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{{言語学}}
'''形態素'''(けいたいそ、{{lang-en-short|[[wikt:morpheme|morpheme]]}})とは、[[言語学]]の用語で、[[意味]]をもつ表現要素の最小単位。ある[[言語]]においてそれ以上分解したら[[意味]]をなさなくなるところまで分割して抽出された、[[音素]]のまとまりの1つ1つを指す。

形態素の一般的な性質や、形態素間の結びつきなどを明らかにする言語学の領域は、[[形態論]]と呼ばれる。
 
== 概要 ==
形態素には、いくつかのタイプがあると考えた方が良いことが分かっている。またそれぞれの言語によっても違いがあらわれるので、ここではまず英語と日本語での例を示す。
 
英語では、空白で区切られる[[語|単語]] ({{lang-en-short|[[wikt:word#英語|word]]}}) よりも細かい単位である。たとえば、名詞の複数形の -s なども独立した形態素である。日本語では、日本語文法におけるいわゆる[[文節]]よりも細かい単位である、'''自立語'''(あるいは「詞」)と'''付属語'''(あるいは「辞」)および「接辞」が形態素である。
 
続いて、形態素の分類論を述べる。
 
[[wikt:やま|やま]]」のように、単独で語として(日本語文法では、文節として)現れるものと、「[[wikt:お金|お金]]」の「お-」のように、単独では用いられず必ず他の形態素とともに現れるものがある。前者を'''自由形態素''' ({{lang-en-short|free morpheme}})または'''内容形態素'''、後者を'''拘束形態素'''または'''束縛形態素''' ({{lang-en-short|bound morpheme}}) という。例えば、英語の{boy},{fly}などの形態素は実質な意味を持ち、単独で用いられるから、内容形態素である。
 
また、語彙的な意味を持つものとそうでないものに分けることができる。語彙的な意味を持つ形態素を[[語根]] (radical/{{lang-en-short|[[wikt:root|root]]}}/{{lang-en-short|[[wikt:radical|radical]]}}) という。例えば、「たか-さ」「たか-い」に共通して現れる「たか-」は語根であり、「空間的な位置が上方にあって下との距離が大きい」<ref>[[広辞苑]]</ref>という語彙的な意味を持つ。これに対して、「-さ」や「-い」に語彙的な意味を認めるのは難しく、むしろ、「-さ」は「たか-」を名詞として機能させる形態素であり、「-い」は「たか-」を形容詞として機能させる形態素であると考えられる。この「-さ」や「-い」のように、機能的あるいは文法的な意味は持つが語彙的な意味は持たないと考えられる形態素を'''機能的形態素''' ({{lang-en-short|functional morpheme}}) または'''文法的形態素''' ({{lang-en-short|grammatical morpheme}}) という。
 
語根は、自由形態素であることもあれば、拘束形態素であることもある。「たか-さ」「たか-い」の「たか-」は単独で語として現れることが無いので拘束形態素であり、一方「やま」「あお」のような語根は単独で語となる自由形態素である。
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構造上、語として振舞うものを[[接語]]と呼び、それ以外の拘束形態素を[[接辞]]と呼ぶ。
 
一つの形態素が互いに微妙に異なる複数の現れ方をすることがある。例えば「'''あめ'''ふり」、「'''あま'''やどり」、「きり'''さめ'''」に含まれる「[[wikt:あめ|あめ]]」、「[[wikt:あま|あま]]」、「[[wikt:さめ|さめ]]」は同じ「[[wikt:|雨]]」という意味を持つ形態素に属していると考えられる。このとき、「あめ」「あま」「さめ」という三つの形態 ({{lang-en-short|[[:en:wikt:morph|morph]]}}) は、同一の形態素に属し、互いに[[異形態]]であるという。一つの形態素に属する複数の形態についても、「あめ」のように単独で語として現れ得る自由形態 ({{lang-en-short|free morph}}) と、「あま-」「-さめ」のように必ず他の形態素にくっついて現れる拘束形態 ({{lang-en-short|bound morph}}) とを区別することができる。
 
'''文法的形態素'''(ぶんぽうてきけいたいそ)とは、[[語根]] (基礎語幹) で示す観念を特定の[[文法範疇]]へ方向づけるものである。[[比較言語学]]によってその原初的構成部分を分離できる。語根と[[接尾辞]]からなる全体が[[語幹]]を形成するが、[[語基]]と形態素の複合でもある。[[印欧言語学]]では、[[セム系諸言語]]と異なり、この語幹を基礎として全体系が構築される。その理由は、語幹に文法的形態素が前接(加音/[[畳語|重複]]等)するか、後接(接尾)するという、文法的特性を有する形態素の附加により、[[格]]と[[数 (文法)|数]]と[[人称]](語尾の[[活用]]・[[曲用]])とが示されるからである。([[ギリシア語]]では、「現在の[[相 (言語学)|アスペクト]]の[[動詞]]語幹と[[アオリスト]]のアスペクトの動詞語幹」とが対立し、活用の基礎となる。)
 
そしてこれらに、「[[派生語]]」が加わる:形態素の附加により、派生語が形成される。活用や曲用のわく内で同一語が採るさまざまな語形のことでなくて、接尾される形態素により、[[名詞]]・[[形容詞]]・動詞・[[副詞]]等のあらゆる文法範疇の語が派生する(この派生語はセム語系の「形態素」にも広く通じるものであり、「語基」をもとに、あらゆる文法的形態素が附加され、意味論的観念からも、膨大な派生語([[語彙]])を形成する)。
 
また、形態素の附加とそれから生ずる[[音韻論|音韻]]の変化は、通時的な音韻の変化・発展を考慮する必要をも生じ、同定については[[通時言語学]]的[[音韻論]]に依拠しなければならない。
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== 関連文献 ==
* [[鈴木重幸]] 「構文論における形態素主義について」(『[[横浜国立大学]]人文紀要』第二類 語学・文学第二十二輯,1975年。『形態論・序説』[[むぎ書房]],1996年,1996年,ISBN 978-4-8384-0111-6 に再録)
 
== 脚注 ==
<references />
 
== 関連項目 ==
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*[[語彙素]]
 
== 外部リンク ==
{{DEFAULTSORT:けいたいそ}}
*{{kotobank|形態素-59036|[[ブリタニカ国際大百科事典]] 小項目事典|形態素}}
 
{{Normdaten}}
{{DEFAULTSORT:けいたいそ}}
[[Category:形態素|*]]
[[Category:形態論]]