「半陰陽」の版間の差分

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広義の性分化疾患との混同削除
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医学的には'''[[性分化疾患]]''' ({{Lang-en-short|''Disorders of Sex Development:DSDs ''}}) に分類される。ただし、呼称についてはインターセックス({{Lang-en-short|Intersexuality}})なども含めて当事者の間では賛否両論があり、まとまっていない。詳細は[[性分化疾患]]の項目参照。
 
'''「半陰陽」は、男女両方の性腺をもつものや外性器の性別が曖昧な、もしくは外性器が染色体の性と異なる、真性半陰陽、混合性腺異発生症、、男性仮性半陰陽、女性仮性半陰陽の4つの疾患を指す言葉である。'''これらの半陰陽が性分化疾患に分類されるため、半陰陽ではない性分化疾患であるクラインフェルター症候群やターナー症候群なども半陰陽と混同されやすい<ref>https://uranaru.jp/topic/1041071</ref>。
半陰陽は、[[遺伝子]]、[[染色体]]、[[性腺]]、[[内性器]]、[[外性器]]などの一部または全てが非典型的であり、身体的な[[性別]]を[[男性]]や[[女性]]として単純には分類できない状態である。正確な数は不明であるが、少なくとも数千人に一人の割合でみられるとされる。
 
一部のジェンダー論やクィア論などでは単純には分類できない多様な性別のあり方があるとし、この半陰陽を男女のどちらにも属さない「第三の性」と位置づけるとする考えもあるが、実際のところ、'''インターセックスの状態を持つ人々の大多数が、典型的な男性/女性としての性自認を持っており'''、むしろ「インターセックス」とのステレオタイプ的なラベリングは拒絶されることが多い<ref>{{Cite web |date=|url=http://www.isna.org/faq/third-gender |title=Does ISNA think children with intersex should be raised without a gender, or in a third gender?|publisher=ISNA |language=英語 |accessdate=2010-12-07 }}</ref><ref>{{Cite web |date=|url=http://www.intersexinitiative.org/japan/faq.html#gender |title=インターセックスについてのよくある質問 (FAQ)|publisher=日本インターセックスイニシアティブ |language=日本語 |accessdate=2010-12-07 }}</ref>。
 
[[2004年]]から[[2005年]]にかけてドイツで行われた大規模調査<ref name="Clinical evaluation study of DSD
">{{Cite web |date=2009-04-21 |url=http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2678119/?tool=pmcentrez |title=Clinical evaluation study of the German network of disorders of sex development (DSD)/intersexuality: study design, description of the study population, and data quality |publisher=BMC Public Health |language=英語 |accessdate=2010-06-25 }}</ref>では、性分化疾患当事者439人のうち、自らを「男でも女でもない」とした人は9人で、残りの430人は通常の男性か女性の性自認を報告している。
 
陽と陰、男と女といった対立的にして補完的なものの調和を重視する[[陰陽思想]]などに基づいて、半陰陽を理想的な性別のあり方とする考え方もあった。
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身体的には、女性仮性半陰陽の場合、[[膣]]が塞がっている場合が多く、また[[陰核]]が通常よりも肥大し、これが[[男性器]](ペニス)と間違われることがある。男性仮性半陰陽では、[[尿道下裂]]<ref>{{Harvnb|横田|迫間|1935|p=788}}</ref>や[[停留睾丸]]を併せ持った状態のこともある。
 
