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嶋岡徹 (会話 | 投稿記録)
m 日本皮膚科学会治療ガイドライン2017の反映、空白句読点仮名書き
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{{Infobox disease
| Name = 創傷
| Image =Chapter1figure1-Superficial bullet wound.jpg
| Caption =
| Field =[[外科学]]
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}}
'''創傷'''(そうしょう、{{lang-en-short|trauma, wounds, burns}})は、外的、内的要因によって起こる体表組織の物理的な[[損傷]]を指す。'''創'''(そう)と'''傷'''(しょう)という異なるタイプの損傷をまとめて指す総称である。日常語では'''傷'''(きず)と呼ばれる。
<!--「かさぶた」に関する記述が見あたらないようで-->その形状や原因(機転)などによって擦過傷、切創、裂創、刺創 等々に分類している。
 
創傷からの回復を促すために創傷環境調整 (wound bed preparation) が提唱されており、壊死組織の除去(デブリードマン)、感染や炎症への対処、乾燥の防止、滲出液の管理などがある{{sfn|日本皮膚科学会|2017}}。軽い傷は水、生理食塩水によって洗浄され、外用薬、適切な湿潤環境を維持するための薄いドレッシング材が用いられる。感染しつつある段階から[[消毒]]や[[抗生物質]]などによる対処が考慮され、壊死組織がある場合には除去され、滲出液を吸収するためのドレッシング材が選択される。{{sfn|日本皮膚科学会|2017}}
==概説==
創傷とは、創(そう)と傷(しょう)という異なるタイプに分類可能な損傷をまとめて指すための総称である。
 
== 定義 ==
医学的には、創傷を、その形状や原因(機転)などによって擦過傷、切創、裂創、刺創 等々に分類している。
「創にきずあり、傷にきずなし」といわれるように、創傷の定義では「創」は[[皮膚]]の破綻を伴う損傷を指し、「傷」は皮膚の破綻を伴わない損傷を指す。皮膚表面の損傷部分の、表面を'''創面'''(そうめん)と呼び、日常語では'''傷口'''(きずぐち)という。創の周辺部を、'''創縁'''(そうえん)と呼ぶ。創の底部、深い部分を'''創底'''(そうてい)と呼ぶ。銃創や、刺創(しそう)の様に、一般的に総面積が狭く、深い創の場合、創の表面を'''創口'''(そうこう)と呼称する。
 
==軽傷と重症==
創傷というのは、軽症の場合、生体の持つ[[自然治癒力]]によって、肉芽形成、繊維化の段階を経て自然治癒する<ref name="臨床医学概論26">{{Cite book|和書|author=保崎清人|title=臨床医学概論―生活習慣病を中心として|edition=第3版|publisher=ヘルスシステム研究所 ISBN 490252757X p.;|date=2008|isbn=978-4902527575|page=26}}</ref>。
 
人は日常生活を行う中で、些細なことで軽度の傷を作ることはそれなりにある。日常的にできる特に軽度の創傷の場合は、当人は特に何もしなくても、まったく痕跡も残さずきれいに自然治癒することも多い。また軽度のものの場合、一般に人々は、水による[[洗浄 (医療)|洗浄]]や[[絆創膏]]などの簡単な処置をするだけで、あとは[[自然治癒力]]にまかせて治しているが、稀に何らかの要因からその傷が痕となる形で残ってしまうことがある。
 
だし、軽度の創傷や動物による咬み傷であっても、[[破傷風]]や[[狂犬病]]、その他の[[感染症]]により、最悪の場合、命を落重篤な事態に至るこす場合もある。
 
動物などの場合は基本的に自分の舌でなめて([[唾液]]を用いて)、あとは[[自然治癒力]]で治している。人間でも、動物に倣って小さな[[擦過傷]]などはなめるだけで済ませる人もいる。
 
==創傷を生じる場面==
損傷がある程度以上の範囲に及ぶ場合は、[[止血]]、[[縫合]]、修復、[[植皮]]などの外科的治療が必要<ref>{{Cite book|和書|author=保崎清人|title=臨床医学概論―生活習慣病を中心として|edition=第3版|publisher=ヘルスシステム研究所 ISBN 490252757X ;|date=2008|isbn=978-4902527575|page=}}</ref>あるいは望ましいとされている。こういった創傷というのは主として[[火災事故]][[交通事故]][[戦争]][[スポーツ]][[喧嘩]][[労働災害|産業事故]]などの場面で発生している<ref>保崎清人『 name="臨床医学概論』ヘルス・システム研究所 ISBN 490252757X p.26<"/ref>。
 
