「河川舟運」の版間の差分

削除された内容 追加された内容
編集の要約なし
m編集の要約なし
1行目:
'''河川舟運'''(かせんしゅううん)とは、[[川]]や[[運河]]において[[貨物輸送|物資]][[旅客輸送|旅客]][[運搬]]する[[輸送]]のことで、河川[[水運]]や内陸水運とも呼ばれる。
 
== 欧米の河川舟運 ==
[[欧米]]では広大な河川を利用した舟運業がトラックや[[鉄道]]や[[自動車]]とともに内陸輸送手段として重要な役割を果たしている<ref name="jstra">[http://www.jstra.jp/html/PDF/euroriver.pdf 欧米の河川舟運産業の実態及び需要に関する調査] 日本舶用工業会、日本船舶技術研究所</ref>。欧米諸国は平坦な内陸部が多く、大河は流速が緩やかで河幅も水深も適度にあり、各国の都市が河川でつながっていることから古来より重要な[[ライフライン]]として機能してきた<ref name="jstra" />。
 
=== ライン川 ===
[[ライン川]]は主要国際河川の一つであり、[[スイス]]の[[バーゼル]]から[[ドイツ]]を通り、[[河口]]にあたる[[オランダ]]の[[ロッテルダム港]]までが航行可能で河川舟運に利用されている<ref name="jstra" />。2016年のライン全域の年間貨物輸送量は約3億3,000万トンであった<ref name="jstra" />。ライン川での貨物輸送量はヨーロッパの内陸水運の貨物輸送量全体の3分の2以上を占める<ref name="jstra" />。ライン川舟運は安全性や経済性も評価されており、コンテナ、重量貨物、化学製品の輸送のほか、旅客輸送などにも利用されている<ref name="jstra" />。
* オランダ:ロッテルダム港はライン川河口に位置するヨーロッパ最大の港となっている<ref name="jstra" />。オランダでは国際貨物輸送の約半分、国内貨物輸送の約4分の1が内陸水運である<ref name="jstra" />。
* [[ルクセンブルク]]:ルクセンブルクではライン川の支流である[[モーゼル川]]が主要水路となっており、モーゼル川での輸送量の国内輸送量に占める割合は2010年で約4 %である<ref name="jstra" />。
 
=== ドナウ川 ===
[[ドナウ川]]は全長2,860km860 kmのEU域内最大の河川でドイツ南部からルーマニアの黒海まで支流を含め19か国を流れる国際河川である<ref name="jstra" />。ドナウ川は西ヨーロッパで最長の河川でありながら、2015年の欧州の内陸水運での輸送量[[市場占有率|シェア]]10%10 %以下にすぎない<ref name="jstra" />。
 
=== ミシシッピ川 ===
[[ミシシッピ川]]は[[アメリカ合衆国]][[ミネソタ州]]の[[イタスカ湖]]から[[メキシコ湾]]までのに注ぐ全長3,782km782 km[[北アメリカ|北米]]を代表する河川である<ref name="jstra" />。ミシシッピ川の流域州は10州で[[支流]]を含めた流域面積は米国本土の約4割にあたる<ref name="jstra" />。
2015年の内航水運(ただし河川舟運のほか[[沿岸]]海運を含む)の総貨物輸送量は9億480万[[ショートトン]]で、そのうちミシシッピ川の輸送量は本流だけで約3億1,580万ショートトンを占め、全内航輸送量の約35 %となっている<ref name="jstra" />。
 
== 日本の河川舟運 ==
[[日本]]の河川舟運は、[[古代]]より行われ、[[近代]]以前の[[年貢米]]の輸送や商品[[流通]]に大きく貢献してきた。その一方で、河川舟運は物資のみならず、地域の[[文化]][[慣習]]を伝播するという面や、[[都市]]や[[河岸]]・津などと呼ばれる船着場集落の形成にも役割を果たしてきた。近代に入ると、[[殖産興業]]政策による産業の発展に伴い、運搬する物資が増加し、河川舟運は最盛期を迎えた。しかしながら、明治中期以降、[[日本の鉄道史|鉄道の開通]][[治水|河川改修]][[交通#陸上交通機関|陸上交通]]の発達、[[橋]]の役割の変化などに影響を受け、河川舟運は徐々に衰退していった。河川舟運に関する研究蓄積は多いものの、近代以降の河川舟運の盛衰過程については、未だ明らかになっていないことが多い。
 
