「トリアージ」の版間の差分

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Mzc93000 (会話 | 投稿記録)
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また、黒とは正しくは、「何もしないと死亡することが予測されるが、その場の医療能力と全傷病者状態により、救命行為(搬送も含めて)を行うことが、結果として全体の不利益になると判断される傷病者」のことである。しかし、「その場での救命の可能性がない傷病者」と誤解される事が多い。たとえば、心室細動で心肺停止状態の傷病病者を想定する。初期から[[心肺蘇生法]]を行えば、救命の可能性は十分ある。しかし、その心肺蘇生には数人かつ10分以上必要である。その傷病者にそれだけの医療能力を割り当てることが可能ならば赤タグとなり、不可能ならば黒タグとなる。このように優先度分類は相対的な物である。
 
また状況にもよるがトリアージはあくまで表面観察による判断が主に行われるため、「黄」が必ずしも「重篤化の恐れなし」とはならないことにも注意を要する。例えばクラッシュ症候群や脳挫傷によるクモ膜下出血などの外傷性の内出血の場合、受傷数十~数時間は意識がはっきりしていることが多いのでトリアージのタイミングでは見落とされてしまうことがしばしばあり、診断後に命にかかわるほど重篤化してしまうことが少なくない。
 
また、トリアージは戦時での軍人軍属を対象とした軍隊のシステムであり、災害時であっても民間人を対象とする平時の救急医療にはなじまないという批判も存在する。特に軍の衛生部隊による野戦治療では[[病院天幕]]のようなスペースでトリアージを行うが、戦力の維持を優先するため軽傷の者を優先的に治療し復帰させ<ref>[http://fasd.or.jp/kikanshi/old_kikanshi/%8B%8CPDF20121212/no27/27-8.pdf 陸上自衛隊朝霞駐屯地 東部方面衛生隊]</ref>、重傷者は現地で治療しつつ後送を待つことになるが、戦地では即座に後方へ移動できるとは限らず、治療や移動中にも攻撃を受けるリスクがつきまとう。このため重傷と判断された者ほど不利な状況に置かれるが、ここで死亡したり障害が残ったりしても患者は基本的に軍人か軍属であり、国から年金や恩給、名誉負傷勲章などが送られ、差別的な扱いを受けたことによる損害に対して補償が約束されている。さらには軍隊内部のことなので、差別されることを命令できるなど患者と医師が統一された組織の構成員であり命令系統に服しているためトリアージが有効に機能するという点も重要である。トリアージを行った医師に対しても軍事上のことなので、よほどの重過失が無い限り判断ミスなどの責任が問われることは無く、医療ミスについて患者個人から訴えられることも無い。しかし民間で災害時に行われるトリアージには、このような責任問題や後の問題についてまで具体的な法制度や救済システムは、未だに構築されていない。