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{{検閲}}
'''ネット検閲'''(ネットけんえつ)[[インターネット]]、[[イントラネット]]、[[World Wide Web|ウェブ]]や[[電子メール]]などのネット上の情報を対象とした[[政府機関]]による[[検閲]]を指す。[[エドワード・スノーデン]]等の情報提供により、[[チョークポイント]]に[[海底ケーブル]]が収束しているのを利用し、地球規模で検閲が行われていることが分かっている。検閲にかかった情報は、ウェブサイトへの掲載を禁止・削除するか、ウェブサイトを[[ブロッキング (インターネット)|ブロッキング]]して拡散を防ぐ。
 
== 概要 ==
[[オフライン]]での検閲とは別に扱われることが多いが、問題点は同様である。主な違いはオンラインの方が[[国境]]を容易に越えやすい点にある。ある[[情報]]を禁止する国の住民は、別の国のウェブ上でその禁止されている情報を得られる場合がある。逆に、ある[[資料]]を管理する政府が市民がその資料を閲覧するのを妨げる場合には、その政府が世界中のインターネットサイトを監視するなどして[[外国人]]をも制限する効果を持つことがある。
 
しかしながら、インターネットの基本的な分散的な技術によりインターネット上の情報の検閲を達成するのは非常に困難である。
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2006年11月、[[国境なき記者団]]はネット検閲反対のキャンペーンを立ち上げるのにあたって、インターネットの検閲や接続遮断をしているという「インターネットの敵 (Enemies of the Internet)」13カ国を発表した。その13カ国は次の通りである。
 
{{BLR}}<ref>但し現在では「予備軍」に格下げされている</ref>、{{MMR}}、{{PRC}}、{{CUB}}、{{EGY}}、{{IRI}}、{{PRK2}}、{{SAU}}、{{SYR}}、{{TUN}}、{{TKM}}、{{UZB}}、{{VNM}}
 
なお、ネット検閲を実施している国家はここで挙げられたものが全てというわけではない。
 
=== 検閲事例 ===
政府の公権力により、インターネット上での情報開示に検閲が行われている事例は次のとおり。
*{{flagicon|AUS}} [[オーストラリア]]・{{flagicon|NZL}} [[ニュージーランド]]。[[青少年有害社会環境対策基本法案#オーストラリア・ニュージーランド|教育観点]]。オーストラリアは汚職をもみ消そうともした。
*{{flagicon|CHN}} [[中華人民共和国]]では「<span lang="zh" xml:lang="zh">网络审查</span>」(網絡審査)という名目でネット検閲が行われ、「<span lang="zh" xml:lang="zh">[[:zh:防火长城|防火长城]]</span>」と呼ばれる<span lang="zh" xml:lang="zh">中国防火墙</span>(中国のネットと国外の「反中国的サイト」とを隔てる[[ファイアウォール]])が設けられている。[[サーチエンジン]]でも特定の言葉の検索結果に対して[[フィルタリング]]が行われる(→[[金盾]]及び[[中国のネット検閲]]を参照)。
