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'''ペン'''({{lang-nl-short|pen}})とは、[[硬筆]]の[[文房具|筆記具]]のうち、[[インク]]によって書く物の総称である。例えば、[[サインペン]]、[[フェルトペン]]、[[ボールペン]]など「ペン」と付く物の他に、[[万年筆]]などもペンに当たる。元々は[[羽根ペン]]のような[[つけペン]]形式で、先端にインクを適宜付け、[[毛管現象]]などでインクを保持させつつ書く形態であった。近代以降、ペンにインクが内蔵された形態が発達した。
 
== ペンの材質、インクの変遷 ==
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[[File:Jurij Šubic - Žiga Zois.jpg|thumb|260px|right|[[羽ペン]]を持つ人(1885年、フレスコ画)]]
 
ヒトがいつごろから[[指]]で砂や土に線を描いていたのか、指や棒に[[顔料]]をつけ岩壁などに線を描いていたのか正確なことは分かっていない。ただ、[[ラスコー洞窟]]の壁画など、太古の[[洞窟壁画]]には、ヒトの手形、木の棒に赤土などをつけて描いた線や絵画などが残されている。棒や茎を利用しそれを細く削ることで、指先に顔料をつけて描くのと比べて、細い線を描くことも出来る。ペンの最も単純な形態は、[[棒]]や茎の先に顔料をつけ、これを擦り付け線を描くことだとも言えよう。
 
[[シュメール人]]によって[[古代メソポタミア]]時代、3000年にもわたって[[楔形文字]]で様々な記録がされたわけだが、それは[[粘土板]]が湿ってやわらかいうちに、木の棒でくさびがた(小さな三角形)の印を複数つけて文字としたものだった。文字は粘土の凹みで表現され、粘土板が乾くと文字が固定されるというしかけであり、[[インク]]は用いなかった。
 
[[パピルス]]に文字を書くには、[[古代エジプト]]では[[葦]]の茎をペンとして使った。茎を斜めに切り、尖らせることで細い線も描けた。[[古代ギリシア]]や[[ローマ]]でもパピルスを用いたのだがギリシアやローマでは葦のペン以外にも[[青銅]]製のペンも用いた。なお古代ローマでは、(実は、平行して)粘土板も用いられていたことも学者によって知られるようになっている。ローマ軍が[[ガリア]](今のヨーロッパ)(や現在のおイギリス)に遠征した時に、小さな四角い木枠に粘土を入れた粘土板に、尖った固い筆記具で[[ラテン語]]で、本拠地のローマへ通信文を書くのに用いられていたものが近年でも([[イギリス]]などで)発掘されている。
 
[[タルムード]]の時代、ユダヤ人たちは葦(の茎)のペンを用いた<ref name="Pelc">Julie Pelc, ''The Jewish Bible: A JPS Guide,The Jewish Publication Society'',2010. p.26</ref>。タルムード時代、インクとしては、オリーブオイルの灯で器をあぶってできた[[煤]]を、[[オリーブオイル]]と[[はちみつ]]と[[没食子]](gallnut)に混ぜたものを用いた<ref name="Pelc" />。
 
[[中世ヨーロッパ]]では動物の皮をなめしたもの([[羊皮紙]])に文字を書き、(当時、印刷技術がなかったので)[[修道院]]などでは修道僧が文字をひとつひとつ手書きでうつすという気の遠くなるような作業を行って[[写本]]づくりを行っていたわけだが、ペンとしては[[鵞鳥]]などの[[羽根ペン]]を用い、インクとしては砕いた没食子を水で溶いたものと[[アラビアゴム]]の混合物を[[煤]]や[[鉄塩]]で着色したものを使った。([[没食子インク]])
 
(ところで、葦や羽根を斜めに切ったもの、金属などをとがらせたものなどがペンの系列であるわけだが、一方で、木の棒の先端部を叩き潰して[[繊維]]状にしたもの、動物の[[毛]]を用いた[[筆]]([[毛筆]])になった系統もあったことになる。)
 
近代になって、インクをペン内部に蓄えペン先にインクを供給する構造が発明され(イギリスのフレデリック・バーソロミュー・フォルシュが[[万年筆]]の特許を取得したのは[[1809年]]のこと)、今日利用されるペンの多くはインクを内蔵した形態となっている。こうしたタイプのペンのインクの供給方法には、[[毛細管現象]]を利用するものと、[[重力]]により自然とペン先にインクが集まるようにしたものが見られ、こと[[万年筆]]ではその両方を利用している。[[ボールペン]]ではややその事情が異なり、先端部で自由に回転する小さなボールにインクを付着させ、ボールを転がしながら対象に擦り付ける形で線を描くものだが、ペン先のボールと対象の間に十分な[[摩擦力]]が無いとボールが回転せず、線を描くことが出来ない。またある程度は重力でインクが降下しないとペン先のボールにインクが行き渡らないため、一般のボールペンは逆さに使用したり[[無重力]]環境では利用できない。そのような環境で利用できるように[[ガス]]でインクを加圧したボールペンも作られている。
 
ただ、[[マンガ]]を描く人、こだわりのある[[芸術家]]などでは、今も[[ガラスペン]]などを用いる場合があり、こういう人は、ペンを{{仮リンク|インク壺|en|Inkwell}}につけては線を描いたり文字を書くということを今もさかんに行っている。
 
近代的なペンでは、高級品では軸が[[象牙]]製、[[琥珀]]製などもある。[[合成樹脂]]製の登場によって安価になり形状も多様化し、[[使い捨て]]のものも増えた。
 
現在では多種多様な製品が流通しており、特定の作業に特化したもの、特殊な機能を追加したものなどもある。ペン先やペン構造に工夫の凝らされたペン、軸にゴム製の部品を組み合わせ、すべりにくくし「[[グリップ]]」性能を高めたものや、[[]]素材に[[殺菌|抗菌素材]]を利用して[[衛生]]をアピールする製品もある。インク、[[顔料]]、[[塗料]]に特殊な工夫を凝らしたペンがある。ペンでは一般に、書いたものが長年月消えず、文書が長期保存できることが求められ、それが評価されているものは多い。油性ボールペンなどは長年月でも退色しないことで、保存文書に適した筆記具として、公的な書類で使用することが認められている。だが最近ではそうした常識の外にビジネスチャンスを見出し、あえて書いたものが簡単に消せるインクを用いていることをアピールポイントにしたペンも登場した。
 
ペンに強いこだわりを持つ人、「ペンの[[マニア]]」と呼べるような人もいる。
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ペンは転じて、言葉・文章、文章を書くことを比喩的(メタファー的に)指す場合もある。「ペンは剣より強し」は、言葉の力は武力・暴力よりも強い、といった意味である。また、「[[ペンネーム]]」「[[ペンパル|ペンフレンド]]」などもその類である。
 
また、ペンのように細長い物をペンに喩える例も見られ、ペンではないのに名称に「ペン」と付く事例が幾つもある。例えば、アナフィラキシーショックの治療に使用することのある[[エピペン]]、[[糖尿病]]治療に使用することのある[[インスリン|インスリン自己注射キット]]の商品名の一部(**フレックスペン、**ミリオペン、など)、裁縫などに用いる[[チャコ#ペン型|チャコペン]]などが挙げられる。
 
== 主な製造メーカー ==