「イシュタル」の版間の差分
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=== 愛の女神 ===
豊穣神であるイシュタルは、多産を司る性愛の女神としても知られ<ref name="ikegami2" />、夫を持ちながら120人を越える恋人を抱えていたという<ref name="ikegami3">池上(2006)pp71-72</ref><ref group="注">これは王者たる男性が、恋人としての女神から大いなる神の力を分け与えてもらうという当時の思想によっている。</ref>。加えて、イシュタルは彼らと休まず[[性交]]を行ってもまるで疲れを知ることはなかったとも伝えられている<ref name="ikegami3" />。そのためイシュタルは[[娼婦]]の守護者でもあり、イシュタルの神殿には[[神聖娼婦]]が勤めを果たしていたほか<ref>[[ヘロドトス]]''[[歴史 (ヘロドトス)|歴史]]'' [http://www.perseus.tufts.edu/hopper/text?doc=Hdt.+1.199 1.199]、A.D. Godley訳(1920)</ref>、「アシンヌ」と呼ばれる女装の青年が仕えていたとする説も存在する<ref name="tsuki">月本(2011)p.61</ref>
=== 戦の女神 ===
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== 神殿 ==
イシュタルが都市神を務めるウルク市には大きな2つの[[聖域]]があり、内1つ「エアンナ」地区一帯がイシュタルの神殿とされている<ref group="注">神殿群の中にある建造物の1つを指してエアンナと呼ぶのか、神殿群一帯そのものをエアンナと呼ぶのかについては詳らかにされていない。</ref>。エアンナとはシュメール語で「天(アンナ)の家(エ)」の意<ref>岡田・小林(2008)p.123</ref>
=== 食事 ===
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==== 聖船と世界規範 ====
ある日イシュタルは盛装してエンキムドゥに会いに行ったが、めかし込んだ姿に我ながら魅了され、エリドゥに住むエアの神殿「エアブズ」を訪ね、彼を口説きに行こうと歩み始める。イシュタルはエアとその従神{{仮リンク|イシム|en|Isimud}}らに歓迎されると、競うように酒を飲み重ねた。イシュタルは酒により調子が良くなったエアから、「[[メー|メ]]」と呼ばれる権力の全てを与えられる。「メ」を受け取ったイシュタルは天の舟「マアンナ」にそれらを積み、意気揚々とウルクへ帰るべく出航した。やがて酔いが冷め「メ」の数々をイシュタルにやってしまったことに気付いたエアは、「メ」を取り戻すべくイシュタルのもとにイシムと怪物を遣わし追跡するが、イシュタルはこれを逃れ最後までエアの「メ」を持ったままウルクへ帰ることに成功した。エアは「なかなかやるものだ。褒め称えてやらねばな」と言ってその結末を受け入れた
「メ」というのは「太古から神々によって定められた規範<ref>岡田・小林(2008)p.120</ref>」を意味し、シュメール社会における掟のようなものの総称である。「メ」の内容は[[神官]]・[[武器]]・[[玉座]]などの具体的なものから、[[売春]]・[[精神]]・[[歌]]のような、文化や娯楽といった抽象的なものも指す。
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この作品は、現時点で「史上最古の名の知れた詩人」として名高いシュメールの王女[[エンヘドゥアンナ]]が書いたもの<ref>岡田・小林(2008)p.107</ref>。
イシュタルは称賛と栄誉を得るため、緑と果実豊かな野獣の宝庫「エビフ山
=== ギルガメシュ叙事詩 ===
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== イシュタルの冥界下り ==
この神話はニップル市やウル市などから出土したシュメール語版『イナンナの冥界下り』のほか、アッカド語『イシュタルの冥界下り』としてニネヴェ版とアッシュール版の2つが知られている<ref>矢島(1998)p.226</ref>。『イナンナの冥界下り』は「大きな天から大きな地へ」を意味するシュメール語『'''アンガルタ・キガルシェ'''』を古代の書名として成立した400行以上の長編物語となるが<ref>岡田・小林(2008)p.167</ref>
=== 『イシュタルの冥界下り』 ===
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=== 『イナンナの冥界下り』 ===
{{See also|イナンナ}}
冥界に心惹かれたイナンナは、地位と神殿を捨て盛装し、冥界へ赴いた。エレシュキガルに冥界を訪問したことを激怒されたイナンナは、7つの門をくぐるたびに身ぐるみ剥がされ、全裸にされた。果てにはエレシュキガルから「死の眼差し」を受けて死亡し、その死骸は[[鉤]]に吊るされた。イナンナが戻らないまま3日3晩
=== 解説 ===
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=== 神話から見る死後の世界 ===
ここで言う冥界とは、1度行ったら2度と戻ることはできない「死者たちの国」であり、生前の行いの善し悪しに関わらず死者となればみな一律に行かなければならない世界を指す<ref>岡田・小林(2008)p.181</ref>。その場所は垂直方向だと地面深所、水平方向だと太陽が沈む先=西方に位置すると考えられ<ref name="okada3">岡田・小林(2008)pp.177-178</ref>、地下とする場合、地(キ)の下にあるエア所轄の潤った領域「[[深淵]]([[アプスー|アブズ]])」から更に下層に位置する7重の城壁(門)に囲まれた城塞都市であったというが、深淵とは逆の暗い乾燥地帯であり、食物は通常が粘土、御馳走といえば埃という酷い世界だった<ref>池上(2006)p.107</ref>。また、冥界が西方にあるというのは、太陽神シャマシュが昼は地上、夜は冥界を照らす神として崇められていたことに関連する
=== 文学性 ===
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== 脚注 ==
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=== 注釈 ===
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=== 出典 ===
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== 参考文献 ==
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