「デイヴィッド・ライマー」の版間の差分

削除された内容 追加された内容
→‎生涯: リンク修正。括弧の解消。
Zzb (会話 | 投稿記録)
8行目:
== 生涯 ==
=== 誕生 ===
デイヴィッド・ライマーは、[[1965年]][[8月22日]]に[[カナダ]]の[[マニトバ州]][[ウィニペグ]]で、父ロン・ライマーと母ジャネット・ライマーの[[一卵性双生児]]の兄として生まれた。彼(デイヴィッド)はブルース、そして弟はブライアンと名づけられた。生まれて6ヶ月経った時、ブルースとブライアンは小便する時に痛みを訴えるようになり、病院で彼らは[[包茎]]と診断された。彼らは、8ヶ月の時に、[[割礼]]のためにセント・ボニフェイス病院に紹介された。[[1966年]][[4月27日]]、[[外科医]]ジャン=マリー・ヒュートと麻酔専門医マックス・チャムが担当する手術は普通の[[メス (刃物)|メス]]ではなく[[電気焼灼手術|電気焼灼器]]によって行われたが、電気焼灼器は手足と生殖器に対して用いられる手術器具ではなかった。電気焼灼器を使用した[[医療過誤|医療ミス]]により、ブルースの陰茎の大部分は焼かれてしまった。この事故より、この後に行われる予定だったブライアンの割礼は中止された。そして、ブライアンはそれ以上の治療なしで、包茎症状は回復してしまった。つまり、ブルースの割礼手術は不必要な手術だった。
 
=== ブレンダとしての人生 ===
15行目:
マネーたちは、ブルースの両親に「ブルースを女性として育てることがブルースの将来のためになる」と説得した。そして、ブルースは1歳10ヶ月の時に陰茎や睾丸を去勢された。ブルースは女性としての名前'''ブレンダ'''を与えられた。その後数年間、マネーたちによってブレンダは「自己を女性と認識する」ようにさせる心理的な治療を受けることになった。マネーはブレンダの親に対しても、家庭内のブレンダとブルースに対する教育方針などを指導していた。
 
マネーにとって、ブレンダは格好の実験材料だった。なぜならその当時、マネーは「[[性別]]を自己認識する要因は先天性(遺伝子)ではなく、後天性(環境)である」という説の強力な支持者だった。ブレンダとブライアンは[[デオキシリボ核酸|DNA]]も全く同じ双子で、同じ時期に母親の胎内で同じ成分の[[ホルモン]]を与えられた。そのため、性別の自己認識ができていない時期(マネーの説によれば、3歳まで)であれば、一方は男(ブライアン)、一方は女(ブレンダ)として育て上げることができるとした。これはマネーの人体実験にとって最高の比較材料ともいえる。もしも、ブレンダが自分のことを女性として人生を送るようになれば、「性別を自己認識する要因は天性(遺伝子環境ではなく、後天性である」というマネーの説が正しいと証明されるからである。
 
また、マネーは診療を受けに来る子供・親たちに対して、子供に性的自己認識を起こさせるために早期の擬似性体験を奨励していた。性に関する言葉や裸体の男女の写真などを子供たちに示し、自らも実践を行なっていた。
23行目:
家族の生活は苦難に満ちていた。母親はマネーの指導に従い努力していたが、ことは好転しない。家族は一度は町を出る決心をして引っ越した。しかし、転居しても精神的に追い詰められていくばかりで、母親は自殺未遂し、両親は離婚する寸前まで至った。そして一家はまたウィニペグへ戻った。
 
マネーは、成長期にあったブレンダとその家族に、[[膣]]を造成する手術を受け、女性としての外観を完成させるように迫っていた。しかしブレンダ自身が、ジョンズ・ホプキンス大学病院を訪れることやマネーに会うことに対して猛烈に抵抗し、自殺をほのめかすほどであったため、家族は通院をやめた。そして地元でカウンセリングを受けた。
 
[[1978年]]、[[英国放送協会|BBC]]が、マネーが世界に発表している双子に関するドキュメンタリーの製作を始める。[[1980年]][[3月19日]]、英国で ''"The First Question (Is it a boy or girl?)"'' が放送される。顔・身分等を伏せてライマー夫婦も出演した。性科学者[[ミルトン・ダイアモンド]]がコメンテーターとして選ばれるが、内容はダイアモンドとマネーの立場・バランス・問題の複雑さを配慮したものとなり、ブレンダ以外のケース、成功とされる例も1件紹介された(後に[[ジョン・コラピント]]にインタビューを受け、その著書の中に登場する)。放送後の世間の反応は、米国も含め予想外に静かなものであった。