「オオムギ」の版間の差分

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=== 食品 ===
[[File:Mugitoro gohan 2.jpg|thumb|right|200px|麦とろご飯]]
; [[主食]]として
: [[メソポタミア]]では小麦より塩害に強いため、南部の[[バビロニア]]で多く栽培された。[[ヨーロッパ]]では粗く挽いた大麦を煮た粥状のものが食べられていた。[[古代ローマ]]では粗挽きの大麦の粥は[[プルス]]と呼ばれ、主食として重要なものであった。その後パンが普及し、15〜16世紀にかけて寒冷な地でも生産性が高く、茹でただけでも比較的美味な[[ジャガイモ]]が[[アメリカ大陸]]からもたらされたため、現在では主として飼料用および醸造用の穀物とされるようになった。
: [[チベット]]で主食の中心となっている[[ツァンパ]]は、ハダカオオムギを[[乾煎り]]して粉砕した粉で、[[バター茶]]で練るなどして食べられている。
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: 現代における日本の主食用オオムギとしては、上記の精白した麦をローラーで押しつぶす押し麦のほか、麦の中心線に沿って二つに切断しただけの米粒麦や、二つに割った後押しつぶす白麦がある。また、そもそも押しつぶさず、精白しただけの丸麦もスープに入れるなどして食べられる。
: また、[[とろろ]]には麦飯を使うものとされており、[[麦とろご飯]]は[[東海道]]の[[鞠子宿]]などで古くから名物となっていた。
; 飲み物
: [[カクテル]]の[[マイタイ]]に用いられる[[オルジェーシロップ]]や[[スペイン語]]圏で人気のある飲料[[オルチャータ]]は、どちらも[[ラテン語]]で「ホルデアタ」(hordeata、「オオムギから作られた」)と呼ばれるオオムギを原料とした飲料を祖先としている。オオムギを[[エスプレッソ]]風にしたイタリアの[[カッフェ・ドルゾ]]もまたよく飲まれる。また、麦芽に甘味料などをくわえて飲みやすくした麦芽飲料は世界各国でよく飲まれ、大企業も[[ネスレ・ミロ]]、[[ホーリック]]、[[オバルチン]]などといった麦芽飲料を製造し販売している。
: 日本や朝鮮半島では種子を煎ったものを煎じて、[[麦茶]]として飲まれる。日本では冷やして主に夏に飲まれるが、朝鮮半島では温かくして年中飲まれる。日本でも[[江戸時代]]には麦湯と呼ばれ、温かくして飲むものであったが、新麦を使うものが美味であるため、季節はやはりオオムギの収穫期である夏のものであった。
; 加工食品の材料
: 日本では[[麹]]を生やして[[醤油]]・[[味噌]]などの[[発酵]]食品の原料として使われる。ハダカムギから作られる[[麦味噌]]が、[[九州]]を中心に作られている。[[焼酎]]のような酒類の原料としても用いる。また、炒った大麦を挽いた粉を[[はったい粉]]、または[[はったい粉|麦焦がし]]と呼び、[[砂糖]]や湯などと合わせて練り、菓子の一種として食べていた。[[麦粉 (菓子)|麦粉]]は現在においても菓子の原料として広く使われている。また、はったい粉を型に入れて固めた麦[[落雁]]も、[[和菓子]]として各地の[[銘菓]]となっている。[[沖縄県]]においては、[[緑豆]]とオオムギを使って[[あまがし]]という[[ぜんざい]]の一種が作られ、夏の風物詩となっている<ref>「保存版 沖縄ぬちぐすい事典」監修 尚弘子 pp20-21 2002年11月24日初版第1刷 プロジェクト・シュリ</ref>。オオムギを[[ポン菓子]]にして[[チョコレート]]をコーティングした[[麦チョコ]]も、[[駄菓子屋]]などで売られている。
: 麺やパンの材料としても用いることができるが、[[コムギ]]と違い、[[グルテン]]をほとんど含まないので弾力性が必要な[[麺]]の原料とするには、小麦などと混合するかグルテンの添加が必要である。製粉して[[パン]]にした場合もグルテンに乏しいためあまり膨らまず、小麦のパンとは食感が異なるどっしりとした重い感じのパンができる。また大麦は小麦より粉に挽きにくいという問題があるが、発芽させることによって挽きやすくなる。下述の麦芽としての利用は、そこから偶然生み出されたものである。
; 麦芽