== 真性半陰陽(卵精巣性性分化疾患) ==
== 性染色体異常 ==
真性半陰陽では、その性器の状態は人それぞれであり、またその要因は未だ解明されていない。人体に2つある性腺のどちらか一方が精巣、もう一方が卵巣である場合と、精巣または卵巣が左右揃い、染色体構造は「46, XX」に次いで「46, XY」が多く、「46、XX/46、XYモザイク」も多い。また、現在は「半陰陽」という表現が両性具有をイメージしやすいとして適切ではないことから見直され、日本小児内分泌学会性分化委員会による[[2008年]](平成20年)[[3月1日]]付けの「性分化異常症の管理に関する合意見解」において、半陰陽 (Intersex) については「'''Disorders of sex development''' ('''DSD''')」、真性半陰陽 (True hermaphrodite) については「 '''Ovotesticular卵精巣性性分化疾患 (Ovotesticular DSDDSD)'''」と呼称するように提唱されている<ref>{{PDF|[http://www.nch.go.jp/endocrinology/seibunka/images/kanri.pdf 性分化異常症の管理に関する合意見解]}}(日本小児内分泌学会性分化委員会、2008年 <small>(平成20年)</small> 3月1日付)</ref>。
* [[クラインフェルター症候群]]:外性器・内性器など通常の男性形をとる。[[精子]]の減少、[[乳房]]発達や男性更年期障害、[[骨粗鬆症]]、[[第二次性徴]]の欠如などが見られることがある。
* [[ターナー症候群]]:外陰部は女性型
* XX男性:外陰部は正常男性を示すが、尿道下裂
* XYY男性:外陰部は正常男性
 
== 混合半陰陽性腺異形成症 ==
* 混合性性腺異形成症:が分化しきれていない状態をいう。染色体分析で「45、XO/46、XY」などのモザイクを示す外性器が男女中間型を示す。
真性半陰陽では、その性器の状態は人それぞれであり、またその要因は未だ解明されていない。人体に2つある性腺のどちらか一方が精巣、もう一方が卵巣である場合と、精巣または卵巣が左右揃い、染色体構造は「46, XX」に次いで「46, XY」が多く、「46、XX/46、XYモザイク」も多い。男性型では尿道下裂、女性型では陰核肥大、陰唇癒合。
 
* 性腺異形成症:外陰部は女性型となる。
* 混合性性腺異形成症:染色体分析で「45、XO/46、XY」などのモザイクを示す外性器が男女中間型を示す。
 
== 仮性半陰陽 ==
「仮性半陰陽」は以下の8つの疾患の総称であり、「男性仮性半陰陽」「女性仮性半陰陽」という診断名があるわけではない。
* '''男性仮性半陰陽'''
** [[テストステロン]]生合成障害:外性器の男性化異常
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仮性半陰陽の場合、外見的には表に出ている男性または女性そのものであることも少なくないため、周囲はおろか当人も全くそれに気づかない場合もある。[[精巣]]や[[卵巣]]も形成され、たとえ遺伝子情報のそれと反していても、外見通りの性別に成人する。
 
たとえば遺伝子は男性だが女性の形態をとる男性仮性半陰陽の場合、本人もそれと知らずに結婚、一生を女性として過ごすこともある。ただしこの場合、[[膣]]はあるものの[[子宮]]が痕跡的で少なくとも機能しないため、自然な妊娠はできない。少なくとも現在のところ、男性仮性半陰陽の女性が出産にまで至った事例は知られていない。クラインフェルター症候群などの男性は極端に精子が少ないため、自然的に受精させることはほぼ不可能だが[[人工授精]]での受精は可能である。不妊治療の過程で自分が半陰陽であることを知り精神的な打撃を受けることもある
 
== 社会認知 ==
社会的には現在、半陰陽の状態を持つ人々は差別以前に[[日本]]ではほとんど認知されていない。
 
ごく最近では、性的ファンタジーとしての両性具有ではない、半陰陽の状態を持つ人の現実的な問題を描いた漫画『[[IS (漫画)|IS]]』(著:[[六花チヨ]]、[[講談社]]刊)や、半陰陽当事者である漫画家[[新井祥]]の作品などが話題となり、以前より少しは半陰陽の状態を持つ人々(インターセクシュアル)の存在が認知されるようになった。しかし、これらの作品でも半陰陽について分かりやすい解説を加えているにもかかわらず、その概念が理解できず、未だに「[[性同一性障害]]」「[[トランスジェンダー]]」と混同している人は少なくない。
 
== 偏見と実像 ==
=== インターセックスは両性具有なのか ===
まず第一に、性分化疾患とは、約60種類以上ある疾患群の総称に過ぎず、そのような単一の疾患があるわけではない。両性具有のようなイメージに参照されると思われる卵精巣性性分化疾患においても、性腺が精巣・卵巣に分化していない状態であり、両方の性腺を併せ持っているわけではない。その他の性分化疾患においても、内性器と外性器、性染色体などがマッチしていなかったり、内性器や外性器の発達が不十分だったり、性ホルモンが不足しているなど、「両性具有」という完全性をイメージさせる状態とは全く異なる。
 
