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2018年6月8日国連の[[国際労働機関]]は、年次総会で職場でのセクハラを含む[[ハラスメント]]をなくすため、条約を制定すべきとした委員会報告を採択、2019年総会でハラスメント対策として初の国際基準となる条約制定を目指す<ref>2018年6月9日中日新聞朝刊3面</ref>。
 
===アメリカ===
アメリカでは[[1986年]]に[[合衆国最高裁判所]]がヴィンソン<ref>{{lang-en-short|Vinson}}</ref>対メリター・セービングス・バンク<ref>{{lang-en-short|Meritor Savings Bank}}</ref>の裁判で初めて、セクハラ行為が人権法に違反する性差別であると認められた。<!--コンセンサスもなにも、それ以前から訴訟は起こっているのでは。1991年に完全に確立されたという意味なら、その出典をお願いします。 さらに[[1991年]]に連邦最高裁判事のクラレンス・トーマスが元部下のアニタ・ヒルにセクハラを告発される公聴会がテレビ中継される騒ぎになり、これによりアメリカ社会にセクハラに関するコンセンサスが得られることになった。-->
 
==日本==
[[日本]]では、[[1980年代]]半ば以降に使用されるようになった。1986年に起きた[[西船橋駅ホーム転落死事件]]で、起訴された女性を支援する女性団体がセクハラという言葉を使い出した。このときは、酔っ払いとそれに絡まれた女性との間で起きた偶発的な刑事事件ということもあり、セクハラという概念も言葉もあまり広がらなかった。
 
[[1989年]]8月に福岡県の出版社に勤務していた[[晴野まゆみ]]が上司を相手取りセクハラを理由とした日本初の民事裁判を起こした。職場を舞台にした上司と部下との間で起きた事件ということで普遍性があり、これまで日本の職場でセクハラと意識されず、何気なく行われて来た女性に対する行為や発言がセクハラになるのかといった身近な話題となり、テレビや雑誌で盛んに扱われた。こうして、1989年の[[新語・流行語大賞]]の新語部門・金賞を「セクシャルハラスメント」が受賞。授賞式で表彰されたのは、2年前の1987年に裁判を終えている西船橋駅ホーム転落死事件の[[弁護士]]だった。これは1989年の流行語のきっかけとなった福岡県のセクハラ訴訟が当時は係争中で決着していなかったためである(民事裁判は1992年に原告である晴野側の全面勝訴によって決着した)。
 
その後、セクハラは一過性の流行語で終わらずに、
* [[1990年]]に部下に強制猥褻行為をした上司への慰謝料支払命令、福岡事件。
* [[1992年]]に嘘の異性関係について噂を流布した上司と会社への慰謝料支払い命令。
* [[1994年]]に問題化した[[就職氷河期]]の新卒女子へのセクハラ面接。
* [[1996年]]に巨額の訴訟で話題になった米国三菱自動車セクハラ事件。
* [[1997年]]4月から[[AIU保険会社]]日本支社が発売開始したセクハラ保険。
など、1990年代を通じて日本語として浸透、定着していった。また1992年に晴野まゆみが上司を相手取りセクハラを理由とした裁判で全面勝訴し、今日のセクハラ防止ガイドラインが生まれる起爆剤にもなった。
 
政府などの対応としては、[[雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律|男女雇用機会均等法]]の1997年改正で性的嫌がらせへの配慮を盛り込み、2007年の改正で範囲を拡大、男性への性的嫌がらせも配慮の対象としている。ただし、(雇用機会均等などと比べ)官庁、政治家、裁判所ともにあまり厳罰に処そうといった考えはなく、性的嫌がらせを性差別としては扱っていないという{{要出典|date=2018年4月}}。
 
国際労働機関が80ヵ国の現状を調査した結果、仕事に関する暴力やハラスメントを規制する国は60ヵ国で、[[日本]]は規制の無い国とされた<ref>2018年5月20日中日新聞朝刊2面</ref>。日本政府は「現行法令でセクハラ罪は存在しない」とする答弁書を[[閣議]]決定<ref>2018年6月4日中日新聞朝刊2面</ref>。
 
