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かつては特定の置換基、構造が色素の発色原因と重要視された時代もあったが、現在では分子の構造が可視光の吸収あるいは放出に適したエネルギー準位の[[分子軌道]]や[[バンドギャップ]]を持つことが発色に重要な要素であると考えられている。したがって、経験に基づく色素の設計から、今日では色素を設計するために[[分子軌道法]]や[[バンド理論]]などの[[計算機化学]]による[[シミュレーション]]により、理論に基づいた設計を行うことも可能になりつつある。
 
== 生物が持つ色素の能 ==
{{See|{{仮リンク|Biological pigment|en|Biological pigment}} }}
生物において、色彩を持つことが重要である色素の代表が[[光合成]]色素である[[葉緑素]]([[クロロフィル]])である。葉緑素は太陽光の中から赤から近赤外の光エネルギーを効率よく吸収する為の色素である。その上、光エネルギーの収集効率を上げるためにわずかに極大吸収を換えた複数の色素が配置され、中心の色素分子に光エネルギーが集中するようになっている('''アンテナ色素'''に詳しい)。クロロフィル類以外にも[[カロテノイド]]や[[フィコビリン]]など多種多様な光合成色素が知られている。植物だけでなく動物や細菌にも広く分布する光受容体においても色素が光シグナルを受容する重要な役割を果たしている。その代表はヒトの[[色覚]]を担う[[ロドプシン]]類である。植物では、日長の測定して開花を調節するなどさまざまな役割をもつ[[フィトクロム]]がよく知られている。また[[紫外線]]による[[DNA損傷]]を防止する[[メラニン]]の機能も色が生物学的機能を持つ例である。また、動物の色覚に対応して進化した植物の[[花弁]]や[[果実]]の色や動物の体色なども能動的な機能では無いものの、[[自然淘汰]]により増強された色素のもつ生物の1つの機能とも言える。
 
生物が獲得した色素の機能を役割別に見ると、生体の内部組織の生理活性に寄与する色素と、生物の進化に寄与する{{仮リンク|シグナル理論|en|Signalling theory}}で利用される[[求愛行動]]や[[保護色]]、[[警告色]](警戒色)のような色素に大別することができる。
生物学的な見地から見ると、色素の持つ色彩以外の機能の方が重要な場合も多い。代表的な例としてヘム鉄が挙げられる。ヘムの中心金属が[[鉄]]である[[ヘモグロビン]]と[[ミオグロビン]]、あるいは金属が[[銅]]である[[ヘモシアニン]]とが存在する。前者2者は赤色で、後者は淡青色であるが、いずれも生体内では[[酸素]]の運搬に関与する重要な色素であり、色とその能力に直接的な関係は無い。[[チトクローム]]等ほかにも生体内では種々の色素が存在するが、このように、生体内で重要な機能を担っているが、たまたま色彩を持っている為に色素と呼ばれるものも多い。
 
生理活性では、植物に由来する色素が非常に多い。なかでも代表的な色素が[[光合成]]を行う[[葉緑素]]([[クロロフィル]])である。葉緑素は太陽光の中から赤から近赤外の光エネルギーを効率よく吸収する為の色素である。その上、光エネルギーの収集効率を上げるためにわずかに極大吸収を換えた複数の色素が配置され、中心の色素分子に光エネルギーが集中するようになっている('''アンテナ色素'''、{{仮リンク|光受容性タンパク質|en|Photoreceptor protein}}に詳しい)。クロロフィル類以外にも[[カロテノイド]]や[[フィコビリン]]など多種多様な光合成色素が知られている。
 
動物や細菌にも広く分布する光受容体においても色素が光シグナルを受容する重要な役割を果たしている。その代表はヒトの[[色覚]]を担う[[ロドプシン]]類である。植物では、日長の測定して開花を調節するなどさまざまな役割をもつ[[フィトクロム]]がよく知られている。また[[紫外線]]による[[DNA損傷]]を防止する[[メラニン]]の機能も色が生物学的機能を持つ例である。酸素を運搬を担う重要な色素の[[ヘム]]には、中心金属が[[鉄]]である[[ヘモグロビン]]と[[ミオグロビン]]、あるいは金属が[[銅]]である[[ヘモシアニン]]とが存在する。[[チトクローム]]等ほかにも生体内では種々の色素として存在する。
 
一部の生物は、これらの色素を種の保存のために応用している。色素は動物が獲得した[[五感]]とよばれる感覚器のうちの[[視覚]]に対して応用される。個体が自己防衛のために[[:en:Venom]](生体が他者を攻撃するために使用する液体毒)を獲得することがあるが、これを保持していることを色覚に提示し、有害であることを「正当に」示して({{Lang-en-short|Honest signals}})攻撃を避ける。一般的には色素が明るくて目立つほど、獲得している生物毒が強いと認識され、色素には[[赤]]、[[黄]]、[[黒]]、[[白]]が効果的に使われている。また、毒は持たないがこれに類似した色の提示をして自身への攻撃を避ける[[警告色]]、また体表に[[色素胞]]を提示したり、皮膚組織に沈着させて周囲の環境と同化させ[[保護色]]としている例がある。また昆虫や鳥類など多様な植物で、体の一部に鮮やかな色彩で異性を惹きつける求愛行動に利用している例が知られる。ただし、色素にだけ寄らず光の[[反射]]や[[屈折]]など構造的な発色や、形状の変化([[擬態]]など)、他の感覚や行動の併用も見られる。植物では[[虫媒花]]で[[花弁]]や[[果実]]を特別に鮮やかに発色させて確実な[[結実]]を促す例が知られる。
 
これらの機能は生物が能動的に獲得したのではなく、変異のなかから有利に働いた[[自然淘汰]]の結果として残り増強された色素と考えられている。
 
== 人間活動における色素の応用 ==
人間活動における色素の位置づけを考える時、人間の印象に与える色彩の影響力には強いものがある。それ故、種々の顔料あるいは染料が、市場で取引される商品に特徴を与えるものとして求められてきた。[[19世紀]]に[[有機化学]]が最初に実用化された分野の一つが染色の化学であった。同世紀に[[軽工業]]が産業化するとともに多くの色素が求められ、有機化学の発展とともに多くの色素が発見・開発された。また、色素による染色法を応用することで多くの[[細胞小器官]]が発見され[[細胞生物学]]の発展に色素が寄与した。そして、生物学と同様に[[生理学]]や[[医学]]の発展にも色素と染色とが応用され、医療技術の発展にも大きく寄与している。例えば、色素が持つ染色の選択性から、[[パウル・エールリヒ|エールリッヒ]]は「[[魔法の弾丸]]」という着想を得、それが[[化学療法剤]]の礎となった。
 
また現代社会に目を転じてみると、機能性色素は[[写真]]、[[コピー]]、[[印刷]]、光通信媒体、光記録媒体などを始めとして、色素は種々の[[情報メディア]]に大量かつ広範囲に利用されている。したがって、色素の存在なくしては今日の[[情報化社会]]は語ることが出来ない。
 
先の動物などが獲得した[[警戒色]]、[[保護色]]などを、人間の心理的な解釈へ応用した例([[信号灯]]、[[ポリスライン]]など)も見られる。色について、赤は[[ヘモグロビン]]由来の[[血]]の色を連想させて興奮や攻撃、気分の高揚を、[[青]]系統の色は鎮静、[[白]]は清潔感などをイメージさせると説明されるが、なかには偏見による解釈の誘導も見られ、必ずしもそれらが人間が本来もつ生理学的な解釈とは言えないものも含まれている。
 
== 発色機構 ==