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|射程= 2,000m(有効射程)<br/>6,770m(最大射程)
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'''ブローニングM2重機関銃'''(ブローニングエムツーじゅうきかんじゅう)は、[[ジョン・ブローニング]]が[[第一次世界大戦]]末期に開発した[[重機関銃]]である
 
M2[[アメリカ軍]]制式採用されたのは[[1933年]]であるが、信頼性完成度の高さから現在でも世界各国で生産と配備がされる。
 
== 概要 ==
[[第二次世界大戦]]以来、現在も各国[[軍隊]]で使用されている著中の名な[[重機関銃]]である。M2のストッピングパワーや信頼性は伝説的で、[[口径]]が50口径(0.50インチ=12.7mm)であることから別名“キャリバー50”(Caliber .50)や“フィフティーキャル”(.50 Cal)と呼ばれる。現場では“マデュース”(Ma Deuce)や“ビッグママ”(Big Mama)などの愛称もある。第二次世界大戦中アメリカで200万挺以上が産された。
 
[[アメリカ合衆国|アメリカ]]では、M2の後継として[[1950年代]]後半に車両搭載用途を更新するものとして[[M85機関銃]]が開発されたが、問題が多く、M2の後継とはならないままに終わった。[[1990年代|90年代]]後半より再び後継[[機関銃]]の開発が進められ、[[:en:XM312|XM312]]、[[XM806]]といった新型機関銃の開発が進んでいたが、[[2012年]]に開発が中止された。
 
結果、設計されて80年以上経つが、費用を考慮しての基本構造・性能トータル面でこの重機関銃を凌駕するものは、現在においても現れていない。[[FNハースタル]]社が代表的な改良型として、[[銃砲身|銃身]]交換を容易にしたFN M2HB-QCB(M2 Heavy Barrel-Quick Change Barrel)を開発し、先進諸国を中心に現有M2重機関銃のQCB改修、生産の切り替えが進んでいる。
 
[[日本]]では、[[住友重機械工業]]田無製造所が[[1984年]]から[[ライセンス生産]]しており、主に[[自衛隊]]で使用している。[[陸上自衛隊]]では主に車載[[機関銃]]や対空用として「'''12.7mm重機関銃M2'''」という名称で採用しており、[[海上自衛隊]]でも[[護衛艦]]などに[[不審船]]対処用として搭載しているほか、[[航空自衛隊]]でも本機関銃を四連装とした[[M16対空自走砲#M45銃架|M55機関銃トレーラー]]を基地防空用として採用した<ref>後継機種である[[VADS]]の導入にともなって現在では実戦運用を外れており、予備装備として保管されるのみである。</ref>。現在では前述のQCB仕様のものが調達されている。調達価格は530万円。
 
== 特徴 ==
M2の原型となった[[水冷]]式M1は、敵の[[砲兵]]用観測[[気球]]を撃つことを目的に配備されたが、その威力と射程は様々な標的に対し有効であった。以降、M2は[[戦車]]や[[装甲車]]、[[貨物自動車|トラック]]や[[ジープ]]などの車載用[[銃架]]、地上戦闘用の[[三脚|三脚架]]、対空用の背の高い三脚銃架、連装、または四連装の動力付き対空銃架、[[船|艦船]]用対空銃架、軽量[[銃砲身|銃身]]型の[[航空機]]用固定[[機関銃|機銃]]、航空機用旋回機銃架、動力付き航空機用旋回機銃架など、様々な銃架に載せられ[[アメリカ陸軍|陸]]・[[アメリカ海軍|海]]・[[アメリカ空軍|空軍]]を問わず広く配備された。簡単な部品交換だけで左右どちらからでも給弾できることも柔軟な運用を可能にした。
 
M2は、[[12.7x99mm NATO弾|12.7mm弾]]を音速の3倍の速度で発射する。M2の精度は素晴らしく、800m先の標的にも正確に命中する。
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[[歩兵]]の場合、3名のチームで運用するため[[:En:Crew-served weapon|CSW]](Crew Served Weapon)の一種である。画像にある三脚は対地攻撃用のM3三脚架(現在は[[M205三脚]]へ代替中)で、銃自体とは別の装備品である(本来は(実際には不可能だが)他の機関銃同様、ハンドルの保持だけで撃つもの)。[[M60パットン]]・[[M1エイブラムス]]などの戦車や[[M113装甲兵員輸送車|M113]]・[[M109 155mm自走榴弾砲|M109]]といった[[装甲戦闘車両]]では主に[[指揮官|車長]]用[[武装]]として[[キューポラ]]に、ソフトスキン車輌では[[キャビン]]上にマウントリングを追加して自由に旋回させられるようにして装備している。さらに、近年はM2を搭載した遠隔操作銃座([[RWS]])が複数種開発され、[[ストライカー装甲車|ストライカーICV]]などの車輌に搭載されている。
 
