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===害鳥としてのオウム===
麻原彰晃
多くの種類のオウムが、農業に深刻な被害をもたらす[[害鳥]]となる可能性を持っている<ref>{{cite journal|title= Australian research on bird pests: impact, management and future directions|journal=[[:en:Emu (journal)|Emu]]|year=2002|first=Mary|last=B|coauthors= Sinclair R|volume=102|issue=1|pages=29-45|doi=10.1071/MU01028}}</ref>。このために、時には銃や薬物の散布による[[:en:pest control|駆除]]の対象となったり、またガスによる殺処分のために捕獲されたりすることもある。非殺傷的な被害緩和の手段として、脅かすことや居住地を操作すること、そしてまた主要な作物から気をそらすために、集積所を設けておとりの餌を供給することや、犠牲にするための作物の栽培なども行われている。オウムは、都市においては資産を破壊することから厄介者となることもある。彼らは自然の中では樹木をかじることでその嘴を維持しているが、都市の郊外においては屋外の家具や、ドア、窓枠などをかじることもある<ref name = "Temby"/>。[[ベイスギ]]のような、柔らかく装飾的な木材はすぐさま破壊されてしまう<ref name=Cam155>{{Harvnb|Cameron|2007|p=155}}.</ref>。オウムたちはまた、屋外の配線、テレビのアンテナや衛星放送のパラボラアンテナ<ref name=Cam155/>、太陽熱温水器などのような家屋の備品<ref name = "Temby"/> も攻撃目標にする。メルボルン市街中心部の商業施設は、キバタンによって厚板ガラス窓からシリコン封止材を剥がされてしまうという被害にたびたび遭っている<ref name=Cam156>{{Harvnb|Cameron|2007|p=156}}.</ref>。モモイロインコとアカオクロオウムは、農村地帯で電力ケーブルの被覆を剥がしてしまうし、また防水布は場所を問わず攻撃目標となっている<ref name=Cam156/>。オーストラリア以外の場所では、シロビタイジオウムが[[:en:Yamdena Island|ヤムデナ島]]においてトウモロコシを荒らす害鳥とされている<ref>{{Harvnb|Cameron|2007|p=160}}.</ref>。
 
[[ファイル:Sulphur-crested Cockatoos damaging a shopping centre facade 4.jpg|left|thumb|キバタンに壊されてしまった[[:en:Sturt Mall|スタート・モール・ショッピングセンター]]のポリスチレン製のファサード。|alt=無数のキバタンが建物の壁の一部をかじった結果、大量のポリスチレン製の部品が失われた残骸。]]
 
