や存在価値まで否定されるといった悲劇が生じることがある。ただし、それは中学受験に限ったことではなく、高校受験や大学受験などにもしばしば見られる現象であり、日本の学力重視・個性軽視の受験システムの根本的問題であるとされる。{{要出典|date=2017年7月}}
:また、学習塾での学習では、本来は受験を目指しての実践練習である模試やテストでも好成績を得ることが要求されるわけで、膨大な量の学習と繰り返される模試に追随するのに必死で、学習の目的を理解する時間も与えられず、結局は模試での好成績が勉強の目的になってしまう。スポーツなどで言われる「練習のための練習」と同様の悪循環に陥り、本番の入学試験では全く力を出せずに終わる児童も往々に見られる。{{要出典|date=2017年7月}}
:受験で行われる面接について保護者同伴という学校も見られ、この場合には保護者も受験対策に追われた挙句に子供と諸共に疲弊してしまうこともある。{{要出典|date=2017年7月}}
;中学受験の出題内容
:中学受験では、学校によっては非常に高度な内容が出題される。そうした問題は中等教育以降の内容を含むことが多い。<ref>例を挙げると、受験用テキストの多くに載っている「算数」における素因数分解・N進法・相似比と面積比の関係、「社会」の日本全国の主な地形の名称・国際政治・経済、「国語」の用言の活用や助動詞など。これらは一般的に中等教育で習う。また、2001年度以前に小学校で学習していた内容(「算数」の台形の面積の求め方や「社会」の縄文時代など)を2002年以降も入試問題として出題する私立中学校は多い。</ref>たとえ小学校の学習範囲を逸脱していない問題であっても、内容が幾重にもひねってあり、高度な発想力・論理的思考力・読解力・記述力が試される。難関中学校の入学試験では、「小学生がこの問題を解くのか」と大人が驚くような難問が、当然のように出題される。特に[[算数]]ではその傾向が顕著である。{{要出典|date=2017年7月}}
:[[数学 (教科)|数学]](特に代数分野)では、[[方程式]]さえ立てられれば、後はそれを解いて行くだけで答えが得られるが、算数は方程式を扱わずに問題を解くことを前提としているため、方程式を回避した特殊な解法(面積図や線分図を利用した解法など)を用いる。しかし、方程式が登場する中等教育以降ではそうした解法を使わない。また、方程式で解いた方が易しい問題も少なくない。そのため、「'''中学入学後には方程式を主に扱うのに、そのような出題の仕方に意味があるのか'''」という指摘がある。{{要出典|date=2017年7月}}
;受験の意味
:中学受験は「親の受験」といわれるほど親の重要度と存在感が大きい。{{要出典|date=2017年7月}}
:中学受験のハウツー本などでも、「子供が良い成績を収めたら褒めないと子供はやる気を失う」などと書かれている場合が多い。すなわち、「子供が好成績を収める→親が褒める→子供がやる気を出す」という循環構造が出来上がってしまっており、「自分のため」ではなく「親のため」に勉強をする、つまり受験本来の「自分の将来の為」という目的が失われているとの指摘も多い。{{要出典|date=2017年7月}}
:そもそも、受験年齢である12歳では、「自分の将来と今の勉強がどう繋がっているのか」を理解できる段階にない者がほとんどであり、そのような状態で受験をしても意味はないという指摘も多く、両者は併せて中学受験の問題点を語る際に挙げられる。{{要出典|date=2017年7月}}
;通学地域制限への対処
:受験したい学校が受験資格・通学条件に居住地域や公立小学校の学区の項を設け具体的に範囲指定している場合、その地域外に住んでいる児童にとっては住所という、自分が決めたものではない本人にとっては理不尽な理由で受験資格さえ得ることができない事が起きる。そのため、子供の受験資格の確保と受験に向けてより良い学習環境の確保を目指して、まず多額の費用を費やして一家を挙げて「文教地区」などと呼ばれる様な地域へと転居と転校を行う家族も往々に見られる。
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|publisher=[[大田区保育園・児童館父母の会連合会]]
|accessdate=2008-12-24
}}</ref>。入学時に必要な学校納入金や雑多な出費、授業料、さらに形式上は任意ではあるが寄付金を求められることもある。{{要出典|date=2017年7月}}
:同様に、[[修学旅行]]においても公立中学校よりも遠方に行くケースは少なくなく、さらには修学旅行以外にも[[語学]][[研修]]などの名目で日本国外まで赴くことも見られ、これらのための積立金の負担も公立中学校より遥かに大きなものになる場合がある。{{要出典|date=2017年7月}}
;通学への負担