セクハラは労働問題の中でも数の多いトラブルであり、労働局に寄せられる男女雇用機会均等法に関する相談では4割を超えている<ref name="mhlw_gimu">{{Cite web |url=http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11900000-Koyoukintoujidoukateikyoku/00.pdf |title=職場のセクシュアルハラスメント対策はあなたの義務です!! |format=PDF |publisher=厚生労働省 |accessdate=2018-04-26 }}</ref>。また、[[スクール・セクシュアル・ハラスメント]]も日常的に発生しており、例えば2016年度に「わいせつ行為及びセクシュアル・ハラスメント」で懲戒処分を受けた教育職員は226人であった(男性223人・女性3人)<ref name="school_data">{{Cite web |date=2017-12-27 |url=http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/detail/__icsFiles/afieldfile/2017/12/27/1399625_01.pdf |title=わいせつ行為等に係る懲戒処分等の状況(教育職員)(平成28年度) |format=PDF |publisher=文部科学省 |accessdate=2018-04-26 }}</ref>。
 
職場におけるセクハラにおいては、男女雇用機会均等法に違反するため企業は解決のための措置を取らなければならない。一方で刑法上の規定はないため、加害者に対しては、各組織によって懲戒処分がなされ、悪質なケースでは強制わいせつ罪等で対応する。なお、職場や学校のガイドライン等ではセクハラの定義をやや抽象的に留め、「相手の意思に反して不快や不安な状態に追いこむ性的な言葉や行為」と具体的な言及は避けることがある。この場合はセクハラを防ぐ注意喚起のためのものと考えられ、特定の行為がセクハラに当たるか否かの判定基準は人事院規則などが別に定める<ref>https://www.targma.jp/vivanonlife/2018/01/post42708/</ref>。注意喚起の例としては例えば、「職場に限らず一定の集団内で、性的価値観により、快不快の評価が分かれ得るような言動を行ったり、そのような環境を作り出すことを広く指して用いる」といった形が挙げられる。そしてこのような定義を踏まえて、より具体的な事例として、異性にとって性的に不快な環境を作り出すような言動(職場に水着写真を貼るなど)をすることや、自分の行為や自分自身に対して相手が「不快である」と考えているのも関わらず、[[法令]]や[[契約]]の履行以外での接触を要求すること等が定義される。このように定義がやや曖昧になる性質から、行為者が自己の行為をセクシャルハラスメントに当たるものと意識していないこともあり、「認識の相違」と「個人の主観」によって人間関係の悪化が長期化、深刻化する例も見られる。
 
対象・被対象者の性別については、男性から女性、女性から男性、男性から男性、女性から女性のすべての場合がある<ref>[http://homepage3.nifty.com/hamachan/kitamoto.html 誠昇会北本共済病院事件]</ref><ref>『女性同士でセクハラ…グアムの日系子会社、24万ドル和解』2008年3月27日付配信 読売新聞</ref>。つまり用語の本来の意味では[[性別]]は無関係だが、実際には「男性から女性」に対する行為であることが多い。しかし、2007年4月1日施行の改正[[雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律|男女雇用機会均等法]]により、「男性・女性から男性」へのセクハラも禁止対象になった。また、雇用管理上必要な「措置」をとるよう事業主に義務付けられ、従来の「配慮義務」より厳しくなり、是正指導に応じない場合は企業名が公表される。したがって、男女問わず、従業員が他の従業員に聞こえるように噂話をすることは、環境型セクハラとして違法行為となりうる。しかし、まだ日が浅いこともあり、十分な対策を講じていない企業もあり、部下や同僚に[[猥談]]を強要することや、風俗店に無理やり誘うこと、従業員の噂話などは組織によっては未だ残っている。そのためセクハラ被害を訴え出ることが恥ずかしい、相談しにくいと感じ、内在化しやすい<ref name="20080122nikkeibo">『女性上司から男性へのセクハラ 手作りの弁当や食事の誘いが増えた場合、どうするか』2008年1月22日付配信 日経ビジネスオンライン</ref>。またセクハラ被害を訴えるとセクシュアリティを侮辱されるなど、二次被害や二重の性差別に遭う事もある<ref>{{Cite web|author=[[村田らむ]]|url=https://toyokeizai.net/articles/-/217929|title=男が受けるセクハラ被害が軽視される不条理|date=2018-04-23|website=東洋経済オンライン|accessdate=2018-04-23}}</ref><ref>{{Cite web |url=https://mainichi.jp/articles/20180422/k00/00m/040/029000c |title=セクハラ告発:記者に中傷、2次被害 専門家らが擁護論 |date=2018-04-21 |publisher=毎日新聞 |accessdate=2018-04-26}}</ref><ref>{{Cite web |url=http://bunshun.jp/articles/-/7134 |title=福田次官セクハラ更迭 なぜかテレ朝の女性記者が叩かれる日本 |date=2018-04-21 |publisher=文春オンライン |accessdate=2018-04-26}}</ref>。
 
