「気管挿管」の版間の差分

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== 適切な頭頸位 ==
 喉頭鏡を用いて気管挿管をする場合、口の外から声門が見えるように喉頭展開をする必要がある。頭を枕の上において後屈(進展)させた状態のことである。この頭頸部の姿勢が空気を吸い込んでいるときの姿勢に似ているので、スニッフィングポジション(スニッフィング位・嗅ぐ姿勢)と呼ばれる。口から声門までが一直線に近づくので、気管挿管およびフェイスマスクを用いた換気の際には最適とされている。
=== cormackCormack分類 ===
喉頭展開後の声門の見え方の分類であり、4段階に区分される。グレードⅢ、Ⅳではチューブを気管に挿入することが困難(挿管困難)と判断される。一方、グレードⅠ、Ⅱでもチューブをスムーズに挿管できないこともある。
 ・グレードⅠ:声門のほぼ全体が観察できる。
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== 合併症 ==
*歯牙損傷
:最も起こりやすい合併症の一つ。主に[[前歯]]に多い。挿管の際に[[喉頭鏡]]によって損傷する。最悪の場合は折れた歯が[[気管]]または[[食道]]内に迷入することある。
 
*食道挿管
:最も起こりやすい合併症の一つ。[[喉頭]]を目視出来ない場合の挿管に起こりやすい。誤挿管した場合は即座に抜去する。通常[[聴診器]]にて肺の換気音が確認出来ないことや排気の[[CO2]]をモニターすることで確認できる。気付かないままの場合は窒息に至り得る。
 
*片肺挿管
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== 気管支ファイバースコープ ==
 唯一の柔軟な気道確保器具。気道確保困難が予測される症例での気管挿管、予期せぬ挿管不能・マスク換気不能時の気管挿管に使用する。それ以外に頸椎が不安定な症例にも使用される。目で確認しながら挿管できるので、安全かつ確実な方法と考えられているが、気道閉塞や食道挿管などの重篤な合併症も起こることがある。
利点としては、気道の変形や病変を目で確認しながらスコープ先端の角度を調節することで、気管内に進めることができる点である。
欠点としては、技術が必要な点と、チューブをファイバースコープ越しに進める際、チューブが披裂軟骨などに当たり、挿入が困難となりうる点がある。対策として、太い気管支ファイバースコープを用いること、細い挿管チューブを用いること、スパイラルチューブを用いることで成功率を上げることができる。
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日本では「気管挿管」は医療行為とされ、[[医師]]や[[歯科医師]]以外には気管挿管の施行が許されなかった。しかし、[[2004年]][[7月1日]]から救急救命活動中の[[心肺停止]]状態の患者に対する気道確保の方法のひとつとして、所定の講習と実習を受けた[[救急救命士]]にも認められることになった。この場合、[[救急救命士]]は[[病院]]で[[手術]]を受ける患者の同意を得て気管挿管の実習を行うことになる。
 
[[救急救命士]]は消防学校や救急救命士養成所等で気管挿管に関する講習を受講した後、都道府県のメディカルコントロール協議会(以下、「MC」)によって認証された医療機関で[[全身麻酔]]症例での気管挿管を30例以上成功実施し、病院実習修了証の交付を実習病院より受け取り、MCより認定を受けることができる。MCより認定を受けた[[救急救命士]]を「気管挿管認定救急救命士」という。
 
== 問題 ==
[[救急救命士]]に気管挿管の実施が認められるようになった契機として、2001年10月に[[秋田市消防本部]]において、組織的・地域ぐるみで違法との認識がありながら、救急救命士の気管挿管容認されていたことが挙げられる。これは医師法違反であることが指摘されたが、このようなケースは秋田市以外でも認められ、大きな社会問題となった。その後、比較的同情的な世論の高まりを受ける形で法律が整備され、メディカルコントロール体制(医師が救急救命士の医療行為を含む病院前の救急活動の質を管理・監督する体制)を構築した上で、2004年7月から所定の講習・実習を受けた救急救命士が気管挿管が可能となっている。
 
[[救急救命士]]の気管挿管解禁後の問題として、2007年5月と6月には[[愛知県]]と[[福岡県]]において救急救命士による誤挿管(食道挿管)事故が起きている。いずれのケースも誤挿管との因果関係は不明とされているが、患者は死亡しており、有効性と安全性に向けた更なる検証が求められる。