M2は、第二次世界大戦中に使われたアメリカ軍航空機の代表的な武装でもあった。しかし、高いGのかかる[[ドッグファイト|空中戦]]では、翼内の[[弾薬]]の長いベルトリンクがねじれ、装弾不良が頻発、装備法に改良が加えられたが、完全とはいえなかった。このため、航空機には1機当たり多数を搭載することで、ねじれの発生で[[火力 (軍事)|火力]]を失う事態を避ける工夫が成された。しかし、[[口径]]20mm以上の[[機関砲]]に火力で劣るため、現在では[[M61 バルカン|M61]]などの[[航空機関砲]]に取って代わられ<ref>第二次世界大戦後では、[[ジェットエンジン]]の発達によって軍用航空機の高速化が進んだ結果、無誘導の銃弾や砲弾を命中させること自体が困難となり、「一発当たりの火力の大きさと、速射性のバランスがとれた対空火器」として機関砲が着目され、重機関銃は弾薬の威力不足、高射砲は速射性の悪さからいずれも力不足と見なされた。</ref>、アメリカ軍の固定翼機でこの銃を搭載する機種は運用されていないが、[[アメリカ海兵隊]]では[[UH-1N ツインヒューイ|UH-1N]]、[[V-107|CH-46E]]、[[CH-53E (航空機)|CH-53E]]などの[[ヘリコプター]]に[[ドアガン]]としてキャビン内から乗員が対地射撃をする際に使用している。また、[[アメリカ海軍]]の一部艦艇にも最終防衛ラインの一翼を担う[[兵器]]として装備されている他、[[アメリカ沿岸警備隊]]も使用している。
 
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銃身は100発程度で銃身の温度が約130-230℃に達する。すると、銃身底部と機関部の間隔を調整する'''頭部間隙'''(ヘッドスペース)の調整と、撃発と排莢のタイミングを最適化する'''タイミング調整'''という作業が必須となる。これを怠ると命中精度が著しく損なわれる他、排莢不良や過大な発射ガス漏れによる射手の負傷など、事故へとつながる。調整にはそれぞれ専用の[[すきまゲージ|シックネスゲージ]]を用いて行われる。本稿冒頭で紹介した[[FNハースタル]]社のFN M2HB-QCBは、この調整作業を省略できるようにした改良である。
 
[[陸上自衛隊]]でも戦車や装甲車への車載用の他、各部隊が対地対空兵器として装備しており、年間80挺を新規調達している。M3銃架は[[96式40mm自動てき弾銃]]と互換性がある。[[対空兵器]]として地上設置する場合はM63対空銃架を使用する。[[海上自衛隊]]でも[[護衛艦]]などに数挺搭載していたが、一時期搭載する艦艇は無くなった。しかし、[[朝鮮民主主義人民共和国|北朝鮮]]の[[不審船事件]]などを受けて再び搭載されるようになった。なお、M2は艦艇固有の装備では無く搭載品として扱われている。[[海上保安庁]]では「13ミリ機銃」と呼称され、多くの[[巡視艇]]に装備されている。
 
[[2013年]](平成25年)12月18日、メーカーの住友重機械工業において、5.56mm機関銃([[ミニミ軽機関銃]])・[[74式車載7.62mm機関銃]]・12.7mm重機関銃('''ブローニングM2重機関銃''')の3種で少なくとも合計5,000丁にものぼる試験データ改竄が発覚。同社は5ヶ月の指名停止処分となった。
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[[ベトナム戦争]]において、後に確認殺害戦果93を挙げた[[アメリカ海兵隊]]のトップ・スカウト・[[狙撃手|スナイパー]]である[[カルロス・ハスコック]]が、この[[重機関銃]]の射程の長さと威力に注目して前線基地で単発[[狙撃]]に使用し、[[7.62x51mm NATO弾|7.62mm弾]]よりも弾道特性が良好で射程も威力も充分であると報告している。実際に、この時の狙撃は当時の最長距離の狙撃記録を大きく上回り(約2,300m)、その35年後に元から狙撃用として作られた[[対物ライフル]]によって、やっとこの記録は破られた。この銃は長時間の射撃に耐えるために長く重い[[銃砲身|ブルバレル]]を持ち、[[三脚]]による固定と本体重量の恩恵で単発射撃では反動の問題もほとんどなく、発射速度が[[機関銃]]としては比較的遅いことから、トリガーでセミオート、フルオートのコントロールをするのが容易であったという。銃身・[[弾薬]]の精度は比較的高く、構造上も他の機関銃に比べれば狙撃に向いている。これは、ハスコックのオリジナルではなく、古くは[[朝鮮戦争]]の長期に亘る山岳戦において、長距離での狙撃に使われている。そこではブリーチをロックしてセミオート化し、上部に[[照準器|テレスコピックサイト]]を追加する事で、据付の長距離[[狙撃銃]]として使用したという記録が残されている。
 
[[フォークランド紛争]]では[[アルゼンチンの軍事|アルゼンチン軍]]がM2にスコープを装備し、[[イギリス軍]]に対して単発射撃で遠距離狙撃に用いる戦術がとられた。これに対しイギリス軍では、[[自動小銃]]では応射できず(先述のとおり、有効射程が遥かに短いので撃っても弾が届かない)、高価な[[対戦車ミサイル]]「[[ミラン (ミサイル)|ミラン]]」をアルゼンチン軍陣地個々に撃ち込むシラミ潰し[[砲撃]]で対抗することになった。この件は後に、[[バレットM82]]などの12.7mm以上の[[口径|大口径]][[対物ライフル|対物狙撃ライフル]]開発のきっかけとなった。
 
== 日本軍での使用 ==
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[[File:Daewoo K6 DN-SD-03-16693.JPEG|thumb|250px|[[空包]]発射補助具を取り付けたK6]]
; K6
: [[大韓民国|韓国]]の[[統一重工業]]が老朽化したM2の代替に設計したコピー。銃身に把手を取り付けて、銃身交換を容易にしたもの。[[1989年]]から[[大韓民国国軍|韓国軍]]に配備されている
; BRG-15
: FN社がM2の後継に提案した改造型。[[口径]]の大きい15.5x106mm弾を使用。