「行列ノルム」の版間の差分

2つのベクトル空間 {{math|'''K'''^''m'', '''K'''^''n''}} におけるベクトルのノルムが与えられているとき、それらに対応して {{math|''m'' × ''n''}} 行列の空間 {{math|'''K'''^{''m''×''n''}}} 上の行列ノルムを与えることができる。

: <math>\begin{align}

& = \max_{x\in \mathbb{K}^n\atop \|x\|_{\mathbb{K}^n} = 1} \|Ax\|_{\mathbb{K}^m} \\

& = \max_{\ x\in \mathbb{K}^n\atop x\ne 0} \frac{\|Ax\|_{\mathbb{K}^m}}{\|x\|_{\mathbb{K}^n}}

この行列ノルムは'''誘導ノルム''' {{en|(induced norm)}} あるいは'''[[ノルム#作用素|作用素ノルム]]''' {{en|(operator norm)}} と呼ばれる。{{math|1=''m'' = ''n''}} で行列の定める[[線型写像]]の定義域と値域で同じノルムを用いている場合、誘導される作用素ノルムは[[#劣乗法的|劣乗法的]]である。ベクトルの {{mvar|p}} ノルムに対応して、作用素ノルム

 

 

が得られる<ref group="注" name="notation">同じ記法 {{math|{{norm|&bull;}}_''p''}} を用いるため紛らわしいが、[[#誘導ノルム|誘導ノルム]]と[[#成分ごとのノルム|成分ごとのノルム]]、[[#シャッテンノルム|シャッテン {{mvar|p}} ノルム]]はそれぞれ異なるノルムである。</ref>。特に {{math|1=''p'' = 1}} と {{math|1=''p'' = &infin;}} に対しては

{{anchors|スペクトルノルム}}

特に {{math|1=''p'' = 2}} かつ {{math|1=''m'' = ''n''}}, つまり正方行列に対して[[ユークリッドノルム]]を考えた場合には、誘導された行列ノルムは'''スペクトルノルム''' {{en|(spectral norm)}} になる。行列 {{mvar|A}} のスペクトルノルムとは {{mvar|A}} の最大の[[特異値]]、別な言い方をすれば半正定値行列 {{math|''A''^&lowast;&thinsp;''A''}} の最大[[固有値]]の平方根

で与えられる。ここで {{math|''A''^&lowast;}} は複素行列 {{mvar|A}} の[[随伴行列]]を表す。