「電算写植」の版間の差分

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2000年に発売された写研の組版システム「Singis」はWindowsベースのシステムで、Photoshopやillustratorなども利用できるが、「Signis」に搭載された写研のフォントは独自形式で、写研のソフトウェアからしか利用できない。また、「Signis」と組み合わされる写植の各工程の専用ハードウェアはそれぞれ数百万円くらいするため、Mac1台で完結するDTPと比較すると著しく高価であり、さらに使用するたびに使用料がかかかる「従量課金制」である。「Singis」には「SAPCOL」で記述された昔の電算写植データをPDF化する機能もあるため、いくつかの業者においては2010年代以降の電子書籍時代においても活用されているが、写研の閉鎖的なエコシステムは複数のソフトウェアやフォントを自由に利用する前提のDTPとは正反対で、ほとんどの業者においては電算写植時代のデータが2000年代以降に受け継がれることがないまま、電算写植機オペレータの廃業とともに歴史のかなたに消えることとなった。
 
鉄道のサインシステムは旧国鉄の「すみ丸ゴシック」を使うJR東海を除いて写研のフォントが使われていたが、電算写植の技術を持つオペレーターが少なくなっているため、DTPを使用せざるをえなくなり、看板が古くなって交換する2010年代以後に「写研のフォントとよく似たデジタルフォント」に次第に置き換えられている。アニメ業界では最後まで写研の電子テロップシステム「TELOMAIYER」(HD化された「TELOMAIYER-C HD」)による写研のフォントを使い続けていた[[朝日放送テレビ制作日曜朝8時30分枠のアニメ]](プリキュア)では、写研のフォントが全面的に使われていたのが2011年の「[[スイートプリキュア]]」までで、2013年の「[[ドキドキ!プリキュア]]」から[[フォントワークス]]のフォントに完全移行した
 
放送業界においては、1984年に写研の電子テロップシステム「TELOMAIYER」(テロメイヤー)が発売され、これは写植を介さずに直接感熱記録紙に印字できるので、その時点で写植ではなくなっている。放送業界ではその後もしばらく写研の電子テロップシステムによるものと並行して、写研の電算写植機によるテロップが使われていたが、例えばNHK年鑑では1994年度以降は「写植」の文字が登場しなくなり、そのころに電算が廃止されたようだ。ちなみに放送業界においても、番組制作のデジタル化が進むとともに、やはり電算機と同様に「わざわざ写研の電子テロップシステムを使わなくても、Macに元から入っているフォントで十分」と言うことになり<ref>[https://www.nhk.or.jp/bunken/summary/research/report/2014_01/20140103.pdf 【放送のオーラル・ヒストリー】「テレビ美術」の成立と変容 (1)文字のデザイン] - NHK『放送研究と調査』 2014年1月号</ref>、写研のフォントは2000年代以降にはほとんど使われなくなった。例えばアニメ業界では「プリキュア」シリーズが最後まで写研のフォントを使い続けていたが、2011年の「[[スイートプリキュア]]」から[[フォントワークス]]のフォントが一部導入され、2013年の「[[ドキドキ!プリキュア]]」からフォントワークスのフォントに完全移行した。
 
なお、日本の電算写植の創始であるSAPTONシステムをほぼ独力で開発した写研の藤島雅宏(2014年に死去)は、「SAPCOL」によるコマンドベースの組版をDTPに拠らずに代替するものとして、晩年はXMLベースの[[XSL Formatting Objects]]の普及に携わっていた。