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en:Closed set 00:07, 28 October 2017
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{{otheruses2|[[開集合]]の[[補集合]]|演算・関係や操作のもとで閉じている集合|閉性質|閉包|{{ill2|閉包作用素|en|closure operator}}}}
'''閉集合'''(へいしゅうごう、{{lang-en-short|closed set}})は、その[[補集合]]が[[開集合]]となる[[集合]]のこと。[[距離空間]]の場合はその[[部分集合]]の元からなる任意の[[収束]][[点列]]の[[極限]]がその部分集合の元であることと一致するので、それを定義としてもよい。
 
[[幾何学]]、[[位相空間論]]および関連する[[数学]]の分野における'''閉集合'''(へいしゅごう、{{lang-en-short|''closed set''}})は、[[補集合]]が[[開集合]]となるような[[集合]]を言う<ref>{{cite book | last=Rudin | first=Walter | authorlink = Walter Rudin | title=Principles of Mathematical Analysis | publisher=[[McGraw-Hill]] | year=1976 | isbn=0-07-054235-X}}</ref><ref>{{cite book | last=Munkres | first=James R. | authorlink=James Munkres | title=Topology | edition=2nd | publisher=[[Prentice Hall]] | year=2000 | isbn=0-13-181629-2}}</ref>。[[位相空間]]における閉集合は、その[[極限点]]([[触点]])をすべて含む集合としても定義できる。[[完備距離空間]]に対しては、閉集合は[[点列の極限]]をとる操作のもとで[[閉じている]]集合として述べられる。
例えば、[[数直線]]上で不等式 0 &le; ''x'' &le; 1 によって定まる集合は[[閉区間]]と呼ばれるが、これは閉集合である。なぜならば、その補集合である ''x'' &lt; 0 または ''x'' &gt; 1 を満たす区間が開集合となるからである。
不等式を 0 &lt; ''x'' &lt; 1 としたものや 0 &le; ''x'' &lt; 1 としたものは、閉集合ではない。
また、[[連続関数]] <math>f(x,y)</math> を使って、<math>\{(x,y)\in\mathbb{R}^2 \mid f(x,y)\le c\}</math> と表される集合は[[平面]]の閉集合である。[[円周]]も平面の閉集合である。
 
== 同値な別定義 ==
次の性質を満たす集合 ''X'' の部分集合の族 ''F'' があると、 ''F'' の元が閉集合であるような[[位相]]が ''X'' に定まる。
[[位相空間]]において、部分集合が'''閉'''であるための必要十分条件は、それが自身の[[閉包 (位相空間論)|閉包]]と一致することである。同じことだが、集合が閉となるための必要十分条件はそれがその[[極限点]]をすべて含むことである。あるいはまた、閉であるための必要十分条件はそれがその[[境界点]]をすべて含むことであるということもできる。閉集合は{{ill2|閉包作用素 (位相空間論)|en|Kuratowski closure operator|label=(クラトフスキーの)閉包作用素}}の[[不動点]]である。
# [[空集合]]と ''X'' 自身は ''F'' の元
# ''G'' と ''H'' が ''F'' の元のとき、''G'' と ''H'' の[[合併 (集合論)|和集合]]は ''F'' の元
# {''F''<sub>''a''</sub>}を ''F'' の元からなる族とするとき、[[共通部分 (数学)|共通部分]] <math>\bigcap_a F_a</math> は''F'' の元
このように位相を定義するときは、開集合を閉集合の補集合として定義する。
 
これは、[[閉多様体|多様体が閉である]]というのとは意味が異なるので、混同してはならない{{efn|同じく、[[境界 (位相空間論)|境界]]も多様体の[[境界を持つ多様体|境界]](縁)とは意味が異なる}}。
==性質==
* 必ずしも有限個でない閉集合の共通部分は閉集合である。
* 有限個の閉集合の和集合は閉集合である。無限個の場合はその限りではない。
* 閉集合の補集合は開集合であり、また開集合の補集合は閉集合である。
 
