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'''カマキリ'''は、[[昆虫綱]]'''カマキリ目'''(蟷螂目、[[学名]]:{{Sname|Mantodea}})に分類される[[昆虫]]の総称。前脚が[[鎌]]状に変化し、他の小動物を捕食する[[肉食]]性の昆虫である。漢字表記は螳螂、蟷螂(とうろう)、鎌切。
 
名前の由来については、「鎌切」という表記があることからわかるように、「[[]]で切る」から「鎌切り」となったという説と、「カマキリ」は、「鎌を持つ[[キリギリス]]」の意味で、この「キリ」は[[ヤブキリ]]、[[クサキリ]]、[[ササキリ]]などのキリギリスの仲間の名にふくまれる「キリ」と同じであるという説とがある。分類法によっては、[[ゴキブリ]]や[[シロアリ]]などとともに[[網翅目]](もうしもく、{{Sname|Dictyoptera}})とすることもある(その際、カマキリ類は'''カマキリ亜目'''になる)。かつては[[バッタ]]や[[キリギリス]]などと同じ[[バッタ目]](直翅目、{{Sname|Orthoptera}})に分類する方法もあったが、現在ではこれらとはそれ程近縁でないとされている。カマキリに似た[[カマキリモドキ]]という昆虫がいるが、[[アミメカゲロウ目]](脈翅目)に属し、全く別の系統に分類される。またおなじくカマキリに似た前脚を持つ[[ミズカマキリ]]も[[カメムシ目]](半翅目)に属し、全く別の系統である。これらは[[収斂進化]]の例とされている。
 
 
[[カマキリ]]は[[鎌]]を研ぐように口でなめ、体を[[清掃]]することが確認されている。
関節の可動域が広く、鎌状の[[脚]]はほぼ真後ろまでまげのばしができる
 
== 概要 ==
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[[ファイル:Mantis religiosa - 720x576.ogv|thumb|バッタを捕食するカマキリ({{Snamei||Mantis religiosa}})]]
[[ファイル:Mantis Tenodera aridifolia01.jpg|thumb|200px|[[オオカマキリ]] 交尾の際に雄を捕食する雌]]
食性は肉食性で、自身より小さい昆虫や小動物を[[捕食]]するが、大きさによっては[[スズメバチ]]や[[キリギリス]]、[[ショウリョウバッタ]]、[[オニヤンマ]]、オサムシ等の大型肉食昆虫や[[ヘビ]]、[[クモ]]、[[カエル]]、[[トカゲ]]、[[ミミズ]]など昆虫以外の小動物を捕食することもある。また、獲物が少ない環境では[[共食い]]することもある。捕食するのは生き餌に限られ、死んで動かないものは基本的に興味を持たず、捕ない(動かないものを獲物としてほぼ認識しない。飼育下では、餌を動かしたりすることでカマキリが興味を持てば掴んで食べる)。捕食の際は鎌状の前脚で獲物を捕えて抑えつけ、大顎でかじって食べる。食後は前脚を念入りに舐めて掃除する。
 
獲物を狙う時には、体を中脚と後脚で支え、左右の前脚を揃えて胸部につけるように折りたたむ独特の姿勢をとって、じっと動かずに待ち伏せする。一方で天敵や自身よりも大きい相手に遭遇した場合は身を大きく反らして翅を広げ、前脚の鎌を大きく振り上げて威嚇体制をとることがある。獲物を捕らえる際に体を左右に動かして獲物との距離を測ることが多い。獲物や捕食者に見つからないために何かに[[擬態]]した色合いや形態をしていることが多い。一般には茶色か緑色の体色で、[[植物]]の枝や細長い[[葉]]に似たものが多いが、熱帯地方ではカラフルな[[花びら]]に擬態する[[#日本以外に生息するカマキリ|ハナカマキリ]]、地面の落ち葉に擬態する[[#日本以外に生息するカマキリ|カレハカマキリ]]、木の肌に擬態する[[キノハダカマキリ]]もいる。
 
