「世界遺産」の版間の差分

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[[ファイル:PitonValley.JPG|thumb|ピトン管理地域。経済的な小国にとって、観光振興に繋がる世界遺産の登録は決定的に重要であり、セントルシアでも認定書授与式は国を挙げての大イベントになったという<ref>{{Harvnb|松浦|2008|p=268}}</ref>。]]
世界遺産審議に当たっては、世界遺産を持たない(もしくは少ない)国の推薦を優先することとされるが、これが過剰に考慮されることへの批判もある。たとえば、[[セントルシア]]初の世界遺産「[[ピトン|ピトン管理地域]]」(2004年)が諮問機関の厳しい評価を覆して逆転で登録された背景には、同国がそれまで世界遺産を持っていなかった事情が斟酌された可能性が指摘されている<ref>{{Harvnb|七海|2006|p=4}}</ref>。これは例外ではなく、2011年の[[第35回世界遺産委員会]]では、ついに登録勧告された物件よりも逆転登録された物件が上回り、価値の証明や保護管理計画の不十分な物件を世界遺産に登録してしまうことは、諮問機関からも問題視される事態になった<ref name = yoshida2012_p26>{{Harvnb|吉田|2012a|p=26}}</ref>。この際に逆転を果たした物件は、アフリカ、アラブ、ラテンアメリカの物件が主だった<ref name = yoshida2012_p26 />。こうした傾向は、2002年に策定され、2007年に改訂された戦略的行動指針の中では、「信頼性」に関わる問題点とされている<ref>{{Harvnb|東京文化財研究所|2017|pp=122-123}}</ref>。そもそも現在の[[主権国家]]の国境線は、自然や文化の代表性に配慮して引かれているわけではないため、すべての条約締約国が各1件以上の世界遺産を持つことは、かえってリストに偏りをもたらす可能性もある<ref>{{Harvnb|河上|2008|pp=16-17}}</ref>。
 
このような世界遺産の地域格差とその是正策としての優先制、あるいは真正性・価値観の押しつけを「上から目線で、世界遺産はユネスコの[[覇権主義]]の道具と化し、ユネスコのための[[文化ヘゲモニー]]である」との辛辣な批判意見も噴出してきている<ref>{{Cite web |url=https://www.nottingham.ac.uk/home/featureevents/2018/world-heritage-authenticity-development-and-espistemological-de-linking.aspx |title=World heritage: authenticity, development and espistemological de-linking |work=Donna Chambers |publisher=[[:ja:ノッティンガム大学|University of Nottingham]] |date=2018-03-09 |accessdate=2018-07-21}}</ref>。
 
==== 経済格差 ====