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'''ブラッドタイプ・ハラスメント'''(通称:'''ブラハラ'''もしくは'''ケツハラ'''<ref>[http://www.wakayamashimpo.co.jp/staffblog/2010/10/201010048433.html 秋の3部コラボ企画] - わかやま新報 Staff Blog</ref>)とは、[[血液型]](特に[[ABO式血液型]])によって人物の[[性格]]を判断し、相手を不快や不安な状態にさせる言動のことである。血液型を意味する {{lang-en|blood-type}} と、[[嫌がらせ]]を意味する {{lang-en|harassment}} を組み合わせた[[造語]]である<ref>海外記事を紹介するNewSphereでは[http://newsphere.jp/national/20140723-2/ 血液型に対する海外メディアの反応]を紹介した上で「海外では血液型と性格を結びつけることはないためか、日本のこうした慣習は新鮮なようだ」としている。その他の海外メディアも日本の奇妙(weird)な習慣として血液型性格診断を論じている([http://www.nytimes.com/2006/12/14/sports/baseball/14blood.html?_r=1&ref=sports&oref=slogin 米NYタイムズ記事]、[http://www.bbc.co.uk/news/world-asia-pacific-14024206 英BBC記事])。よって血液型と性格の関連性や、それを起因とする嫌がらせは日本独自の概念とされる</ref>。
'''ブラッドタイプ・ハラスメント'''(略称'''ブラハラ''')とは、日本において少数の[[血液型]]であるAB型に対する不当な評価であり、血液型について会話することで心理的な苦痛を与えていることである<ref name="エスプリ佐藤"/>。
 