今日では、生物学的な性別と[[性同一性]]とが異なるために、性別によって文化的・社会的な取扱いが区別されるような場面で、自己の同一性と異なる振る舞いや[[性役割]]を要求され精神的苦痛を被るという[[性同一性障害]]を抱える人々の問題や、[[性的指向]]を同性とする人々すなわち[[同性愛者]]に対する差別的言動の問題もセクシャルハラスメントを論ずる際に欠かすことができない視点となりつつある。2014年7月からは同性愛やトランスジェンダーなど[[LGBT]]に対する差別的言動もセクハラであるとし、雇用主は措置義務をおうこととなった<ref>2013年12月20日 第139回労働政策審議会雇用均等分科会の議事録について[http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/0000037947.html] </ref>。
 
=== 法的観点 ===
法律的には、2つの段階に区分される。
* 一次被害 - 強要(例。部下・同僚の異性の「意思に反して」性的関係を求める)。意に反するとは、「要求を受け入れないと昇進させない」などと対価を示した場合は相手が拒まなくてもセクハラになりえ、そうでない場合は相手が拒んだ後にしつこく強要した場合がセクハラになるという指針を人事院が作成している<ref>https://www.targma.jp/vivanonlife/2018/01/post42633/</ref>。
: 強制わいせつや強姦(婦女暴行)などの刑事案件についても、場合によってセクハラに含められることがある。
 
* 二次被害
*# 中傷(例。上記を断られた報復に、社内外に事実無根のことを流され、噂を理由に仕事を外されたり、解雇される)
*# 周囲の同調(例。中傷を信じた周囲の異性達が続々と性交を要求したり、断られた報復に集団で被害者潰しにかかる)
*# 被害者の[[心的外傷後ストレス障害|PTSD]](例。中傷を耳にした人達から白眼視され、いじめられ、心に深い傷を負う)
*# 被害者の[[精神障害]](例。美しくあることで傷つくと無意識のうちに記憶、美しく装うこと・異性を極度に恐れる。
*# 被害者の生活の破綻(例。職場でひどい目にあった記憶が強すぎて社会復帰できず、生活が困難になる)
*# 被害者の人間不信による人間関係の破綻(例。信頼した人々から傷つけられた結果、[[引きこもり]]化)
 
(1)(2)は労働事件(刑事事件)、(3)〜(6)は民事事件(損害賠償請求訴訟)に相当する。
 
弁護士には得意分野・専門分野があるため、労働問題に強い弁護士の対処が望ましい。
 
犯罪被害者支援団体は、『被害者が上記(3)〜(6)に陥った場合、被害者が加害者に立ち向かうことは精神的・経済的に不可能であるため、行政主導による被害者救済が求められる。』と主張している。なお、セクシャルハラスメントとしての明確な法律は存在しないため、法的にも未整備な部分が多く、犯罪としての立件がほとんどできないのが現状となっている。
 
=== 加害者に対する処分と責任 ===
セクハラの概念が知られるきっかけとなった[[西船橋駅ホーム転落死事件]]では、男性の都立高校体育科教員によるいやがらせを女性が避けようとして身体を突いたところホーム下に転落し、そこに進入してきた電車に巻き込まれて死亡した。この事件の裁判では女性の[[正当防衛]]が認められ、女性の[[無罪]]が確定した。
 
