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{{Commonscat|Reduviidae|サシガメ科}}
'''サシガメ'''(刺椿象・刺亀虫)は[[カメムシ目]][[カメムシ亜目]]の'''サシガメ科''' Reduviidae の[[昆虫]]の総称。世界で900以上の属に分類される6,000種以上が知られる。時にはサシガメ上科の他の科を含めて「サシガメ」と総称することもある<ref>名前や形が似たものに[[マキバサシガメ|マキバサシガメ科]]があるが、系統的に近いものではないと考えられて別の上科に分類されている</ref>。
 
== 特徴 ==
一般の[[カメムシ]]類とは異なり捕食性である。多くの種は主として昆虫などを捕食するが、ヒトを含む[[脊椎動物]]に対する吸血性を発達させたものがあり、昆虫食の種でも捕らえたり触れたりしたときなどに偶発的にヒトを刺すこともある。ヒトなどから吸血する種の一部は[[感染症]]の媒介者ともなり、[[シャーガス病]]の原因となる。トリパノゾーマを媒介するブラジルサシガメなどの ''Triatoma'' 属の種が有名である。
 
外形は一般のカメムシ類に比べやや細長い体型のものが多い傾向があり、[[カモドキサシガメ]]亜科のように非常に細いものもあるが、一部には腹部の両側が張り出した形のものもある。頭部は普通のカメムシ類が三角形であるのに対して、細長く、複眼は前胸から前方に離れており、左右に突き出していることが多い。また、普通は両複眼の間かその直後にある横溝で前頭部と後頭部とに分けられる。口器は3節からなる<ref>これに対し、マキバサシガメ科の口吻は4節からなり、このような特徴の差異は両者が互いに別の系統に属することの有力な根拠とされる。</ref>下唇が外を覆い内部に細い口針を格納した口吻で、普通のカメムシ類の口吻が針状で胸部の下に折り畳まれているのに比べ、はるかに太くて短く、頭部の前端から前方に突き出して下方に弓なりに湾曲し、鉤状になって頭部の下面に収まる。
 
胸部は幅広くはならず、前胸腹板にはヤスリ状の発音器を持つ。中胸腹板と後胸腹板は癒合し、比較的滑らかに腹部に続く。一部には[[]]を退化させたものがある。
 
[[ヤニサシガメ]]のように樹上生活のものは、一般に脚が細長く動作が緩慢なものが多いのに対し、[[キイロサシガメ]]のように地上生活のものは、太い脚を持ち活発なものが多い。何れも、前脚は(種によっては中脚も)太く発達し獲物を捕獲する目的に適しているが、[[カマキリ]]の前脚の鎌のようにまで特殊化しているものは少ない。
 
== 生息環境 ==
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== 利害 ==
[[画像:ヤニサシガメ2.jpg|thumb|right|245px|マツの樹皮上のヤニサシガメ幼虫]]
多くの種は昆虫を主食とすることから、田畑においては害虫を食う[[益虫]]としての役割が期待できる。例えば松の葉を食い荒らし幼虫の毒針が人体被害を引き起こす[[マツカレハ]]にとっては、[[ヤニサシガメ]]は有力な天敵である。しかしながら、サシガメを捕らえたときや触れたときに、口針でヒトを刺すことがあり、このとき獲物を仕留めるときために用いられる毒が注入されるので非常に強い痛みを感じる。多くの非社会性の[[ハチ]]より痛いくらいで、刺されたときの痛みが強い部類である[[アシナガバチ]]や[[ベッコウバチ]]類の毒針に刺されたときの痛みに匹敵する。昆虫学者のエヴァンズは自分が首筋をかま刺されたときのことを述べ、数日間は捕虫網が振れなかったと言っている。また、[[中央アジア]]の王達が捕虜を拷問するのにこのの虫を使ったとの話を伝えている<ref>エヴァンズ/日高(1972)、p.239</ref>。
 
吸血性の種は、[[衛生害虫]]として扱われる。吸血時に捕食性の種に刺されたときのような激痛は起きないが、吸血後に著しく発赤、腫脹し、灼熱感を伴う。中南米産の約90種の吸血性サシガメのうち約50種から[[寄生虫|寄生性]]の原虫 ''Trypanosoma cruzi'' が検出されており、うち10-12種がヒトなどの動物に病原体の媒介を引き起こしているとされる。''Trypanosoma cruzi'' の感染症は、アメリカトリパノソーマ症、あるいは[[シャーガス病]]として知られている。ヒトへの感染を引き起こす媒介種として、[[ブラジル]]南部、[[ウルグアイ]]、[[パラグアイ]]、[[ボリビア]]、[[アルゼンチン]]、[[チリ]]などに分布するブラジルサシガメ ''Triatoma infestans'' [[中央アメリカ]]から[[メキシコ]]にかけて分布するメキシコサシガメ ''Triatoma dimidiata'' とベネズエラサシガメ ''Rhodnius prolixus'' 、ブラジルの一部地方に分布するアカモンサシガメ ''Panstrongylus megistus'' の4種の住家性種が特に重視されている。