: 大麦の主な用途として[[麦芽]]の製造があげられる。麦芽は文字通りムギ類を発芽させたものであり、本来はオオムギだけを指すものではないが、一般的に、麦芽といえばオオムギからのものをさす。これはオオムギから作る麦芽が最も酵素が多く含まれるため、麦芽の質がよく、結果として麦芽を利用する場合はほとんどがオオムギ麦芽を使用することになるからである。麦芽には[[アミラーゼ]]酵素が含まれ、[[デンプン]]を[[糖]]に分解する作用があるため、[[麦芽糖]]が大量に生成される。麦芽糖はその名の通り糖であり、甘味料として[[水飴]]や[[シロップ]]の原料ともなるが、麦芽のもっとも重要な利用法は糖からアルコールを作ることである。
;
[[File:Masskruege.jpg|thumb|right|200px|ビール製造はオオムギの最も重要な用途である]]
: なかでもオオムギ麦芽のもっとも重要かつ一般的な使用法は、[[ビール]]の醸造である。ビールはコムギやほかの穀物、[[バナナ]]などから作られることもあるが、通常ビールとはオオムギ麦芽から製造されたものを指す。[[1516年]]に[[バイエルン大公|バイエルン公]][[ヴィルヘルム4世 (バイエルン公)|ヴィルヘルム4世]]によって制定された[[ビール純粋令]]は、「ビールは、麦芽・[[ホップ]]・水・[[酵母]]のみを原料とする」ことを定めている。この法律はバイエルン史を通じて存続し、[[1870年]]に[[バイエルン]]が[[ドイツ帝国]]に吸収されたのちも帝国によって引き継がれ、ドイツでは改正をくわえられつつも現役の法律となっている。この麦芽はオオムギを指すものではなく、コムギ麦芽を使用する[[白ビール]]なども製造されているが、白ビールでも原料の一部にはオオムギを使うことが多く、またドイツでの生産の多数を占めるピルスナータイプのビールはすべてオオムギ麦芽のみを使用する。
: ビールなどの[[醸造酒]]のほか、[[蒸留酒]]もオオムギから作られる。その中でも最も生産額が多く重要なものは、[[ウィスキー]]の生産である。ウィスキーにはオオムギ麦芽(モルト)のみを原料とするモルト・ウイスキーと、トウモロコシやライムギなどほかの穀物から作られるグレーン・ウイスキーがあるが、グレーン・ウイスキーの多くはモルト・ウイスキーと混合するブレンデッド・ウイスキーとなるため、いずれにせよオオムギが大きな役割を持つ。また、ウイスキーのほか、[[ウォッカ]]や[[ジン (蒸留酒)|ジン]]はオオムギを原料としたものも多数存在する。また、麦[[焼酎]]もオオムギを原料としている。麦焼酎は六条オオムギを原料にしたものと二条オオムギを原料としたものの両方があるが、麦芽ではなく[[麹]]を使うのが大きな特徴である。このように、オオムギを原料とした蒸留酒は数多い。
; その他
: 若葉を粉砕して粉末にしたものは[[青汁]]の一種として、[[健康食品]]として売られている。
: オオムギ穀皮抽出物は[[乳化剤]]などの用途で、かつて日本の[[既存食品添加物]]名簿に掲載されていたが、販売実績がないため、[[2005年]]に削除された。
:{| class="wikitable" style="float:right"
|+ 100g中の食物繊維<ref name=mext>[http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu3/toushin/05031802/002.htm 五訂増補日本食品標準成分表]</ref>
|-
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|不溶性食物繊維|| 3.6 g
|}
; 豊富な水溶性食物繊維と効果
: 大麦には豊富な水溶性食物繊維が含まれており、その大部分は[[βグルカン]]である。大麦の摂取による血中[[コレステロール]]値上昇抑制作用、[[血糖値]]上昇抑制作用、[[BMI]]値低減効果が報告されている<ref>[http://dx.doi.org/10.5264/eiyogakuzashi.67.235 大麦の生理作用と健康強調表示の現況]、荒木茂樹ほか、栄養学雑誌Vol.67 (2009) No.5</ref>。{{main|麦飯}}
; 抗癌作用を主張する研究について
:* かつて、[[デザイナーフーズ計画]]のピラミッドで3群に属しており、3群の中でも、ローズマリー、セージ、ベリー、ジャガイモと共に3群の最下位に属するが、癌予防効果のある食材であると位置づけられていた<ref>[http://dx.doi.org/10.2740/jisdh.20.11 がん予防と食品]、大澤 俊彦、日本食生活学会誌、Vol.20 (2009) No.1 </ref>。
 
=== その他 ===