「たのしい川べ」の版間の差分

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物語の前半と後半では主人公が異なる。前半はもぐら、後半はひきがえるが主人公である。
 
地面の下にある自宅の大掃除をしていたもぐらは、汚れ仕事に嫌気がさして家を飛び出し川の岸べにやってきた。気のいい川ねずみのラッティと出会って友人になったもぐらは、川べりのねずみの家で同居をはじめる。物語の前半では彼らの過ごす四季の生活や出会う近隣の動物たちなどが、川べりの風物とともに牧歌的に描かれる。
 
その近所には大きな古い屋敷があり、ひきがえるの若旦那が住んでいた。物語の後半は一転してこのひきがえるを中心に目まぐるしく展開する。ひきがえるは陽気でつきあいのいい男だが、派手好きで飽きっぽく、つぎつぎに金のかかる道楽にはまって親から受け継いだ資産を無駄に費やし、周囲に迷惑をかける困った癖があった。その頃、馬車に凝っていたひきがえるは、ねずみともぐらに一緒に馬車で旅行に出ることを提案し、3匹は馬車で旅に出る。しかし数日も経つとひきがえるは早くも飽きてしまい何も仕事をしなくなった。そんなある日、彼らの馬車は街道上で自動車に煽られて横転してしまう。後始末を押しつけられたねずみともぐらは散々な目に遭ったのち、ようやく家に戻ってきた。
 
何週間か経ち、ねずみの家にあなぐまが訪ねてきた。事故のあと、今度は自動車に凝りだしたひきがえるはたちまちスピード狂になり、衝突事故を繰り返して「街道の暴れん坊」のあだ名をつけられ、近隣の恐怖の的になっていた。旧友の息子であるひきがえるを心配したあなぐまは、ねずみともぐらを助手に、ひきがえるを屋敷に閉じ込めて人格矯正を試みる。しかし、ひきがえるは見張り当番のねずみを騙し、まんまと屋敷から逃げ出すことに成功する。
 
地元から立ち退いたひきがえるは、盗んだ自動車で事故を起こして逮捕され刑務所に入れられる。やがて牢役人の娘の助けで刑務所から脱走し、追跡からもあやうく逃れて苦労の末に故郷に戻ったひきがえるは、ねずみから留守中に屋敷が森のイタチの軍団に占拠されていることを知らされる。屋敷に乗り込もうとして何度か殺されかけたひきがえるであったが、あなぐまが先代から聞いていた秘密の抜け穴を通って邸内への侵入に成功し、油断していたイタチの軍団を追い払い屋敷を取り戻した。
 
ひきがえるは近隣の動物仲間を呼んで記念のパーティーを開く。その会に現れたひきがえるは以前とはすっかり変わっていた。さまざまな苦労をしてきたひきがえるは落ち着いた控えめな紳士になり、以後は静かに生活したのであった。
 
ひきがえるは近隣の動物仲間を呼んで記念のパーティーを開く。その会に現れたひきがえるは以前とはすっかり変わっていた。さまざまな苦労をしてきたひきがえるは落ち着いた控えめな紳士になり、以後は静かに生活したのであった。
== 邦訳 ==
古いものでは、1940年に[[白林少年館]]出版部より刊行された中野好夫の抄訳が存在する。完訳は白林少年館の設立者であった[[石井桃子]]が[[1950年]]に[[英宝社]]より『ひきがえるの冒険』の題名で刊行し、この訳を改訂して中野訳の表題を引き継いだ[[ハードカバー]]『たのしい川べ ―ひきがえるの冒険―』が[[1963年]]に[[岩波書店]]より刊行された。この岩波版では、[[E・H・シェパード]]の挿絵を用いている。