「宇宙の戦士」の版間の差分

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日本のSF界では、1967年の新書版(ハヤカワ・SF・シリーズ版)ではなく、とりわけ[[ハヤカワ文庫]]版(1977年)の挿絵に登場する[[スタジオぬえ]]の[[宮武一貴]]デザイン、[[加藤直之]]画によるパワードスーツの与えた衝撃が大きい。アメリカの[[ペーパーバック]](日本の「文庫本」相当)版に見られる伝統的な宇宙服に近いデザインから、殺気を宿す「戦闘用機械」へ刷新したビジュアルは、多くの人がイメージする「パワードスーツ型兵器」の原型となった。この「ぬえ版パワードスーツ」は現在でも人気が高く、アクション[[フィギュア]]や[[プラモデル]]が発売されている。
 
その影響は映像分野へも波及し、[[SFアニメ]]の[[メカニックデザイン]]の重要な転換点となった。従来のヒーロー的なロボットとは異なる「軍用の人型量産兵器」という発想は、『[[機動戦士ガンダム]]』に始まる[[リアルロボット]]路線の基調となり、様々な人気メカニックを生みだした。なお、『機動戦士ガンダム』に登場するメカニック、[[ガンキャノン]]のデザインには先の「ぬえ版パワードスーツ」のデザインが活かされている。
 
なお、『ガンダム』の制作関係者にハヤカワ文庫版を紹介したのはスタジオぬえの[[高千穂遥]]で、本来の意図は「主人公の国籍が明かされるラスト部分の面白さ」を伝えることだったという。結果的にパワードスーツをヒントに[[モビルスーツ]]のアイデアが生まれ、『宇宙の戦士』は内容の論議とは別に、「ガンダム誕生に寄与したSF小説」という評価を日本で得ることになった。
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*: 作中にはパワードスーツは登場せず、むしろ生身の兵士と、異星の虫型生物「バグズ(Bug。sは複数形)」との(グロテスクな)暴力描写が強調される。なお、米国版の実写作品やアニメ作品に、原作同様のパワードスーツが表現されない(されにくい)理由は、一般的に米国の映像作品では、主人公の顔や表情、動作(演技)の見えないメカニックの活躍表現は伝統的に禁忌とされているためである。特に実写作品の場合、俳優組合の影響が強いハリウッド映画界では、出演者の「顔出し」の有無やその長さはギャランティ設定や、出演交渉などを大きく左右する場合がある。パワードスーツの類が登場する場合は、搭乗者の顔や頭が外部から見える設計構造が基本である。
*: [[マイケル・アイアンサイド]]演じる教師ラズチャック(原作におけるデュボア)が、親からの教えとして非暴力を唱える生徒に暴力の有効性や実績を説き、また市民の担う義務と権利の関係、安全の有償性などについてリコに毅然と語り、戦場で最期を遂げる時も若い部下達に教えたとおりの潔い死に方を見せるなど、原作の基本的思想性はほぼストレートに映像化されている。
*: 監督の主眼が巨大昆虫対未来兵士の壮絶な死闘というコンセプトであり、原作小説自体には本質的に興味がなく、内容の類似点からくる訴訟を避けるために映画化権を取得したという経緯からストーリーは多少の省略や変更点(父の生死など)はあるものの、比較的忠実(最後にヒーローになるのは意外な人物である点)であるが、その忠実さはむしろ皮肉に満ちている。
*: パワードスーツが登場しないというほぼ一点から、日本のマニアからは誤解を含め過度に嫌悪されることがある。
*: 一方で、政府による[[プロパガンダ]]の描写などで軍国主義的側面は過度に強調されて皮肉られている。バーホーベンは映画内の皮肉や誇張について、「作中で[[ファシズム]]の思想や想像力をもてあそぶことを通じて、アメリカ社会のある側面を描き出そうとした」と述べている<ref>{{cite web|url=http://www.avclub.com/articles/paul-verhoeven,14078/|title="Interview: Paul Verhoeven", by Scott Tobias|publisher=''[[The A.V. Club]]''|date=April 3, 2007| accessdate=2011-03-24}}</ref>。
* 『[[スターシップ・トゥルーパーズ2]]』(2003年、アメリカ)
*: 1作目の10分の1以下という低予算で製作され、アメリカでは劇場公開されずテレビ映画として放送された。1作目と同様の世界観を踏まえたもので、人間に寄生する「パラサイト・バグ」など、原作小説にはなかった存在が登場する。
*: 監督はバーホーベンの盟友であり、モデルアニメーションの第一人者でもある[[フィル・ティペット]]が担当し、監督デビュー作となった。一応原作小説を読んだバーホーベンと違い、ティペットは「原作を一行も読んでいないし、今後も読む気はない」と豪語しており、シリーズの異色作である。
* 『[[スターシップ・トゥルーパーズ3]]』(2008年、アメリカ)
*: 前2作で脚本を務めた[[エド・ニューマイヤー]]が監督した。ストーリーはオリジナルで、1作目の11年後の話になっており、主演は1作目と同じ[[キャスパー・ヴァン・ディーン]]である。実写映画では初めてパワードスーツが登場するが、操縦が必要な点は原作と異なる。軍国主義に対する皮肉のこもった作品なのも1作目と同様である。ニューマイヤーは一貫してシリーズの脚本を担当しており、前任者たちよりも原作を読み込んでいるが、作中最も印象深かった箇所は主人公が懲罰として鞭打ちを受けるシーンであるといい、ユートピアにおける野蛮な刑罰を指摘している。