=== 共食い ===
カマキリ類では、同じ種類でも体の小さいオスが体の大きいメスに[[共食い]]されてしまう場合がある。<nowiki>[[交尾]]</nowiki>の際も共食いが行われ、オスはメスに不用意に近づくと、交尾前に食べられてしまうので、オスは慎重にメスに近づいて交尾まで持ち込む。飼育環境下では交尾前に食べられてしまうこともあるが、自然環境下では一般的に交尾の最中、メスはオスを頭から<nowiki>[[生殖器]]</nowiki>までむしゃむしゃと食べる(食べられないこともある)。
 
一般に報告されている共食いは、飼育下で高密度に個体が存在したり餌が不足したりした場合のものであり、このような人工的な飼育環境に一般的に起こる共食いと、交尾時の共食いとが混同されがちである。交尾時の共食いも、雌が自分より小さくて動くものを餌とする習性に従っているにすぎないと見られているが、詳しいことは未だ研究中である。
 
共食いをしやすいかどうかの傾向は、種によって大きく異なる。極端な種においてはオスはメスに頭部を食べられた刺激で精子をメスの体内に送り込むものがあるが、ほとんどの種の雄は頭部や上半身を失っても交尾が可能なだけであり、自ら進んで捕食されたりすることはない。日本産のカマキリ類ではその傾向が弱く、自然状態でメスがオスを進んで共食いすることはあまり見られないとも言われる。ただし、[[秋]]が深まって捕食昆虫が少なくなると他のメスを含む他の個体も重要な餌となってくる。
 
カマキリのオスは生涯に複数回の交尾が可能なため、一匹のメスに食べられて自分の子孫の栄養となることが、自分の子孫をより多く残すために必ずしも有利となるわけではない。オスがメスから逃げ切って別のメスと交尾することで、複数のメスからより多くの子孫を残すという戦略も有効である。一方で、オスがメスに食べられた場合は、その栄養でメスに食べられなかった場合よりも多くの子供が生まれることが分かっており、メスに食べられることで一匹のメスからより多くの子孫を残すという戦略も有効である。
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カマキリは、[[卵]] - [[幼虫]] - [[成虫]]という[[変態#不完全変態|不完全変態]]を行うグループである。
 
メスは交尾後に多数の卵を比較的大きな[[卵鞘]](らんしょう)の中に産み付ける。卵鞘は卵と同時に分泌される[[粘液]]が泡立って形成される。大きさや形は種によって決まっている。1つの卵鞘には数百個前後の卵が含まれ、1頭のメスが生涯に数個程度の卵鞘を産む種が多い。卵は卵鞘内で多数の気泡に包まれ、外部からの衝撃や暑さ寒さから守られる。卵鞘は「螵蛸」(おおじがふぐり)という別名を持ち、これは「老人の<nowiki>[[睾丸]]</nowiki>」の意味である。卵から孵化した幼虫は薄い皮をかぶった[[前幼虫]](ぜんようちゅう)という形態で、脚や触角は全て薄皮の内側にたたまれている。前幼虫は体をくねらせながら卵鞘の外へ現れるが、外に出ると同時に薄皮を脱ぎ捨てる最初の[[脱皮]]を行う。
 