:幸い入学がかなったとして、学校が自宅から遠距離である場合、通学に[[鉄道]]や[[バス (交通機関)|バス]]などを使用し、生活時間の多くを移動に費やす。あるいは学寮に寄宿したり、アパート等を借りたりして、自宅から離れて生活することも考えられる。これらの子どもへの精神的負担や、保護者の金銭的負担も大きい<ref name="nezasu"/>。それに加えて、大規模[[地震]]などの大きな自然災害の際、通学手段として使用している鉄道などの[[交通機関]]の運行ができなくなることによって、生徒の帰宅が困難になるというケースが生じるということも、2011年の[[東日本大震災]]発生以後は問題視されている。{{要出典|date=2017年7月}}
;相性
:私立学校はそれぞれに建学の精神や独自色の濃い校是があり、公立中高一貫校も独自の教育方針を打ち立てるなど個性が強い。そのため、受験に際しては偏差値と同様に学校の特色を事前に十分に調べておき、児童にあった学校を選ぶことが望まれるが、それでも入学後に校風に馴染めずに苦しむケースがある。{{要出典|date=2017年7月}}
;入学後の内部競争
:上述した通り、多くの[[私立大学]]の付属校では、在学中に一定の成績を収めていれば高校3年次に無試験や特別枠での推薦試験で大学に進学できるシステムが整備されており、これは私立校に進学する大きなメリットになっている。しかし、付属校から特に大学への無試験での内部進学の有無やその枠の大小は学校毎に異なり、無試験入学枠や特別推薦枠があっても適用が成績最上位に限定され、実際には大半が[[大学入試センター試験]]を受験しなければならなくなる学校や、推薦枠や学部の割り当てのための内部選抜試験を何度も繰り返す学校も少なくなく、内部進学制度の内実はその学校毎に異なっている。{{要出典|date=2017年7月}}
:その為、実際には私立中学入学時点から大学進学を目的とした勉強が必要になることは珍しくなく、むしろ、ごく一握りの内部推薦枠を求めてかえって熾烈な内部競争に約6年弱にわたって晒されることも少なくない。{{要出典|date=2017年7月}}
;中学入学後に落ちこぼれる危険性
:入学後の学習成績が伸び悩むことがある。授業内容が高度であり理解できなくなったため、授業のペースが速すぎて追随しきれない、あるいは高校受験(又は大学受験も)が無いなどの理由で中だるみ状態になるためなどが原因として考えられる。
:私立は公立と違って、学習指導要領の上限が適用されないことや、高校と直結していることから、高校の内容を中学入学直後から教えるなどしている学校も多く、一部の特に秀でた生徒以外にとっては授業についていくのが困難な学校、言い換えれば優れた大学進学実績を目指して入学後にさらなる選抜を行うことを前提としている学校も見受けられる。{{要出典|date=2017年7月}}
;生徒数
:私立中学はより多くの生徒を受け入れる傾向にあり、中には1クラスの生徒数が40人以上になることもある。過密化は集団の活力向上に寄与するが、大人数の集団に慣れない生徒にはストレスの増大にもつながるおそれがある。また、逆に生徒の集まらない私立中学も存在し、1学年が20人未満といった場合もあり得る。[[少人数教育]]を体現する一方で、少ない人数ではクラス替えが行えないため、いじめが起きた際にクラスを替えることができなかったり、人間関係の固定化などといったデメリットが生じる。{{要出典|date=2017年7月}}
;不合格による精神的ダメージの深刻さ
:後述するが、中学受験では[[中学浪人|浪人]]することが事実上想定されていない。その為、親子の合格に対する期待とその裏返しの[[プレッシャー]]は甚大なものとなり、受験の失敗は許されず、また想定されない。{{要出典|date=2017年7月}}
:対策として複数校を[[併願受験]]するという手段はあるが、それでも高校受験よりも遥かに競争倍率の高い学校も多く、受験した全ての学校で不合格に終わる最悪の結果は有り得る。この場合、地元の公立中学校に進学することになるが、難関校や上位校を受験し不合格となった者が負わされる、それまでの努力と苦労が「合格」という形で認められなかったことで児童が負う精神的なダメージは深刻なものがある(詳しくは「公立中学へのしわ寄せ」で後述)。
:同時に、「中学受験に失敗して仕方なく公立中学に入学した」ことを知っている小学校時代の同級生や保護者の視線、さらには地域の視線もどうしても意識せざるを得なくなり、親子が精神的な負い目を抱え続けることになる。この場合、究極的には転居と転校でしか問題を解決できない場合もある。{{要出典|date=2017年7月}}
:また、本来ならば不合格でショックを受けている子供のケアは、本来ならば親が最も大きな役目を負うべきものであるが、親も精神・経済両面での負担が大きいだけに、受験失敗という結果について親が子供を過剰に責め、結果としてその後の親子関係や家族の雰囲気が悪化するリスクもある。{{要出典|date=2017年7月}}