最近ではセクハラの加害者に対する制裁<ref>制裁に関しては就業規則や取り決めや男女雇用機会均等法がある企業・学校などの内部的制裁が多いが、法的にはセクハラ自体は明文化されておらず、十分な整備ができていない。</ref>が増えてきており、ニュースでも報道される。一般会社や公務員の[[就業規則]]でも禁止や注意が盛り込まれるケースが多く、職場にはセクハラ防止委員会が設置されるようになった。またセクハラを理由に[[懲戒解雇]]ないし長期の停職などで処分され、退職を余儀なくされるケースも少なくない。特に教育機関で生徒に対してのセクハラについては懲戒解雇を前提の処分にし、教員免許を抹消すべきだとの批判がある。一方で公立中学ではセクハラ冤罪により懲戒解雇が取り消された事例もある。例えば、生徒にマッサージをしたのがわいせつ目的だとされたが、静岡県の人事委員会は、学校の判断を覆しマッサージ目的だっと事実認定しなおした。セクハラだと騒いで教師に圧力をかけようとする事例を排除するためには、被害者の主観に配慮しつつも、証拠や証言の矛盾点など客観性に配慮した事実認定が欠かせない。逆に、3度もセクハラで問題を起こした人間が理事長になっている学校もあり、特に教授や、理事など権限の強い上層部に対しては処分が非常に甘い(社員公平扱いの原則違反)との批判が強い。
 
=== 実態 ===
 
==== 職場 ====
労働局に寄せられたセクハラ相談件数は、2014年度で11,289件であった<ref>{{Cite web |url=http://www.gender.go.jp/about_danjo/whitepaper/h27/zentai/html/zuhyo/zuhyo01-04-14.html |title=都道府県労働局雇用均等室に寄せられた職場におけるセクシュアル・ハラスメントの相談件数 |publisher=内閣府男女共同参画局 |accessdate=2018-04-26 }}</ref>。このうち相談者の内訳は、女性労働者からが59.6%、男性労働者からが5.5%、事業主からが16.4%、その他からが18.6%である。セクハラ相談件数は、男女雇用機会均等法に関する相談のうち45.4%にあたる<ref name="mhlw_gimu"/>。
 
しかし、一般に性犯罪の被害申告率は低く、盗難や強盗が概ね6割以上であるのに対し、性犯罪は1割強である<ref>{{Cite web |url=http://www.moj.go.jp/content/000010429.pdf |title=第3回犯罪被害実態(暗数)調査結果概要 |format=PDF |publisher=法務総合研究所 |accessdate=2018-04-26 }}</ref>。そのためセクハラの暗数も相当数存在すると考えられ、実際に例えば、労働政策研究・研修機構によると正社員のセクハラ経験率は34.7%だという<ref>{{Cite web |url=https://apj.aidem.co.jp/current/detail/1352.html |title=正社員のセクハラ経験率は34.7%―妊娠等を理由とする不利益取扱い及びセクシュアルハラスメントに関する実態調査 |publisher=労働政策研究・研修機構 |accessdate=2018-04-26 }}</ref>。
 
==== 学校 ====
2016年度にわいせつ行為及びセクハラで懲戒処分を受けた教育職員は226人で過去最大であった<ref name="school_data"/>。加害者の内訳は、男性が223人、女性が3人であり、被害者の内訳は、自校の児童・生徒(元生徒を含む)が52.6%、自校の教職員が16.8%等である。ただし、特に生徒が被害に遭うケースでは、加害者である教師に口止めされたり、親を心配させまいとしたりと子どもが声を上げづらい構造があり、明るみに出るのは氷山の一角とされる<ref>{{Cite web |url=https://news.yahoo.co.jp/feature/887 |title=教師から「支配」のわいせつ―― 「スクールセクハラ」実態と構造 |accessdate=2018-04-26 }}</ref>。
 