=== インターセックスは「第3の性」なのか ===
通常の女性として育ち、性自認も女性の完全型アンドロゲン不応症の女性は、以前「精巣性女性化症」と呼ばれていたが、この疾患名は「女性ではない」という印象を与え、大きく傷つく人が多かったため、当事者の切実な要望から現在の疾患名に変更された。このような状況を代表として、通常の男性・女性の性自認を持っている当事者に対して、「男でも女でもない」と名指しすることは、実情に合わず、当事者を大きく傷つける可能性も存在する。性分化疾患の当事者の中には、「男でも女でもない」と自認する人もいるが、それは、性分化疾患を持たない人の中にも自認する人がいて、性分化疾患を持つ人に限らず、厳に尊重されるべきである。
 
=== 間違った性別を与えられているから苦しんでいるのか ===
インターセックス(性分化疾患)について、「生まれた時に間違った性別を与えられている」「勝手に医者や両親が性別を決めている」「性別を決めずにインターセックスとして育てるべきだ」などと述べられることがある。しかし、これはすべて誤解である。まず、大多数の性分化疾患は、将来の性自認がほとんど自明であるか、出生時の検査によって判明する<ref name="AIS/DSD Support Group for Women and Families
">{{Cite web |date=2011 |url=http://www.aisdsd.org/parent-corner/ |title=A mother of two intersex daughters tells parents how to deal.|language=英語 |accessdate=2012-09-18 }}</ref>。すぐには判明しないケースもあるが、'''インターセックス(性分化疾患)の当事者運動は、健康上の問題がない美容上の性器形成手術の弊害は訴えてきていても、性別決定そのものを否定しているわけではない。'''
 
それ以前に、「間違った性別を与えられて苦しんでいるから、インターセックスとして育てるべき」との誤解は、ではインターセックスというもので育てれば、それは間違っていないのか、本人は苦しまないのかという大きな問題を持っていることに気がついていない。また、以前、フェミニスト生物学者のアン・ファースト=スターリンは、性器の形、内性器と外性器の組み合わせから、「5つの性別」にすればよいとした論文を出版したことがあり、これは性分化疾患(インターセックス)の当事者から大きく批判された。性器の形(ペニスの長さが男性として適当かどうか)を基準に、正式な検査を行えば男性として育つことが自明だったケースでも、性器切除の上女性として育てられ、後に勝手に手術を受けさせられた当事者の人生が大きく狂ってしまうということが頻発しており、インターセックスの当事者運動は、性器の形だけで性別を決めないように訴えていた。しかし、ファースト=スターリン自身がインターセックス当事者運動の支援者だったにも関わらず、その論文は運動の目的を全く理解しないものだった。そのため、ファースト=スターリンは後に「5つの性別論」を撤回している。
 
=== インターセックスは「IS(アイエス)」と呼ばれているのか ===
コミックなどによって流布された誤解であり、一部の当事者しか用いない。元々はトランスジェンダーの人々が使い出した略語であり、当事者から言い出した自称ではない。上記の通り、性分化疾患を持つ人々の大多数は通常の男性・女性として生活しており、「IS:インターセックス:中性」といったイメージは拒否されることが多い。また医療現場では、「副腎皮質過形成」「アンドロゲン不応症」「クラインフェルター症候群」「MRKH」などの個別の疾患名が用いられ、「性分化疾患」も「インターセックス (IS)」という用語も用いられない。
 
「インターセックス」はもともと生物学の用語で、昆虫や爬虫類、魚類などに用いられた用語であり、後に医学論文などで、人間に対しても用いられるようになっていた。しかしそれは、医学内部の論文などで用いられる俗称であり、実際は昔の医療現場での告知などにおいて「{{Lang|en|hermaphrodite}}(半陰陽)」を基準にした用語が用いられることが多かったが、患者の心理的な状態を理解出来ない医師によって、誤って「インターセックス」という用語が用いられたり「男でも女でもない」と告知されるケースもあった。後に「{{Lang|en|hermaphrodite}}(半陰陽)」という用語も蔑視的であるとして医学・医療では用いられなくなっている。現在では「インターセックス」「インターセクシュアル」との用語は、学術的論文では以前のように生物学の範囲でしか見られなくなっている。しかし、性分化疾患当事者が「インターセックス」という用語を用いてはいけないということではなく、それは個々の考えにより、厳に尊重されなければならない。
 