ただし、[[高齢者]]の場合は、日常生活の些細なことからもそれなりの損傷を受けやすい<ref>保崎清人『 name="臨床医学概論』ヘルス・システム研究所 ISBN 490252757X p.26<"/ref>。高齢者では[[階段]]の上り下り、[[敷居]]をまたぐ、などといった(若者にとってはなんでもない)動作をきっかけにして損傷を受けてしまうことがあるのである。また、高齢者の場合、若者に比べて創傷の自然治癒の速さもそれなりに遅くなるので、なおさらそれに悩まされる時間・頻度が多くなり、生活上の問題([[QOL]]の問題)としてつきまとうことがある。
 
また、軽度の創傷や動物による咬み傷であっても、[[破傷風]]や[[狂犬病]]、その他の[[感染症]]により、最悪の場合、命を落とす場合もある。
 
== 定義 ==
「創にきずあり、傷にきずなし」といわれるように、創傷の定義では「創」は[[皮膚]]の破綻を伴う損傷を指し、「傷」は皮膚の破綻を伴わない損傷を指す。皮膚表面の損傷部分の、表面を'''創面'''(そうめん)と呼び、日常語では'''傷口'''(きずぐち)という。創の周辺部を、'''創縁'''(そうえん)と呼ぶ。創の底部、深い部分を'''創底'''(そうてい)と呼ぶ。銃創や、刺創(しそう)の様に、一般的に総面積が狭く、深い創の場合、創の表面を'''創口'''(そうこう)と呼称する。
 
== 種類 ==
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;[[割創]](かっそう):[[斧]]等の[[鈍器]]により、裂傷が皮膚組織すべてを引き裂き、骨等の内部組織が露出するような損傷。
;[[擦過傷]](さっかしょう) :擦り傷(すりきず)。体表に創があるが、擦過「傷」と呼ぶのが一般的である。創面を清浄化した後、創保護により皮膚の再生を待つ。
;[[挫滅創]](ざめつそう):摩擦による損傷で、真皮や皮下組織・それ以下のレベルまで損傷したもの。あるいは急激な圧力による同様な損傷。(急激でない圧力によるものは[[褥瘡]]と言う)
;[[挫創]](ざそう) :打撃などの外力により組織が挫滅した創。創面は粗雑であり、縫合は一般的に困難である。[[壊死]]組織の[[デブリードマン]](除去)や創保護を主とする治療が行われ、[[肉芽]]組織の増殖による自然治癒を待つ。
;[[挫傷]](ざしょう) :打撃、捻転、運動などの外力により内部の軟部組織が損傷したもので、体表に創がないもの。一般に保存的治療が行われる。筋挫傷のほか、[[脳挫傷]]・[[肺挫傷]]のような臓器の損傷がある。
;[[銃創]](じゅうそう) :銃器の弾丸や火薬による創。射創(しゃそう)とも。貫通射創、盲管射創、反跳射創、擦過射創などの種類がある。また、距離による分類では接射創、準接射創、近射創、遠射創と区別される。近距離からの銃創は、弾丸の入口に星型のような破裂や火薬の付着があり、出口には不整形な破裂があることが多い。遠距離からの銃創は、弾丸の入口は円形で小さく、出口の方が大きく不整形なことが多い。
;[[爆傷]](ばくしょう): 爆発による損傷。ただし、爆傷は熱傷や衝撃による内部的損傷を伴う。殺傷用の[[爆発物]]による損傷であれば、多発性の銃創の病態も呈する。
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#[[繊維芽細胞]]が分泌する[[コラーゲン]]を主とした[[肉芽組織]](にくげそしき・granulation tissue)による収縮。
#肉芽組織の[[瘢痕]]組織への変化。それによる創の安定。
 
赤色の修復や炎症の反応が生じ、上皮や表皮が再生される{{sfn|日本皮膚科学会|2017}}。
 
=== 第一期・炎症反応期 ===
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=== 第二期・増殖期(肉芽形成期) ===
[[マクロファージ]]の放出する物質により繊維芽細胞が呼び出され修復の主たる成分、[[コラーゲン]]が産生される。創傷治癒過程の初期には、まず血小板擬集能に優れるIII型コラーゲンが産生蓄積されやがてI型コラーゲンに置き換えられて、いずれは太く密なコラーゲン線維となる。これにより組織は安定し血管新生、毛細血管発達がみられる。
 
==管理==
{{seealso|自然治癒力}}
*[[{{See also|湿潤療法]]}}
創傷からの回復を促すために創傷環境調整 (wound bed preparation) が提唱されており、壊死組織の除去(デブリードマン)、感染や炎症への対処、乾燥の防止、滲出液の管理などがある{{sfn|日本皮膚科学会|2017}}。
 