*{{flagicon|MMR}} [[ミャンマー]]では個人によるウェブ接続やメール送信は認められず、検閲済みのサイトで構成されたミャンマー・ワイド・ウェブなるものが設けられている。現在は企業に一部開放しており、メールは政府による検閲が行われている。
*{{flagicon|CUB}} [[キューバ]]では許可のないインターネットの使用は違法とされている。許可を得られる例の大半は医師であり、医師の近隣住民が海外へのメール送信を依頼するが、キューバ政府はこれを制限しようとしてきた。
*{{flagicon|TUN}} [[チュニジア]]では([[アダルトサイト|ポルノサイト]]、メールサービス、転送サービスなど)数千のウェブサイトがブロックされ、[[File Transfer Protocol|FTP]]や[[ピア・ツー・ピア|P2P]]の利用が禁じられている。(技術的に[[プロキシ]]に利用される[[ポート番号|ポート]]が封鎖されている。)
*{{flagicon|SYR}} [[シリア]]政治的な理由から幾つかのウェブサイトの閲覧を禁止しそれらにアクセスした市民逮捕された。
*{{flagicon|KOR}} [[大韓民国]]では「情報通信網利用促進及び情報保護等に関する法律」により政府・情報通信倫理委員会が[[インターネットサービスプロバイダ|ISP]]に対して強大な監督指導権限を有しており、[[朝鮮民主主義人民共和国]]に共感的と看做される様々なサイトへの接続を認めないように命令した。この他、日本の韓国支配を肯定したり、[[竹島 (島根県)|竹島]](韓国名・独島)が日本の領土であることを肯定する記述を含む21の「親日」サイトや5つのコミュニティが「反愛国的」との理由で強制的に削除されたケースも存在する<ref>[http://japanese.chosun.com/site/data/html_dir/2004/09/27/20040927000002.html 大韓民国における反愛国サイトの排除] {{webarchive|url=https://web.archive.org/web/20060102034041/http://japanese.chosun.com/site/data/html_dir/2004/09/27/20040927000002.html |date=2006年1月2日 }}</ref><ref>[http://japanese.joins.com/article/article.php?aid=69194&servcode=400&code=400 「植民地時代は韓国にとって祝福」…21の親日サイトを摘発] 2005年11月01日19時10分 [[中央日報]]日本語版</ref><ref>[http://japanese.joins.com/article/article.php?aid=61561&servcode=400&sectcode=400 「独島は日本領土」などネットの親日コミュニティーを閉鎖] 2005年03月17日18時00分 中央日報日本語版</ref>。2012年8月下旬に[[大韓民国放送通信委員会]]が[[親日サイト]]を制裁することを決め、削除や接続遮断などの[[言論統制]]を行っている。2012年9月5日には親日サイトを作った13歳の少年が逮捕された<ref>[http://www.j-cast.com/2012/09/07145698.html 「竹島は日本の領土」と書き込んだ「親日派」韓国13歳の少年検挙] [[J-CASTニュース]] 2012年9月7日</ref>。
 
