「連結器」の版間の差分

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何年も回答の無い要出典部位を削除、並びに『続イギリスの鉄道の話』にあったねじ式連結器の情報など追加。
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== 連結器の種類・用途等 ==
車端に取り付け別の車両と連結時に使用する「車端連結装置」と、蒸気機関車と炭水車・(旧式)電気機関車の台車同士など同一の車両をつなぐ「中間連結装置」があるが、後者はほぼ切り離すことがないので引張棒の両端をピンでとめ、別途適当な緩衝装置をつけ隙間を無くしたもの<ref name="鉄道辞典・連結装置">[[#国鉄1958下|(国鉄1958下)p.1808「連結装置」]]</ref>なので、ここでは様々な種類がある前者について述べる。
 
=== リンク式連結器 ===
==== 概要 ====
連結にリンク(鎖)機構を使用する連結器全般を指す。鉄道黎明期より使用されてきた連結器であり、「鎖式連結器」→「スリーリンク・カップリング」→「ねじ式連結器」というような進化を遂げている<ref name="続イギリスの鉄道の話">[[#高畠2005|(高畠2005) p.144-147]]</ref>他、亜種にピン・リンク式連結器がある。いずれもリンクは引張力を伝達できるが推進力は伝達できないため、通常はこれとは別の緩衝器を設けて推進力の伝達を行う。
 
構造は単純であるが、連結時に人間がいちいち連結作業を行う手間がある他、リンク部分を人の手で持てる重量(約20.5㎏5kgほど)に納めないといけないため強度を増そうとしても太くすることが困難で、加わる力(引張力)は10~15t10~15t付近あたりが上限とされて列車編成の長大化が困難<ref group="注釈">この問題は勾配区間で顕著になり、400t程度の編成でも25‰(1000分の25)の勾配に差し掛かると勾配抵抗で10t10tに達するため、補機を後につけなければ連結器が壊れてしまう。</ref>であり、輸送力増強には障害となった<ref name="技術随筆14・P96">朝倉希一、遺稿「技術随筆 汽車の今昔14」『鉄道ファン 第20巻第4号(通巻228号)』株式会社交友社、昭和55年4月1日発行、雑誌06459-4、p.96</ref>。
 
このため日本をはじめ、アメリカやロシアを中心とする東欧圏、中国などでは、そのほとんどが自動連結器(後述)に置き換えられており、これらの国々では軽便鉄道など一部のみで用いられている。
 
===== 初期のリンク式連結器 =====
; 鎖式連結器(chain coupling)(chain coupling)
: 以降の形式と違い「鎖の先端」にフックがついているもので、これを相手の車両のバッファービームにかけて使用する。外れやすい欠点がある。
; 連環連結器(three (three-link coupling)coupling)
: フックがバッファービームに固定され、ここに三連の鎖(中央の輪はただの鎖の輪でねじの機能はない)をかける構造。後述のねじ式連結器とほぼ同じ構造であり、互換性もあったのでイギリスなどでは旧式の貨物用や入替用の機関車では蒸気機関車末期でもこれを交換せずに使用してたものがある<ref name="続イギリスの鉄道の話"/>。
: 日本ではこれをただ単に「リンク式連結器」と呼ぶケースもある<ref name="鉄道辞典・連結装置"/><ref name="技術随筆14・P96"/>ので注意が必要である。
<!--『続イギリスの鉄道の話』では「スリーリンク・カップリング」表記でしたが、英語版の「Railway coupling」で確認した所「Three-link coupling」は日本でいう「連環連結器」なのでこの表記にします。-->
 
==== ねじ式連結器(screw coupling)(screw coupling) ====
[[ファイル:Mh_eisenbahn_schraubenkupplung.jpeg|thumb|200px|ねじ式連結器と緩衝器]]
[[ファイル:ねじ式連結時.jpg|thumb|200px|連結状態<br />(左の客車側は連環連結器)]]
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前述のように連環連結器と併結が可能なことを生かし、螺旋連環連結器として両者を同時にかけることもあり、1900年以前から客車の写真の多くが、一方に螺旋連結器、他方に連環連結器を装備している状態だったが<ref name="sima" />、日本の国鉄では[[1900年]]10月の鉄道建設規程第42条でこれを正式として「車両の連結は総て複式連結の装置とし、その一は螺旋連結器とを要す<ref group="注釈">旅客列車に連結する貨車に限り特例を認めるという趣旨がこの後にあるが省略。</ref>」と定められ、片方の車両からのみ鎖をかけた場合や双方かかっていても連環連結器同士では連結してはいけないことになり<ref>[{{NDLDC|900641/11}} 「鉄道建設規程集 緩衝器及連結器」1912年](国立国会図書館デジタルコレクション)</ref><ref name="sima">青木栄一「わが国の鉄道における初期の客車の変遷について」『都留文科大学研究紀要』第3集、1966年、20-64頁</ref>、一方から螺旋連結器を相手のフックに掛け渡して締めつけたあと、さらにその上から他方の連環連結器を(螺旋連結器側の)フックに掛ける手順になった<ref name="鉄道辞典・連結装置"/>。
 
