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{{Otheruses|女神|小惑星|ムーサ (小惑星)|芸能事務所|Mousa|アラビア語由来の人名|ムサ (曖昧さ回避)}}
[[File:Samuel Woodforde - Apollo and the Muses on Parnassus (after Raphael), 1804.jpg|thumb|『パルナッソス山にあるアポローンとムーサたち』 ([[サミュエル・ウッドフォード]]作、1804年)]]
{{Greek mythology}}
'''ムーサ'''({{Lang-grc-short|Μοῦσα}}, {{la|Musa}})または'''ムサ'''は、[[ギリシア神話]]で[[文芸]]({{Lang|grc|μουσικη}}; ムーシケー、ムシケ)を司る[[女神]]たちである。複数形は'''ムーサイ'''({{Lang|grc|Μοῦσαι}}, {{la|Musai}})。[[英語]]・[[フランス語]]の'''ミューズ''' (英語・フランス語単数形: {{en|Muse}}、フランス語複数形 {{fr|Muses}}) や'''ミューゼス''' (英語複数形: {{en|Muses}}) としても知られる。
 
ムーサたちは[[パルナッソス山]]に住むとされている、また[[ヘリコン山|ヘリコーン山]]との関係が深い。ムーサたちを主宰するのは芸術の神・[[アポローン]]である。しばしば[[叙事詩]]の冒頭でムーサたちに対する呼びかけ(インヴォケイション)が行われる。なお『[[ホメーロス風讃歌]]』にはムーサたちに捧げる詩がある。
 
== ムーサたちの一覧 ==
[[ヘーシオドス]]の『[[神統記]]』によれば、大神[[ゼウス]]と[[ムネーモシュネー]]の娘で9柱いるとされており、「黄金のリボンをつけたムーサたち」と形容することがある。別伝では[[ハルモニアー]]の娘とする説や、[[ウーラノス]]と[[ガイア]]の娘とする説もある。古くはその人数は定まっておらず、[[デルポイ]]や[[シキュオーン]]ではウーラノスの娘である[[アオイデー]](歌唱(aoide))、[[ムネーメー]](記憶(mneme))、[[メレテー]](実践(melete))の3柱、[[レスボス島]]では7柱とされていたが、ヘーシオドスによって9柱にまとめられた。ピーエリア王[[ピーエロス]]の娘・[[ピーエリス]]たち(ピーエリデス)とも同一視された。
 
古くはその人数は定まっておらず、ヘリコーン山で崇められた最初のムーサたちではウーラノスとガイアの娘である'''[[アオイデー]]'''(歌唱(Aaoide))、'''[[ムネーメー]]'''(記憶(Mneme))、'''[[メレテー]]'''(実践(Melete))の3柱、それをムネーメーを除く'''[[テルクシノエー]]'''(魅惑(Thelxinoe))と'''[[アルケー]]'''(始源(Arche))を加えた[[ゼウス]]と[[ネダー]]の娘である4柱、[[レスボス島]]と[[シシリア島]]では'''ネイロー'''(Neilo)、'''トリトーネ'''(Tritone)、'''アソポー'''(Asopo)、'''ヘプタポラー'''(Heptapora)、'''アケロイース'''(Achelois)、'''ティポプロー'''(Tipoplo)、'''ローディア'''(Rhodia)の7柱とされていたが、ヘーシオドスによって9柱にまとめられた。その他、[[シキュオーン]]や[[デルポイ]]では'''ネテー'''(Nete)、'''メセー'''(Mese)、'''ヒュパテー'''(Hypate)の3柱で、[[竪琴]]の3本の弦の化身であった。また、アポローンの娘である'''ケフィソー'''(Kephiso)、'''アポローニス'''(Apollonis)、'''ボリュステーニス'''(Borysthenis)の3柱とする説もある。
 
=== アルクマーンによる3柱 ===
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=== ヘーシオドスによる九姉妹 ===
9柱それぞれの名前と司る分野、および持ち物は以下の通り。
[[File:The Nine Muses (Illustrated by Engravings on Wood).jpg|1000px|center]]
 
