「酸と塩基」の版間の差分

編集の要約なし
}}
{{酸と塩基}}
'''[[酸]]'''と'''[[塩基]]'''(さんとえんき)は、最も基本的な[[物質溶液]]の分類の1つ。これを研究する分野を'''酸塩基化学'''という。酸と塩基的性質定義は時代と共に拡張されており、現代一つは3つの定義が一般的に用いられている。
 
== 概要 ==
酸と塩基を混合すると'''酸塩基反応'''が進行する。最も基本的な酸塩基反応は'''中和反応'''で、双方の性質を打ち消しあうとともに[[水]]と「'''塩'''」(えん)が生成する。酸塩基反応の際に授受できる[[水素イオン]]の数をその酸・塩基の'''価数'''と呼ぶ。
酸と塩基の定義は化学の進展により何度か拡張されているが、今日の[[義務教育]]で習う初歩的な定義('''アレニウスの定義''')は[[水溶液]]に関するものであるので、まずは水溶液をベースに酸と塩基を解説する。
 
[[水]]に物質([[溶液|溶質]])を溶かした上で、[[リトマス試験紙|'''リトマス試験紙''']]を水溶液につけてみると、溶かした[[溶液|溶質]]によってリトマス試験紙の色が赤になるものと青になるものがある事が知られている。前者のものを'''酸性'''の水溶液、後者のものを'''塩基性'''(もしくは'''アルカリ性''')の水溶液といい、酸性、塩基性の水溶液を作り出した溶質をそれぞれ'''酸'''、'''塩基'''という。
酸・塩基の強さを測る指標としては、[[規定度]]・[[水素イオン指数]](pH) ・[[酸解離定数]] ({{pKa}}) ・[[酸度関数]] (''H''<sub>0</sub>) などが使用される。ただし、酸・塩基の強度は物質と状態([[濃度]]や[[温度]]、[[溶媒]]など)によって変化し、また酸塩基反応においては反応に関わる物質の相対的な強度によってその物質が酸・塩基のどちらの役割を果たすかは異なる。例えば、水は場合によって酸としても塩基としても働く。
 
リトマス以外の[[化学物質]]に対しても、水溶液が酸性であるか塩基性であるかに応じて、その化学物質を水溶液に入れた時に起こる[[化学反応]]が大きく異なる事が知られており、例えば酸性の水溶液は鉄を溶かして[[水素]]を生じるが、塩基性の水溶液ではそのような反応は起こらない。したがって溶質が酸であるか塩基であるかを知ることは実用上非常に重要である。
また、酸と塩基には、「硬い」「軟らかい」という表現をされる定性的な性質がある。詳しくは[[HSAB則]]を参照。
 
酸の例としては[[塩酸]]、[[硫酸]]、[[硝酸]]、[[酢酸]]などが挙げられ、塩基の例としては[[酸化ナトリウム]]、[[水酸化カリウム]]、[[アンモニア]]などが挙げられる。
 
酸性と塩基性は真逆の性質であり、酸性の水溶液と塩基性の水溶液を適切な量だけ混ぜると、水溶液は酸性の性質も塩基性の性質も持たない状態('''中性''')になり、化学反応により何らかの物質('''塩(えん)'''という)ができる。この過程を[[中和 (化学)|'''中和''']]と呼ぶ。
 
水溶液がどの程度酸性ないし塩基性であるかは、[[水素イオン指数|'''水素イオン指数pH''']]という尺度で測る事ができる。pHは0から14までの値を取り、pHが7であるときは中性、7より小さい時水溶液は酸性、7よりも大きい時には塩基性である。なお、厳密な定義は省くが、酸性の度合いが非常に強い場合を[[強酸|'''強酸''']]、酸性の度合いが少ない水溶液を[[酸|'''弱酸''']]という。[[強塩基|'''強塩基''']]、[[塩基|'''弱塩基''']]も同様に定義する。
 
なお、酸・塩基の強さを測る指標はpH以外にも、[[規定度]]・[[酸解離定数]] ({{pKa}}) ・[[酸度関数]] (''H''<sub>0</sub>) などがある。また、酸と塩基には、「硬い」「軟らかい」という表現をされる定性的な性質がある。詳しくは[[HSAB則]]を参照。
 
「酸」という名称は、酸には必ず[[酸素]]が含まれるのではないかという[[アントワーヌ・ラヴォアジエ|ラヴォアジエ]]の説による[[#MF1|<sup>MF1</sup>]]{{Rp|page=144}}。しかし後に[[ハンフリー・デービー|デービー]]が、[[塩酸]]という水素と塩素しか含んでいない物質も酸になる事を示した為、この説は修正が必要になった[[#MF1|<sup>MF1</sup>]]{{Rp|page=144}}。そしてデービーの成果は、酸素よりむしろ水素が酸の定義に重要である事を示唆していた[[#MF1|<sup>MF1</sup>]]{{Rp|page=144}}。
 
=== アレニウスの定義 ===
こうした成果を踏まえ、[[スヴァンテ・アレニウス|アレニウス]]は、酸と塩基を以下のように定義した(以下、この定義による酸と塩基を'''アレニウスの酸と塩基'''と呼ぶ)[[#MF1|<sup>MF1</sup>]]{{Rp|page=144}}:
* 酸:水中で[[解離 (化学)|解離]]して[[水素イオン|水素イオン<ce>{H+}</ce>]]を生じる物質
* 塩基:水中で[[解離 (化学)|解離]]して[[水酸化物イオン]][[水素イオン|<ce>{OH-}</ce>]]を生じる物質
ここで'''水素イオン'''とは、水素原子[[水素イオン|<ce>{H}</ce>]]から[[電子]]を1つ取り除いた物質であり、'''水酸化物イオン'''とは酸素原子[[水素イオン|<ce>{O}</ce>]]と水素原子[[水素イオン|<ce>{H}</ce>]]が結合したものに電子を1つ付け加えた物質である<!-- この辺は主に素人向けの説明なので、厳密性は気にしていない。 -->。
 