この方式は万一螺旋連結器が破損しても連環連結器により列車分離事故を防ぐことができるが、作業が二度手間になることや、車両の螺旋連結器を装着している側と連環連結器を装着している側が対向していなければならないといった制約がある。この手間が後の[[#自動連結器化|自動連結器への付け替え]]の一要因ともなった<ref name="RP308"/>。
<!--、単独の連結器の強度を非常時に合わせて高めなくとも、常用の最大強度ですませ、リンクの重量の増大による連結作業の困難を回避する意味がある。←糸をより合わせたロープのように直接まとめるならともかく、こういう複数個所で分担する構造では「n本かけてれば強度がn倍」とかにはなりません、1本で支え切れない場合は力のかかり具合が偏るとそこがまず切れて残ったもので支え切れずに連続で破断が起きます。-->
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ジャニー式の自動連結器は[[アメリカ鉄道協会]] (AAR、[[:en:Association of American Railroads|Association of American Railroads]]) 規格に制定されており、この系譜に属する連結器は世界の自動連結器の多数を占める。「ナックル(肘)」、「ナックルピン」、「錠」によって構成される連結器で、ナックルピンを軸にナックルが回転し、錠がナックルを固定することでナックル同士が引っかかり、車両が連結される<ref>宮本昌幸「鉄道車両の連結器」『日本機械学会誌』Vol.103 No.982、2000年、595-597頁</ref>。単純な構造で大きな牽引力に耐える実用的な方式である。錠と解放てこの位置の違いによって上作用式と下作用式に分けられ、機関車・貨車は、てこの取り回しがしやすい上作用式が、客車などの旅客車両では、貫通路に抵触しない下作用式が多く用いられる。
 
ナックル可動のジャニー式とは異なる原理で設計された自動連結器として、イギリスで開発されたウィリソン式連結器 (Willison Coupler) がある。こちらはナックル部分が動かず、ジャニー式と機構が全く異なっていて、相互の互換性もない。ウィリソン式連結器はイングランドのダービーのジョン・ウィリソン(John Willison)(John Willison) によって特許が取得された(アメリカで1910年出願、1916年米特許取得<ref>{{US patent|1194109 A}}</ref><ref>[http://www.google.com/patents/US1194110 Patent US1194110 A]</ref>)。<ref>[http://www.google.com/patents/US1194109 Patent US1194109 A]</ref>。ドイツの[[クノールブレムゼ|クノール]]社(Knorr) (Knorr) はウィリソン式を購入してドイツの重量列車とパリのいくつかの近郊列車で使用したが、その後このタイプを大規模に採用しているのは第二次世界大戦後の[[ソビエト連邦]]とその後身である[[ロシア]]などの諸国で、改良のうえ「SA3形連結器」として使用している。日本では[[日立製作所]]がパテントの利用権を取得して製造販売し、[[越後交通栃尾線]]や[[日本鉱業佐賀関鉄道]]などの軽便鉄道や工事用トロッコで使用された。
<gallery widths="190" perrow="2">
ファイル:Hitachi-Willison-Coupler-01.jpg|日立製ウィリソン式連結器
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}}
緩衝装置(かんしょうそうち)は、連結器と車体の間に介在して発車・停車時、また運転中の加減速時などに発生する車両間の圧縮や引張(車端衝撃)を緩和する装置である。
 
ねじ式連結器の場合は中央で連結を行い両端で緩衝装置(主にタケノコばねもしくは輪バネ)をつける場合が多いが、自動連結器では中央緩衝装置が採用される<ref name="鉄道辞典・緩衝装置">[[#国鉄1958上|(国鉄1958上)p.284-285「緩衝装置」]]</ref>。
 
