「ユニオン・パシフィック鉄道4000形蒸気機関車」の版間の差分

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== 概要 ==
ビッグボーイは、「世界最大の蒸気機関車」、「世界最強の蒸気機関車」とよく称されるが、これについては異論もある。ビッグボーイよりも重い機関車は他にもあり、より強力な機関車もあるためである。しかし、テンダーをのぞいたエンジン部分だけで考えると、機関部分のみではビッグボーイよりも重い機関車も存在するのだが、ビッグボーイは一番長い機関車であり、水と[[石炭]]を満載した状態ではもっとも重い機関車である。他のさまざまな要素を考え合わせると、ビッグボーイは、この種の大型機関車の中では最も成功した機関車といえる。
最大最強の条件をどこで取るかによってビッグボーイ以上の車両がいくつかあるためで、一例として「ノーザンパシフィック鉄道Z-5(イエローストーン)」(車輪配置2-8-8-4)は火床・伝熱・過熱面積はいずれもビックボーイ以上であり、計算上の牽引力も上回っている<ref>[[#ロス2007|(ロス2007)p.147「Z-5型2-8-8-4(1DD2)」]]より、イエローストーン「火床面積17m<sup>2</sup>、伝熱面積712m<sup>2</sup>、過熱面積299m<sup>2</sup>、牽引力63492㎏。」<br>(同ページに「ブースター使用時は牽引力が6077㎏増加」とあるが使用時か未使用時かは記載なし)<br>参考までに同書[[#ロス2007|p.192-193]]にあるビッグボーイのスペックは「火床面積14m<sup>2</sup>、伝熱面積547m<sup>2</sup>、過熱面積229m<sup>2</sup>、牽引力61394㎏。」</ref>。また牽引力だけならさらに上がおり、「イーリー鉄道P1型」(車輪配置2-8-8-8-2)は「72562㎏」が記載されている<ref>[[#ロス2007|(ロス2007)p.106「P1型3連節機関車2-8-8-8-2(1DDD1)」]] この機関車はテンダー部分にも動輪が付いた特殊な物で全重量392tのうち大半を粘着重量に使える(通常の機関車では炭水車は死重)ため牽引力が大きくなっている。</ref>。また「チェサピーク&オハイオ鉄道H-8(アレゲニー)」もボイラ圧力を通常の18気圧からビッグボーイ並みの21気圧にあげて試験した所、牽引力は57t以上になった(通常は49.5t)という報告があるほか最大軸重も39t以上、機関車自体の重量もアレゲニーが350トン、ビッグボーイが347.5トンとわずかに重い<ref>[[#齋藤2007|(齋藤2007)p.397]]</ref>。
 
ビッグボーイが最も大きいのは「機関車部分の全長<ref>ユニオンパシフィック鉄道の車両限界の都合で車高はさほど高くない。([[#齋藤2007|(齋藤2007)p.398]])<br>なお、イエローストーンは車高5228mm([[#ロス2007|(ロス2007)p.147]])、アレゲニーは5003 mm余(16ft5in)([[#松本2006|(松本2006)p.11]])。</ref>」「テンダーを含む水と[[石炭]]を満載した状態の重量」などの数値である。他のさまざまな要素を考え合わせると、ビッグボーイは、この種の大型機関車の中では最も成功した機関車といえる。
4-8-8-4という[[車軸配置]]を持つ機関車は、ビッグボーイだけである<ref>(4-8-8-4というのはホワイト式の表記である。AAR方式なら、2-D-D-2となる。</ref>。
 
4-8-8-4という[[車軸配置]]を持つ機関車は、ビッグボーイだけである<ref>(4-8-8-4というのはホワイト式の表記である。AAR方式なら、2-D-D-2となる。</ref>。
この車軸配置は、2組の4軸動輪ユニットを合体し、それに2軸の先輪と2軸の従輪を付け加えたものである。先輪は高速運転時の安定性向上のためであり、従輪は大きくて重い火室を支える働きをする。この車軸配置を見るだけで、ビッグボーイが高速時にパワーを発揮することができる機関車と判断することが出来る。形態的には、[[20世紀]]初頭に開発された関節式4シリンダ機関車の一種である[[マレー式機関車|マレー式]]に似るが、マレー式が後部シリンダで使用した蒸気を前部シリンダで再び使用する複式機関車の一種であるのに対し、ビッグボーイは4個のシリンダに直接ボイラーから蒸気を供給する単式膨張型関節機関車([[シンプル・アーティキュレーテッド]])であり、異なるものである。
 