== 類型 ==
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なお、セクハラ被害が心的外傷となり、心的外傷後ストレス障害 (PTSD) といった症状が出る場合もあり、その際の治療・心理的ケアも重要である(詳細は「[[心的外傷後ストレス障害#治療|心的外傷後ストレス障害 (PTSD) #治療]]」を参照)<ref name=":0" />。
 
===アメリカ===
アメリカでは[[1986年]]に[[合衆国最高裁判所]]がヴィンソン<ref>{{lang-en-short|Vinson}}</ref>対メリター・セービングス・バンク<ref>{{lang-en-short|Meritor Savings Bank}}</ref>の裁判で初めて、セクハラ行為が人権法に違反する性差別であると認められた。<!--コンセンサスもなにも、それ以前から訴訟は起こっているのでは。1991年に完全に確立されたという意味なら、その出典をお願いします。 さらに[[1991年]]に連邦最高裁判事のクラレンス・トーマスが元部下のアニタ・ヒルにセクハラを告発される公聴会がテレビ中継される騒ぎになり、これによりアメリカ社会にセクハラに関するコンセンサスが得られることになった。-->
 
==日本==
[[日本]]では、[[1980年代]]半ば以降に使用されるようになった。1986年に起きた[[西船橋駅ホーム転落死事件]]で、起訴された女性を支援する女性団体がセクハラという言葉を使い出した。このときは、酔っ払いとそれに絡まれた女性との間で起きた偶発的な刑事事件ということもあり、セクハラという概念も言葉もあまり広がらなかった。
 
[[1989年]]8月に福岡県の出版社に勤務していた[[晴野まゆみ]]が上司を相手取りセクハラを理由とした日本初の民事裁判を起こした。職場を舞台にした上司と部下との間で起きた事件ということで普遍性があり、これまで日本の職場でセクハラと意識されず、何気なく行われて来た女性に対する行為や発言がセクハラになるのかといった身近な話題となり、テレビや雑誌で盛んに扱われた。こうして、1989年の[[新語・流行語大賞]]の新語部門・金賞を「セクシャルハラスメント」が受賞。授賞式で表彰されたのは、2年前の1987年に裁判を終えている西船橋駅ホーム転落死事件の[[弁護士]]だった。これは1989年の流行語のきっかけとなった福岡県のセクハラ訴訟が当時は係争中で決着していなかったためである(民事裁判は1992年に原告である晴野側の全面勝訴によって決着した)。
 
その後、セクハラは一過性の流行語で終わらずに、
* [[1990年]]に部下に強制猥褻行為をした上司への慰謝料支払命令、福岡事件。
* [[1992年]]に嘘の異性関係について噂を流布した上司と会社への慰謝料支払い命令。
* [[1994年]]に問題化した[[就職氷河期]]の新卒女子へのセクハラ面接。
* [[1996年]]に巨額の訴訟で話題になった米国三菱自動車セクハラ事件。
* [[1997年]]4月から[[AIU保険会社]]日本支社が発売開始したセクハラ保険。
など、1990年代を通じて日本語として浸透、定着していった。また1992年に晴野まゆみが上司を相手取りセクハラを理由とした裁判で全面勝訴し、今日のセクハラ防止ガイドラインが生まれる起爆剤にもなった。
 
政府などの対応としては、[[雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律|男女雇用機会均等法]]の1997年改正で性的嫌がらせへの配慮を盛り込み、2007年の改正で範囲を拡大、男性への性的嫌がらせも配慮の対象としている。ただし、(雇用機会均等などと比べ)官庁、政治家、裁判所ともにあまり厳罰に処そうといった考えはなく、性的嫌がらせを性差別としては扱っていないという{{要出典|date=2018年4月}}。
 
国際労働機関が80ヵ国の現状を調査した結果、仕事に関する暴力やハラスメントを規制する国は60ヵ国で、[[日本]]は規制の無い国とされた<ref>2018年5月20日中日新聞朝刊2面</ref>。日本政府は「現行法令でセクハラ罪は存在しない」とする答弁書を[[閣議]]決定<ref>2018年6月4日中日新聞朝刊2面</ref>。
 
