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'''オムスク出血熱''' (オムスクしゅっけつねつ、''Omsk Hemorrhagic Fever''、'''OHF''') は[[フラビウイルス科]]フラビウイルス属のウイルスによって引き起こされるダニ媒介性のウイルス性[[出血熱]]である。病名は、病原体が[[シベリア]]西部に位置する[[ロシア]]の[[オムスク]]で最初に分離されたことに由来する<ref name=PHAC/>。[[マダニ]]媒介性の感染症であるが、[[マスクラット]]がその伝播に重要な役割を果たす事で知られる。特異的な治療法や予防法は存在しない。日本国内では[[感染症法]]で四類感染症に指定されている。
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[[ファイル:Ondatra_zibethicus_FWS.jpg|250px|right|thumb|マスクラット]]
[[ファイル:madani.jpg|thumb|right|250px|ヒトを吸血中のシュルツェマダニ (''I. persulcatus'')]]
病原体であるオムスク出血熱ウイルス (Omsk Hemorrhagic Fever virus, OHFV) は、フラビウイルス科に属するプラス鎖1本鎖RNAウイルスである。同じくダニ媒介性ウイルスである[[ダニ媒介性脳炎|ロシア春夏脳炎]]ウイルスの一群に属する<ref name=PHAC>{{cite web|url=http://www.phac-aspc.gc.ca/lab-bio/res/psds-ftss/omsk-eng.php|accessdate=2013-06-08|title=OMSK HAEMORRHAGIC FEVER VIRUS (OHFV)|publisher=Public Health Agency of Canada}}</ref>。オムスク以外にも[[ノボシビルスク]] 、[[クルガン]]、[[チュメニ]]で発生例がある<ref name=CDC>{{Cite web|url=http://www.cdc.gov/vhf/omsk/index.html|accessdate=2016-05-11|title=Omsk Hemorrhagic Fever|publisher=[[アメリカ疾病予防管理センター|Centers for Disease Control and Prevention]]}}</ref>。一方でダニ媒介性脳炎と異なり、西ヨーロッパや日本には広がらず、分布はシベリアに限られる<ref name="pmid24259273">{{Cite journal|author=Karan LS, Ciccozzi M, Yakimenko VV, Lo Presti A, Cella E, Zehender G, Rezza G, Platonov AE.|year=2014|title=The deduced evolution history of Omsk hemorrhagic fever virus.|journal=J Med Virol.|volume=86|issue=7|page=1181-7|PMID=24259273}}</ref>。
自然界では[[ネズミ目|齧歯類]]と[[マダニ]]の間で感染環が維持されている。齧歯類では[[ミズハタネズミ]]が主な[[レゼルボア|自然宿主]]であるが、北アメリカ原産でユーラシア大陸では外来生物である[[マスクラット]]<ref>Linzey, A.V. 2008. [http://www.iucnredlist.org/apps/redlist/details/15324/0 ''Ondatra zibethicus'']. The IUCN Red List of Threatened Species 2008. 2016年5月7日閲覧。</ref>にも感染が成立する。マダニでは ''Dermacentor reticulatus'', ''Dermacentor marginatus'', ''[[シュルツェマダニ|Ixodes persulcatus]]'' が主な宿主である。ヒトへの感染は通常、マダニに咬まれることによって起きるが、さらにマスクラットとの接触によっても感染が起きうる。マスクラットはオムスク出血熱ウイルスに感染するとヒトと同様に症状を示して死に至る。この時、感染マスクラットの血液や糞、尿に接することでヒトへの感染が起きる<ref name=CDC/>。
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1946年から2000年までの間に1344件のオムスク出血熱患者が報告されており、97%が北半球の[[ステップ (植生)|森林ステップ]]で発生している。ほとんどの患者は4月から12月の間に発生し、最も発生が多いのは秋（9月から10月）で、これはマスクラットの狩猟期の直後にあたる<ref name=PHAC/>。
後述のように、オムスク出血熱ウイルスは出血熱を引き起こしうるが、他のダニ媒介性フラビウイルスで出血熱を起こすことが知られているのは[[キャサヌル森林病]]ウイルスとその変種であるAlkhurmaウイルス、および一部の極東ダニ媒介性脳炎ウイルスの3つのみである。オムスク出血熱ウイルスは系統的には[[ダニ媒介性脳炎]]ウイルスと近縁であり、両者の抗原性は交差性を持つが、その臨床的特徴は異なっている<ref name=Lancet>{{Cite journal|author=Růžek D et al.|journal=Lancet|title=Omsk haemorrhagic fever|volume=376|issue=9758|year=2010|url=http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0140673610611208|doi=10.1016/S0140-6736(10)61120-8|PMID=20850178}}</ref>。また、オムスク出血熱ウイルスは2000年以上前にダニ媒介性脳炎ウイルスと分岐したと推定される<ref name="pmid24259273"
== 臨床症状 ==
3 - 9日の潜伏期の後、突然の発熱、頭痛、筋肉痛、咳、徐脈、脱水、低血圧、消化器症状などを生じ、稀に出血熱となる。患者の30 - 50%は二相性の発熱を示し、第二期には第一期と同様の症状の他、髄膜炎、腎機能障害、肺炎などを生じる<ref name=MHLW>{{Cite web|url=http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou11/01-04-07.html|title=オムスク出血熱|publisher=[[厚生労働省]]|accessdate=2013-06-09}}</ref> 。肺炎や気管支炎などの呼吸器における炎症は患者の3分の1でみられ、また、子供の場合は41%で髄膜炎を生じる<ref name=Lancet/> 。
予後は一般的に良好である。致死率は0.5 - 3%であるが、稀に難聴や脱毛、神経精神障害などの後遺症を残すことがある。全ての症例で重症化するわけではなく、例えば1988年から1989年にかけて発生した流行では、80%以上が出血熱を伴わない軽症例であった<ref name=MHLW/><ref name=Lancet/>。
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== 歴史 ==
オムスク出血熱は1943-45年にかけてオムスクで発生した流行によってその存在が初めて認識されたが<ref name="pmid5606630">{{Cite journal|author=Charrel RN et al.|year=2004|title=Tick-borne virus diseases of human interest in Europe.|journal=Clin Microbiol Infect.|volume=10|issue=12|page=1040-55|PMID=24259273}}</ref>、一方で1941頃から既にロシア人の医師の間で原因不明の出血熱として記録されている<ref name=Lancet/>。病原体であるオムスク出血熱ウイルスは1947年にまずヒトから分離され、さらにその後マダニ、およびマスクラットからもそれぞれ分離されている<ref name=Lancet/><ref name="pmid5606630"
== 脚注 ==
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