「カーン・インゴールド・プレローグ順位則」の版間の差分

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'''カーン・インゴルド・プレローグ順位則'''((—じゅんいそく、Cahn-Ingold-Prelog priority rule)rule)は、化合物中のいくつかの置換基に対して、それらを順位付けする際に使用される規則である。主に[[IUPAC命名法]]に基づいて、化合物の[[立体配置]]を示す際に使用される。
主に[[IUPAC命名法]]に基づいて、化合物の[[立体配置]]を示す際に使用される。
 
1951年に[[ロバート・シドニー・カーン]]、[[クリストファー・ケルク・インゴルド]]が提案した[[R/S表示法]]の置換基の順位付けをする方法を、[[ウラジミール・プレローグ]]が彼らとともに改良した方法である。1958年に[[バイルシュタイン]]の命名法に取り入れられ、さらにIUPAC命名法の1979年勧告に立体配置の命名法として取り入れられた。提案者3名の頭文字をとって'''CIP順位則'''ともいう。また単に'''順位則'''といった場合、CIP順位則を指すのが普通である。
1958年に[[バイルシュタイン]]の命名法に取り入れられ、さらにIUPAC命名法の1979年勧告に立体配置の命名法として取り入れられた。
提案者3名の頭文字をとって'''CIP順位則'''ともいう。
また単に'''順位則'''といった場合、CIP順位則を指すのが普通である。
 
==適用法==
===基本的な原則===
CIP順位則による順位の決定の基本は
*1. [[原子番号]]が大きい原子が原子番号が小さい原子よりも順位が高い。
である。
CIP順位則により置換基間の順位を比較する場合には、まず置換基が分子の他の部分に対して結合している結合位置の原子について比較を行なう。
このため、例えばメチル基(-CH<sub>3</sub>)、アミノ基(-NH<sub>2</sub>)、ヒドロキシ基(-OH)であれば、それぞれ結合位置の原子は炭素(原子番号6)、窒素(原子番号7)、酸素(原子番号8)であるから、順位はヒドロキシ基がもっとも高く、次いでアミノ基、メチル基の順になる。
 
[[Image:CIP system example.svg|thumb|240px|順位付けの例]]
結合位置の原子の原子番号が等しくこれだけでは順位が付けられない場合、続いて結合位置の原子に結合している原子について同じように比較を行なう。
CIP順位則により置換基間の順位を比較する場合には、まず置換基が分子の他の部分に対して結合している結合位置の原子について比較を行なう。このため、例えばメチル基 (-&minus;CH<sub>3</sub>)、エチルアミノ (-CH&minus;NH<sub>2</sub>CH<sub>3</sub>)、イソプヒドピルキシ (-CH(CH<sub>3</sub>)<sub>2</sub>&minus;OH) であれば、それぞれ結合位置の原子は炭素(原子番号6)、窒素(原子番号7)、酸素(原子番号8)等しあるから、順位はヒドロキシ基がもっとも高く、次アミノ基メチル基炭素結合している3つの原子を比較する。
メチル基は水素が3つ、エチル基は炭素が1つと水素が2つ、イソプロピル基は炭素が2つと水素が1つである。
この3つの原子をそれぞれ原子番号順に並べて、高い方から順に比較していく。
すると炭素は水素より順位が高いので、置換基の順位はイソプロピル基、エチル基、メチル基の順になる。
 
結合位置の原子の原子番号が等しくこれだけでは順位が付けられない場合、続いて結合位置の原子に結合している原子について同じように比較を行なう。例えばメチル基 (&minus;CH<sub>3</sub>)、エチル基 (&minus;CH<sub>2</sub>CH<sub>3</sub>)、イソプロピル基 (&minus;CH(CH<sub>3</sub>)<sub>2</sub>) であれば、結合位置の原子は炭素で等しいので、その炭素に結合している3つの原子を比較する。メチル基は水素が3つ、エチル基は炭素が1つと水素が2つ、イソプロピル基は炭素が2つと水素が1つである。この3つの原子をそれぞれ原子番号順に並べて、高い方から順に比較していく。すると炭素は水素より順位が高いので、置換基の順位はイソプロピル基、エチル基、メチル基の順になる。
また、比較対象の原子が存在しない場合には原子番号0の原子(空原子)が結合しているものと扱う。
例えばアンモニオ基(-N<sup>+</sup>H<sub>3</sub>)とアミノ基では、結合位置の原子は窒素で同じであるので窒素に結合している原子で比較する。
するとアンモニオ基では水素が3個、アミノ基では水素が2個で数が異なる。
そこでアミノ基には2つの水素以外に空原子が1つ結合しているものとして比較し、アンモニオ基の方が順位が高いということになる。
 
===空原子===
もし、結合位置の次の原子でも順位が決定できなければ、さらにその次の原子を同じように原子番号順にならべて高い方から順に比較していく。
比較対象の原子が存在しない場合には原子番号0の原子(空原子)が結合しているものと扱う。例えばアンモニオ基 (-&minus;N<sup>+</sup>H<sub>3</sub>) とアミノ基では、結合位置の原子は窒素で同じであるので窒素に結合している原子で比較する。
ただし、置換基が環状構造を持っている場合には辿っていってすでに比較した原子が再び現れたところでそこから先には空原子が結合しているものとして扱う。
例えばシクロプロピル基の場合、結合位置は炭素で、そこで原子番号の比較は枝分かれをして環状構造を辿っていくことになる。
すなわち結合位置の炭素からメチレン基、メチレン基、もとの結合位置の炭素と戻ってくる。
ここですでに辿った炭素に戻った時点で、この炭素には空原子のみが結合しているものとして扱う。
なおこの打ち切りの方法は1982年に導入された規則であるので、それ以前の文献では無限に環上を辿って順位を付けている。
そのため、この前後で順位の付け方が変化して立体配置の命名が変わっている場合がある。
 