1995年、[[ビクトリア州]]政府はテンジクバタン、キバタン、およびモモイロインコによって引き起こされる問題について報告書を公開した。この3種に加えてアカビタイムジオウムは、膨大な生息数がさらに増大しており、人為的な地形の改変によって利益を被っている。調査結果と報告書の公開を受けて、特定の条件下ではこの3種は保護対象とならないことが、[[オーストラリアの総督|総督]]の勅令により宣言された。これにより、これらのオウムによって樹木、ブドウ園、果樹園、レクレーション用保護区、商用作物などに対して深刻な被害が引き起こされる場合、これを駆除することが許されている<ref>{{cite web|url=http://www.dpi.vic.gov.au/DPI/nreninf.nsf/childdocs/-C3270146B772814F4A2568B30006FFEE-7A5820241AEA1564CA256BC800078098-7B785784C934E20E4A256DEA00292002-00FD9A5C09190C59CA256BCF000B4D61?open|title=Victorian cockatoos. Victorian Department of Primary Industries Information Note|last=Temby|first=I|year=2003|work=Department of Primary Industries website|publisher=The State of Victoria|accessdate=2009-12-10}}</ref>。報告書に掲げられている被害の内容には、穀物や、果樹園の果実や堅果(ナッツ)、一部の種類の野菜作物に対する被害ばかりではなく、家屋や通信施設への被害も含まれている<ref name=enrc>{{cite book|author=Environment and Natural Resources Committee (Parliament of Victoria)|year=1995|title=Problems in Victoria caused by Long-billed Corellas, Sulphur-crested Cockatoos and Galahs|publisher=Victorian Government Printer}}</ref>。アカビタイムジオウムは、西オーストラリア州で農業における害鳥と宣言されているが、これは飼育のために持ち込まれた外来種である。この被害は、[[トウモロコシ]]やその他の[[モロコシ属]]の作物、[[ヒマワリ]]、[[ヒヨコマメ]]やその他の作物に及んでいる。さらにまた、公園や庭園では植樹された樹木を立ち枯れさせ、食べられる根や[[球根]]を求めて競技用のグラウンドやトラックを掘り返し、また同じように電線や家屋の設備をかじる<ref>{{cite web|url=http://www.agric.wa.gov.au/content/pw/vp/bird/20_little_corella.pdf|title=Fauna Note No.20: Little Corella|date=2007-07-24|publisher=Western Australian Department of Environment and Conservation|accessdate=2009-12-10}}</ref>。南オーストラリア州では群れの数は数千羽を数えることがあり、また複数の種が保護対象外として分類されている。かれらは[[:en:Eucalyptus camaldulensis|マレイレッドガム]]や、その他の土着の観賞用植物をねぐらに使って立ち枯れさせていると見られており、穀物貯蔵所の防水布や、建物の電線や、雨押さえを損傷させ、畑に播種したばかりの種子を食べてしまい、騒音被害を作り出している<ref>{{cite web|url=http://www.environment.sa.gov.au/biodiversity/pdfs/lc_resource_doc.pdf|title=Little Corella (''Cacatua sanguinea''): Resource document|date=March 2007|publisher=South Australian Department for Environment and Heritage|accessdate=2009-12-10}}</ref>。
 
いくつもの希少種やその近縁種も、また同じく問題を引き起こしていることが記録されている。[[ニシオジロクロオウム]]([[西オーストラリア州]]の[[固有種]]で、[[絶滅危惧種]])は松の[[プランテーション|植樹林]]の害鳥と考えられている。これは成育中の松の芽吹きの先端をかじり取ってしまい、この結果幹が曲がって材木としての価値を下げてしまう<ref name=Saunders2005>{{Cite conference| first = D | last = Saunders | title = Conserving Carnaby's Black-Cockatoo: historical background on changing status | booktitle = Conserving Carnaby's black-cockatoo - future directions: proceedings from a conservation symposium, Perth, Western Australia, 2 July 2003 | pages = 9-18 | publisher = Birds Australia WA Inc | year = 2005 | location = Perth, Western Australia | url = http://www.birdswa.com.au/projects/carnaby/assets/Conserving%20CBC%20Symposium%20Proceedings%20-%202003.pdf | isbn= 0975142909 | accessdate = 2009-12-11}}</ref>。
さらにまた果樹や堅果の収穫に損害を与えることでも知られており<ref>{{cite web|url=http://www.environment.gov.au/cgi-bin/sprat/public/publicspecies.pl?taxon_id=59523|title=''Calyptorhynchus latirostris''|year=2009|work=Species Profile and Threats Database|publisher=Department of the Environment, Water, Heritage and the Arts, Canberra|accessdate=2009-12-10}}</ref>、また[[セイヨウアブラナ]](キャノーラ)の収穫を食い物にすることを覚えてしまった<ref>{{Harvnb|Cameron|2007|p=22}}</ref>。ボーダンクロオウムもまた、西オーストラリア州南西部の固有種であるが、[[リンゴ]]や[[ナシ]]の[[果樹園]]で、その種子をとり出すために果実を破壊してしまう害鳥となることがある<ref name=Saunders2005/>。ヒメテンジクバタンの基亜種である [[:en:Muir's Corella|Muir's Corella]] も西オーストラリア州では農業に対する害鳥と宣言されているが、また一方、自然界では[[絶滅危惧種|絶滅の危機]]にさらされており、州の規定によれば「希少ないしは絶滅に近い状態」として分類されている<ref name=dec4>{{cite web|url=https://www.dec.wa.gov.au/index2.php?option=com_docman&task=doc_view&gid=1121&Itemid=99999999|date=2007-12-12 |publisher= Department of Environment and Conservation, Western Australia |title=Fauna Note No.4 - Muir's Corella |accessdate= 2009-12-04}}</ref>。
 
