「ジュドウマクラ」の版間の差分
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|画像キャプション =
|名称='''ジュドウマクラ'''
| 地質時代 =
|界=[[動物界]] [[w:Animalia|Animalia]]▼
| 地質時代2 =
|門=[[軟体動物門]] [[w:Mollusca|Mollusca]]▼
|
|亜綱階級なし = [[新生腹足類]] {{sname||Caenogastropoda}}
|
|下目階級なし = [[新腹足
|上科=[[マクラガイ上科]]
|科=[[マクラガイ科]]
|亜科=[[マクラガイ亜科]]
|属= {{snamei||Miniaceoliva}} Petuch & Sargent, 1986
|学名=
|和名=ジュドウマクラ(寿童枕)
|英名=
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[[File:Oliva miniacea.shell002.jpg|thumb|220px|螺塔の高い個体<br/>殻口内の橙色が本種の特徴の一つ。ただし幼貝のうちは暗紫褐色。]]
[[File:Oliva miniacea 004 (spire) from Okinawa.jpg|thumb|220px|螺塔部の各螺層の側面は決して膨らまず、普通は弧抉するのも本種の識別点。]]
'''ジュドウマクラ''' (寿童枕、壽童枕
寿童とは[[枕慈童]]などで知られる不老長寿の仙童・慈童のこと。和名には「ガイ」を付けてジュドウマクラガイとする場合もある。種小名 ''miniacea'' は[[ラテン語]]で「朱色の-」の意で、成貝の殻口内部の色を表したもの。中国名は{{lang|zh|橙口榧螺}}。
==分布==
[[インド太平洋|インド-西太平洋]]:
:日本([[紀伊半島]]以南)、[[東シナ海]]、[[フィリピン]]、[[オーストラリア]]にかけての太平洋西部から[[インド洋]]にかけての暖海域に分布する<ref name=Higo&Goto,1993/><ref name=Tsuchida,2000/><ref name=Tsuchida&Kubo,2017/>。ただしインド洋は[[タイ王国|タイ]]沿岸までで、それより以西の記録は、別種である {{snamei||Miniaceoliva tremulina}} や {{snamei||Oliva ponderosa}} を本種と混同したものだという<ref name=Hunton,2009/>。
==形態==
<ref name=
;大きさと全形
:通常は殻高
:殻頂は尖り、螺塔部の各螺層の側面は多少なりとも弧抉する(弧状にえぐれる)のが一般的で、少なくとも膨らむことはない
;殻表彫刻
▲殻頂は尖り、各螺層の側面は多少なりとも弧抉するのが一般的で、少なくとも膨らむことはない(ただし螺塔が非常に低い個体では次層の滑層が被って一見膨らんでいるように見える場合もあるが、螺層自体は膨らんでいない)。縫合は狭く深い溝状を呈する。殻底には深く切れ込んだ水管溝がある。
:表面は全体に非常に滑らかで光沢があり、砂中に潜るために通常は付着物などが付いていない。
;殻口
殻口は内唇から軸唇にかけて細かい斜めの襞が多数あるが、あまり強くはない。外唇縁は単純で成貝では丸みを帯びて滑らかだが、成長途中のものは薄く鋭い。殻口内の色も変異するが、成貝では通常内部が濃い橙色となるのが顕著な特徴の一つで、類似種との識別に役立つ。ただし幼貝では暗褐色や紫褐色のこともあり殻口内の色のみによる同定は難しい場合がある。またインド洋に分布し、本種の亜種とされる ''O. miniacea tremulina'' ("シリタカマクラ")は成貝の殻口内部が白い。▼
:殻口は内唇から軸唇にかけて細かい斜めの襞が多数あるが、あまり強くはない。外唇縁は単純で成貝では丸みを帯びて滑らかだが、成長途中のものは薄く鋭い。殻口下端(前端)には深く切れ込んだ水管溝がある。
;殻色
:殻表の斑紋には変異が多いが、最も普通なのはクリーム色や淡褐色の地に褐色のジグザグ模様があり、体層の上中下に模様が濃くなった色帯を3本めぐらすもの。ジグザグ模様は多少ぼけた感じになることが多く、その色が橙色がかったり紫がかったりすることもある。斑紋の強弱も変異し、時には強く発達して全体がほとんど黒褐色になるものもある。
▲
;蓋
:蓋はない( マクラガイ亜科 {{sname||Olivinae}} に共通)
軟体は大きく、淡灰色-淡褐色の地に白色や暗色の斑紋を多数散らし、砂地に似た色彩になっている。他の ''Oliva'' 属諸種と同様に足は前後に分かれており、それぞれ上方が葉状に伸びて殻の一部を被うようになっている。頭は小さく1対の先が尖った触角があり、触角の中ほどの外側に眼がある。外套膜の後方にはフィラメントと呼ばれる触手状に伸びた部分があり、殻の縫合の溝に巻き付けている。これは一種の感覚器官で、砂中に潜るときに殻頂まで完全に埋没したかどうかを感知するための感覚器官だと考えられている。外套膜の前方は象の鼻のように伸びて長い水管を形成し、その付け根の横にある触手状に伸びた部分を殻表に寝かせている。▼
;軟体
▲:軟体は大きく、淡灰色-淡褐色の地に白色や暗色の斑紋を多数散らし、砂地に似た色彩になっている。
歯舌は中歯1個とその左右に側歯が1個ずつあり、この3個を1組とする狭舌型。中歯は3歯尖、側歯は1歯尖で多少湾曲したような三角形、もしくは猫の爪のような形である。▼
;[[歯舌]]
▲:歯舌は中歯1個とその左右に側歯が1個ずつあり、この3個を1組とする狭舌型。中歯は3歯尖、側歯は1歯尖で多少湾曲したような三角形、もしくは猫の爪のような形である。
==生態==
[[潮間帯
<ref name=Hunton2009/>▼