[[昭和]]中期ごろまで、米や[[木材]]といった荷物を運ぶためには、険しい山道を歩く陸上交通よりも、水運の方がはるかに速く容易であったことから、ほとんどの河川で、現在の[[道路]]機能の代わりを担う人や貨物を運ぶ重要な物流の中心となっていた{{sfn|ロム・インターナショナル(編)|2005|pp=127–128}}。たとえば、[[琵琶湖]]を水源とし[[大阪湾]]に注ぐ[[淀川]]では、上流域で[[瀬田川]]、中流域で[[宇治川]]と名を変えてばれていて、[[京都市|京都]][[大阪市|大坂]]を結ぶ交通の大動脈として機能した。淀川に合流する支流の[[木津川]]は、奈良の[[平城京]]や寺院建設のために、瀬田川流域の森林から伐採された木材が木津川を遡って奈良に運ばれたりもされた{{sfn|ロム・インターナショナル(編)|2005|pp=127–128}}。
 
[[明治]]に入って、鉄道網が整備されるようになると、川の交通は次第に衰退していったが、木材だけは昭和中期ごろまで「[[[[筏|いかだ]]流し」とよばれる運搬方法によって川で運ばれていた。しかし、電源開発や利水確保のために川に[[ダム]]が建設されるようになると、こうした木材運搬も廃れていった{{sfn|ロム・インターナショナル(編)|2005|pp=127–128}}。
 
今日における交通の主役は陸上交通にとって代わったため、河川舟運はほぼ見られなくなったが、一部では、かつてのような本来の運搬としての機能の形を変えて、[[観光]]用の川下りや[[遊覧船|遊覧]]の船便があるほか、東京の首都圏では[[荒川 (関東)|荒川]]、[[隅田川]]で[[水上バス]]が運行されている{{sfn|ロム・インターナショナル(編)|2005|pp=127–128}}。
 
=== 近代日本の河川舟運 ===
; [[北海道]]
* [[石狩川]]、[[十勝川]]、[[天塩川]]
 
; [[東北地方]]
* [[馬渕川]]、[[北上川]]、[[鳴瀬川]]、[[阿武隈川]]、[[岩木川]]、[[米代川]]、[[雄物川]]、[[子吉川]]、[[最上川]]
 
; [[関東地方]]
* [[久慈川]]、[[那珂川]]、[[利根川]]、[[小櫃川]]、[[養老川]]、[[荒川 (関東)|荒川]](埼玉県)、[[相模川]]
 
; [[北陸地方]]
* [[荒川 (羽越)|荒川]](新潟県)、[[阿賀野川]]、[[信濃川]]、[[神通川]]、[[庄川]]、[[九頭竜川]]、[[北川]]
 
; [[東海地方]]
* [[富士川]]、[[安倍川]]、[[大井川]]、[[天竜川]]、[[豊川]]、[[矢作川]]、[[庄内川]]、[[木曽川]]、[[長良川]]、[[宮川 (三重県)|宮川]]
 
; [[近畿地方]]
* [[熊野川]]、[[古座川]]、[[紀ノ川]]、[[淀川]]、[[加古川]]、[[千種川]]
 
; [[山陰地方]]
* [[由良川]]、[[円山川]]、[[千代川]]、[[斐伊川]]、[[江の川|江川]]、[[高津川]]
 
; [[山陽地方]]
* [[吉井川]]、[[旭川 (岡山県)|旭川]]、[[高梁川]]、[[太田川]]、岩国川(錦川)、[[厚東川]]
 
; [[四国|四国地方]]
* [[吉野川 (代表的なトピック)|吉野川]]、[[那賀川]]、[[仁淀川]]、[[四万十川]]、[[肱川]]
 
