「発電設備の運用」の版間の差分

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'''発電設備の運用'''(はつでんせつびのうんよう)とは、需要家に適切な[[電力]]を供給するため、需要に合わせた[[発電所]]の運用を行うことである<ref>{{PDFLink|[https://www.occto.or.jp/iinkai/chouseiryoku/2018/files/chousei_jukyu_35_01_02.pdf 資料1-2 調整力及び需給バランス評価等に関する委員会 定義集] [[電力広域的運営推進機関]]}}</ref>
 
==同時同量==
電力の蓄積は難しいため、過不足無く発電する必要がある(これを''同時同量''と呼ぶ)。発電の過不足は[[電圧]]・[[周波数]]を不安定にしてしまうが、これは電気製品の動作に支障がでる場合があるため、発電量と電力消費量の一致はこの面からも求められている。
'''同時同量'''とは、[[電圧]]・[[周波数]]を一定とするため、電力消費量と発電量とを一致させることである。
* 特に周波数の制御は重要であり、0.5Hzの動揺がタービンブレードの異常振動やタービン軸のねじれなどを引き起こすことになる。それゆえ日本の電力会社は、周波数の変動を±0.2Hzに抑えることを目標としており、また電気法規でも同様に定められている。
 
* 特に周波数の制御は重要であり、0.5Hzの動揺がタービンブレードの異常振動やタービン軸のねじれなどを引き起こすことになる。それゆえ日本の電力会社は、周波数の変動を±0.2Hzに抑えることを目標としており、また電気法規でも同様に定められている。
日本では、電力会社と新規の事業者の間では、30分単位で発電量と電力消費量を一致させるシステムで運用されている。
 
電力会社としては、需要と供給のバランスが崩れたときの補正を行っているので、30分より短い周期で管理している。発電機の出力を全部中央給電指令所に集めており、その合計と需要との差が周波数偏差として現れるので、発電所の出力補正量としての地域要求量を算出し、補正信号を出す仕組みとしており、インフラの整備と制御機器の整備および運用にかなりの費用と人手をかけている。これと無効電力供給などのサービスを合わせてアンシラリーサービスとして託送料金に含めて、新規参入事業者に賦課している。
電力の蓄積は難しいため、過不足無く発電する必要がある(これを''同時同量''と呼ぶ)。発電の過不足は[[電圧]]・[[周波数]]を不安定にしてしまうが、これは電気製品の動作に支障がでる場合があるため、発電量と電力消費量の一致はこの面からも求められている。
 
===アンシラリーサービス===
'''アンシラリーサービス'''とは、供給区域の[[配電]]電力会社から、託送・需要と供給の不一致の補正・無効電力供給などを新規参入事業者などへ供給するものである。
 
日本では、実同時同量と呼ぶ、配電電力会社と新規の事業者の間で、30分単位で発電量と電力消費量を一致させるシステムで運用されている。
 
中央[[給電指令所]]で、需要と一致するように、発電所の出力を補正する。周波数偏差・電力潮流・発電機の出力などを収集・管理するため、[[電力系統]]・制御機器の整備および運用にかなりの費用と人手をかけている。
 
===調整力===
'''調整力'''とは、供給区域における周波数制御、需給バランス調整その他の系統安定化業務に必要となる発電設備(揚水発電設備を含む。)、電力貯蔵装置、ディマンドリスポンスその他の電力需給を制御するシステムその他これに準ずるもの(但し、流通設備は除く。)の能力である。
 
===予備力===
'''予備力'''とは、供給区域の調整力以外の発電機の発電余力と上げ調整力を足したものである。
 
*供給予備力 : 供給計画において、供給能力合計から最大3日平均電力を差し引いたもの。
*瞬動予備力 : 負荷変動および電源脱落時の系統周波数低下に対して、即時に応動を開始し、急速(10秒程度以内)に出力を増加して、運転予備力が起動し負荷をとる時間まで、継続して発電可能な供給力をいい、部分負荷運転中のガバナフリー発電機余力がこれに当たる。
*運転予備力 : 並列運転中のものおよび短時間内(10分程度以内)で起動し負荷をとり、待機予備力が起動し負荷をとる時間まで継続して発電し得る供給力をいい、部分負荷運転中の発電機余力や停止中の水力、ガスタービンなどがこれに当たる。
*待機予備力 : 起動から並列、負荷をとるまでに数時間程度を要する供給力をいい、停止待機中の火力などがこれに当たる。
 
===需要変動===
'''需要変動'''とは、30分平均値からの需要の変動である。
 
*短時間需要変動 : 概ね5分以内の周期の需要変動。
*時間内需要変動 : 30分コマ内の需要の最大値(需要が減少傾向の場合は最小値)と30分平均値との差。
*需要変動 : 需要想定値(30分平均値)から需要実績値(30分平均値)の誤差。
 