セクハラは労働問題の中でも数の多いトラブルであり、労働局に寄せられる男女雇用機会均等法に関する相談では4割を超えている<ref name="mhlw_gimu">{{Cite web |url=http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11900000-Koyoukintoujidoukateikyoku/00.pdf |title=職場のセクシュアルハラスメント対策はあなたの義務です!! |format=PDF |publisher=厚生労働省 |accessdate=2018-04-26 }}</ref>。また、[[スクール・セクシュアル・ハラスメント]]も日常的に発生しており、例えば2016年度に「わいせつ行為及びセクシュアル・ハラスメント」で懲戒処分を受けた教育職員は226人であった(男性223人・女性3人)<ref name="school_data">{{Cite web |date=2017-12-27 |url=http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/detail/__icsFiles/afieldfile/2017/12/27/1399625_01.pdf |title=わいせつ行為等に係る懲戒処分等の状況(教育職員)(平成28年度) |format=PDF |publisher=文部科学省 |accessdate=2018-04-26 }}</ref>。
 
職場におけるセクハラにおいては、男女雇用機会均等法に違反するため企業は解決のための措置を取らなければならない。一方で刑法上の規定はないため、加害者に対しては、各組織によって懲戒処分がなされ、悪質なケースでは強制わいせつ罪等で対応する。なお、職場や学校のガイドライン等ではセクハラの定義をやや抽象的に留め、「相手の意思に反して不快や不安な状態に追いこむ性的な言葉や行為」と具体的な言及は避けることがある。この場合はセクハラを防ぐ注意喚起のためのものと考えられ、特定の行為がセクハラに当たるか否かの判定基準は人事院規則などが別に定める<ref>https://www.targma.jp/vivanonlife/2018/01/post42708/</ref>。注意喚起の例としては例えば、「職場に限らず一定の集団内で、性的価値観により、快不快の評価が分かれ得るような言動を行ったり、そのような環境を作り出すことを広く指して用いる」といった形が挙げられる。そしてこのような定義を踏まえて、より具体的な事例として、異性にとって性的に不快な環境を作り出すような言動(職場に水着写真を貼るなど)をすることや、自分の行為や自分自身に対して相手が「不快である」と考えているのも関わらず、[[法令]]や[[契約]]の履行以外での接触を要求すること等が定義される。このように定義がやや曖昧になる性質から、行為者が自己の行為をセクシャルハラスメントに当たるものと意識していないこともあり、「認識の相違」と「個人の主観」によって人間関係の悪化が長期化、深刻化する例も見られる。
 
対象・被対象者の性別については、男性から女性、女性から男性、男性から男性、女性から女性のすべての場合がある<ref>[http://homepage3.nifty.com/hamachan/kitamoto.html 誠昇会北本共済病院事件]</ref><ref>『女性同士でセクハラ…グアムの日系子会社、24万ドル和解』2008年3月27日付配信 読売新聞</ref>。つまり用語の本来の意味では[[性別]]は無関係だが、実際には「男性から女性」に対する行為であることが多い。しかし、2007年4月1日施行の改正[[雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律|男女雇用機会均等法]]により、「男性・女性から男性」へのセクハラも禁止対象になった。また、雇用管理上必要な「措置」をとるよう事業主に義務付けられ、従来の「配慮義務」より厳しくなり、是正指導に応じない場合は企業名が公表される。したがって、男女問わず、従業員が他の従業員に聞こえるように噂話をすることは、環境型セクハラとして違法行為となりうる。しかし、まだ日が浅いこともあり、十分な対策を講じていない企業もあり、部下や同僚に[[猥談]]を強要することや、風俗店に無理やり誘うこと、従業員の噂話などは組織によっては未だ残っている。そのためセクハラ被害を訴え出ることが恥ずかしい、相談しにくいと感じ、内在化しやすい<ref name="20080122nikkeibo">『女性上司から男性へのセクハラ 手作りの弁当や食事の誘いが増えた場合、どうするか』2008年1月22日付配信 日経ビジネスオンライン</ref>。またセクハラ被害を訴えるとセクシュアリティを侮辱されるなど、二次被害や二重の性差別に遭う事もある<ref>{{Cite web|author=[[村田らむ]]|url=https://toyokeizai.net/articles/-/217929|title=男が受けるセクハラ被害が軽視される不条理|date=2018-04-23|website=東洋経済オンライン|accessdate=2018-04-23}}</ref><ref>{{Cite web |url=https://mainichi.jp/articles/20180422/k00/00m/040/029000c |title=セクハラ告発:記者に中傷、2次被害 専門家らが擁護論 |date=2018-04-21 |publisher=毎日新聞 |accessdate=2018-04-26}}</ref><ref>{{Cite web |url=http://bunshun.jp/articles/-/7134 |title=福田次官セクハラ更迭 なぜかテレ朝の女性記者が叩かれる日本 |date=2018-04-21 |publisher=文春オンライン |accessdate=2018-04-26}}</ref>。
 
