「速度違反自動取締装置」の版間の差分

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[[ファイル:IMG 0436 OKINAWA.JPG|thumb|right|設置箇所の直前にある事前警告標識(英語併記の例) - 沖縄県]]
[[ファイル:H-system warning signboard.JPG|thumb|right|設置箇所の直前にある事前警告標識(色違いの例) - 北海道]]
'''自動速度違反取締装置'''(じどうそくどいはんとりしまりそうち)は、[[アメリカ合衆国|アメリカ]]の[[ボーイング]]社で開発された、[[道路]]を走行する車両の速度違反を、自動的に記録・取り締まる[[スピード測定器]]である。通称の'''オービス'''(ORBIS)は[[ラテン語]]で「眼」を意味する言葉からとったボーイング社の商標である。そのため厳密な意味ではボーイング社(もしくはライセンスを受けた[[東京航空計器]])以外の「取締機」をオービスと呼ぶのは誤りであるものの、他社の製品を含めての取締機全般の通称として使われることが多い。 ''※[[商標の普通名称化]]も参照。''
 
警察の[[隠語]]から「[[ねずみ捕り#派生|ネズミ捕り機]]」などと俗称されることもある。以下、本文中では「取締機」という。
 
== 概要 ==
主要な[[幹線道路]]や、[[高速道路]]、事故多発区間、速度超過違反が多発している道路などに設置されており、[[制限速度]]を大幅に超過して走行している[[車両]]を検知すると、当該車両の速度を記録し、[[日本のナンバープレート|ナンバープレート]]および[[運転手]]の撮影を行う。基本的には[[交通反則通告制度#交通反則切符 |赤切符]]の違反のみを取締対象とし、一般道路では30km30 [[キロメートル毎時|km/h]]以上、高速道路では40km40 km/h以上の速度超過で撮影される(ただし、各都道府県によっては[[しきい値]]を変動させている場合もある)。日本国内の場合は、撮影の瞬間に、多くは赤色(白色のものもある)の[[エレクトロニックフラッシュ|ストロボ]](フラッシュ)が発光する。取締機によって撮影されると、数日から遅くとも30日以内に[[警察]]から当該車両の所有者に出頭通知が送付される。[[レンタカー]]などの場合は、[[運転手]]特定のために、更に数週間から数か月を要する場合もある。
 
取締機を設置している道路には、設置していることを警告する標識が設置箇所の約1 - 3km3[[キロメートル]]前に少なくとも2箇所設置してある(例・「'''速度自動取締機設置路線'''」)<ref>1枚の場合や警告板が無いものもある。</ref>。これは被写体の肖像権に配慮するためであり、写真を犯罪の証拠とするためには「事前告知」と「犯罪行為の瞬間の撮影」が必要であると、[[最高裁判所 (日本)|最高裁判所]]の[[判例]]で示されていることによる([[#人権との関係|人権との関係]]参照)。
 
標識の色は基本的に青色だが、都道府県により異なる場合がある。また、[[在日米軍]]関係車両の通行が多い[[沖縄県]]では、{{en|SPEED CHECK}} または {{en|SPEED CHECKED}} と併記されている。
 
Hシステムなどは、取締機の手前に別に速度検知器と速度警告板を設置してある場合がある。これは5km5 km/h以上の速度超過で「速度落とせ」のランプが点灯するもので、さらに片側2車線以上の道路では当該車両が走行している車線を示す矢印も点灯する。
 