===生息状況と保護活動===
[[ファイル:Cacatua haematuropygia -two captive-8a.jpg|thumb|right|[[フィリピンオウム]]は[[レッドリスト#IUCN レッドリストのカテゴリーと基準(Categories & Criteria)|絶滅寸前]]の状態にある[[フィリピン]]固有のオウムである<ref>{{cite web|url=http://www.birdlife.org/datazone/search/species_search.html?action=SpcHTMDetails.asp&sid=1403&m=0 |publisher=[[:en:BirdLife International]] |title=Philippine Cockatoo - BirdLife Species Factsheet |accessdate= 2009-10-20}}</ref>。|alt=2羽のおおむね白い羽毛のオウムがかごの中で顔を見合わせている。下尾筒の一部の羽根は赤色をしている。]]
[[ファイル:Cacatua ophthalmica -Vogelpark Walsrode -upper body-8a.jpg|right|thumb|[[:en:Blue-eyed Cockatoo|ルリメタイハクオウム]]は[[ニューブリテン島]]の固有種で、[[レッドリスト#IUCN レッドリストのカテゴリーと基準(Categories & Criteria)|絶滅危惧II類]]の絶滅危惧種である<ref>{{cite web|url=http://www.birdlife.org/datazone/search/species_search.html?action=SpcHTMDetails.asp&sid=140025&m=0 |publisher=BirdLife International |title=Blue-eyed Cockatoo - BirdLife Species Factsheet |accessdate= 2009-11-08}}</ref>。|alt=ほぼ白色のオウムの上体部。左足を黒い嘴まで持ち上げている。淡い黄色の冠羽が、さらに大きな白色の冠羽の下に見えている。むきだしの青い皮膚による幅の広い環状の縁が目の周囲にある。虹彩は褐色である。]]
 
[[国際自然保護連合]]と[[バードライフ・インターナショナル]] によれば、オウムのうち8種が危急([[レッドリスト#IUCN レッドリストのカテゴリーと基準(Categories & Criteria)|絶滅危惧II類]])ないしそれよりも危険な状況にあると考えられ、1種は[[レッドリスト#IUCN レッドリストのカテゴリーと基準(Categories & Criteria)|準絶滅危惧]]であると考えられている<ref>{{cite web|url=http://www.birdlife.org/datazone/species/index.html?action=SpcHTMFindResults.asp&hdnAction=SEARCH&hdnPageMode=0&cboFamily=67&txtGenus=&txtSpecies=&txtCommonName=&cboRegion=-2&cboCountry=-2 |title=Data Zone: Search Species |accessdate=2008-12-13 |publisher=Birdlife International |year=2008 }}</ref>。これらのうち2種、すなわち[[フィリピンオウム]]と[[コバタン]]は絶滅寸前([[レッドリスト#IUCN レッドリストのカテゴリーと基準(Categories & Criteria)|絶滅危惧IA類]])の状況にあると考えられている<ref name=Cam178>{{Harvnb|Cameron|2007|p=178}}</ref>。
 