; [[九州|九州地方]]
* [[大野川]]、[[五ヶ瀬川]]、[[耳川]]、[[大淀川]]、[[川内川]]、[[球磨川]]、[[緑川]]、[[菊池川]]、[[筑後川]]、[[六角川]]、[[松浦川]]、[[遠賀川]]
 
=== 現代日本の河川舟運 ===
* 最上川三難所舟下り:最上川中流に位置する[[村山市]]で行われている舟下りで、最上川三難所と呼ばれる碁点・三ヶ瀬・隼の三地点を通る約50分の航路である。
* [[最上峡芭蕉ライン観光|最上峡芭蕉ライン舟下り]]:最上川中流に位置する山形県最上郡[[戸沢村]]行われている舟下りで、古口から草薙温泉までの約60分の航路である。冬季にはこたつ船がある。
* [http://www.city.itako.lg.jp/page/page001377.html 潮来市営ろ舟遊覧]:[[茨城県]][[潮来市]]の[[前川 (潮来市)|前川]]を[http://www.city.itako.lg.jp/page/page001364.html サッパ舟]で巡る。舟から[[水郷潮来あやめ園]]や[http://www.city.itako.lg.jp/page/page001387.html 十二橋めぐり]が楽しめる。
* [[東京都観光汽船]]:東京都の[[隅田川]]・[[東京湾]]で行われている[[水上バス]]で、[[日の出桟橋]]・[[浅草]]・[[浜離宮]]・[[豊洲]]・[[晴海]]・[[お台場海浜公園]]・[[パレットタウン]]・[[東京ビッグサイト]]に乗船場があり、日本最大の旅客数を誇る。隅田川ライン、浅草・お台場直通ライン、ハッピードッグクルーズ、お台場ライン、東京ビッグサイト・パレットタウンラインが運航されている。
* [[東京都公園協会]]:「[[東京水辺ライン]]」という名称で隅田川・東京湾・[[荒川 (関東)|荒川]]を運航。
* [[信濃川ウォーターシャトル]]:新潟市の中心部を流れる信濃川で行われている水上バスで、みなとぴあ([[新潟市歴史博物館]])からふるさと村までの区間で運航されている。新潟市の新たな都市交通として水上バスを機能させようと取り組んでいる。
* 天竜ライン下り:天竜川上流に位置する[[飯田市]]で行われている舟下りで、天龍峡温泉から唐笠までの約50分の航路である。
70 ⟶ 71行目:
* 一本松海運:大阪市内の河川および大阪湾で行われている水上バスで、ユニバーサルシティポート・太左衛門橋船着場・湊町船着場に乗船場がある。落語家と行くなにわ探検クルーズをはじめ、とんぼりリバークルーズ、大阪水遊紀行などが運航されている。
* [[アクアネット広島]]:広島市内の河川と世界遺産[[厳島|宮島]]で行われている水上バスで、[[元安桟橋]]・[[宮島桟橋|宮島3号桟橋]]に乗船場がある。宮島参拝遊覧、世界遺産航路、ひろしま河川遊覧、宮島口西-宮島航路が運航されている。
* くらしき川舟流し:[[岡山県]][[倉敷市]]の[[倉敷美観地区]]を流れる倉敷川を小舟から観光する<ref>[https://www.kurashiki-tabi.jp/see/3598/ くらしき川舟流し] - 倉敷観光WEB(更新日不明)2019年1月31日閲覧</ref>。
* 倉敷川下り
* 堀川めぐり:島根県[[松江市]]の[[松江城]]の掘割で行われている遊覧船で、松江堀川ふれあい広場・大手前広場・カラコロ広場に船着場があり、約50分の航路である。
* ひょうたん島クルーズ:[[徳島市]]を流れる[[新町川]]と[[助任川]]に囲まれたひょうたん島で行われている水上バスで、NPO法人新町川を守る会によって運航している。
94 ⟶ 95行目:
 
== 関連項目 ==
* [[川]] - [[国際河川]]
* [[運河]] - [[国際運河]]
* [[水運]]
* [[渡し船]]
* [[河岸]]
* [[年貢]]
* [[船問屋]]
* [[殖産興業]]
* [[日本の鉄道史]]
 
{{河川関連}}