取締機は非常に高価な機器であり、維持管理費を除いた設置時の初期費用は、1台で約5千万円以上かかるため、フィルム式の古い機器の更新や故障への対応が、遅々として進まないことが問題となっている<ref name="sankei">{{Cite news |title= 壊れたまま・設置場所バレバレ…オービス役立たず スピード違反摘発減少|newspaper= [[産経ニュース]]WEST |publisher=[[産経新聞社]] |date= 2013-09-21| author= | url= http://www.sankei.com/west/news/130921/wst1309210028-n1.html | accessdate=2015-10-12}}</ref>。
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; レーダー式
: [[ドップラー・レーダー]]を利用して車両の速度を測定する方式。車両に対して電波を照射し、反射した電波の[[電波の周波数による分類|周波数]]から速度を計算する。[[電波法]]令上の[[無線標定陸上局]]であり、操作またはその監督に[[無線従事者]]を要する<ref name="h2mpt240">[[電波法施行規則]]第33条第6号(5)に基づく平成2年郵政省告示第240号第1項第4号および第5号により、警察用の無線標定陸上局と無線標定移動局の操作は、'''無線従事者を必要としない「簡易な操作」ではない'''ため。</ref>。中央分離帯、または路肩に撮影装置が、その10mほど前方の道路上にレーダーのアンテナが設置されている。防犯上、撮影装置は金網で囲まれているのがほとんどである。
: この撮影装置内に交換式の[[写真フィルム]]が装填されているが、所定の枚数を既に撮影し切って、写真フィルムの交換が無い場合、まれに違反通知が来ないケースがある。また[[2000年代]]以降、警察予算の都合のため[[デジタルカメラ]]化による更新が遅れ、故障していても交換部品が無いため修理を行えず、測定装置が放置されたまま、速度測定や記録がされていない筐体もある<ref name="sankei" />。なお、臨時に速度超過違反の取締りを行うため、警察官がスピード測定器でレーダーを操作する移動可搬型もある。
: 欠点は、雨天時や車間距離が詰まっている場合など、反射波の受信が困難となり、まれに誤測定をすることと、常に電波を発射しているため、レーダー探知機に検知され、容易に発見されてしまうこと([[セルスター工業|ASSURA]]のレーダー探知機は「オービス」と呼んでいる)。
; ループコイル式
: 道路下5cm5[[センチメートル]]の所に、6.9m9[[メートル]]の間隔を空けて3個のループコイルが埋め込まれている。車両は金属製であるため、車両がループコイルに接近すると、ループコイルの[[インダクタンス]]が変化する。これを利用して、車両の通過時間と距離 (6.9m) から速度を計算する。
: ループコイル3つで2回の測定を行い、その結果に大きな差がある場合は「異常」として撮影は行われない。レーダー式の電波のみ検出するタイプの探知機には発見されない。雪に弱く(積雪が磁気遮蔽となり、車両の通過を検出できない)、積雪地域ではあまり見られない。なお、撮影装置はレーダー式と同様であり、撮影地点には白線や路面の切り欠き溝、あるいは逆三角の金属プレートがはめ込まれていることが多い。
: ループコイルは、車両の重量によって舗装とともに損傷を受けるため、定期的な交換が必要になる。最近は[[首都高速道路]]を中心にデジタルカメラ化されており、写真フィルム切れがなくなった([[セルスター工業|ASSURA]]のレーダー探知機では首都高のデジタル化オービスはLHシステムと区別される)。
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なお、「(違反者、同乗者の)プライバシー権の侵害である」という問題については、1969年([[昭和]]44年)12月24日の[[最高裁判所 (日本)|最高裁判所]][[大法廷]]判決<ref>{{PDFlink|[http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/93A81DCEC9E77E1049256A850030ABC4.pdf いわゆる「[[京都府学連事件]]」判例]}}{{リンク切れ|date=2010年12月}}</ref>を踏まえ、「犯罪が現に行われ」「証拠を確保する必要性があり」「方法が合理的である」という「三条件を満たすこと」により、警察官による容貌の撮影が許容されるとされており、取締機による撮影も同様の基準で審査される。そのため取締機はこれら「三条件」を満たすよう設置されており<ref>予告看板の設置など</ref>、1986年2月14日最高裁判所第二[[小法廷]]判決<ref>{{PDFlink|[http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/3617032C5830E91249256A850030A9D2.pdf 昭和59年(あ)第1025号道路交通法違反被告事件判例]}}{{リンク切れ|date=2010年12月}}(刑集40巻1号48頁・判時1186号149頁)</ref>以後、一貫して取締機による写真撮影は違憲ではないとされ、プライバシー権侵害を認定した判例はない。
 
=== オービス自動速度違反取締装置での取締り件数の減少 ===
* オービス自動速度違反取締装置での交通違反の取締り件数が、[[2013年]]現在での過去5年間で20%以上減少していることが、[[産経新聞]]の指摘により判明した。フィルムを使用した旧式のまま更新が行われていないケースや、高額な修理予算が捻出できずに故障したまま放置されているケースが散見されているとされる。また、オービス速度取締装置の設置場所を知らせる[[カーナビゲーション|カーナビ]][[アプリケーションソフトウェア|アプリ]]の普及もあり、オービス速度取締装置が事実上役に立たなくなってきているとの指摘もある<ref name="sankei"/>。
 
== 世界各国の自動速度取締機 ==
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しかし[[2000年]]以後、警察が交通違反に対する取締を相当強化したことにも伴い(今でもフランスは交通事故多発国として[[ヨーロッパ]]圏内では悪評高く、啓蒙のためフランスでは、日々のテレビ[[ニュース番組]]で「今週の交通事故死亡者数」が定期的に報じられる)、パトカーや白バイ隊による追跡、検挙のみならず取締機設置数は急増した。
 
事前警告標識が必ず存在し、その標識には {{fr|Pour votre securité...contrôles automatiques}}(あなたの安全のため−自動取締中)の文字、およびレーダーが発信される様子が描かれた[[ピクトグラム]]が表示されている。撮影域速度はまちまちだが、市街地区域では50km50 km/h、高速道路では110km110 km/hで作動するものが多い。[[レーダー探知機]]は、作動させていた場合はもちろん、所持だけでも検挙の対象となり、厳罰に処されるため、[[欧州連合]]から車両を持ち込む際などは特に注意を要する。
 
== 脚注 ==