オウムに対する主たる脅威とは、[[:en:habitat destruction|居住環境の破壊]]と[[:en:wildlife trade|野生生物の売買]]である。すべてのオウムは営巣のために樹木に依存しており、その喪失に対して脆弱である。さらに、多くの種が居住地に対する要求が専門化されていたり小さな島に生息しているため、必然的に生息範囲が限定されており、これらの居住地の喪失に対して脆弱になってしまっている<ref>{{cite journal|title= Agricultural change and paddock tree loss: Implications for an endangered subspecies of Red-tailed Black-Cockatoo| journal=Ecological Management & Restoration| year=2005|first=M|last=Maron |volume=6|issue=3|pages= 206-11|doi=10.1111/j.1442-8903.2005.00238.x}}</ref>。オウムはペットとして人気が高く、このためその捕獲と売買によって生存を脅かされている種がある。1983年から1990年の間に、記録されただけでも66,654羽の[[オオバタン]]が[[インドネシア]]から輸出されている。この数字には国内での売買のために捕獲された鳥や、違法に輸出された鳥の数は含まれていない
<ref>{{cite journal|title=Density and distribution of the endemic Seram cockatoo ''Cacatua moluccensis'' in relation to land use patterns |journal=Biological Conservation|year=2003|last=Kinnaird|first=M|coauthors=O'Brien TG, Lambert FR, Purmias D|volume=109 |issue=2 |pages=227-35 |doi= 10.1016/S0006-3207(02)00150-7 }}</ref>。その後さまざまな種の捕獲は禁止されたが、違法な売買は続いている。鳥は木枠や竹で編んだ筒に入れられて、インドネシアやフィリピンからボートで運び出される<ref name=Cam164>{{Harvnb|Cameron|2007|p=164}}.</ref>。希少種の鳥がインドネシアから密輸出されるばかりではなく、同様にオーストラリアからも、ありふれた種や希少種が密輸出されている。鳥は眠らされ、ナイロンストッキングで包まれてから[[ポリ塩化ビニル]]のチューブに詰められて、国際貨物便の別送貨物で送り出される<ref name=Cam164/>。死亡率は著しく(30%)、また卵のほうがはるかに容易に飛行中の密輸業者の体に隠すことができることから、鳥の密輸に代わって卵の密輸がますます増大している。違法な取引は、組織化された犯罪者たちによって実行されていると考えられるが、彼らはまた密輸出の他にオーストラリア産の種を、たとえばコンゴウインコのような外国種と交換することも行う
<ref name=Cam166>{{Harvnb|Cameron|2007|p=166}}.</ref><!-- cites both previous sentences -->。
 
オカメインコをのぞくすべての種のオウムが、[[絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約|ワシントン条約]](CITES(サイテス)、「絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約」)の保護下にあり、これにより捕獲された野生種のインコおよびオウムの輸出入と売買は違法である。以下の種類のオウムはそのすべての亜種も含めて、ワシントン条約付属書Iに絶滅危惧状態 (Endangered) として掲げられ、保護されている。
 
*[[シロビタイムジオウム]] [[:en:Tanimbar Corella|Tanimbar Corella]] (Goffin's Cockatoo とも), ''Cacatua (Licmetis) goffiniana''
*[[フィリピンオウム]] [[:en:Red-vented Cockatoo|Red-vented Cockatoo]], ''Cacatua (Licmetis) haematuropygia''
*[[オオバタン]] [[:en:Salmon-crested Cockatoo|Salmon-crested Cockatoo]], ''Cacatua (Cacatua) moluccensis''
*[[コバタン]] [[:en:Yellow-crested Cockatoo|Yellow-crested Cockatoo]] (Lesser Sulphur-crested Cockatoo とも), ''Cacatua (Cacatua) sulphurea''
**亜種マメコバタン [[:en:Abbott's Cockatoo|Abbott's Cockatoo]], ''Cacatua (Cacatua) sulphurea abbotti''
**亜種コガタコバタン [[:en:Timor Cockatoo|Timor Cockatoo]], ''Cacatua (Cacatua) sulphurea parvula''
**亜種コキサカオウム [[:en:Citron-crested Cockatoo|Citron-crested Cockatoo]], ''Cacatua (Cacatua) sulphurea citrinocristata''
* [[ヤシオウム]] [[:en:Palm Cockatoo|Palm Cockatoo]], ''Probosciger aterrimus''
 
これ以外のすべての種類のオウムはワシントン条約付属書IIに危急(vulnerable)として掲げられ、保護されている<ref name=Cam169>{{Harvnb|Cameron|2007|p=169}}.</ref>。
 
==飼育==