{| class="wikitable"
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当初は特定の分野が割り当てられず、音楽・詩作・言語活動一般を司る知の女神たちであったようだが、古典期を通じて[[ローマ時代]]の後期には各ムーサがつかさどる学芸の分野が定められ、現在広く知られる形が出来上がった。またツェツェース(Tzetzes, およそ1110年 - 1180年)による著作では'''カリコレ''' (Kallichore)、'''ヘリケ''' (ヘリケー、Helike)、'''エウニケ''' (エウニーケー、Eunike)、'''テルクシノエ''' (テルクシノエー、Thelxinoe)、'''テルプシコラ''' (テルプシコラー、Terpsichore)、'''エウテルペ''' (エウテルペー、Euterpe)、'''エウケラデ''' (Eukelade)、'''ディア''' (ディーア、Dia)、'''エノペ''' (Enope)といった9柱のムーサが述べられている。
 
その他、レスボス島では'''ネイロー'''(Neilo)、'''トリトーネ'''(Tritone)、'''アソポー'''(Asopo)、'''ヘプタポラー'''(Heptapora)、'''アケロイース'''(Achelois)、'''ティポプロー'''(Tipoplo)、'''ローディア'''(Rhodia)といった7柱のムーサが述べられている。
 
[[File:Arts and the Muses by Pierre Puvis de Chavannes.jpg|thumb|center|700px|ムーサ九姉妹と古き三柱のムーサたち ([[ピエール・ピュヴィス・ド・シャヴァンヌ]]/画、1884–1889)]]
 
== 文化への影響 ==
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[[ルネサンス期]]以降、ムーサたちにちなんで、''Gradus ad Parnassum'' 『パルナッソスへの階梯』という名の詩学・音楽教本が多く書かれた。[[クロード・ドビュッシー|ドビュッシー]]のピアノ組曲「[[子供の領分]]」に含まれる第1曲「グラドゥス・アド・パルナッスム博士」は、これにちなんだ題名で、これから始まる組曲の開始曲として配置されている。
 
== ギャラリー ==
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[[File:Arts and the Muses by Pierre Puvis de Chavannes.jpg|thumb|center|700px|ムーサ九姉妹と古き三柱のムーサたち (<small>[[ピエール・ピュヴィス・ド・シャヴァンヌ]]/画、1884–1889)]]<br/>『ムーサ九姉妹と古き三柱のムーサたち』<br/>1884–1889年頃</small>
File:Jacopo Tintoretto - The Muses, 1578.jpg|<small>[[ティントレット]]/画<br/>『ムーサ九姉妹』<br/>1578年</small>
File:Eustache Le Sueur - The Muses Melpomene, Erato and Polyhymnia (1652-55).jpg|<small>[[:en:Eustache Le Sueur|ウスタシュ・ル・シュウール]]/画<br/>『メルポメネー、エラトー、ポリュヒュムニアー』<br/>1652-1655年頃</small>
File:Eustache Le Sueur - The Muses Clio, Euterpe and Thalia (1652-55).jpg|<small>ウスタシュ・ル・シュウール/画<br/>『クレイオー、エウテルペー、タレイア』<br/>1652-1655年頃</small>
File:Apollo and The Nine Muses by Gustave Moreau.jpg|<small>[[ギュスターヴ・モロー]]/画<br/>『アポローンとムーサ九姉妹』<br/>1856年</small>
File:The Muse of Poesie by Konstantin Makovsky.jpg|<small>[[コンスタンチン・マコフスキー]]/画<br/>『ムーサの詩歌』<br/>1886年</small>
File:Calliope, Urania et Terpsichore by Pierre Mignard.jpg|<small>[[ピエール・ミニャール]]/画<br/>『カリオペー、ウーラニアー、テルプシコラー』<br/>1746年</small>
File:Euterpe et Clio by Pierre Mignard.jpg|<small>ピエール・ミニャール/画<br/>『エウテルペーとクレイオー』<br/>1746年</small>
File:Robert Fagan - The Muses, Urania, Erato and Calliope.jpg|<small>ロバート・ファガン/画<br/>『ウーラニアー、エラトー、カリオペー』<br/>1793-1795年頃</small>
File:Robert Fagan - The Muses, Terpsichore and Polyhymnia.jpg|<small>ロバート・ファガン/画<br/>『テルプシコラーとポリュヒュムニアー』<br/>1793-1795年頃</small>
File:Robert Fagan - The Muses, Clio and Thalia.jpg|<small>[[:en:Robert Fagan|ロバート・ファガン]]/画<br/>『クレイオーとタレイア』<br/>1793-1795年頃</small>
File:Robert Fagan - The Muses, Euterpe and Melpomene.jpg|<small>ロバート・ファガン/画<br/>『エウテルペーとメルポメネー』<br/>1793-1795年頃</small>
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== 関連項目 ==