▲潮間帯-20mの砂底に生息する。この仲間は普段は砂に半ば埋もれ、水管を上方に伸出させて生活する。肉食で、他の動物の死体などを食べるほか、砂地を這いながら他の二枚貝や同類の貝なども捕食する。貝を捕食する場合は足で捕まえて砂の中で食べるという。雌雄異体で交尾して受精し、数十個の卵が入った卵嚢を産卵する。卵嚢は球形、固着性はなく潮流で移動拡散する。
==分類==
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:Martini & Chemnitz (1773) ''Neues systematisches Conchylien-Cabinet'' 2 Bd. Taf.45, figs.476-477([http://www.archive.org/stream/neuessystematisc21773mart#page/n415/mode/2up インターネットアーカイブ])
===
===亜種の分類===
斑紋などに変異が多く、いくつかの亜種に分けられることがあるが、時期や研究者によって分け方
;分類例1:
:海産動物のデータベース「WoRMS」の2010年版 <ref name=Worms,2010/>では下記の4亜種を区別している;
:海産動物のデータベース「WoRMS」は下記の4亜種に分けている<ref>WoRMS (2010). ''Oliva miniacea'' (Röding, 1798). In: Bouchet, P.; Gofas, S.; Rosenberg, G. (2010) World Marine Mollusca database. Accessed through: World Register of Marine Species at http://www.marinespecies.org/aphia.php?p=taxdetails&id=208379 (2011年5月17日閲覧)</ref>;▼
:*''Oliva miniacea berti'' Terzer, 1986
:*''Oliva miniacea flammeacolor'' Petuch & Sargent, 1986
:*''Oliva miniacea miniacea'' (Röding, 1798) ジュドウマクラ
:*''Oliva miniacea tremulina'' Lamarck, 1811 "シリタカマクラ"
:
:海産動物のデータベース「WoRMS」の2017年版 <ref name=Worms,2017/>では、上記で分けられていた4亜種のうち ''berti'' はジュドウマクラの異名に、他はそれぞれ独立種とされており、ジュドウマクラ自体に亜種区分はないという見解が示されている。
:
;分類例2:
:Hunton ら(2009)のマクラガイ属の図鑑「''OLIVIDAE (Mollusca, Gastropoda)''」<ref name=
:*''Oliva miniacea miniacea'' (Röding, 1798) ジュドウマクラ (原名亜種)
::*異名は以下のとおり;
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:*''Oliva irisans erythrostoma'' Lam. 亜種 ムラサキジュドウマクラ(新称) (図版7 図29-30)
:*''Oliva'' sp. シリタカマクラ(新称) (図版7 図32)
:この分類ではジュドウマクラは4亜種に分けられ、近縁種としてシリタカマクラも一緒に図示されている。ここでジュドウマクラに充てられている ''irisans'' という学名は Huntonら (2009)<ref name=
===近似種===
一見似たものが多いが殻口内の橙色と螺層側面の形状を目安にすれば識別しやすい。
;[[オオジュドウマクラ]] ''Oliva sericea'' (Roeding, 1798)
:一見ジュドウマクラに似ているが、本種では殻口
;[[ヌメリマクラ]] ''Oliva irisans'' Lamarck, 1811
:斑紋、殻形、大きさなども似ているが、殻口内は橙色にならず、螺塔の大部分が滑層に覆われるため、螺層の最終層以外の縫合には溝がないことで識別できる。
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==人との関係==
;利用
:殻は観賞用となる<ref name=Taki1957
;毒
:一般には食用にされないが、[[台湾]]では[[フグ毒]](弱毒-強毒:約150 MU/個体)による中毒例も報告されている<ref>[http://www.mhlw.go.jp/topics/syokuchu/poison/animal_15.html ジュドウマクラ(台湾産):フグ毒] -- 厚生労働省 自然毒のリスクプロファイル (2011年7月30日閲覧)</ref>。日本での中毒例の報告はないが、食用利用には注意が必要である。
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[[File:Judo-Makura.jpg|thumb|180px|'''壽童枕'''「貝殻断面図案一」(平瀬,1913)より]]
[[ファイル:Kume-no-Sen'nin & Kiku-Judou by Kunichika Toyohara 1866.jpg|thumb|180px|きく壽童(右)と[[久米仙人]]<br/>『長生殿枕の兼言』([[豊原国周]], 1866)より]]
ジュウドウマクラという和名は、江戸後期の貝類図鑑『目八譜』で著者の[[武蔵石壽]]が「通称」として採用した「壽童枕」が最初である<ref name=Musashi/>。明治後期になり、[[岩川友太郎|岩川]](1900)<ref