またするとアンモニオ基では水素が3個[[二重結合]]や[[三重結合]]アミノ基では水素が2個で数異な場合。そこでアミノ基には、そ2つ原子水素以外は同じ原子が結合次数と同じ数だけ1つ結合しているものとして扱う。こ比較し、アンモニオ基ようにして方が順位則での比較のために多重結合部分に導入された原子をレプリカ原子が高いということになる
例えばカルボニル基(-C(=O)-)はカルボニル炭素には酸素原子2つが、カルボニル酸素には炭素原子2つが結合しているように扱う。
ホルミル基(-C(=O)H)とジメトキシメチル基(-CH(OCH<sub>3</sub>)<sub>2</sub>)においては、結合位置の原子は炭素で等しく、それに結合している原子はホルミル基の方にはレプリカ原子を導入してやってから比較すると、酸素2つと水素1つでまた等しい。
さらに次の原子を比較するとホルミル基はレプリカ原子の炭素1つだけであるが、ジメトキシメチル基は炭素原子2つである。
そのため、ジメトキシメチル基の方がホルミル基よりも順位が高くなる。
 
===環状構造===
ピリジル基のように、複数の[[極限構造]]が存在し、極限構造によって多重結合の結合が相手が変化している場合には、レプリカ原子はそれぞれの極限構造についての結合相手の原子番号の平均値を持つものとして扱う。
もし、結合位置の次の原子でも順位が決定できなければ、さらにその次の原子を同じように原子番号順にならべて高い方から順に比較していく。ただし、置換基が環状構造を持っている場合には辿っていってすでに比較した原子が再び現れたところでそこから先には空原子が結合しているものとして扱う。例えばシクロプロピル基の場合、結合位置は炭素で、そこで原子番号の比較は枝分かれをして環状構造を辿っていくことになる。すなわち結合位置の炭素からメチレン基、メチレン基、もとの結合位置の炭素と戻ってくる。
そのためピリジル基の2位と6位には原子番号6.5のレプリカ原子が結合しているものとして扱う。
 
ここですでに辿った炭素に戻った時点で、この炭素には空原子のみが結合しているものとして扱う。なおこの打ち切りの方法は1982年に導入された規則であるので、それ以前の文献では無限に環上を辿って順位を付けている。そのため、この前後で順位の付け方が変化して立体配置の命名が変わっている場合がある。
 
===多重結合===
[[二重結合]]や[[三重結合]]がある場合には、その原子には同じ原子が結合次数と同じ数だけ結合しているものとして扱う。このようにして順位則での比較のために多重結合部分に導入された原子をレプリカ原子という。
 
例えばカルボニル基 (&minus;C(=O)&minus;) はカルボニル炭素には酸素原子2つが、カルボニル酸素には炭素原子2つが結合しているように扱う。ホルミル基 (-&minus;C(=O)H) とジメトキシメチル基 (-&minus;CH(OCH<sub>3</sub>)<sub>2</sub>) においては、結合位置の原子は炭素で等しく、それに結合している原子はホルミル基の方にはレプリカ原子を導入してやってから比較すると、酸素2つと水素1つでまた等しい。さらに次の原子を比較するとホルミル基はレプリカ原子の炭素1つだけであるが、ジメトキシメチル基は炭素原子2つである。そのため、ジメトキシメチル基の方がホルミル基よりも順位が高くなる
 
ピリジル基のように、複数の[[極限構造]]が存在し、極限構造によって多重結合の結合が相手が変化している場合には、レプリカ原子はそれぞれの極限構造についての結合相手の原子番号の平均値を持つものとして扱う。そのためピリジル基の2位と6位には原子番号6.5のレプリカ原子が結合しているものとして扱う。
 
===同じ原子を同じ個数持つ場合===
さらに、順位をつけるべき置換基が同じ原子の配列を持っている場合は以下のルールによって順位をつける。
*2. [[同位体]]については[[質量数]]の大きいものが小さいものより順位が高い。例えば重水素は水素より順位が高い。
*3. 二重結合の[[幾何異性体|幾何異性]]については (''Z'')-体が (''E'')-体よりも順位が高い。
*4. [[ジアステレオマー|ジアステレオメリック]]な関係については unlike ((''R<sup>''*</sup>,''S<sup>''*</sup>)-体) like ((''R<sup>''*</sup>,''R<sup>''*</sup>)-体)よりも順位が高い。
*5. [[エナンチオマー|エナンチオメリック]]な関係については (''R'')-体が (''S'')-体よりも順位が高い。
 
また、[[軸不斉]]の命名においては、すでに示した順位の決定に優先するものとして
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という規則が付け加わる。
 
[[Category:立体化学|かんいんこるとふれろくしゆんいそく]]
{{chem-stub}}
 
[[en:Cahn-Ingold-Prelog priority rule]]
[[ar:قاعدة أولويات كان إنجولد بريلوج]]
[[de:Cahn-Ingold-Prelog-Konvention]]
[[en:Cahn-Ingold-Prelog priority rule]]
[[nl:Cahn Ingold Prelog priority rules]]