== 解説問題の背景 ==
日本や韓国など一部の国では[[血液型性格分類]]が存在するが、血液型と性格の関連性は{{要検証|=科学的に否定されていると言ってよい|date=2018年4月}}<ref>学者による、十分な数の標本集団で、十分管理された統計においては、複数年にわたって特定の血液型と特定の性格に明確な関連性を示すデータは得られていない。血液型性格分類に対するステレオタイプを持つ被験者だけ、またはある年だけ見ると相関性が見られることもまれにあるが、同一調査を長期に渡って行うと逆方向の相関となる可能性もある。もしも長期に渡ってコンスタントに一定方向の相関が見られるならば、明らかに相関があると言えるのだが、そのようなデータは出てきていない。
1994年、当時福島大学の助教授であった心理学者の[[サトウタツヤ]]は、少数派の集団の方が評価が低いという2個の研究を元にして、このことが日本での血液型の小集団であるAB型の人々の印象が悪かった調査結果の原因だと考え、不当な評価が行われる小集団のAB型の人々は苦痛になっている可能性が高い、とした<ref name="エスプリ佐藤">{{Cite journal |和書|author=佐藤達哉 |title=ブラッドタイプ・ハラスメント |date=1994 |journal=現代のエスプリ |issue=324 |pages=154-164 }}</ref>。このことは、血液と性格に関係があるかどうかということではない<ref name="エスプリ佐藤"/>。単に人数的に少数というだけで、[[セクシャルハラスメント]]のような嫌がらせを受けることにつながるため、ブラッドタイプ・ハラスメントという用語を作り『現代のエスプリ』で発表した<ref name="エスプリ佐藤"/>。加害者は、多数派の血液型であることが想像されるとし、血液型を話題にすることで、ある一部の人に苦痛を味わわせているとした<ref name="エスプリ佐藤"/>。サトウタツヤは、2013年の『読売新聞』への寄稿でも、少数派の血液型への評価が否定的になりがちで、ブラッドタイプハラスメントだと紹介している<ref>サトウタツヤ『読売新聞』2013年10月21日夕刊大阪版10面。(東京版と西部版には確認したが掲載なし)</ref>。
*山崎賢治&坂元章(1992) 「血液型ステレオタイプによる自己成就現象~全国調査の時系列分析~」『日本社会心理学会第33回大会発表論文集』 - 血液型性格関連説が社会的に広まり始めたころから数年後の1978年を起点に1988年まで、日本人延べ32,347人の自己評価による性格の経年変化を調べ、自己評価の性格がステレオタイプに沿ったものへとより強化される傾向があることを示した。ただし最も大きな偏りを示した項目でも大量のデータでないと有意味とされない程度の微弱なものであった。
*武藤浩二・長島雅浩他(2012)「[https://kaken.nii.ac.jp/pdf/2011/seika/C-19/17301/22650191seika.pdf 教員養成課程における科学リテラシー構築に向けた疑似科学の実証的批判的研究]{{リンク切れ|date=2017年9月 |bot=InternetArchiveBot }}」『2011年度科研費研究成果報告書』 - 山崎賢治・坂元章(1992)は1978年から1988年までの11年間に毎年約3,000人(延べ32,347人)を解析したものであるが、このデータを2000年代にまで拡張して解析しても、同様の結果が出ることが判明した(詳細な人数・年数は報告書には未掲載)。
*山岡重行(2001)「第二夜 血液型性格診断に見るダメな大人の思考法―思いこみと勘違いのメカニズム」 『ダメな大人にならないための心理学』(pp.35-73)
*Sakamoto, A., & Yamazaki, K. (2004). Blood-typical personality stereotypes and self-fulfilling prophecy: A natural experiment with time-series data of 1978–1988. Progress in Asian Social Psychology, 4, 239–262.(上記の山崎賢治&坂元章(1992)と同様の内容)
*山岡重行 (2009) [http://ci.nii.ac.jp/naid/110007674296 血液型性格判断の差別性と虚妄性(自主企画(2))] 日本パーソナリティ心理学会大会 - 1999年から2009年までの6600人を調べたところ、血液型性格分類に対するステレオタイプを持つ被験者に限り多くの項目で有意差が出た。
*松井豊 (1991) 血液型による性格の相違に関する統計的検討 東京都立立川短期大学紀要 - 1980/82/86/88年の約1万人を調査したところ、上記の山崎賢治&坂元章(1992)と同じデータだが差は出ていないと述べている。
*縄田健悟(2014) 血液型と性格の無関連性 - 日米約1万人のデータを調べたが差は出なかった</ref> 。だが1970年代から2000年代前半にかけて、多くのテレビや書籍が根拠なく分類を広めたため、いまだに血液型と性格の関連性を信じている人もいる<ref>{{Cite web |author=MARI YAMAGUCHI |date=2005-05-06 |url=http://aol.mediresource.com/channel_health_news_details.asp?news_id=6661&news_channel_id=11&channel_id=11 |title=Myth about Japan blood types under attack |work= |publisher=The Canadian Press |accessdate=2014-04-05 |archiveurl=https://archive.is/20091228182320/http://aol.mediresource.com/channel_health_news_details.asp?news_id=6661&news_channel_id=11&channel_id=11 |archivedate=2009年12月28日 |deadurldate=2017年9月 }}</ref>。2000年代の終盤以降、血液型性格診断を取り扱うTV番組などによって血液型で性格を決めつけられるなど差別を受ける危険性が指摘されるようになり<ref name="血液型差別">山岡重行「{{PDFlink|[http://www.psych.or.jp/publication/worold_pdf/52/52-5.pdf テレビ番組が増幅させる血液型差別]}}」</ref>、ブラッドタイプ・ハラスメントと呼ばれて取り上げられるようになった<ref>{{cite news|url=http://www.ib.k.u-tokyo.ac.jp/major/303/419.html|title=平成20年度プレスクール論文賞論文|work=東京大学大学院新領域創成科学研究科 先端生命科学専攻|accessdate=2014-9-10}}</ref><ref name="ブラハラ"/>。
 
== 加害者心理 ==
心理学者の[[菊池聡]]は、1997年に思想雑誌『望星』でこの考えを紹介し、B型やAB型は、わがまま、自己中、二重人格とよくないイメージで表現され、これは人口比が少ないことと関係があり、こうした人が血液型の話題を持ち出された時の嫌な思いは、多数派にはなかなか理解できないとしている<ref>{{Cite journal |和書|author=菊池聡 |title=連載コラム 不思議の裏側(5) ブラッドタイプ・ハラスメント |date=1997-09 |journal=望星 |volume=28 |issue=9 |pages=89 }}</ref>。菊池聡は1998年に文化雑誌『月間百科』でも佐藤によるAB型の評価の研究を紹介しながら、特にAB型によくない評価が集中する少数派差別の構造的な差別性に言及し、ブラッドタイプ・ハラスメントという言葉で取り上げられていると紹介する、また講義でこのように紹介していくと最後に学生が「ところで先生の血液型は?」と質問するので心理学者の戦いは続く、と結んでいる<ref>{{Cite journal |和書|author=菊池聡 |date=1998-03 |title=血液型信仰のナゾ・後編 |journal=月刊百科 |issue=425 |pages=25-29}}</ref>。
{{main|血液型性格分類#血液型性格分類を信じる心理状態}}
血液型と性格の関連性を信じる一部の人々によってブラハラは引き起こされる。[[血液型性格分類]]には科学的根拠が全く無いにもかかわらず、当たっていると感じる人が多い理由として、以下のことが挙げられている。
 
