「ハマチドリ」の版間の差分

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| 学名 = {{snamei||Ervilia bisculpta}} {{auy|Gould|1861}}<ref name=gould,1861/>
}}
'''ハマチドリ'''(浜千鳥)、学名 {{snamei||Ervilia bisculpta}} は[[アサジガイ科]] <ref name=worms,2016-05-11/>(もしくは[[チドリマスオ科]] <ref name=Matsukuma,2017/>)に分類される海産の[[二枚貝]]の一種。殻長5-7mm前後の小型種で、インド太平洋の暖流域の浅海砂底に生息する。
 
属名 ''Ervilia'' はある種の[[ソラマメ属|ソラマメ類]]のことで、豆のような殻形から。種小名 ''bisculpta'' はラテン語でbi(2、二つの)+ sculpta(彫刻された…、彫刻のある…)の意。
==分布==
インド太平洋:
:日本([[下北半島]]以南<ref name=Kawai&Kimura,2015/>)、[[ハワイ]]、[[オーストラリア]]、[[インド洋]]にかけての広い暖流域<ref name=Huber,2010/>。
:※''Ervilia scaliola'' {{auy|Issel|1869}} をハマチドリと同種と考える場合は[[紅海]]と[[地中海]]([[外来種|移入]])も分布域となる。
 
==形態==
;大きさと形
:殻長7mm、殻高4mm、殻幅3mm程度で、アサジガイ科に分類される種としては小型。比較的厚質で大きさの割りには丈夫である。丸味を帯びた低三角形で、前後端は多少尖り気味となり、前端に比し後端がやや伸びるものが多い。殻頂は後方を向くが、殻頂の位置は個体変異があり、殻頂がほぼ中央にあって二等辺三角形に近いものから、殻頂が前方寄り、あるいは後方寄り<ref name=Habe,1977/>のものまである。殻はやや膨らむ。
;彫刻
:殻表には成長線があり、これに加えて前後の背域には明瞭な放射状の彫刻がある。彫刻部も含めて全体に滑らかな感じがあり、弱い光沢がある。後背域の放射刻は明瞭で成長線と交わって弱い布目状を呈することが多いが、前背域の放射刻はやや弱く範囲も狭いため、後背域の彫刻に比し目立たないことが多い。しかし両背域の放射刻の強さや範囲には変異がある。殻の中央部にはやや規則的で明瞭な密接する成長線があるが、放射刻はほとんどないか、あるいは全くない。
;殻色
:白や淡褐色の地にぼやけた褐色や紫褐色の放射斑をもつものが多いが、黄白色で殻頂付近のみが紫紅色になるものなど個体変異に富み、む。殻頂付近には不透明白色の霜降り斑が出ることもある。また、後半部に殻頂から腹縁に伸びる淡色の放射彩を現すこともある。これは腹縁の十字[[筋肉|筋]](十文字筋付着点が周囲よりも淡色となることがあり、その痕跡が成長とともに連続するためである。このような十字筋の筋痕由来の淡色放射彩はニッコウガイ上科の貝類にしばしば見られる形質である。
;内面
:鉸歯はやや頑丈で、中央に三角形の弾帯(内靭帯)がある。外靭帯は殻頂後方にあるが小さく不明瞭。
:
;軟体
:淡色でこれと言った彩色はない。足、鰓、水管とも発達する。外套膜縁には細かく短い触手が多数あり、水管口も触手で囲まれる。腹縁後方1/3付近に左右の殻をX字状に繋ぐ明瞭な十字筋があり、ニッコウガイ上科の貝類と共通の特徴を示す。
 
