「失われた地平線」の版間の差分

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張は今や何一つ隠さず、僧院の決まりや習わしを自由に語ってくれた。また、僧院の何人かと知り合い、中にはショパンの直弟子を称するフランス人もいて、耳慣れた曲以外にもまだ出版されてないショパンの幾つかの作品までピアノで披露、楽譜に書き起こし、コンウェイはそれをおさらいして飽くことを知らなかった。 大ラマとの面会も3回、4回と回を重ね、広範な話題で心置きなく話し合い、心を交わした。こうしてコンウェイは次第に心身一体の満足を疼くほどまでに覚えるようになった。
 
さらに時間が経ち、外部に出る唯一の機会である、その地に物資を運ぶ運送業者が来ることになった。そのころになると、コンウェイだけでなく、ミス・プリンクロウとバーナードもそれぞれの理由でこの地に居残ることに心を決めた。ミス・ブリンクローは人々に罪の感覚を教えるため。バーナード(実名はチャーマーズ・ブライアントで、株式詐欺をおこしたために名前を偽っていた)は谷で発見した金鉱山を開発したいと考えたため。

一人マリンソンだけが帰心矢のごとくだった。マリンソンは僧院の満州娘、羅珍と恋仲に陥っていた。張によれば、羅珍は1884年に18歳でここに来たというから、若くは見えるが実際はかなりの高齢である。
 
そして何回目かの大ラマとの面会の機会に、大ラマはいよいよ自分の死期が近づいたことを告げ、シャングリラの歴史と運命をコンウェイの手に委ねたいと言い残して、寂滅した。一人シャングリラを出るマリンソンは、運送業者の待つ場所までの山道の難所を一人では通れないというので、コンウェイが一緒に行く。そして谷を出たところで運送業者の一団と羅珍に会う。コンウェイの手記はそこで終わっている。