前幼虫からの脱皮を終えた幼虫は、体長数mm程度しかないことと翅がないことを除けば成虫とよく似た形態をしている。一令幼虫はまず[[タカラダニ]]、[[トビムシ]]、[[アブラムシ]]など手近な小動物を捕食するが、この段階では[[アリ]]も恐ろしい[[天敵]]の一つである。体が大きくなると[[ショウジョウバエ]]などを捕食できるようになり、天敵だったアリも逆に獲物の一つとなる。このようにして、ひとつの卵鞘から孵化した数百匹の幼虫も、成虫になれるのはわずか数匹のみである。種類や環境にもよるが、幼虫は1日1匹の割合で獲物を捕食し、成虫になるまでに数回の脱皮を行う。充分に成長した幼虫は[[羽化]]して成虫となる。成虫の寿命は数か月ほどだが、この間にも獲物を捕食して卵巣など体組織の成熟を図る。
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: 体長:オス68 - 90mm、メス75 - 95mm
: 分布:[[北海道]]、[[本州]]、[[四国]]、[[九州]]、[[対馬]]、日本以外では[[朝鮮半島]]、[[中国]]、[[東南アジア]]
: 日本最大のカマキリで、体色は緑色型と褐色型が知られる。チョウセンカマキリやウスバカマキリとよく似ているが、後翅の付け根を中心とした大部分が暗紫褐色なので区別できる。前脚の内側に模様がなく、左右の前脚の間の胸は目立たない淡い黄色、もしくは黄色斑紋上部縁側がエンジ色をしている。川原や林縁の草むらに生息する。飼育の際には単独がお勧めである
; [[チョウセンカマキリ]](カマキリ) {{Snamei||Tenodera angustipennis}} Saussure, 1869
: 体長:オス65 - 80mm、メス70 - 90mm
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: 分布:本州、四国、九州、対馬、屋久島、奄美大島
: 樹上性で小型のカマキリ。緑色型と褐色型が存在。オスの羽は黒っぽく艶があるが、メスは艶があまりなく褐色に濃い褐色の斜めの縞模様がある。後翅が長くて前翅よりも後ろにはみ出し、その両側がとがる特徴がある。この科の幼虫は腹部を持ち上げるような格好が多く見られるが、コカマキリの初齢やハラビロカマキリにも見られるので、本科だけの特徴ではない。明かりにも飛来する。
: 体が小さい分動きが素早く、他のカマキリなどに追い詰められると他のカマキリにはあまり見られない[[擬死]]行動を採る。オオカマキリの褐色型のような体色が殆ど。
; [[サツマヒメカマキリ]] {{Snamei||Acromantis australis}} Saussure, 1871
: 分布:九州
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; [[ハナカマキリ]] {{Snamei||Hymenopus coronatus}} Oliver, 1792
: 分布:[[東南アジア]]
: 1齢幼虫は花には似ておらず、赤と黒の2色で同地域のカメムシの1種に似ており、ベイツ型[[擬態]]と見られる。2齢幼虫は脚の腿節が水滴型に平たくなり、体色もピンクや白で、[[ラン科]]の植物の花に体を似せており、英名も"Orchid Praying Mantis"(ランカマキリ)と呼ばれる。擬態をしている昆虫として代表的なものである。ただし成虫になると体が前後に細長くなってカマキリらしくなり、あまりランの花には似なくなる。(擬態しなくとも獲物を取ることが上達しているので平気か)日本の近縁種であるヒメカマキリとは性質が大きく異なり、共食いもする。オスは体長3cmほどで7cmほどあるメスの半分にも満たない。
[[ファイル:Metalliticussplendidus.JPG|thumb|200px|ケンランカマキリ]]
;[[ケンランカマキリ]] {{Snamei||Metallyticus splendidus}}
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: 「ハンミョウカマキリ」とも呼ばれるように[[ハンミョウ]]のような金属光沢の緑色の体色が特徴で、世界一美しいカマキリといわれる。
: ゴキブリのように素早く動き、メスは緑の地色に赤が混じり、オスは青が入る。
: 前脚が刺々しい
; [[オオカレエダカマキリ]] {{Snamei||Paratoxodera cornicollis}}
: 分布:東南アジア
: 枯れ枝のような細長く茶色い体の所々に葉に似せた鰭状のものがついている。<nowiki>[[ドラゴン]]</nowiki>マンティスとも呼ばれる最大のカマキリ。
; [[カレエダカマキリ]] {{Snamei||Euchomenella heteroptera}} De Haan, 1842
: 分布:東南アジア