傷は消毒させて乾燥させるという常識のもと、従来は傷の表面を乾燥させガーゼで覆ったが、傷を湿潤させるという新たな考え方が見られるようになった{{sfn|日本皮膚科学会|2017}}。湿潤環境は乾燥に比較して、表皮の回復や欠陥の新生、また痛みの管理にも有利である{{sfn|日本皮膚科学会|2017}}。
==出典、脚注==
 
ガーゼ以外の湿潤環境を得るためのドレッシング材では、ハイドロコロイドにのみ治癒促進効果が確認されているというシステマティック・レビューがある{{sfn|日本皮膚科学会|2017}}。
 
傷は、適度な温度の水道水、[[生理食塩水]]などによって洗浄され、細菌や残留物が洗い流される{{sfn|日本皮膚科学会|2017}}。異物などの除去は必要だが、過剰な洗浄は治癒を促進するサイトカインなども洗い流してしまう{{sfn|日本皮膚科学会|2017}}。
 
浅い傷では洗浄で十分であり消毒は不要で、感染しつつある段階から消毒が考慮される{{sfn|日本皮膚科学会|2017}}。上皮下がまだで肉芽を形成している時期に無用な消毒を行うことは、肉芽の形成を遅らせてしまう{{sfn|日本皮膚科学会|2017}}。熱感、うみ、発火、疼痛、発熱など感染による症状を呈した場合には、壊死組織の除去、消毒、抗生物質などが用いられ、感染が制御でき次第中止する{{sfn|日本皮膚科学会|2017}}。深い傷では、感染が管理され、壊死組織を除去することで創傷環境を整え、[[湿潤療法]]を目指すが、毎日の洗浄は必須ではない{{sfn|日本皮膚科学会|2017}}。
 
外用薬を用いる場合、2週間をめどにその効果を検討すべきであり、漫然と使用しない{{sfn|日本皮膚科学会|2017}}。浅い傷では、アズレン軟膏、抗生物質を含む軟膏、白色ワセリンなどが使用されるが、抗生物質は耐性菌の出現の懸念のため2週間以上の使用は推奨できない{{sfn|日本皮膚科学会|2017}}。深い傷では、壊死組織の自己融解を促進させたり、さらなる除去を容易にするために組織を軟化させる成分を含む外用薬も選択肢となる{{sfn|日本皮膚科学会|2017}}。
 
ドレッシング材は、傷を閉塞させ湿潤環境をつくることで、細菌への抵抗力を持つ滲出液を保持し、細胞増殖因子を維持し、壊死組織の自己融解を促し、汚染を防止し、痛みを緩和し、従来からのガーゼと比較して感染率が低くなる{{sfn|日本皮膚科学会|2017}}。感染の可能性がある場合には、湿潤環境は細菌増殖をさせることもある{{sfn|日本皮膚科学会|2017}}。抗菌作用のある銀を含有するドレッシング材については、使用するための証拠は不足しているが用いてもよい{{sfn|日本皮膚科学会|2017}}。ドレッシング材としては以下があり吸収力が異なるため、滲出液の多さ・少なさによって、適切な湿潤環境を整えるためのドレッシング材が選択される{{sfn|日本皮膚科学会|2017}}。
 
*ポリウレタンフィルム
*ハイドロコロイド
*ハイドロジェル
*キチン
*アルギン酸塩
*ハイドロファイバー
*ハイドロポリマー
*ポリウレタンフォーム
 
浅い傷には、ポリウレタンフィルム、薄いハイドロコロイドや薄いポリウレタンフォームが使用される{{sfn|日本皮膚科学会|2017}}。
 
痛みの管理にはその原因を鑑別し、また世界保健機関による3段階除痛の考え方に従う。つまり、軽度の痛みには[[非ステロイド性抗炎症薬]] (NSAID) が用いられ、効果不十分では他の薬剤が考慮されていく。
 
{{See also|疼痛#管理}}
 
==出典、脚注==
<references/>
 
==参考文献==
*{{Cite journal |和書|author=日本皮膚科学会|coauthors=井上雄二、金子栄、加納宏行ほか |date=2017 |title=創傷・褥瘡・熱傷ガイドライン―1:創傷一般ガイドライン |journal=日本皮膚科学会雑誌 |volume=127 |issue=8 |pages=1659-1687 |naid=130005815329 |doi=10.14924/dermatol.127.1659 |url=http://doi.org/10.14924/dermatol.127.1659| ref={{sfnRef|日本皮膚科学会|2017}} }}
 
== 関連項目 ==
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*[[形成外科学]]
*[[皮膚科学]]
*[[外科学]]
*[[整形外科学]]
*[[湿潤療法]]
 
== 外部リンク ==
* [http://www.woundhealing-center.jp/ NPO法人・創傷治癒センター/傷・褥瘡の情報サイト]
 
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{{救急医学}}
{{DEFAULTSORT:そうしよう}}