「非可換幾何」の版間の差分

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Makotoy (会話 | 投稿記録)
en:Noncummutative geometry 17:02, 16 March 2006 (UTC)より翻訳。著者:Phys, Charles Matthews, Oleg Alexandrov, Paul August, DyslexicEditor. 一部追加
 
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[[数学]]における'''非可換幾何'''(ひかかんきか、<em lang=en>noncummutative geometry)geometry</em>)とは[[交換法則|可換性]]が成り立たない(「[[二項演算|]]」について ''xy'' ''yx'' が一致しない)ような[[多元環|代数構造]]に対する空間的・幾何学的な解釈を研究する分野である。通常の[[幾何学]]では様々な構成物の「積」に関して可換性が要求されるが、その条件を外すことによってどんな現象がとらえられるかが追求される。
 
== 動機 ==
数学では幾何学的なものである空間と、その上の[[関数 (数学)|関数]]の間に密接な関係があることが認識されている。一般的にそのような関数たちは[[可換環]]をなす。例えば、[[位相空間]] ''X'' に対して ''X'' の上で[[連続 (数学)|連続]][[複素数]]値連続関数のなす[[(数学)|環]] ''C''(''X'') がその例になっている。多くの(X(''X''[[コンパクト空間|コンパクト]][[ハウスドルフ空間|ハウスドルフ]]空間であるときなど)重要で妥当な状況設定のもとで空間 ''X''''C''(''X'') から復元でき、そのようなとき ''X'' は可換な幾何構造をもつとも言えるだろう。
 
[[関数解析学]]などのいくつかの場面で、あるいは[[数理物理学]]などの応用において「非可換な空間」上の関数たちを表すべき代数系として[[非可換環|非可換な環]]があらわれる。「非可換空間」をどう定義しようとも、普通の位相空間(これは普通可換な環との対応がつくことが知られている)と本当に同じようなものが得られるというわけではない。したがって位相的な不変量をこの新しい空間のカテゴリーに拡張することも理論の動機付けをなしている。つまり、「空間」という言葉自体は中間項としてのみ存在することになる。
 
== 非可換な作用素環 ==
非可換な [[C*-環]]はしばしば'''非可換空間'''とよばれる。これはゲルファント表現によって可換 C*-環が[[局所コンパクト空間]]の双対と見なせることの連想からきている。一般には任意の C*-環 ''A'' に対し、その規約表現のユニタリ同値類 ''Â'' を対応させることができる。
 
局所コンパクト空間から得られる[[測度空間]]と可換[[フォン・ノイマン環]]の間の双対性から、非可換フォン・ノイマン環は'''非可換測度空間'''とよばれることもある。
 
== 非可換な可微分多様体 ==
'''非可換な可微分多様体'''についての研究も非可換幾何の研究の大きな部分をなしている。通常の可微分多様体はその上のなめらかな関数のなす可換環と、接束、余接束などの[[ベクトル束]]へのなめらかな切断によって特徴づけられる。これら切断の空間はなめらかな関数のなす[[多元環|代数]]上の[[加群]]の構造を持っている。また、この代数上の微分写像を理解するためには[[外微分]][[リー微分]][[共変微分]]の概念が重要な役割を果たす。非可換な場合には、問題になっている代数が非可換となり、[[微分形式]]を取り扱うためには ''p''-形式すべてと、それらの間の[[外積代数|ウェッジ積]]からなる次数付きの外積代数束と、その切断を考えることになる。外微分は次数を一つ上げる反微分で二乗すると零になるようなものとしてとらえられることになる。
 
== 非可換アフィン・スキーム ==
[[アフィン・スキーム]]か閑々可換環の間の双対性の類似から、'''非可換アフィン・スキーム'''が定義される。
 
== 非可換空間の例 ==
; ワイルの量子化
:古典力学系の[[シンプレクティック空間|シンプレクティック位相空間]]が位置作用素と運動量作用素で生成されるような非可換の位相空間へと変形される。
 
; 葉層構造の葉の空間
:多様体上に[[葉層|葉層構造]]があたえられたとき、同じ葉の上にある点を同一視して得られる葉の空間はしばしば古典的な幾何学においては病的と見なされる空間になってしまう。各葉の上で[[接合積]]による非可換な代数を考え、それをすべての葉についてあわせて得られる非可換な作用素環が葉の空間の上の関数の環を表していると考えることができる。
 
; 群作用による商空間
:''G'' が位相空間 ''X''[[群の作用|作用]]しているとする。''G'' [[群環]]とX上の関数環の接合積によって非可換な[[作用素環]]が得られる。これの中心が ''G'' の作用で不変な ''X'' 上の関数のなす代数に対応し、したがって古典的な意味での ''X'' ''G'' 作用による商空間(の上の関数)を表していることになる。
 
== 歴史 ==
[[ジョン・フォン・ノイマン]]による作用素環論の創始において既に、作用素環は[[量子力学]]的な[[物理量]]に対する「座標」をあたえるための系として用いられている。その後[[ゲルファント・ナイマークの定理]]などを通じて可換な作用素環が古典的な幾何学の対象に対応しており、非可換な作用素環論にも数々の類似が存在することや、古典的な理論の枠組みでは病的とも見なされるような対象が非可換な作用素環によって取り扱えることが認識されるようになった。
 
[[アラン・コンヌ]]による非可換幾何学の研究で用いられた技法の一部はより古い理論、例えば[[エルゴード理論]]にたどることができる。閉部分群による商として得られる[[等質空間]]への作用の類推から、任意のエルゴード的群作用を仮想的な部分群と見なすというジョージ・マッケイによる発想などが積極的に利用されている。
 
== 参考資料 ==