:一方で、公立校進学という「保険」が存在することにより、高校受験浪人が社会的に認められていない中での高校受験時のプレッシャーよりはまだ小さいとする考え方も存在するが、当の本人は受験失敗のショックから立ち直ることができないまま中学生活を漠然と送り、場合によっては受験というそれ自体に対して恐怖心を抱いたまま高校受験に望まなければならなくなることもある。{{要出典|date=2017年7月}}
;公立中学へのしわ寄せ
:中学受験に失敗した児童は公立中学へ進学することになるが、受験に失敗という結果となり[[心的外傷]]にも通じる精神的なダメージを負った児童を受け入れる公立中学は対応に苦慮している。2007年[[7月10日]]付の『東京新聞』の特集「過熱する中学受験<上>」によると、生徒の8割が学区外からの入学という東京都心の公立中学校で、1年生を担任した教員は「'''受験失敗の後遺症ケアで疲れ果てた'''」と証言している<ref name="tokyo"/>。
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:「砂漠に水をかけるような無力感。向かってきた方がまだやり方はある。五感を磨くべき小学生時代に受験勉強一辺倒で、ママがいないと動けない。受験が終わった時点で[[燃え尽き症候群|燃え尽き]]ている」とこの教員は証言している<ref name="tokyo"/>。
:また、公立中高一貫校の[[秋田県立大館国際情報学院|大館国際情報学院]]が設立された[[秋田県]][[大館市]]では、同校の近隣地域の各小学校から成績上位者十数人がそれぞれ抜けるという事態が起こり、廃校すれすれ、クラス減すれすれの地域の中学校にとっては存続に関わる問題だという指摘もある<ref name="nezasu"/>。
:地元の公立中学校が[[校内暴力]]・[[授業崩壊]]などで荒廃著しい教育困難校と化しているという風評が立っている地域では、中高一貫校や私立中学への進学が地元の公立中学校を忌避するための手段として利用され、成績上位層や富裕層のみならず、学力中堅層や中流層の保護者ですら私学指向が高まり、それらの子供までが中等教育学校や私立中学校に抜けてしまうため、学力の低下、校内治安の悪化をさらに進行させるなどして荒廃が進行し、もはや地元の公立中学校が教育機関としての機能すら果たせないような状況に陥っているようなケースがある。{{要出典|date=2017年7月}}
:かつて、関西圏や首都圏の[[地元集中]]受験運動やそれに類する受験競争の排除を目指した教職員組合の運動が盛んであった地域では、自身が希望しない進学実績の乏しい地元の公立普通科高校に行かされる事を回避する為に中学受験を行うことで学力中堅層までもが少なからず抜けてしまい、公立中学校では学力低下・治安の悪化などといった空洞化が進行してしまうなどの問題を抱えていた。また、現在でもこの様な地域では[[地元集中]]方式での強引な受験指導の結果として不本意な高校生活を強いられた世代が現在では児童の親という事も多く、地元集中受験運動の旗振り役であった[[日本教職員組合|日教組]]や公立中学校・公立高校それ自体に対する根強い不信感の裏返しとしての私立学校への期待感が見られる。そのため、自身の様な思いはさせたくないという理由から、経済的負担の大きさは覚悟の上で、子供よりも親が私立中学の受験を希望し子供に受験勉強をさせるという光景はよく見られる。{{要出典|date=2017年7月}}
:いずれにしても、親世代が身を持って感じた公立教育に対する不信感の払拭は、裏を返せば(特に教職員組合にとっては)過去に自分たちが積み上げた受験運動の“実績”を否定することであり、学校上層部側にも中々対処がままならないという一面がある。{{要出典|date=2017年7月}}
;年齢制限
:多くの中学校が12歳限定または小学校卒業直後という間接的な年齢制限を課しているため、高校や大学のような再受験は事実上不可能である。再受験可能な学校はあるが、少数派であるため、転居をしなければ通学が到底不可能な場所であったりする。{{要出典|date=2017年7月}}
 
かつては受験競争の低年齢化、またそれによって子供たちが受けるストレスが社会的に問題になり、ジャーナリズムにおいても批判的な記事が多く発表されたが、近年は中学受験自体が普遍化してしまったためか、批判的な報道は目立たなくなってきている。しかし、そのことは決して問題が改善されたことを意味するのではなく、むしろ逆により多くの子供たちと家庭にとって避けられない現実になってしまい、客観的に考えて批判することが難しくなっていることを示している。{{要出典|date=2017年7月}}
 
===情報公開と選別===