今日では、生物学的な性別と[[性同一性]]とが異なるために、性別によって文化的・社会的な取扱いが区別されるような場面で、自己の同一性と異なる振る舞いや[[性役割]]を要求され精神的苦痛を被るという[[性同一性障害]]を抱える人々の問題や、[[性的指向]]を同性とする人々すなわち[[同性愛者]]に対する差別的言動の問題もセクシャルハラスメントを論ずる際に欠かすことができない視点となりつつある。2014年7月からは同性愛やトランスジェンダーなど[[LGBT]]に対する差別的言動もセクハラであるとし、雇用主は措置義務をおうこととなった<ref>2013年12月20日 第139回労働政策審議会雇用均等分科会の議事録について[http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/0000037947.html] </ref>。
 
=== 法的観点 ===
法律的には、2つの段階に区分される。
* 一次被害 - 強要(例。部下・同僚の異性の「意思に反して」性的関係を求める)。意に反するとは、「要求を受け入れないと昇進させない」などと対価を示した場合は相手が拒まなくてもセクハラになりえ、そうでない場合は相手が拒んだ後にしつこく強要した場合がセクハラになるという指針を人事院が作成している<ref>https://www.targma.jp/vivanonlife/2018/01/post42633/</ref>。
: 強制わいせつや強姦(婦女暴行)などの刑事案件についても、場合によってセクハラに含められることがある。
 
* 二次被害
*# 中傷(例。上記を断られた報復に、社内外に事実無根のことを流され、噂を理由に仕事を外されたり、解雇される)
*# 周囲の同調(例。中傷を信じた周囲の異性達が続々と性交を要求したり、断られた報復に集団で被害者潰しにかかる)
*# 被害者の[[心的外傷後ストレス障害|PTSD]](例。中傷を耳にした人達から白眼視され、いじめられ、心に深い傷を負う)
*# 被害者の[[精神障害]](例。美しくあることで傷つくと無意識のうちに記憶、美しく装うこと・異性を極度に恐れる。
*# 被害者の生活の破綻(例。職場でひどい目にあった記憶が強すぎて社会復帰できず、生活が困難になる)
*# 被害者の人間不信による人間関係の破綻(例。信頼した人々から傷つけられた結果、[[引きこもり]]化)
 
(1)(2)は労働事件(刑事事件)、(3)〜(6)は民事事件(損害賠償請求訴訟)に相当する。
 
弁護士には得意分野・専門分野があるため、労働問題に強い弁護士の対処が望ましい。
 
犯罪被害者支援団体は、『被害者が上記(3)〜(6)に陥った場合、被害者が加害者に立ち向かうことは精神的・経済的に不可能であるため、行政主導による被害者救済が求められる。』と主張している。なお、セクシャルハラスメントとしての明確な法律は存在しないため、法的にも未整備な部分が多く、犯罪としての立件がほとんどできないのが現状となっている。
 
=== 加害者に対する処分と責任 ===
セクハラの概念が知られるきっかけとなった[[西船橋駅ホーム転落死事件]]では、男性の都立高校体育科教員によるいやがらせを女性が避けようとして身体を突いたところホーム下に転落し、そこに進入してきた電車に巻き込まれて死亡した。この事件の裁判では女性の[[正当防衛]]が認められ、女性の[[無罪]]が確定した。
 