日本小児内分泌学会性分化委員会による[[2008年]](平成20年)[[3月1日]]付けの「性分化異常症の管理に関する合意見解」において、半陰陽 (Intersex) については「'''Disorders of sex development''' ('''DSD''')」、真性半陰陽 (True hermaphrodite) については「'''Ovotesticular DSD'''」と呼称するように提唱されている<ref>{{PDF|[http://www.nch.go.jp/endocrinology/seibunka/images/kanri.pdf 性分化異常症の管理に関する合意見解]}}(日本小児内分泌学会性分化委員会、2008年 <small>(平成20年)</small> 3月1日付)</ref>。
 
== 法的対応 ==
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== 手術 ==
現在、日本で半陰陽の状態を持つ子が生まれた場合、整形手術が行われることが多い。特に生まれてすぐに手術を行うことで生殖能力の保持に関わるケースなどもあり、医師と親の判断に任されることが多々ある。しかし、本人の身体についての説明が十分でない場合、後に本人のアイデンティティを揺るがすことがある。手術をすることによって初めて自分の体に満足する人もいるが、<!-- 本人の同意を得ないで手術すべきではないし、また、本人に正確な情報を与えないで手術に同意させる方向に誘導させてはいけない。-->インターセックスの当事者団体では、半陰陽の状態を持つ子供が生まれた場合、即座の整形手術は健康的な問題を含まない限り避けられるべきで、かつ、男性女性どちらかで養育するように推奨している。ただし、後々で明確になる本人の[[性自認]]は尊重すべきであり、成長に合わせた柔軟性も必要である。[[モントリオール宣言]]や[[ジョグジャカルタ原則]]第18原則は特にこうした十分な[[インフォームド・コンセント]]の伴わない医療介入から児童が保護される必要性を訴えている。
 
手術の問題点としては、説明が十分になされないゆえの[[アイデンティティ]]の危機、性感帯の切除による満足の減少、また、ホルモンの減少によって骨粗鬆症になりやすくなる、精神が不安定になる場合がある。骨粗鬆症に関しては、生来的なホルモン不足により起こることがほとんどで、その上ではホルモン投与などの治療はむしろ推奨される。
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* [[Xジェンダー]]
; 人物
* [[新井祥]]:漫画家。自身が半陰陽であることを「性別が、ない!」やエッセイで取り上げる。
* [[橋本秀雄]]:日本半陰陽者協会代表。
* [[:en:John Money|ジョン・マネー]]:アメリカの心理学者・性科学者で、性分化疾患(半陰陽の研究で有名。身体的性別とは別個にある[[ジェンダー・アイデンティティ]]を見いだした。「ジェンダー・アイデンティティの形成は、生物学的要因による先天的なものか環境要因による後天的なものか」との論争において、環境要因を重視し、外性器を失った男児[[デイヴィッド・ライマー]]を女児として育てさせるよう両親に勧め、女性としてのジェンダー・アイデンティティを獲得するようカウンセリングをおこなった。しかし当のライマーは環境によって女性であることの[[ジェンダー・アイデンティティ]]を持つことはなく、この悲劇を防ぐために自らの体験談を世間に公表した。
* [[スタニスラワ・ワラシェビッチ]]:元陸上競技選手。女性選手として新記録を残したが、死後、両性具有者であることが判明した。
* [[キャスター・セメンヤ]]:[[南アフリカ共和国]]の陸上競技選手。[[2009年世界陸上競技選手権大会|2009年世界陸上]]女子800mで優勝し、その後の医学的検査で両性具有者と判明したと報じられた。<ref>{{Cite web |url=http://www.afpbb.com/article/sports/sports-others/athletics/2640101/4565236 |title=性別疑惑のセメンヤは両性具有、オーストラリア紙が報じる 国際ニュース : AFPBB News |accessdate=2013-1}}</ref>