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'''満州語'''('''滿洲語'''、まんしゅうご、{{lang-mnc|ᠮᠠᠨᠵᡠ<br/>ᡤᡳᠰᡠᠨ}}、転写:manju gisun)は、[[満州民族|満族]]が話す[[ツングース諸語]]に属する[[言語]]。
 
== 概要 ==
族は中国の統計で、1千万人を超える人口を誇る。しかし、一方で[[清]]代の長年にわたり、人口の上では圧倒的な少数派でありながら支配者として[[漢族]]を含む中国全体に君臨した結果、満族の文化は中国文化と融合・同化していった。そして清が滅び、漢族が主体の時代に入ると、その同化速度は加速していくこととなり、多くの固有の文化が失われていった。
 
語もそのようにして失われていった文化の一つであり、満語の話者は満族の間でも現在では極めて少なく、消滅の[[危機に瀕する言語]]の一つである<ref>現在の中国で識別されている「満族」のうち、満語を母語として話す(または話していた)ことが確認されているのは[[黒竜江省]]の農村部に分布するごく少数である。それ以外、特に都市部に居住する「満族」は中国語を母語としている。満洲語と満洲文字は清朝の第一公用語で行政言語であり[[清|清朝]]は満族に対し満語の学習をたびたび奨励したが、[[書記言語]]は公用文として使用されたものの、音声言語の使用は次第にすたれた。最後の[[皇帝 (中国)|皇帝]]であった[[愛新覚羅溥儀]]は幼少時に{{仮リンク|伊克坦|zh|伊克坦 (繙譯進士)}}という教師から満語を学んだが、習得できたのは宮中儀礼の際に満洲人大臣が平伏してご機嫌伺を行った後に発する「イリ」(「ili」、立つを意味する「ilimbi」の命令形)という単語のみだった。</ref>。
 
その一方、清代には[[旗人]]を中心に、[[北京]]周辺で話されていた言葉と満洲語の語彙が混じり合った言葉が用いられた。その結果、[[北京語]]は他の方言とは異なる特徴を持つ言葉となった。その北京語は、現在共通語として使用されている[[普通話]]の元となっている。
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== 系統 ==
語は、言語学的には[[ツングース諸語]]に分類される[[膠着語]]である。[[アルタイ諸語|アルタイ語族]]があるとすれば[[ツングース語派]]に分類されることになる。南ツングース語群に属する。女真語とは近縁とされるが、親子関係にはない。
 
== 方言および変種 ==
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* 北音:[[黒龍江]]一帯の方言。
* 東音:[[寧古塔]]を中心に東は[[日本海]]に至る地域の方言。
2017年現在、[[中国東北部]]([[黒龍江省]][[三家子]]など)で継承されている満語(現代満語)は、東音を主体として北音の影響を受けた変種である。
 
=== 南部方言 ===
* 南音:[[長白山]]一帯の方言。盛京([[瀋陽]])でも話されていた方言であり、この方言([[女真語]]建州方言)を基に満語文語(満文)が作られた。
* 西音:入関(清の中国支配開始)後、北京で話されていた方言。京語ともいう。南音を基盤に北音と東音の影響を受けて成立した。
西音は北京にて消失した。南音は中国東北部では既に消滅したものの、[[新疆]]にて[[シベ語|錫伯語]]として継承されている。
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== 表記 ==
語の表記は、[[モンゴル文字]]を改良して作られた[[満文字]]を使う。一方で[[ラテン文字]]転写も盛んに行われている。主な転写法に[[パウル・ゲオルク・フォン・メレンドルフ|メレンドルフ]]式と漢語[[ピン音|拼音]]式があり、違いは以下の通りである。
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!音素
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[[Image:Manchu chinese.jpg|thumb|250px|[[紫禁城]]・乾清門の扁額。左が中国語(ピンイン:qián qīng mén)、右が満洲語(ローマ字転写: kiyan cing men)]]
 
語は類型論的に[[膠着語]]に分類され、語順は[[日本語]]と同じく「主語―補語―述語 (SOV)」の順である。修飾語は被修飾語の前に置かれる。
 
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*指示詞は近称と遠称の2系列からなる。ere(これ)― tere(それ)、uba(ここ)― tuba(そこ)、enteke(こんな)― tenteke(そんな)、uttu(このように)― tuttu(そのように)などがある。
*疑問詞には we(誰)、ya(どれ、誰)、ai(何)、aiba(どこ)、antaka(どんな)、ainu(なぜ)、atanggi(いつ)、adarame(どのように)などがある。
*満語の[[形容詞]]は語形変化をしない[[不変化詞]]である。
*動詞は終止形・連体形・副動詞形(接続形)がある。連体形は文末に来て終止形として用いられることが少なくない。
*後置詞は、ある種の単語の後ろに来て様々な文法的意味を付け加える付属語である。大きく分けて、体言の格形の後ろに来て格関係を表すもの、用言の後ろに来て副動詞的に用いられるもの、文末について様々なニュアンスを表すもの(日本語の[[終助詞]]に似る)がある。
 
== 語彙 ==
語の語彙には主に3つの特徴がある
* 漁労、採集、畜産、騎射に関する語彙が非常に豊富である。これは満族が本来は狩猟民族であったことに由来する。
* ツングース諸語の一種であるため、他のツングース系言語と共通する語彙が多い。
* 満語の語彙の3分の1は外来語であるとみられる。最も多いのは中国語(北京語)からの借用であるが、[[モンゴル語]]、[[チベット語]]、[[サンスクリット語]]由来とみられる単語もある。
 
== 満洲語研究機関・研究家 ==
*[http://www.hlju.edu.cn/scie/manyu.htm 黒竜江省満語研究所と黒竜江大学満族言語文化研究中心]
*[[中央民族大学]]中国少数民族語言文学学院少数民族語言文学系
*[[愛新覚羅烏拉熙春]]:満語、[[女真語]]、[[女真文字]]、[[契丹語]]、[[契丹文字]]を研究。
*[[日本大学]]文理学部史学科加藤研究室
 
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*[[満州文字]]
*[[満州民族]]
*[[シベ語]](シボ語、錫伯語) - 満語の一方言から派生した言語(方言であるか言語であるかは研究者により見解が分かれる)。
**[[シベ文字]](シボ文字)
*[[シベ族]](シボ族)
*[[女真語]] - 満語の基となった。
*[[モンゴル文字]] - 満文字の基となった。
*[[神弓-KAMIYUMI-]] - 満語が劇中で登場する映画作品
*[[ラストエンペラー]] - 使用されている言語は英語の映画作品だが、[[宣統帝]]即位式で満語が用いられている。
 
== 外部サイト ==