寿童とは、本来は慈童という名の[[枕]]の縁で童子姿のまま不老長寿となった仙童のことで、[[慈童説話]]として知られている。慈童は「[[枕慈童]]」や「[[菊慈童]]」として[[謡曲]]、[[長唄]]、[[日本画|画]]の題材などにもなり、下って『目八譜』が編纂された江戸後期には慈童説話から[[スピンオフ]]したキャラクターとして「菊寿童」や「きく寿童」の名で、他の不老長寿のキャラクターとともに芝居などにも登場した。慈童説話で最も有名な例の一つは『[[太平記]]』巻十三の「龍馬進奏事」にある次のような話である;
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== 出典・脚注 ==
<!--【著者名アルファベット順】-->
<div class= "references-small">
{{reflist|refs=
<ref name=Asano,1933>浅野彦太郎 (1933) 『分類水産動物図説 』 太陽堂 (p.365)</ref>
<ref name=Higo&Goto,1993>
肥後俊一・後藤芳央 (1993) 『日本及び周辺地域産軟体動物総目録』 (株)エル貝類出版局、[[八尾市]]. (p.248)</ref>
平瀬與一郎 (1913) 『貝殻断面図案 第一』 芸艸堂</ref>
<ref name=Hunton,2009>
Hunton, C., Hoarau A., & Robin, A. (2009) ''OLIVIDAE (Mollusca, Gastropoda)'' Xenophora/ConchBooks. ISBN 978-3-939767-22-0 (p.114-120)</ref>。
<ref name=Musashi>
[[武蔵石壽]] (1843) 『目八譜』 九巻 42-43丁 [{{NDLDC|1287304/45}} 「<small>四十九</small> 壽童枕」]
</ref>
<ref name=Iwakawa,1900>
[[岩川友太郎]](編)(1900)『東京帝室博物館天産部海産貝類標本目録 第壱編(頭足類翼足類及櫛鰓類)』 p.31, no.369. </ref>
<ref name=Kantor&al.,2017>
{{cite journal |author=Kantor Yu.I. |author2=Fedosov A.E. |author3=Puillandre N. |author4=Bonillo C. |atuhor5=Bouchet P. |date=2017 |title=Returning to the roots: morphology, molecular phylogeny and classification of the Olivoidea (Gastropoda: Neogastropoda) |journal=Zoological Journal of the Linnean Society |voume=180 |issue=3 |pages=493-541 |doi=10.1093/zoolinnean/zlw003}}
</ref>
<ref name=Roeding,1798>
Röding P. F. (1798). ''Museum Boltenianum sive Catalogus cimeliorum e tribus regnis naturae quae olim collegerat Joa. Fried. Bolten M. D. p. d. Pars secunda continens Conchylia sive Testacea univalvia, bivalvia et multivalvia''.: p.33, sp.391 ([http://biodiversitylibrary.org/page/11067350 Biodiversity Heritage Library])</ref>
<ref name=Taki1957>滝庸(1957) in 岡田要・滝庸(著者代表)『原色動物大図鑑 第III巻 棘皮・毛顎・前肛・軟体動物』(p.138, pl.67, fig. 10)</ref>
<ref name=Tsuchida,2000>
{{Cite book |author =土田英治 |year=2000 |title =''マクラガイ科 (p.522-531, pl.260-264)'' in ''奥谷喬司(編) 『日本近海産貝類図鑑』''|publisher =[[東海大学出版会|東海大学出版部]] |pages =1173('''p.531''') |isbn =4-486-01406-5 }}</ref>
<ref name=Tsuchida&Kubo,2017>
{{Cite book |author =土田英治・久保弘文 |year=2017 |title =''マクライガイ科 (p.334-336 [pls.290-292], 997-999)'' in ''奥谷喬司(編著)『日本近海産貝類図鑑 第二版』''|publisher =[[東海大学出版会|東海大学出版部]] |pages =1375 ('''p.335 [pl.291 fig.6], 998-999''') |isbn =978-4486019848 }}
</ref>
<ref name=Worms,2010>
▲
<ref name=Worms,2017>
Bouchet, P. (2017). Miniaceoliva Petuch & Sargent, 1986. In: MolluscaBase (2017). Accessed through: World Register of Marine Species at http://www.marinespecies.org/aphia.php?p=taxdetails&id=815505 on 2017-12-20 (2017年12月20日閲覧)</ref>
}}
==外部リンク==
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