「C4型光合成」の版間の差分

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{{出典の明記|date=2013年4月}}
 
'''C<sub>4</sub>型光合成'''(C4がたこうごうせい)とは、[[光合成]]の過程で一般の[[二酸化炭素|CO<sub>2</sub>]][[還元]]回路である[[カルビン回路|カルビン・ベンソン回路]]の他にCO<sub>2</sub>濃縮のための'''C<sub>4</sub>経路'''を持つ[[光合成]]の一形態である。C<sub>4</sub>経路の名はCO<sub>2</sub>固定において、初期産物である[[オキサロ酢酸]]がC<sub>4</sub>化合物であることに由来する(当初は炭素数4の[[リンゴ酸]]が初期産物だと思われていたが、後に誤りであることがわかった)。C<sub>4</sub>型光合成を行なう植物を'''C<sub>4</sub>植物'''と言い、[[維管束鞘細胞]]にも発達した[[葉緑体]]が存在するのが特徴である。これに対してカルビン・ベンソン回路しか持たない植物を'''[[C3型炭素固定|C<sub>3</sub>植物]]'''という。
 
1950年代および1960年代初頭に、[[ヒューゴ・P・コーチャック]]<ref>{{cite journal | doi = 10.1007/BF00014751 | title = A tribute to Hugo P. Kortschak: The man, the scientist and the discoverer of C<sub>4</sub> photosynthesis | year = 1993 | last1 = Nickell | first1 = Louis G. | journal = Photosynthesis Research | volume = 35 | issue = 2 | pages = 201}}</ref>およびユーリ・カルピロフによって、一部の植物が立証されている[[C3型炭素固定|C<sub>3</sub>型炭素固定]]を使わずに最初の段階で[[リンゴ酸]]および[[アスパラギン酸]]を生産していることが示された<ref>{{cite journal | doi = 10.1023/A:1020471718805 | year = 2002 | last1 = Hatch | first1 = Marshall D. | journal = Photosynthesis Research | volume = 73 | pages = 251–6 | pmid = 16245128 | title = C(4) photosynthesis: Discovery and resolution | issue = 1–3}}</ref>。C<sub>4</sub>経路は最終的にオーストラリアの[[マーシャル・ハッチ|マーシャル・デビッドソン・ハッチ]]とC・R・スラックによって1966年によって詳細に解明された。このため、C<sub>4</sub>経路はハッチ=スラック回路と呼ばれることもある<ref>{{cite journal|url=http://www.biochemj.org/bj/103/0660/1030660.pdf|pmid=4292834 |title=Comparative studies on the activity of carboxylases and other enzymes in relation to the new pathway of photosynthetic carbon dioxide fixation in tropical grasses |year=1967|volume=103|format=PDF |accessdate=2010-04-08|last1=Slack|first1=CR|last2=Hatch|first2=MD|issue=3|pmc=1270465|journal=The Biochemical journal|pages=660–5}}</ref>。
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== 概要 ==
C<sub>3</sub>植物は高温や乾燥などの[[気孔]]が閉じがちになる条件下ではCO<sub>2</sub>を集めにくくなるが、C<sub>4</sub>植物はそうした条件を回避して気孔を開け、CO<sub>2</sub>を固定しておくことが可能である。高温や乾燥、低CO<sub>2</sub>、貧窒素土壌と言った、植物には苛酷な気候下に対応するための生理的な適応であると考えられる。
 
当初は炭素数4の[[リンゴ酸]]が初期産物だと思われていたが、後に誤りであることが判った。
 
乾燥などの悪条件がなく、気孔を閉じておく利点が特にない環境では、CO<sub>2</sub>の固定のためにC<sub>3</sub>植物に比べて余分のエネルギーが必要になる。したがってそのような環境にはあまり適さない一方で、乾燥した草原や、畑の作物としては望ましい性質であると言える。作物では[[トウモロコシ]]や[[雑穀]]類がC<sub>4</sub>植物であり、[[イネ]]や[[コムギ]]といった主要作物はC<sub>3</sub>植物である。他方で、[[熱帯]]で農業に甚大な被害をもたらす[[雑草]]の中には、作物よりよく環境に適応したC<sub>4</sub>植物が含まれている。