最近ではセクハラの加害者に対する制裁<ref>制裁に関しては就業規則や取り決めや男女雇用機会均等法がある企業・学校などの内部的制裁が多いが、法的にはセクハラ自体は明文化されておらず、十分な整備ができていない。</ref>が増えてきており、ニュースでも報道される。一般会社や公務員の[[就業規則]]でも禁止や注意が盛り込まれるケースが多く、職場にはセクハラ防止委員会が設置されるようになった。またセクハラを理由に[[懲戒解雇]]ないし長期の停職などで処分され、退職を余儀なくされるケースも少なくない。特に教育機関で生徒に対してのセクハラについては懲戒解雇を前提の処分にし、教員免許を抹消すべきだとの批判がある。一方で公立中学ではセクハラ冤罪により懲戒解雇が取り消された事例もある。例えば、生徒にマッサージをしたのがわいせつ目的だとされたが、静岡県の人事委員会は、学校の判断を覆しマッサージ目的だっと事実認定しなおした。セクハラだと騒いで教師に圧力をかけようとする事例を排除するためには、被害者の主観に配慮しつつも、証拠や証言の矛盾点など客観性に配慮した事実認定が欠かせない。逆に、3度もセクハラで問題を起こした人間が理事長になっている学校もあり、特に教授や、理事など権限の強い上層部に対しては処分が非常に甘い(社員公平扱いの原則違反)との批判が強い。
 
=== 実態 ===
 
==== 職場 ====
労働局に寄せられたセクハラ相談件数は、2014年度で11,289件であった<ref>{{Cite web |url=http://www.gender.go.jp/about_danjo/whitepaper/h27/zentai/html/zuhyo/zuhyo01-04-14.html |title=都道府県労働局雇用均等室に寄せられた職場におけるセクシュアル・ハラスメントの相談件数 |publisher=内閣府男女共同参画局 |accessdate=2018-04-26 }}</ref>。このうち相談者の内訳は、女性労働者からが59.6%、男性労働者からが5.5%、事業主からが16.4%、その他からが18.6%である。セクハラ相談件数は、男女雇用機会均等法に関する相談のうち45.4%にあたる<ref name="mhlw_gimu"/>。
 
しかし、一般に性犯罪の被害申告率は低く、盗難や強盗が概ね6割以上であるのに対し、性犯罪は1割強である<ref>{{Cite web |url=http://www.moj.go.jp/content/000010429.pdf |title=第3回犯罪被害実態(暗数)調査結果概要 |format=PDF |publisher=法務総合研究所 |accessdate=2018-04-26 }}</ref>。そのためセクハラの暗数も相当数存在すると考えられ、実際に例えば、労働政策研究・研修機構によると正社員のセクハラ経験率は34.7%だという<ref>{{Cite web |url=https://apj.aidem.co.jp/current/detail/1352.html |title=正社員のセクハラ経験率は34.7%―妊娠等を理由とする不利益取扱い及びセクシュアルハラスメントに関する実態調査 |publisher=労働政策研究・研修機構 |accessdate=2018-04-26 }}</ref>。
 
==== 学校 ====
2016年度にわいせつ行為及びセクハラで懲戒処分を受けた教育職員は226人で過去最大であった<ref name="school_data"/>。加害者の内訳は、男性が223人、女性が3人であり、被害者の内訳は、自校の児童・生徒(元生徒を含む)が52.6%、自校の教職員が16.8%等である。ただし、特に生徒が被害に遭うケースでは、加害者である教師に口止めされたり、親を心配させまいとしたりと子どもが声を上げづらい構造があり、明るみに出るのは氷山の一角とされる<ref>{{Cite web |url=https://news.yahoo.co.jp/feature/887 |title=教師から「支配」のわいせつ―― 「スクールセクハラ」実態と構造 |accessdate=2018-04-26 }}</ref>。
 
 
==事例==