この車軸配置は、2組の4軸動輪ユニットを合体し、それに2軸の先輪と2軸の従輪を付け加えたものである。先輪は高速運転時の安定性向上のためであり、従輪は大きくて重い火室を支える働きをする。この車軸配置を見るだけで、ビッグボーイが高速時にパワーを発揮することができる機関車と判断することが出来る。形態的には、[[20世紀]]初頭に開発された関節式4シリンダ機関車の一種である[[マレー式機関車|マレー式]]に似るが、厳密にはマレー式が後部シリンダで使用した蒸気を前部シリンダで再び使用する複式機関車の一種であるのに対し、ビッグボーイは4個のシリンダに直接ボイラーから蒸気を供給する単式膨張型関節機関車([[シンプル・アーティキュレーテッド]])であり、異なるものである。
ただし、単式としたこのような構成の機関車を指す名称が特に無いこともあり<ref>「シンプル・アーティキュレーテッド」だけは「単式の関節機関車」を指すのでフェアリーやガーラット式の大半も当てはまってしまう。</ref>、単式のものもマレー式(シンプルマレー、単式マレー)と呼ばれることが多い<ref>日本以外でもこの呼称は使用され、例として『世界鉄道百科事典』(著者はイギリス人)のp.50の項に「後にマレー式と名乗る大型機関車が複式ではなく単式になったのは~」という記述がある([[#ロス2007|(ロス2007)p.50「マレー式 0-4-4-0(BB)タンク機関車」]])</ref>。
== 背景 ==
ユニオン・パシフィック鉄道は、[[ワサッチ山地]]を越える11.4[[パーミル]]の勾配で3300トンの貨物列車を牽くために、このビッグボーイを制作した。ビッグボーイの登場以前は、勾配を越える列車に[[補助機関車|補機]]を連結する必要があったため、補機の連結解放の手間と時間や乗務員の手配の必要性があり、列車の速度向上に限界があった。
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== 運用 ==
[[ファイル:Union Pacific generation 2 GTEL and Big Boy locomotive 4022.jpg|thumb|right|200px|後継機といえる[[ユニオン・パシフィック鉄道の電気式ガスタービン機関車|ガスタービン機関車]]と並んだ4022号]]
製造された25両のビッグボーイは20両と5両の2つのグループに分けることができる。25両全部が石炭を燃料とする機関車で、低品質なワイオミング産の石炭を燃やすために広い火格子を持っている<ref>なお、ビッグボーイ以上に広い火格子を持つ(17m<sup>2</sup>)、ノーザンパシフィック鉄道のイエローストーンではさらに質の悪い「ローズバット・コール(ばらのつぼみ炭)」という褐炭を焚いていた。([[#ロス2007|(ロス2007)p.147]])<br>また、アレゲニーは3軸従台車を持っている割に火格子面積が狭いが、これは使用石炭が良質なことと従台車だけで火室を支えて内火室容積を広くとっているため(ビッグボーイなどは後の動輪に火室が乗っているため火床の位置が高く、ドラフトを強くしないと通風が取れなかった。)。([[#齋藤2007|(齋藤2007)p.398]])</ref>。4005号機は重油燃焼機関車に一時的に改造されたが、火室が広すぎて重油バーナの炎が火室の一部にしか当たらず、ゆがみが発生したために石炭燃焼に戻された<ref>事前にチャレンジャーで実験を行い成功していたが、ビッグボーイでは火室が大きすぎて不成功に終わった。</ref>。
 
ビッグボーイは新人の[[火夫|機関助士]]でも扱うことが可能な機関車だったため、[[第二次世界大戦]]中によく活躍した。熟練した機関助士達の多くが戦場へ行ったことによる欠員は、徴兵されたものの戦闘には向かない男達によって補充されたが、ビッグボーイは彼らでも運転できた。
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* 最高速度:時速80マイル (130 km/h)
 
== 脚注参考文献 ==
<!--書籍-->
{{脚注ヘルプ}}
*{{Cite book|和書| author = 齋藤晃| year = 2007| title = 蒸気機関車200年史| publisher = NTT出版| isbn = 978-4-7571-4151-3| ref = 齋藤2007}}
{{Reflist}}
*{{Cite book|和書| author = デイビット・ロス| translator = 小池滋・和久田康雄| title = 世界鉄道百科事典| publisher = 悠書館| isbn = 978-4-903487-03-8| ref = ロス2007}}
 
<!--雑誌-->
*{{Cite journal|和書 |author =松本健一 |authorlink = |date =2006 |year = |month = |title =C&O Alleghenyに逢える博物館(1・2)・HOモデルに見るAlleghenyという機関車 |journal =Rails Americana 2(とれいん2006年6月号増刊)(雑誌コード06760-06) |pages =4-17 |publisher =株式会社エリエイ・アイゼンバーン | ref =松本2006 }}
 
== 関連項目 ==