==生態==
潮間帯から水深20mまでの砂底に生息する<ref name=Habe,1977/><ref name=Matsukuma,2017/>。
 
==分類==
=== 原記載 ===
;''Ervilia bisculpta'' ハマチドリの原記載とタイプ標本
:*''Ervilia bisculpta'' Gould, 1861. ''Proc. Boston Soc. Nat. Hist.'' vol.8, [http://biodiversitylibrary.org/page/9492442 p.28]
:*タイプ産地: 「Kagosima, in sand, 5 ath.」([[鹿児島市|鹿児島]]、砂中、水深 5[[ファゾム]] = 9.144m)
:*タイプ標本:
:**[[ホロタイプ]] - [[国立自然史博物館 (アメリカ)|アメリカ国立自然史博物館]]所蔵。登録番号=[http://n2t.net/ark:/65665/3b711859e-251b-47c6-8238-a07e14316275 USNM 24068 (画像あり)] 。殻長6mm、殻高4mm、殻幅3mm。殻頂付近は紅紫で他は白色、後域の放射彫刻が明瞭。
;(参考) ''Ervilia livida'' (ハマチドリの異名)の原記載とタイプ標本
:*''Ervilia livida'' Gould, 1861. ''Proc. Boston Soc. Nat. Hist.'' vol.8, p.28. (上記 ''Ervilia bisculpta'' と同ページ)
:*タイプ産地: 「Kagosima Bay, in sand, 5 fath.」([[鹿児島湾]]、砂中、水深 5ファゾム = 9.144m)
:*タイプ標本:
:**ホロタイプ - アメリカ国立自然史博物館所蔵。登録番号=[http://n2t.net/ark:/65665/3fb0de4e2-3028-4677-ad58-a1b9726ead3a USNM 1304 (データのみ)]。殻長7mm、殻高4mm、殻幅3mm。全体に淡褐色を帯び、後方が伸びて、放射彫刻は不明瞭。
:**[[パラタイプ]] - アメリカ国立自然史博物館所蔵。登録番号=[http://n2t.net/ark:/65665/3a2268151-18b2-4f45-a8ae-eb1b4767abb9 USNM 24058 (データのみ)]。 半殻。
;異名<ref name=worms,2016-05-11/>
:*''Ervilia ambla'' Dall, Bartsch & Rehder, 1938
:*''Ervilia australis'' Angas, 1877
:*''Ervilia japonica'' A. Adams, 1862
:*''Ervilia livida'' Gould, 1861
 
=== 科 ===
ハマチドリのグループ(''Ervilia'' 属)は、20世紀後期までは殻の外見上の類似からバカガイ上科の[[チドリマスオガイ科]]に分類されてきた。しかし腹縁後半に両殻をX字型に繋ぐ十字筋があるなどニッコウガイ上科の特徴をもち、さらに弾帯(内靭帯)が主歯間に陥入することなどから同上科の[[アサジガイ科]]に分類すべきとの見解が1990年に出され<ref name=Morton&Scott,1990/>、それ以降はアサジガイ科に分類されこと普通である多い<ref name=Huber,2010/><ref name=worms,2016-05-11/>。しかし日本の代表的な貝類図鑑である『日本近海産貝類図鑑 第二版』(2017年出版)ではチドリマスオ科に分類しており<ref name=Matsukuma,2017/>、異なる見解を示している
 
=== 属 ===
本種とされるものには殻形、色彩、彫刻にさまざな変異があり、それらを種内変異と見るか別種と見るかで見解が分かれ、分類が難しい。ハマチドリを新種として記載したGouldは、ほぼ同じ「鹿児島の水深5fmsの砂底」と「鹿児島<u>'''湾'''</u>の水深5fmsの砂底」から ''Ervilia bisculpta'' (ハマチドリ)と ''Ervilia livida'' (ハマチドリの異名とされる)の"2種"を新種として記載した。しかし、これら"2種"のタイプ標本を比較した[[波部忠重]](1960)<ref name=Habe,1960/>は、「天草富岡で採集した個体にもこの位の変異がみとめられるので、同種の個体差であると思う」と述べ、''livida'' を ''Ervilia bisculpta''(ハマチドリガイ)の異名と見なした。その後も両者を同種と見做すのが一般的で<ref name=Rooji,1974/><ref name=Habe,1977/><ref name=Huber,2010/>、他にも異名とされるものが複数ある。また、[[紅海]]に広く分布し、2012年に[[地中海]]東部への侵入が報告された {{snamei|Ervilia scaliola}} {{auy|Issel|1869}}に関しても、ハマチドリと同種と見なす研究者と別種とする研究者とがいる<ref name=zenetos&ovalis,2104/>。
 
