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|英名 = [[:en:Japanese eel|Japanese eel]]
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'''ニホンウナギ'''(日本鰻、[[学名]]:''Anguilla japonica'')は、[[ウナギ科]][[ウナギ属]]の[[ウナギ]]の一[[種 (分類学)|種]]。[[日本]]・[[朝鮮半島]]から[[ベトナム]]まで[[東アジア]]に広く分布する。河川生活期は色が黄ばんで見える事が「黄ウナギ」、海洋生活期は銀色に見える事から「銀ウナギ」(銀化ウナギ)と呼ばれる事がある<ref name="suisan.60.311">山内晧平、[httphttps://doi.org/10.2331/suisan.60.311 魚類の回遊と生殖機構に関する研究] 日本水産学会誌 Vol.60 (1994) No.3 P311-316</ref>。
 
== 特徴 ==
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== 生活史 ==
[[ファイル: Eel-life-circle1.svg|thumb|left|ウナギの生活環]]
海洋で産卵が行われ孵化した稚魚は汽水域から淡水の河川で成長する。湖沼河川で5年から12年程<ref name="suisan.60.311"/>度生活し性的な成熟が近づいた親魚は降海し産卵場所まで回遊する間に成熟する。一方、耳石に含まれる [[ストロンチウム]] の分析から[[ヨーロッパウナギ]]と同じように河川遡上を行わない「海ウナギ」や汽水と淡水を複数回行き来している「河口ウナギ」の存在が明かとなっている<ref>新井崇臣、[httphttps://doi.org/10.2331/suisan.73.652 耳石が解き明かす魚類の生活史と回遊] 日本水産学会誌 Vol.73 (2007) No.4 P652-655</ref><ref name="suisan.72.350"/>。なお、日本近海で捕獲された産卵回遊中の親魚(銀ウナギ)の耳石分析の結果から、再生産に関与している個体の約85%に淡水遡上歴が記録されていなかったとする研究がある<ref>Katsumi Tsukamoto, Izumi Nakai, [http://www.nature.com/nature/journal/v396/n6712/abs/396635a0.html Do all freshwater eels migrate?] Nature 396, 635-636 (17 December 1998), {{doi|10.1038/25264}}</ref>。
 
卵から2-3日で孵化した仔魚は'''[[レプトケファルス]]'''(葉形[[幼生]]、Leptocephalus)と呼ばれ、成魚とは異なり[[柳]]の[[葉]]のような形をしている。この体型はまだ遊泳力のない仔魚が、海流に乗って移動するための浮遊適応であると考えられている。仔魚・稚魚期は主に[[マリンスノー]]を餌としていることが明かになり<ref>{{cite journal|author=Michael J. Miller, Yoshito Chikaraishi, Nanako O. Ogawa, Yoshiaki Yamada, Katsumi Tsukamoto and Naohiko Ohkouchi|title=A low trophic position of Japanese eel larvae indicates feeding on marine snow|journal=Biol. Lett.|year=2012|doi=10.1098/rsbl.2012.0826}}</ref>
<ref>友田努ほか、[httphttps://doi.org/10.2331/suisan.81.715 ウナギ仔魚はマリンスノーの起源物質を摂取する] 日本水産学会誌 Vol.81 (2015) No.4 p.715-721</ref>
 
レプトケファルスは成長して稚魚になる段階で[[変態]]を行い、扁平な体から円筒形の体へと形を変え150-500日後に「[[シラスウナギ]]」となる<ref>橋本博、{{PDFlink|[http://www.fra.affrc.go.jp/kseika/211028/program4.pdf 完全養殖への挑戦その2 -シラスウナギの大量生産をめざせ!-]}} 水産総合研究センター第7回成果発表会講演要旨集</ref>。シラスウナギは体型こそ成魚に近くなっているが体はほぼ透明で、全長もまだ5 cmほどしかない。シラスウナギは[[黒潮]]に乗って生息域の東南アジア沿岸にたどり着き、川をさかのぼる。流れの激しいところは川岸に上陸し、水際を這ってさかのぼる。川で水棲昆虫・魚・甲殻類を捕食して成長し、5年から十数年ほどかけて成熟する。その後ウナギは川を下り、産卵場へと向かうが、その経路に関してはまだよく分かっていない。海に注ぐ河口付近に棲息するものは、[[淡水]]・[[汽水]]・[[海水]]に常時適応できるため、自由に行き来して生活するが、[[琵琶湖]]や[[猪苗代湖]]等の大型湖沼では、産卵期に降海するまで棲息湖沼と周辺の河川の淡水域のみで生活することが多い。また、近年の琵琶湖等、いくつかの湖沼では外洋へ注ぐ河川に堰が造られたり、大規模な河川改修によって外洋とを往来できなくなり、湖内のウナギが激減したため、稚魚の放流が行われている。
 
=== 産卵場所の解明 ===
長らく正確な産卵場所は不明で[[フィリピン]]東方海域とされていた時期もあるが、外洋域の[[深海]]ということもあり長年にわたる謎であった。しかし、[[2006年]]2月、魚類学者の[[塚本勝巳]]らの研究チームが、ニホンウナギの産卵場所が[[グアム島]]や[[マリアナ諸島]]の西側沖のマリアナ[[海嶺]]の[[スルガ海山]]付近であることを突き止めた<ref name="suisan.72.350">塚本勝巳、[httphttps://doi.org/10.2331/suisan.72.350 ウナギ回遊生態の解明] 日本水産学会誌 Vol.72 (2006) No.3 P350-356 (平成 17年度日本水産学会賞受賞)</ref>。これは孵化後2日目の仔魚を多数採集することに成功し、その[[遺伝子]]を調べニホンウナギであることを確認したものである<ref name="suisan.78.316">塚本勝巳、[httphttps://doi.org/10.2331/suisan.78.316 天然ウナギ卵発見の道] 日本水産学会誌 Vol.78 (2012) No.2 P316-319</ref><ref>Katsumi Tsukamoto, [http://www.nature.com/nature/journal/v439/n7079/abs/439929a.html Oceanic biology: Spawning of eels near a seamount.] Nature 439, 929 (23 February 2006), {{doi|10.1038/439929a}}</ref>これにより、「冬に産卵する」というかつての説は否定された。
 
