「トラファルガーの海戦」の版間の差分

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== 海戦 ==
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午前11時45分、'''北縦隊'''(ネルソン中将)と'''南縦隊'''(コリングウッド中将)による二列縦隊を組ませたネルソンは、フランス・スペイン合同艦隊への突入命令を下し「英国は各員がその義務を尽くすことを期待する」の旗信号を送った。後に「ネルソンタッチ」と呼ばれるこの艦隊移動は、敵艦と接触するまでの間は相手からの一方的な砲撃に晒され、被弾した時は砲弾が船体上を縦断して大きな被害を出す危険な行動であった。ネルソンは敵艦隊をカディス軍港へ逃げ込ませない為に、あえてこの捨て身の体当たり戦法に打って出る決断を下した。
 
=== ネルソンタッチ(11:45~12:20) ===
午後12時、西側から急速接近して来るイギリス艦隊を視認したヴィルヌーブは、各団の旗艦に隊列を揃えさせて一筋の艦隊ラインを築くよう旗信号を送り、'''第1団'''(ル・プレ少将)、'''第2団'''(ヴィルヌーブ中将)、'''第3団'''(ナヴァレテ中将)、'''第4団'''(グラヴィーナ大将)が北から南に向けてある程度整列した。続けて戦闘準備を命じたヴィルヌーブは同時に全艦の砲門を開かせて西側に向けた一斉砲撃を開始した。縦隊で突き進むイギリス各艦は砲弾の雨に見舞われたが、長期の航海で疲弊していたフランス砲手達の士気と錬度は低く、また敵船体を狙った水平砲撃ではなく、マストと帆を標的にする上向き砲撃を行った事が更に命中率を下げたので、イギリス各艦は至近距離に到るまで大きな損傷を被らなかった。
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午前11時45分、'''北縦隊'''(ネルソン中将)と'''南縦隊'''(コリングウッド中将)による二列縦隊を組ませたネルソンは、フランス・スペイン合同艦隊への突入命令を下し「英国は各員がその義務を尽くすことを期待する」の旗信号を送った。後に「ネルソンタッチ」と呼ばれるこの艦隊移動は、敵艦と接触するまでの間は相手からの一方的な砲撃に晒され、被弾した時は砲弾が船体上を縦断して大きな被害を出す危険な行動であった。ネルソンは敵艦隊をカディス軍港へ逃げ込ませない為に、あえてこの捨て身の体当たり戦法に打って出る決断をした。
 
午後12時00分、西側から急速接近して来るイギリス艦隊を視認したヴィルヌーブは、各団の旗艦に隊列を揃えさせて一筋の艦隊ラインを築くよう旗信号を送り、'''第1団'''(ル・プレ少将)、'''第2団'''(ヴィルヌーブ中将)、'''第3団'''(ナヴァレテ中将)、'''第4団'''(グラヴィーナ大将)が北から南に向けてある程度整列した。続けて戦闘準備を命じたヴィルヌーブは同時に全艦の砲門を開かせて西側に向けた一斉砲撃を開始した。縦隊で突き進むイギリス各艦は砲弾の雨に見舞われたが、長期の航海で疲弊していたフランス砲手達の士気と錬度は低く、また敵船体を狙った水平砲撃ではなく、マストと帆を標的にする上向き砲撃を行った事が更に命中率を下げたので、イギリス各艦は至近距離に到るまで大きな損傷を被らなかった。
12時30分、ネルソンは第1団に向けていた北縦隊の針路を突如南に45度変え、第2団を目指して突入した。これは敵先導艦を牽制して速度を落とさせる為のフェイントだった。コリングウッドの南縦隊は第3団に向かって直進し続けていたので、その旗艦「英ロイヤルソヴリン」が最初にフランス艦列に接触した。「英ロイヤルソヴリン」は第3団旗艦『西サンタアナ』の船尾側を掠めるように接触した後に砲弾を撃ち込みながら北へ舵を切って接舷すると素早く架橋して海兵部隊を突入させた。
 
=== 両艦隊の衝突(12:20~13:00) ===
12時40分、北縦隊の旗艦「英ヴィクトリー」もフランス艦列に到達し、第2団旗艦『仏ビューセントル』に衝角突撃した。北に移動する『仏ビューセントル』はこれを間一髪でかわしたが、その船尾に対して開かれた「英ヴィクトリー」左舷の全砲門から多数の至近砲弾を撃ち込まれ船体後部を粉砕された。『仏ビューセントル』を襲う「英ヴィクトリー」に対して、北から『仏ネプチューネ』南から『仏ルドゥタブル』がそれぞれ全砲門を向けたので「英ヴィクトリー」もまた南北両面から至近砲火を浴びる事になった。
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12時3020分、ネルソンは第1団に向けていた北縦隊の針路を突如南に45度変え、第2団を目指して突入した。これは敵先導艦を牽制して速度を落とさせる為のフェイントだった。コリングウッドの南縦隊は第3団に向かって直進し続けていたので、その旗艦「英ロイヤルソヴリン」が最初にフランス艦列に接触した。「英ロイヤルソヴリン」は第3団旗艦『西サンタアナ』の船尾側を掠めるように接触した後に砲弾を撃ち込みながら北へ舵を切って接舷すると素早く架橋して海兵部隊を突入させた。
 
12時40分、北縦隊の旗艦「英ヴィクトリー」もフランス艦列に到達し、第2団旗艦『仏ビューセントル』に衝角突撃した。北に移動する『仏ビューセントル』はこれを間一髪でかわしたが、その船尾に対して開かれた「英ヴィクトリー」左舷の全砲門から多数の至近砲弾を撃ち込まれ船体後部を粉砕された。『仏ビューセントル』を襲う「英ヴィクトリー」に対して、北から側の『仏ネプチューネ』から側の『仏ルドゥタブル』がそれぞれ砲門を向けたので「英ヴィクトリー」もまた南北両面から至近砲火を浴びる事になった。
12時50分、『仏ビューセントル』後方を通過した「英ヴィクトリー」は敵艦列の真っ只中に飛び込む形となり、全身に砲弾を受けながら『仏ルドゥタブル』と衝突した。
 
12時50分、『仏ビューセントル』後方を通過した「英ヴィクトリー」は敵艦列の真っ只中に飛び込む形となり、全身に砲弾を受けながら南東へ進んで『仏ルドゥタブル』と衝突した。北縦隊2番艦「英テレメーア」も南東へ舵を切って『仏ルドゥタブル』の攻撃に向かった。3番艦の「英ネプチューン」は北東へ船首を向け『西ヌエストラセニョーラデラサンティシマトリニダード』に突撃した。「英ヴィクトリー」の近接砲撃で半壊状態となった『仏ビューセントル』には4番艦「英リヴァイアサン」と5番艦「英コンカラー」が襲い掛かり、それぞれ接舷して海兵隊を斬り込ませた。
 
=== 閉幕 ===
激戦の末、連合艦隊は撃沈1隻、捕獲破壊18隻、戦死4,000、捕虜7,000という被害を受け、ヴィルヌーヴ提督も捕虜となった。一方イギリス艦隊は喪失艦0、戦死400、戦傷1,200という被害で済んだが、ネルソン提督はフランス艦[[シュフラン (戦列艦・初代)|ルドゥタブル]]の狙撃兵の銃弾に倒れた。