== 閉集合の性質 ==
==参考文献==
閉集合は自身の[[境界]]を全く含む。これは、閉集合の「外部」から任意の方向に小さく動いてもまだ集合の外側にいるということを意味している。このことは境界が空集合であるときにも満足されることに注意する。例えば、有理数全体が通常のユークリッド距離に関してなす距離空間で、平方が {{math|2}} よりも小さい数全体の成す部分集合を考えればよい。
 
* 閉集合の任意の[[交わり (集合論)|交わり]]は(無限個の交わりでも)閉集合である。
* 閉集合の[[有限集合は開集|有限]]個の[[であり、また開併 (集合の補集論)|併]]は閉集合である。
* [[空集合]]は閉集合である。
* 全体集合は閉集合である。
 
実は、集合 {{mvar|X}} と {{mvar|X}} の[[集合族|部分集合族]] {{mathcal|ℱ}} でこれらの性質を満足するものが与えられたとき、{{mathcal|ℱ}} を閉集合系とする {{mvar|X}} 上の位相が一意に定まる。閉集合が上記の交叉性質を持つことは、空間 {{mvar|X}} における部分集合 {{mvar|A}} の[[閉包 (位相空間論)|閉包]]({{mvar|A}} を含む {{mvar|X}} の閉集合の中で最小のもの)を定義するのに利用できる。具体的には、{{mvar|A}} の閉包は、{{mvar|A}} を含む閉集合すべての交わりとして構成することができる。
 
閉集合からなる[[可算集合]]族の合併として構成することができる集合は、[[Fσ集合|{{mvar|F{{sub|σ}}}}-集合]]であると言う。{{mvar|F{{sub|σ}}}}-集合は必ずしも閉でない。
 
== 閉集合の例 ==
* [[実数]]からなる[[閉区間]] {{closed-closed|''a'', ''b''}} は閉である。
* [[単位区間]] {{closed-closed|0, 1}} は実数全体の成す距離空間 {{mathbf|ℝ}} において閉であり、同様に {{math|0}} 以上 {{math|1}} 以下の[[有理数]]全体の成す集合 {{math|{{closed-closed|0, 1}} ∩ '''ℚ'''}} は有理数の空間 {{mathbf|ℚ}} において閉であるが、{{math|{{closed-closed|0, 1}} ∩ '''ℚ'''}} は {{mathbf|ℝ}} における閉集合ではない。
* 開でも閉でもない集合もある。実例として[[半開区間]] {{closed-open|>0, 1}} は {{mathbf|ℝ}} において開でも閉でもない。
* 開でも閉でもある集合もあり、[[開かつ閉集合]] (cl&shy;open set) と呼ばれる。
* [[半直線]] {{closed-open|1, +∞)}} は {{mathbf|ℝ}} の閉集合である。
* [[カントール集合]]は、それが全て境界点からなり至る所疎 (nowhere dense) であるという意味で、普通の閉集合ではない。
* [[ハウスドルフ空間]]({{math|T{{sub|2}}}}-空間)において[[一点集合]]は閉(したがって有限集合も閉)である。
* [[整数]]全体の集合 {{mathbf|ℤ}} は無限かつ非有界な {{mathbf|ℝ}} の閉集合である。
* 位相空間 {{mvar|X, Y}} の間の写像 {{math|''f'': ''X'' → ''Y''}} が[[連続写像|連続]]となるためには、{{mvar|Y}} における任意の閉集合の逆像が {{mvar|X}} において閉であることが必要十分である。
 
== その他 ==
[[開集合]]を用いた上記の閉集合の概念は[[位相空間]]においてのみならず、位相構造を持ち込める[[距離空間]]や[[可微分多様体]]、[[一様空間]]および{{ill2|ゲージ空間|en|gauge space}}などにおいても意味を為す。
 