[[2008年]]6月および8月には、水深が2,000m以上もある西マリアナ海嶺南部海域で[[水産庁]]と[[水産総合研究センター]]による調査チームが成熟したニホンウナギおよびオオウナギの捕獲に世界で初めて成功した<ref name="suisan.78.316"/><ref>黒木洋明、[httphttps://doi.org/10.2331/suisan.76.446 ウナギ親魚捕獲の現場] 日本水産学会誌 Vol.76 (2010) No.3 P446-448</ref>。トロールの曳網水深は200-300mであった。雄には成熟した精巣が、雌には産卵後と推定される収縮した卵巣が認められた。また、水深100-150 mの範囲で、孵化後2-3日経過したと思われる仔魚([[プレレプトケファルス]])26匹も採集された。さらに、プレレプトケファルスが生息する層の水温が、26.5-28℃であることを初めて確認した<ref>[http://www.springerlink.com/content/d034287351066298/fulltext.pdf?MUD=MP Discovery of mature freshwater eels in the open ocean(英文)]Fisheries Science </ref><ref name="suisan.78.316"/>。同チームは2009年の調査においてさらに南方の海域で8個体(雌4、雄4)のニホンウナギと2個体(雌1、雄1)のオオウナギを捕獲した。トロールの曳網水深は150-300mであり、周辺には海山のような浅場はなかった<ref>[http://www.fra.affrc.go.jp/pressrelease/pr21/210707/ ウナギの産卵生態調査の結果について] [[水産総合研究センター]] </ref>。これの結果から、海山上に生息しているわけではなく中層を遊泳しながら産卵をしていると考えられる<ref name="suisan.78.316"/>。
 
この推定を基に、塚本らの研究チームが周辺海域をさらに調査したところ、[[2009年]][[5月22日]]未明、マリアナ海嶺の南端近くの水深約160メートル、水温が約26℃の海域で、直径約1.6 mmの受精卵とみられるものを発見。遺伝子解析の結果、天然卵31個を確認した<ref name="suisan.78.316"/>。天然卵の採集は世界初であると同時に、水深約200 mで産卵され、約30時間かけてこの深さまで上がりながら孵化することも判明した<ref>[http://www.nature.com/ncomms/journal/v2/n2/full/ncomms1174.html Oceanic spawning ecology of freshwater eels in the western North Pacific(英文)] ネイチャー・コミュニケーションズ電子版 2011年2月1日付、同日閲覧</ref><ref>黒木洋明、{{PDFlink|[http://www.fra.affrc.go.jp/kseika/211028/program5.pdf 完全養殖への挑戦その3-日本列島から南へ2500km!! 熱帯の太平洋上で世界初のウナギの親魚を捕獲!-]}} 水産総合研究センター第7回成果発表会講演要旨集</ref>。さらに同チームでは、[[2011年]][[6月29日]]学術研究船[[白鳳丸 (2代)|白鳳丸]]に搭載した[[プランクトンネット]]を用いて、産卵直後から2日程度経過した147個の受精卵の採取に成功した。[[新月]]の2-4日程度前の日没から23時の間、水深150-180 mで産卵されたと推定される。
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=== 密漁問題 ===
日本ではニホンウナギの個体数が、[[密漁]]で著しく減っているとして<ref>{{Cite web |url=http://www.pref.aichi.jp/cmsfiles/contents/0000055/55726/sannkousiryou.pdf |title=全国および愛知県のうなぎ資源状況の推移 |publisher=[[愛知県]] |format=PDF |accessdate=2013-01-21}}</ref>、2013年2月1日に[[環境省]]の[[レッドリスト]]で情報不足から[[絶滅危惧種|絶滅危惧IB類]]へカテゴリー変更が行われた<ref name="env=red" /><ref>{{cite news |title=ニホンウナギを絶滅危惧種に指定 |newspaper=[[日本放送協会|NHK]]|date=2013-2-1 |url=http://www3.nhk.or.jp/news/html/20130201/t10015212801000.html |accessdate=2013-2-1}}</ref>。
[[2014年]][[6月12日]]、[[国際自然保護連合]](IUCN)(IUCN)はニホンウナギを「絶滅する危険性が高い絶滅危惧種」に指定しレッドリストに掲載した<ref>[http://www3.nhk.or.jp/news/html/20140612/k10015160401000.html ニホンウナギ 絶滅危惧種に指定]</ref><ref>[http://www.asahi.com/articles/ASG6D31WZG6DULBJ001.html?iref=com_alist_6_01 ニホンウナギを絶滅危惧種に指定 国際版レッドリスト]</ref><ref>[http://mainichi.jp/feature/news/20140612k0000e040155000c.html ニホンウナギ:国際自然保護連合が絶滅危惧種に指定]</ref><ref>[http://www.yomiuri.co.jp/science/20140612-OYT1T50074.html?from=ytop_ylist ニホンウナギ、絶滅危惧種に…2年後規制の恐れ]</ref>。
 
{{絶滅危惧IB類}}<ref name="env=red">{{Cite web |url=http://www.env.go.jp/press/press.php?serial=16264 |title=第4次レッドリストの公表について(汽水・淡水魚類) |publisher=[[環境省]] |date=2013-02-01 |accessdate=2013-02-01}}</ref>