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==== 非国鉄線 ====
多くの非国鉄線車両についても自動連結器化の対象となり、国鉄直通車は国鉄とほぼ同時に交換、その他の車両も1927年頃までに交換が行われた<ref>[{{NDLDC|1877648/140}} 「地方鉄道車両並私有貨車」『鉄道車輛ノ連結器ヲ自動連結器ニ取替ニ関スル記録 : 大正14年7月実施』](国立国会図書館デジタルコレクション)</ref>。しかし、国鉄線との直通自体がない路線では後年までねじ式連結器を用いた例も少数残存した<ref group="注釈">[[宮崎交通線]]は[[1949年]]からの国鉄車両直通まで使用し、[[淡路鉄道]]は電車化([[1948年]])以降も貨車はそのまま、[[静岡鉄道秋葉線]]は廃線([[1962年]])まで、[[貝島大之浦砿専用線]]では線内専用車についてはねじ式を閉山([[1976年]])まで使用した。また、[[静岡鉄道]][[静岡電気鉄道デ10形電車|デワ1形]]は少なくとも1974年時点でねじ式連結器を装備していた。 </ref><ref>寺田裕一『ローカル私鉄車輌20年 路面電車・中私鉄編』P137の写真より1974年時点でねじ式連結器であることが確認できる。</ref>。国鉄線でも、[[新宮鉄道]]買収線で孤立した路線の[[紀勢本線|紀勢中線(現・紀勢本線の一部)]]は[[1940年]](昭和15年)の[[紀勢西線]]延伸・連絡で孤立が解消されるまで、買収以前からのねじ式連結器を用いていた<ref>電気車研究会『鉄道ピクトリアル』1962年2月号 No.127 73頁 この事情から、他地域から紀勢中線に搬入された車両についても、自動連結器からねじ式連結器への変更が実施された。</ref>。
 
日本の一般営業路線で最も遅くまでねじ式連結器を用いた例は762mm軌間の[[軽便鉄道]]であった[[下津井電鉄]]で、[[1990年]](平成2年)の同線廃止まで用いられた電車の1両であるモハ1001号は、簡易式連結器(後述)の下部に、開業以来の保線用貨車を牽引するため、ねじ式連結器を併設していた。下津井電鉄では開業の時点で2基のバッファーを備えるねじ式連結器を採用しており、貨車については電化後もねじ式のまま全線廃止まで維持された。ただし、同社では連環連結器と螺旋連結器を併用するのが正規の連結手順であったが、路線短縮後は貨車の使用が保線用に限られたためもあってか、ほとんどの場合連環連結器のみを使用して螺旋連結器を使用しなかった。また、下津井電鉄は1927年の[[単端式気動車]]導入時にピン・リンク式連結器を気動車専用(軽量化の必要から、バッファーが重いねじ式は忌避された)として導入し、さらに[[1930年代]]に入り2軸ボギー式大型[[ガソリンカー]]を導入した際には簡易式連結器を導入してピン・リンク式連結器を駆逐、これを気動車→電車の標準連結器として路線全廃まで使用している。
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== 参考文献 ==
* {{Cite book|和書| author = 日本国有鉄道 編 | year =1958(2013年復刻) | title = 復刻版 鉄道辞典(上巻)| publisher = 株式会社同朋社メディアプラン|isbn=978-4-86236-040-3 | ref =国鉄1958上}}
* {{Cite book|和書| author = 日本国有鉄道 編 | year =1958(2013年復刻) | title = 復刻版 鉄道辞典(下巻)| publisher = 株式会社同朋社メディアプラン|isbn=978-4-86236-040-3| ref =国鉄1958下}}
(『鉄道辞典』は元々ISBNが付いておらず、復刻版は上・下・補の3巻で1つの本という扱いのためISBNはすべて「978-4-86236-040-3」である。)
* 伊原一夫 『鉄道車両メカニズム図鑑』 グランプリ出版、1987年 ISBN 4906189644
* 久保田博『鉄道工学ハンドブック』グランプリ出版、1995年
<!--* 島安次郎「本邦鉄道車両の牽引及緩衝装置」、帝国鉄道協会会報、9巻 (1908)、100-157頁 (青木 1966に所引)-->
* {{Cite journal|和書| author = 高畠潔| title = 続 イギリスの鉄道の話| publisher = 株式会社成山堂書店| isbn = 4-425-96101-3| date = 2005年| ref = 高畠2005}}
* 『王国の鉄路 タイ鉄道の歴史』(柿崎一郎著、京都大学学術出版会、2010年)