閉集合に関する別の特徴づけが、[[点列]]や[[有向点族]](ネット)を通じて与えられる。位相空間 {{mvar|X}} の部分集合 {{mvar|A}} が {{mvar|X}} において閉であるための必要十分条件は、{{mvar|A}} の元からなる任意の有向集合の[[有向点族の極限|極限]]がふたたび {{mvar|A}} に属することである。距離空間などの[[第一可算空間]]においては、有向点族をすべて考えなくても、[[点列]]の[[列の極限|極限と収束]]だけ見れば十分である。このような特徴づけの一つの価値は、位相空間よりも一般である[[収束空間]]{{efn|https://mathmathniconico.github.io/ConvergentSpace/Chapter2/ConvergentSpace.html あるいは {{nlab|urlname=convergence+space|title=convergence space}} などを参照}}の文脈で定義として用いることができるという点である。この特徴付けは、({{mvar|X}} において点列や有向点族が収束するか否かは、{{mvar|X}} にどのような点が存在するかということに依るから)周辺空間 {{mvar|X}} にも依存するものであることに留意する。
 
集合が閉か否かはそれが埋め込まれている空間に依存するが、[[コンパクト空間|コンパクト]][[ハウスドルフ空間]]は「{{ill2|絶対閉空間|en|H-closed space|label=絶対閉}}」(その意味は「コンパクトハウスドルフ空間 {{mvar|K}} を任意のハウスドルフ空間 {{mvar|X}} に埋め込むならば、{{mvar|K}} は常に {{mvar|X}} の閉部分集合である」という性質を持つこと)であるから、この場合は「周辺空間」は全く問題にならない。{{ill2|完全正則空間|en|completely regular space|label=完全正則}}ハウスドルフ空間をコンパクトハウスドルフ空間にする{{ill2|ストーン&ndash;チェック・コンパクト化|en|Stone-Čech compactification}}の過程は、ある種の収束しない有向点族の極限をもとの空間に付け加えることとして記述することができる。
 
さらに言えば、コンパクト空間の任意の閉集合はコンパクトであり、ハウスドルフ空間の任意のコンパクト集合は閉集合である。
 
閉集合によるコンパクト性の有用な特徴づけを与えることもできる。位相空間 {{mvar|X}} がコンパクトであるための必要十分条件は、{{mvar|X}} の空でない閉集合族でその交わりが空でないならば必ず、その有限部分族で交わりが空でないものがとれることである([[有限交叉性]]の項も参照)。
 
位相空間 {{mvar|X}} が[[不連結]]であるとは、互いに交わらない二つの空でない閉集合 {{mvar|A, B}} でそれらの合併が {{mvar|X}} となるようなものが存在するときに言う。さらに、{{mvar|X}} が[[完全不連結]]であるとは、それが閉集合からなる[[開基 (位相空間論)|開基]]を持つときに言う。
 
== 注 ==
{{脚注ヘルプ}}
=== 注釈 ===
{{notelist}}
=== 出典 ===
{{reflist}}
== 参考文献 ==
== 関連文献 ==
{{参照方法|date=2018年7月|section=1}}
*内田伏一 『位相入門』 [[裳華房]]、1997年。
 
== 関連項目 ==
* [[位相空間開集合]]
* [[距離空間#集合とかつ閉集合|距離空間]]
* [[集合近傍 (位相空間)]]
{{Topology}}
 
== 外部リンク ==
* {{MathWorld|urlname=ClosedSet|title=Closed Set}}
* {{nlab|urlname=closed+set|title=closed set}}
* {{PlanetMath|urlname=ClosedSet|title=closed set}}
* {{ProofWiki|urlname=Definition:Closed_Set|title=Definition:Closed Set}}
* {{SpringerEOM|urlname=Closed_set|title=Closed set|first=A.A.|last=Mal'tsev}}
 
{{topology-stub}}
{{DEFAULTSORT:へいしゆうこう}}
[[Category:位相幾何学空間論]]
[[Category:初等数学]]
[[Category:数学に関する記事]]