*[[イスラム国家]]の多くではインターネット接続は政府の管理下にあり、「不道徳」とされるサイトのアクセスをブロックしたプロキシを経由して行われる。しかし、この中には露骨なポルノサイトのみならず[[セクシャリティ]]などに関する議論、議論が行われる[[ブログ]]のホスト、女性の下着のネット販売を含む女性の裸に関する記述のあるサイトなども含まれ、また[[イスラム教]]と他の宗教を比較するサイトや政治的に微妙であったり、議論のある話題などもブロックされている。
*{{flagicon|TUR}} [[トルコ]]では、「政治的な理由」によって[[YouTube]]等のGoogle関連サイトを含む、約3700の外部サイトへのアクセスが政府によってブロックされている<ref>[http://jp.reuters.com/article/oddlyEnoughNews/idJPJAPAN-15804620100614 トルコ大統領、自国のネット規制をツイッターで非難] 2010年 06月 14日 12:39 JST ロイター(REUTERS)</ref>。[[Googleグループ#ブロック]]も参照。 さらに2013年6月、反政府抗議運動を抑え込むためにTwitterとFacebookまで利用制限するに至った<ref>{{Cite web|url=http://jp.techcrunch.com/2013/06/03/20130601as-anti-government-protests-erupt-in-istanbul-facebook-and-twitter-appear-suddenly-throttled/|title=イスタンブールの反政府抗議運動勃発で、政府がFacebookとTwitterを利用制限か|publisher=Tech Crunch Japan|date=2013-06-03|accessdate=2013-06-03}}</ref>。2017年4月には、ウィキペディアへのアクセスも完全に遮断した([[2017年トルコのウィキペディア閲覧制限]])<ref>[http://www.cnn.co.jp/tech/35100571.html トルコ、ウィキペディアへの接続遮断 「同国中傷の情報源に」] 2017年4月30日 [[CNN]]</ref>。
*{{flagicon|UAE}} [[アラブ首長国連邦]]では国内単一のプロバイダである[[エティサラット]]を通じてセキュアコンピューティングの手法で(すべてのサイトが62のカテゴリに分類され)強制的に検閲されポルノや政治的に微妙なものなど、UAEの道徳観に反すると思われるものはブロックされる。
*{{flagicon|SGP}} [[シンガポール]]では[[メディア開発庁]](MDA)はインターネット行動規範(Internet Code of Practice)の遵守と自主規制および自社制度を促している<ref>https://www.jetro.go.jp/world/qa/04S-140103.html</ref>。3つの主要なプロバイダによって提供されるインターネットのサービスは治安、国防、人種や宗教間の調和、公衆道徳への脅威となる材料を含むサイトを規制しブロックしており、また警察にはオンラインの通信を傍受する強い権限が与えられている。[[2005年]]に3人がブログにて反[[マレー人]]・[[反イスラム]]など[[人種差別]]を煽動する書込みをしたとして逮捕・起訴され、うち中華系男性2人が[[扇動防止法]]のもと懲役を受けた<ref>http://www.clair.or.jp/j/forum/pub/docs/423.pdf</ref>。ブログで教師を中傷する学生を訴えるという教職員組合による警告など、法的対応による脅威が増えることによる萎縮効果が議論された。
*{{flagicon|MAR}} [[モロッコ]][[2006年]]3月にLiveJournalなどの多くのブログサイトへのアクセスをブロックした。
*{{flagicon|THA}} [[タイ王国|タイ]]では非合法活動の表現を規制するために多くの労力が払われた。タイが管轄する[[DNSサーバ]]の管理やプロキシの管理によりポルノ、[[ドラッグ|薬物]]の使用、[[ギャンブル]]が厳しく禁じられている。また王室批判は[[不敬罪]]で処断される。これによりそれらウェブサイトはアクセス困難になっている。政府はネット検閲を回避する方法を論じたサイトをもブロックした。
*{{flagicon|RUS}} [[ロシア]]では、裁判所がYouTubeに政治的な動画をアップロードした[[プロバイダ]]からのYouTubeへの全てのアクセスを遮断するよう命じた<ref>[http://www.itmedia.co.jp/enterprise/articles/1008/04/news040.html Google、ロシア地裁のYouTube遮断決定に懸念を表明] 2010年08月04日 13時13分 更新 佐藤由紀子 [[ITmedia]]</ref>。[[ウラジミール・プーチン]]政権下でネット規制は強化されており、2017年には[[LINE (アプリケーション)|LINE]]が使用不可となった。ロシアのSNS「テレグラム」は利用者間通信の[[暗号]]解読鍵の当局への提供を拒否したことから、2018年4月に遮断され、首都[[モスクワ]]で抗議集会が起きた。このほか[[テロリズム]]対策を理由として、ネット事業者が利用者情報と全ての通信記録をロシア国内の[[サーバ]]に保存するよう義務付ける法律が2018年7月から適用される<ref>【プーチン支配】露 強まるネット規制/人気SNS遮断/監視「中国並み」懸念も『[[読売新聞]]』朝刊2018年5月4日(国際面)。</ref>。
 