アレニウスの定義は、[[水|水分子<ce>{H2O}</ce>]]が水素イオン[[水素イオン|<ce>{H+}</ce>]]と水酸化物イオン[[水素イオン|<ce>{OH-}</ce>]]とに分解できる事を考えると理解しやすい。この事実を鑑みると、なんら物質を溶かしていない[[純水|純粋な水]]の場合、そこに含まれる[[水素イオン|<ce>{H+}</ce>]]と[[水素イオン|<ce>{OH-}</ce>]]とは同じ量である。それに対し、酸性の水溶液では、酸が[[水素イオン|<ce>{H+}</ce>]]を生じるので[[水素イオン|<ce>{H+}</ce>]]の方が[[水素イオン|<ce>{OH-}</ce>]]よりも多く、逆に塩基性の水溶液では塩基が[[水素イオン|<ce>{OH-}</ce>]]を生じるので、[[水素イオン|<ce>{OH-}</ce>]]の方が[[水素イオン|<ce>{H+}</ce>]]よりも多い。
 
==== 欠点 ====
しかしアレニウスの定義は以下のような欠点を持つことが知られている:
* 水以外の溶液に対しては酸性と塩基性を定義できない[[#MF2|<sup>MF2</sup>]]{{Rp|page=320}}
* [[水素イオン|<ce>{OH}</ce>]]を含んでいないアンモニア[[水素イオン|<ce>{NH3}</ce>]]の水溶液が塩基性になる事を説明できない[[#MF2|<sup>MF2</sup>]]{{Rp|page=320}}
 
=== ブレンステッド・ローリーの定義 ===
{{節スタブ|date=2017年8月9日 (水) 18:59 (UTC)}}
: <ce>{OH+}</ce>
 
== 歴史と用語 ==
: <ce>{AH} + H2O -> {H3O^+} + A</ce>
: <ce>{HCl} + H2O -> {H3O^+} + Cl^-</ce>
ただし、便宜上、水和されたプロトンを <ce>H^+</ce>と書くことは一般に認められている。水和されたプロトンは <ce>H9O4^+</ce> であり <ce>H3O^+</ce> ではないという説がある[[#F67|<refsup>イオン平衡 訳者代表:藤永太一朗 発行所:化学同人F67</refsup>]]{{要ページ番号|date=2017年8月}}
 
[[塩 (化学)|塩]](えん)の意味はこのページの最初で説明したとおりであり、アレニウス酸塩基の混合によって水とともに生成されるが、狭義にはアレニウス酸とアレニウス塩基の当量混合物を指す。アレニウス酸・塩基の強度は[[リトマス紙]]に代表されるさまざまな[[指示薬]]や[[pHメーター]]などによって決定することができる。
 
=== ウサノビッチの定義 ===
[[1939年]]に[[ソビエト連邦]]のウサノビッチ ({{lang|ru|М. Усанович}}) が提出した定義では、酸は水素イオンおよびその他の[[陽イオン]]を放出するもの、あるいは[[陰イオン]]および電子と結合する能力のあるものはすべて含まれる[[#田中71|<ref name=tanakasup>田中元治 『基礎化学選書8 酸と塩基』 裳華房、1971年71</refsup>]]{{要ページ番号|date=2017年8月}}
 
この定義では陰イオンおよび電子(および電子を放出するもの)まで塩基となり、電子の授受といった[[酸化還元反応]]までを酸塩基反応と解釈し、究極にはすべての化学反応を包括することになり拡張解釈が過ぎるため、今日ではこの定義が用いられることはほとんどない。
<references />
 
== 参考文献 ==
 
* 田中元治 『基礎化学選書8 酸と塩基』 裳華房、1971年
=== 引用文献 ===
* [田中71] {{Cite book|ref=田中71|author=田中元治|title=酸と塩基|series=基礎化学選書8|year=1971年|publisher=裳華房}}
* [F67]{{Cite book|ref=F67|author=H・Freiser、Q・Fernando|title=イオン平衡―分析化学における|date=1967/8|publisher=化学同人|translator=藤永太一郎、関戸栄一}}
* [MF1] {{Cite book|和書|ref=MF1|author=J. McMurry、R. C. Fay|title=マクマリー 一般化学(上)|date=2010/11/24|year=|publisher=[[東京化学同人]]|ISBN=9784807907427|chapter=7章「水溶液内の反応」|translator=荻野博、 山本学、大野公一}}
* [MF2] {{Cite book|和書|ref=MF2|author=J. McMurry、R. C. Fay|title=マクマリー 一般化学(下)|date=2011/02/23|year=|publisher=[[東京化学同人]]|ISBN=9784807907434|chapter=13章「水溶液内平衡 酸と塩基」|translator=荻野博、 山本学、大野公一}}
 
=== その他 ===
* ジョン・マクマリー 『マクマリー 有機化学 第4版(上)』 伊東・児玉他訳、[[東京化学同人]]、1998年、ISBN 4-8079-0536-8。
 
2,754

回編集