;''Ervilia bisculpta'' ハマチドリの原記載とタイプ標本
:*''Ervilia bisculpta'' Gould, 1861. ''Proc. Boston Soc. Nat. Hist.'' vol.8, [http://biodiversitylibrary.org/page/9492442 p.28]
:*タイプ産地: 「Kagosima, in sand, 5 ath.」([[鹿児島市|鹿児島]]、砂中、水深 5[[ファゾム]] = 9.144m)
:*タイプ標本:
:**[[ホロタイプ]] - [[国立自然史博物館 (アメリカ)|アメリカ国立自然史博物館]]所蔵。登録番号=[http://n2t.net/ark:/65665/3b711859e-251b-47c6-8238-a07e14316275 USNM 24068 (画像あり)] 。殻長6mm、殻高4mm、殻幅3mm。殻頂付近は紅紫で他は白色、後域の放射彫刻が明瞭。
;(参考) ''Ervilia livida'' (ハマチドリの異名)の原記載とタイプ標本
:*''Ervilia livida'' Gould, 1861. ''Proc. Boston Soc. Nat. Hist.'' vol.8, p.28. (上記 ''Ervilia bisculpta'' と同ページ)
:*タイプ産地: 「Kagosima Bay, in sand, 5 fath.」([[鹿児島湾]]、砂中、水深 5ファゾム = 9.144m)
:*タイプ標本:
:**ホロタイプ - アメリカ国立自然史博物館所蔵。登録番号=[http://n2t.net/ark:/65665/3fb0de4e2-3028-4677-ad58-a1b9726ead3a USNM 1304 (データのみ)]。殻長7mm、殻高4mm、殻幅3mm。全体に淡褐色を帯び、後方が伸びて、放射彫刻は不明瞭。
:**[[パラタイプ]] - アメリカ国立自然史博物館所蔵。登録番号=[http://n2t.net/ark:/65665/3a2268151-18b2-4f45-a8ae-eb1b4767abb9 USNM 24058 (データのみ)]。 半殻。
;異名<ref name=worms,2016-05-11/>
:*''Ervilia ambla'' Dall, Bartsch & Rehder, 1938
:*''Ervilia australis'' Angas, 1877
:*''Ervilia japonica'' A. Adams, 1862
:*''Ervilia livida'' Gould, 1861
 
===類似種===
<ref name=Kawai&Kimura,2015>
{{cite journal |author=河合秀高・木村昭一 |title=下北半島尻労の蛸壺から得られた微小貝類 |journal=かきつばた |year=2015 |month= |volume= |issue=40 |pages=256-57 |publisher=名古屋貝類談話会 |url= }}
</ref>
<ref name=SagamaiBay,1971>
{{Cite book |author =生物学御研究所編(解説:黒田徳米・波部忠重・大山桂)|year=1971 |title=''相模湾産貝類'' |publisher=丸善|pages=741 (p.667, 英文p.434-435, pl.121, fig.1)}}
</ref>
<ref name=Marques&Simone,2011>
{{cite journal |author=Rodrigo Cesar Marques & Luiz Ricardo L. Simone |year= 2011 |title=A new species of ''Ervilia'' from north Brazil (Bivalvia ,Semelidae) |journa=Journal of Conchology |volume=40 |issue=6 |pages=1-5 }}
</ref>
<ref name=Matsukuma,2017>
{{Cite book |author =松隈 |year=2017 |title =''チドリマスオ科 (p.605 [pl.561], 1267)'' in ''奥谷喬司(編著)『日本近海産貝類図鑑 第二版』''|publisher =[[東海大学出版会|東海大学出版部]] |pages =1375 ('''p.605 [pl.561 fig.3], 1267''') |isbn =978-4486019848 }}
</ref>
<ref name=Morton&Scott,1990>
<ref name=Rooji,1974>
{{cite journal |author=Rooji-Schuiling, L. A. de. |year=1972 |title=Alien Mollusca in the Levantine Sea - an update. Occurrence of ''Ervilia scaliola'' Issel, 1869 along the Levantine coast of Turkey |journal=Malacologia |volume=14 |issue=1-2 |pages=235-241}}
</ref>
<ref name=SagamaiBay,1971>
{{Cite book |author =生物学御研究所編(解説:黒田徳米・波部忠重・大山桂)|year=1971 |title=''相模湾産貝類'' |publisher=丸善|pages=741 (p.667, 英文p.434-435, pl.121, fig.1)}}
</ref>
<ref name=worms,2016-05-11>
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