===最大電力需要===
'''最大電力需要'''とは、供給区域の電力需要を足したものである。
 
*猛暑H1需要 : 夏季における厳しい気象条件(10年に1回程度の猛暑)における最大電力需要
*厳寒H1需要 : 冬季における厳しい気象条件(10年に1回程度の厳寒)における最大電力需要
*厳気象H1需要 : 厳しい気象条件における最大電力需要
 
==運用方法==
発電設備は、電源脱落・電力系統事故などに備えた調整力・瞬動予備力が確保されるように運用される。
 
===ベース運用===
:'''ベース運用'''とは、ベースロード用とも呼ばれ、最低要求発電量として、点検時以外、24時間一定出力が確保されなくてはならない。ベースロード用とも呼ばれる。建設費用等の初期投資額が高くても、連続運転能力、ガバナフリー容量が大きい、ランニングコストの低廉なものが最適とされる。<br>

[[地熱発電]]・流れ込み式[[水力発電]]・再熱再生サイクル式大容量超臨界圧火力発電・[[原子力発電]]などで行われる。発電原価は原子力で5.3~13円程度とされている。
 
===ミドル運用===
:'''ミドル運用'''とは、ピーク時に[[常用最大出力]]、その他の時間帯は需要に合わせた出力で運用する。<br>

[[石炭]][[汽力発電]]などで行われる。発電原価は燃料費によって大きく変わるが、最も効率的なLNG火力の場合は数年前に7円を切っていて最も効率的であるといわれていた。
 
===ピーク運用===
:'''ピーク運用'''とは、ピーク時に、[[燃料]]費が安くなるように制御し、その他の時間は停止または最低出力で運用する。<br>

日間起動停止(DSS)・週間起動停止(WSS)に対応した、[[揚水発電]]・調整池式水力発電・ダム式水力発電・[[コンバインドサイクル発電]]・[[石油]]汽力発電などで行われる。

揚水発電の発電原価は東京電力の試算で30円を超えている。また、関西電力が試算した火力発電所での発電原価も同じく30円を超えている。東電の揚水発電所は100万kWのものが稼働率10%で計算されているもので、これが実際に運用されている3%程度ということで再計算するなら1kWhは100円を超えるものとなる。この為、最近では電力会社は夏場のピークを落とすための電力料金体系を出してきている。
 
:さらには一日数十分あるいは年間数十時間といった[[尖頭負荷発電所|尖頭負荷]]に対しては、ランニングコストよりも建設費が低廉で、かつ始動から全負荷までに要する時間の短い[[ガスタービン]]エンジン]]による発電設備も各国で稼働中である。
 
=== 軽負荷調整力の低い間帯の周波数調整 ===
夜間などの軽負荷時・[[太陽光発電]]などの調整しにくいものが多くを占める休日昼間などは、短周期の負荷変動の量はそれほど変わらないので、需給の変化に伴う周波数調整能力が低い。
 
夜間電力の割引・[[二次電池|蓄電池]]利用など需要の開拓、昼・夜の揚水発電の揚水運転、地域外への送電、太陽光発電の受電停止などが行われている。
:さらには一日数十分あるいは年間数十時間といった[[尖頭負荷発電所|尖頭負荷]]に対しては、ランニングコストよりも建設費が低廉で、かつ始動から全負荷までに要する時間の短い[[ガスタービン]]エンジンによる発電設備も各国で稼働中である。
 
揚水時の消費電力を瞬時に変更できる可変速揚水機を、需給変化対応・無効電力の調整に利用している。
=== 軽負荷時の周波数調整 ===
:夜間などの軽負荷時は、全体の需要規模が小さくなるが、短周期の負荷変動の量はそれほど変わらないので、周波数変動の幅が大きくなる。しかし、ミドル運用・ピーク運用の発電所はほとんどが停止しており、ベース運用でまかなわれているため、需給の変化に伴う周波数調整能力が低い(電力会社が、夜間電力の割引を行い需要の開拓するのはこのためである)。
:このため、揚水発電機をポンプ動作させ系統に対する負荷として、見かけ上の需要規模を大きくすることにより、周波数変動特性を改善すると共に、発電機の周波数調整能力が期待できる出力帯に置けるようにしている。最近では、揚水時の消費電力を可変し需給の変化に対応する可変速揚水機が注目されている(また、可変速揚水機は無効電力の調整能力も有るため、夜間の無効電力の負荷としても注目されている)。
 
== 脚注 ==
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==関連項目==