=== 規制事例 ===
法的規制により、インターネット上の情報開示に何らかの制限が加えられている事例は次のとおり。
*{{flagicon|USA}} [[アメリカ合衆国]]は[[1996年]]2月に[[通信品位法]]を定めた。規制の対象は主に[[年少者]]に関するものだが、[[言論の自由]]に関する議論の対象にされている。しかし言論の自由を擁護する側からの憲法修正第1条違反との訴えにより、6月、[[レノ対アメリカ自由人権協会事件]]で無効とされた。[[2000年]]に施行された[[デジタルミレニアム著作権法]]では著作権保護技術の解除プログラムに関する議論やその配布が犯罪と規定され、オンラインでの著作権侵害の主張をより容易にした。この法律は既に([[サイエントロジー|サイエントロジー教会]]など)幾つかの団体が著作権保護の訴えに見せかけて気に入らない言論を封殺するために用いられている<ref>[http://www.xenu.net/archive/events/censorship/index.html 米国での著作権保護]</ref>。
*{{flagicon|CAN}} [[カナダ]]については、「[[ラディカル・フェミニズム#カナダ]]」を参照。
*アメリカ米国と{{flagicon|FRA}} [[フランス]]で争われている[[:en:LICRA v. Yahoo!|LICRA 対 Yahoo!]]の訴訟ではフランスの組織「人種差別と反ユダヤ主義に反対する国際連盟」(LICRA) とフランスユダヤ人学生連合 (UEJF) が[[Yahoo!|ヤフー]]が[[国家社会主義ドイツ労働者党|ナチ]]の記念品を売るオークションサイトに出店を許しているとして訴えた。これらの記念品はナチの戦争犯罪と[[ホロコースト]]を賛美するものであると非難された。フランスではヤフーフランスのサイトがフランス法に反するとして閲覧を禁止する判断が示された。アメリカ米国ではヤフーはフランスでの判断が[[権利章典 (アメリカ)#修正第一条(Amendment I)|合衆国憲法修正第一条]]に反すると主張し、カリフォルニア連邦地裁でヤフーの訴えが認められたが、連邦高裁で覆された。
*{{flagicon|MDV}} [[モルディブ]]ではネット上で政府批判記事を発表した市民が逮捕された。
*[[アメリカ新世紀プロジェクト]]は2000年9月にアメリカ米国による[[サイバースペース]]と[[低軌道|近地球衛星軌道]]の支配を提唱している。
*{{flagicon|BRA}} [[ブラジル]]の[[サンパウロ州]]は[[インターネットカフェ|ネットカフェ]]の利用者に住所氏名と生年月日、電話番号と[[身分証明書]]番号の登録を義務付ける最初の州となった<ref>[http://www.legislacao.sp.gov.br/dg280202.nsf/0d9687f04ed5ec4183256cfb0050146d/a09582edf8731132032570f400589b24?OpenDocument ブラジルの利用者登録] {{webarchive|url=https://web.archive.org/web/20071222121454/http://www.legislacao.sp.gov.br/dg280202.nsf/0d9687f04ed5ec4183256cfb0050146d/a09582edf8731132032570f400589b24?OpenDocument |date=2007年12月22日 }}</ref>。
*{{flagicon|SWE}} [[スウェーデン]]では2005年から児童ポルノをブロッキングしている<ref>[http://it.nikkei.co.jp/security/column/web_miyajima.aspx?n=MMITzt000013052008 (宮島理)ネット危険地帯第50回:「ブロッキング」と「フィルタリング」の2つのネット規制の流れ]</ref>。
*{{flagicon|JPN}} [[日本]]では[[2008年]][[6月11日]][[青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律]](青少年ネット規制法)が成立し1年以内での[[施行]]が定められた。一部地域では[[地方自治体]]による独自規制もある。[[2008年]][[3月26日]]、[[広島市議会]]において青少年と電子メディアとの健全な関係づくりに関する[[条例]]が可決、成立し、2008年[[3月28日]]付けで公布された<ref>[http://www.city.hiroshima.jp/www/contents/0000000000000/1209083503179/index.html 広島市が青少年と電子メディアとの健全な関係づくりに関する条例を制定]</ref>。2008年[[3月26日]]に同条例施行規則が公布され、同条例第14条に基づき「広島市青少年と電子メディアに関する審議会」を[[2008年]][[4月1日]]から先行して施行される。最終的に同条例は2008年[[7月1日]]から完全に施行された。
*{{flagicon|EGY}} [[2011年]]1月に起こった[[2011年エジプト騒乱|エジプト騒乱]]で、反政府デモの混乱を鎮圧するために[[エジプト]]政府は[[Twitter]]の接続をブロックした後、1月27日から28日かけて広い地域において[[インターネット]]接続の遮断を行った<ref name="jbpress">[http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/5370 エジプト政府、ネットと携帯電話を全面遮断] Japan Business PRESS</ref><ref name="compworld">[http://www.computerworld.jp/topics/move/190542.html エジプト政府がインターネット接続を遮断、ソーシャル・メディアの利用を阻止] IDG Computerworld Global 2011年01月31日</ref>。[[Facebook]]をはじめとする[[ソーシャルメディア]]がエジプト各地の都市における抗議行動の展開に大きな役割を果たしていたがこの措置で[[Yahoo!]]、[[Google]]などにもアクセスしにくくなった<ref name="compworld"/>。エジプトではサービス遮断は合法<ref name="jbpress"/>。また[[携帯電話]]の使用も全面遮断された<ref name="jbpress"/>。
 
== 関連項目 ==