*[[バーナム効果]]。誰にでも当てはまるような曖昧で一般的な性格をあらわす記述(他人から好かれたいと思っているなど)を、自分だけに当てはまる正確なものだと誤解してしまう現象<ref name="BONITA">{{cite news|url=http://bonitamessage.jp/ww/cont/id/1152|title=信じていいの、この占い。☆バーナム効果☆|work=BONITA message|accessdate=2014-7-25}}</ref>。
2016年に30超のハラスメントを800人にアンケートしたところ、62%の人がすべての種類がハラスメントに該当すると答えたものの、これを除いてハラスメントだと思わないものの2位にブラハラが該当した<ref>{{Cite news |title=パワハラ・セクハラ・マタハラ… ハラスメント経験者は4人に1人 上司への相談により退職勧告を受けたケースも! |newspaper=産経ニュース |date=2016-11-15 |url=https://www.sankei.com/economy/news/161115/prl1611150236-n1.html |accessdate=2018-09-28}}</ref>。
*[[確証バイアス]]。自分の信念を裏付ける記述のみを重視し、それに反する情報を軽視してしまうという現象<ref name="IT">{{cite news|url=http://blogs.itmedia.co.jp/tani/2014/07/16-4800.html|title=「確証バイアス」にご用心 ~血液型と性格との相関について~|work=ITmedia オルタナティブブログ|accessdate=2014-7-25}}</ref>。
*[[予言#自己成就予言|予言の自己成就]]。根拠のない記述であっても、それを信じて行動するとその記述通りの結果が生じてしまうという現象<ref name="JAW">{{cite news|url=http://www.jaw.or.jp/anzen/letter/no_25.htm|title=予言の自己成就|work=JAW 安全衛生ホームページ|accessdate=2014-7-25}}</ref>。
 
このため、加害者には相手を不快や不安な状態にさせる意図はなく、無意識のうちにブラハラを行っている場合もある。
サトウタツヤによる問題提起とは異なるが、『読売新聞』がブラッドタイプ・ハラスメントに言及し、1行にも満たない言及で、血液型による人事などでの差別に言及したこともある<ref name="ブラハラ">{{cite news|url=http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/news/20140722-OYT8T50051.html|title=科学 血液型と性格「関連なし」…日米1万人超を調査|work=読売新聞(YOMIURI ONLONE)|accessdate=2014-8-17}}</ref>{{リンク切れ|date=2015年12月}}。
 
== 行政機関の対応 ==
{{Main|血液型性格判断}}
[[厚生労働省]]熊本労働局などでは「血液型は職務能力とは全く関係ない」としており、血液型を採用面接などで尋ねないよう企業に求めている<ref name="ブラハラ">{{cite news|url=http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/news/20140722-OYT8T50051.html|title=科学 血液型と性格「関連なし」…日米1万人超を調査|work=読売新聞(YOMIURI ONLONE)|accessdate=2014-8-17}}</ref>{{リンク切れ|date=2015年12月}}<ref>厚生労働省熊本労働局の「血液型は職務能力とは全く関係ない」という発表内容は[http://kumamoto-roudoukyoku.jsite.mhlw.go.jp/riyousha_mokuteki_menu/zigyounusi/kose-saiyou.html 熊本労働局]のサイトで確認できる。2015年10月12日閲覧<br/></ref>。[[大阪労働局]]は、採用試験の応募用紙に血液型などの記入欄を設けていた企業に対し、実際に行政指導を行ったこともある<ref name="ブラハラ"/>{{リンク切れ|date=2015年12月}}。
 
== 出典 ==
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== 関連項目 ==
* [[血液型性格分類]]
* [[血液型占い]]
 
{{嫌がらせ}}